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今日は清々しいお天気でオスカー様に誘われて庭園を散歩。
婚約者になって13日目を迎え、彼とは距離が近くなった。
時々軽くキスをされる。
慣れって怖い。一瞬だけ触れるキスは挨拶だと思えるようになった。
基本無口な彼だが、話しかけると応えてくれる。
ご自分の事はあまり話したくない雰囲気があって、突っ込んだ話題は避けている。
「オスカー様、今は外の植物園が見頃だそうですよ」
「そうか、結婚したら二人で行ってみよう」
まぁ、こんな感じで可もなく不可もなくだ。
オスカー様は私が5年間手紙を出し続けた『お兄さま』だった。
シスター・マーベルが手紙を出す時に私の手紙を同封してくれて、いつも短い返事を書いて送ってくれるのを、私は楽しみにしていた。
修道院を出てからは『お兄さま』への手紙を出せなくなり、代わりにシスターと4年前まで文通をしていたがシスターは病気でお亡くなりになった。
オスカー様はシスターのご子息だったのか。手紙は唯一息子に許された行為だとシスターは仰っていた。
なぜ親子は引き離されたんだろう。
***
クラリス様は謹慎が解けてまた執務に戻っている。
今度、私に迷惑を掛けたらクラリス様は屋敷を追い出される約束だ。
あれから私に絡んでくることも無くなり、安心していたのだが。
「領地で少し問題が起こったようだ。暫く留守をするが、護衛も多めに付けるので安心して待っていて欲しい」
「はい、大丈夫です。なるべく部屋で過ごして大人しくしています」
「ああ、直ぐに戻るから」
女性の護衛騎士を3人付けて、私にキスを残しオスカー様は領地に向かわれた。
「奥様、心配ございません。何者も奥様には近づくことはできません!」
執事のテリーさんが胸を張ってそう言ったが、私に接近できる者が翌日現れたのだ。
「大奥様がリアナ様に、ご挨拶に来られました!」
焦ったテリーさんに告げられる。
オスカー様と入れ替えに彼の祖母が私を訪ねてきた。
サロンに行くと、上品な白髪の老婦人とクラリス様が私を待っていた。
クラリス様は私を見ると口角を上げて、老婦人に私を紹介した。
「お婆様、噂のリアナ様よ。可愛らしい方でしょう?」
「貴方の噂はクラリスから聞きました。2度も婚約を解消されたのですってね」
最悪だ。お婆様に何を吹き込んだのか、会う前から私の印象は最悪だ。
「初めましてリアナと申します。2度とも婚約者は義姉とご縁が出来まして、私は解消されてしまいました」
正直に話す方がいいだろう、下手な言い訳は更に印象が悪くなる。
「はぁ~ どうしてこのような娘をオスカーは選んだのかしら。次のお相手は私が探すと言い渡してあったのに」
「オスカーは電光石火の働きでした。余程リアナ様に魅入られているのでしょう」
「他人事じゃないですよクラリス。貴方も24歳、いい加減にどこかに嫁ぎなさい」
「私は一生オスカーの面倒をみるつもりです」
「まぁ、馬鹿なことばかり言って」
ここにもダイアナみたいなのが居た。オスカー様に一生付き纏うのか。
「お婆様、次のオスカーの婚約者候補はどなたを考えていたの?」
「ベニーには3歳下の妹がいます。その方と話を進めているのに、なんて事でしょう」
「それは、また王妃様のご意向ですか?」
「そうです、王妃殿下の実家ネイラム伯爵家との亀裂を修復しなければなりません」
私を無視して二人は話し込んでいる。オスカー様の政略結婚は王妃殿下の意向だったのか。
「だそうよ、リアナ様。そろそろご実家に戻って、次の婚姻先を探しなさいよ」
「貴方など認めませんよ。我がワイゼン侯爵家に相応しくありません」
「ではオスカー様がお戻りになれば、ご挨拶を済ませて実家に帰らせて頂きます」
「今すぐ出てお行きなさい。目障りです」
「いいえ、ワイゼン侯爵家ご当主のオスカー様に無断で出ていくなんて出来ません。目障りでしたら失礼いたします」
「まぁ、生意気な。テリー! すぐにこの娘を追い出しなさい!」
私は執事のテリーさんに連れられて部屋に戻された。
「私を追い出しますか?」
「まさか!坊ちゃんが戻るまでお部屋でお待ちください、奥様」
「ねぇ、オスカー様のご両親はどうされているの?」
「事故で坊ちゃんが6歳の時にお亡くなりになり、大奥様が坊ちゃんを育てて参りました」
「そう、クラリス様とは本当に愛人関係ではないの?」
「滅相もない、あのお二人は本当のご兄弟のような関係でした。どうしてあのように豹変されたのか、私も戸惑っています」
「そう・・・・」
オスカー様はシスター・マーベルのご子息では無かった。
嘘をついている?でも私が書いた手紙を持っていた。
「差し出がましいようですが。坊ちゃんは本当に奥様を愛しておられます。信じて差し上げて下さい」
「ええ、信じたいわ」
2か月経てば結婚する簡単な話だと思っていたが、そうでも無くなった。
実家に戻ればハワードの元に嫁がされる可能性が高い。
そしてダイアナが絡んでくる、絶対に嫌だ。
婚約者になって13日目を迎え、彼とは距離が近くなった。
時々軽くキスをされる。
慣れって怖い。一瞬だけ触れるキスは挨拶だと思えるようになった。
基本無口な彼だが、話しかけると応えてくれる。
ご自分の事はあまり話したくない雰囲気があって、突っ込んだ話題は避けている。
「オスカー様、今は外の植物園が見頃だそうですよ」
「そうか、結婚したら二人で行ってみよう」
まぁ、こんな感じで可もなく不可もなくだ。
オスカー様は私が5年間手紙を出し続けた『お兄さま』だった。
シスター・マーベルが手紙を出す時に私の手紙を同封してくれて、いつも短い返事を書いて送ってくれるのを、私は楽しみにしていた。
修道院を出てからは『お兄さま』への手紙を出せなくなり、代わりにシスターと4年前まで文通をしていたがシスターは病気でお亡くなりになった。
オスカー様はシスターのご子息だったのか。手紙は唯一息子に許された行為だとシスターは仰っていた。
なぜ親子は引き離されたんだろう。
***
クラリス様は謹慎が解けてまた執務に戻っている。
今度、私に迷惑を掛けたらクラリス様は屋敷を追い出される約束だ。
あれから私に絡んでくることも無くなり、安心していたのだが。
「領地で少し問題が起こったようだ。暫く留守をするが、護衛も多めに付けるので安心して待っていて欲しい」
「はい、大丈夫です。なるべく部屋で過ごして大人しくしています」
「ああ、直ぐに戻るから」
女性の護衛騎士を3人付けて、私にキスを残しオスカー様は領地に向かわれた。
「奥様、心配ございません。何者も奥様には近づくことはできません!」
執事のテリーさんが胸を張ってそう言ったが、私に接近できる者が翌日現れたのだ。
「大奥様がリアナ様に、ご挨拶に来られました!」
焦ったテリーさんに告げられる。
オスカー様と入れ替えに彼の祖母が私を訪ねてきた。
サロンに行くと、上品な白髪の老婦人とクラリス様が私を待っていた。
クラリス様は私を見ると口角を上げて、老婦人に私を紹介した。
「お婆様、噂のリアナ様よ。可愛らしい方でしょう?」
「貴方の噂はクラリスから聞きました。2度も婚約を解消されたのですってね」
最悪だ。お婆様に何を吹き込んだのか、会う前から私の印象は最悪だ。
「初めましてリアナと申します。2度とも婚約者は義姉とご縁が出来まして、私は解消されてしまいました」
正直に話す方がいいだろう、下手な言い訳は更に印象が悪くなる。
「はぁ~ どうしてこのような娘をオスカーは選んだのかしら。次のお相手は私が探すと言い渡してあったのに」
「オスカーは電光石火の働きでした。余程リアナ様に魅入られているのでしょう」
「他人事じゃないですよクラリス。貴方も24歳、いい加減にどこかに嫁ぎなさい」
「私は一生オスカーの面倒をみるつもりです」
「まぁ、馬鹿なことばかり言って」
ここにもダイアナみたいなのが居た。オスカー様に一生付き纏うのか。
「お婆様、次のオスカーの婚約者候補はどなたを考えていたの?」
「ベニーには3歳下の妹がいます。その方と話を進めているのに、なんて事でしょう」
「それは、また王妃様のご意向ですか?」
「そうです、王妃殿下の実家ネイラム伯爵家との亀裂を修復しなければなりません」
私を無視して二人は話し込んでいる。オスカー様の政略結婚は王妃殿下の意向だったのか。
「だそうよ、リアナ様。そろそろご実家に戻って、次の婚姻先を探しなさいよ」
「貴方など認めませんよ。我がワイゼン侯爵家に相応しくありません」
「ではオスカー様がお戻りになれば、ご挨拶を済ませて実家に帰らせて頂きます」
「今すぐ出てお行きなさい。目障りです」
「いいえ、ワイゼン侯爵家ご当主のオスカー様に無断で出ていくなんて出来ません。目障りでしたら失礼いたします」
「まぁ、生意気な。テリー! すぐにこの娘を追い出しなさい!」
私は執事のテリーさんに連れられて部屋に戻された。
「私を追い出しますか?」
「まさか!坊ちゃんが戻るまでお部屋でお待ちください、奥様」
「ねぇ、オスカー様のご両親はどうされているの?」
「事故で坊ちゃんが6歳の時にお亡くなりになり、大奥様が坊ちゃんを育てて参りました」
「そう、クラリス様とは本当に愛人関係ではないの?」
「滅相もない、あのお二人は本当のご兄弟のような関係でした。どうしてあのように豹変されたのか、私も戸惑っています」
「そう・・・・」
オスカー様はシスター・マーベルのご子息では無かった。
嘘をついている?でも私が書いた手紙を持っていた。
「差し出がましいようですが。坊ちゃんは本当に奥様を愛しておられます。信じて差し上げて下さい」
「ええ、信じたいわ」
2か月経てば結婚する簡単な話だと思っていたが、そうでも無くなった。
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