4度婚約解消されました。でも私は図太く生きていきます!

ミカン♬

文字の大きさ
上 下
3 / 21

3

しおりを挟む
今日のダイアナはフワフワの金色の髪をシニヨンに纏めて、切れ長の目は私よりも濃い青だ。
清楚な水色のドレスが似合っている。

私はストレートの髪をハーフアップ、地味な紺色のドレスは老けて見える。
生まれつき色素が薄い私は髪も白っぽい金で、目も薄い水色だ。

父は生まれた真っ白な私を見て、自分の子では無いと言った。
不貞を疑いそれを理由に母を捨てた。

父と正妻はとっくに父の浮気が原因で離婚している。

離婚の原因になった私を義姉は憎んで、ありとあらゆる嫌がらせをされてきた。
それは私と母が背負ったごうかもしれないと耐えてきたが、もうセルマー家とは縁を切りたい。

侯爵も美しいダイアナを選ぶだろう。

そうなればハワードに嫁がされるかもしれない、冗談じゃない。

逃げ出そう、私は修道院に戻りたいのだ。



だが私達の目論見は外れた。


「リアナ、行こう」

訪れた侯爵に手を差し出され、ダイアナがその手に触れようとしたが彼は払い除けた。

「どうして? 私の方が侯爵に相応しいと思いますわ」

「子どもを捨てた女に用はない。義姉とも認めない」


ダイアナは青い顔で口をハクハクさせた。

「ハワードはリアナに誘惑されて騙され、私は息子を奪われたんです!」

口から流れるように嘘を吐く義姉は、それが本当だと思い込んでしまう病気だ。


「黙れ!そんな事実はない!」

「ひっ!」

ダイアナを黙らせた侯爵に無言で促されて、私は馬車に乗せられた。

もう後戻りは出来ない。
実家に支援をしてくれる侯爵様に、私は尽くすべきだ。

「似合わないな」
「え?」

「その服だ。直ぐに仕立て屋を呼んで作らせる」
「申し訳ありません」

「意味もなく謝るな。それと名前で呼ぶように」
「はい」


初めての夜会で侯爵に会った時も言われた。

『似合わないな』

ハワードがエスコートしてくれず、義兄と参加した日だ。
あの時は何が似合わないと言われたのか分からなかった。


アランと婚約して、初めて二人で宮殿に出向いた時も言われた。

『似合わないな』

オスカー様の横には侯爵夫人になったベニー様が寄り添い、美しい二人はお似合いだった。



「リアナ?」

「・・・はい」

「2か月後には直ぐに籍を入れる。もし2か月の間にアラン・スコットが記憶を戻しても君を返す気は無いが」

「はい、侯爵様には実家に支援して頂いたご恩があります」

「実家の犠牲になるか、それでいい。さっきも言ったが名前で呼ぶように」

「はい、オスカー様」

アランが記憶を戻せば少しは私を憐れんでくれるだろうか。
いや、ダイアナと結婚して幸せになればいい。



馬車が到着し、私は大きなタウンハウスを見上げた。
昨年まではベニー様が侯爵夫人として暮らしていた屋敷。

夜会でオスカー様がベニー様と揃って目の前に現れると、本当に恐ろしかった。

『あら、恥ずかしげもなくこちらに参加されていたのね。見かけによらず図太い神経ね』
『ベニー、こんなつまらない女は相手にするな、時間の無駄だ』

私を蔑む二人の目、赤い悪魔と夫婦になるなんて、夢であってほしい。



「どうした?」
オスカー様が手を差し出していた。

「い、いえ、なんでもありません」

その手に震える自分の手を重ね、屋敷に足を踏み入れると使用人達に出迎えられた。

「妻になるリアナだ」
紹介されてそのまま2階の部屋まで案内される。

「ここがリアナの部屋だ、一通り準備させたが必要な物は執事か侍女長に言ってくれ」

「有難うございます」

「リアナ」

「はい」

「アランのことは気の毒だったが、早く忘れるんだ。ハワードもアランもリアナには相応しくなかった」

「私は、相手にする価値もないつまらない女ですから」

・・・しまった!つい恨み言を言ってしまった。

「あ、生意気を言って、すみません」

「ふん、謝るなら最初から口にするな。俺が夫になるのだと肝に銘じておけ」

オスカー様は侍女長に私の面倒を見るよう言いつけて部屋を出て行った。


ぐるりと見渡せば、ベニー様が使っていた部屋だろうか、豪華な調度品は優しい色合いで品がある。

侍女達がクローゼットを開けると美しいドレスが収まっていた。
宝石に化粧品、可愛らしい小物、私には勿体ない特注品ばかり。
ダイアナに知られると、また全部取り上げられそうだ。

「このお部屋は客室を改造した使のお部屋です」

「そうですか」
私の思ったことを汲んで侍女長が説明してくれた。

「サロンでご主人様がお待ちです。お着替えを」
侍女三名が私の専属と紹介され、テキパキ動いて人選も申し分ない。

着替えを済ませて、髪にも美しい髪飾りを着けてくれた。

先日までスコット家で使用人のような扱いを受けていたのが嘘のようだ。

侯爵夫人──私なんかに務まるのだろうか。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

その後2人を待っていたのは、正反対の人生でした

柚木ゆず
恋愛
 一目惚れをした令嬢・エルザを手に入れるため、エルザの最愛の人であり婚約者のユーゴに大けがを負わせて記憶喪失にさせ、『逆らうと更に酷い目に遭わせる』とエルザを脅迫して自らと婚約させた侯爵家の令息・ウィリアム。  しかし、その僅か9か月後。そのショックによって笑顔を作れなくなってしまったエルザに飽き、彼は一方的に婚約破棄をしてしまいます。  エルザとユーゴの心身を傷つけ、理不尽な振る舞いをしたウィリアム。  やがてそんな彼の心身に、異変が起き始めるのでした――。  ※こちらは以前投稿していたお話のリメイク(いただいたご意見とご指摘をもとに文章を書き直し、キャラクターの性格やストーリーを数か所変更したもの)となっておいます。  ※8月3日。体調の影響でお返事(お礼)を行う余裕がなく、現在感想欄を閉じさせていただいております。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...