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12 完結
しおりを挟む〈帰れないかもしれない〉
お姉ちゃんはそう伝えてきた。
異世界に長くいるとこっちの記憶が消えていくなんて、神様って残酷。
お姉ちゃんが困らないように両親は求めるものは何でも揃えた。
それはお姉ちゃんより、フリック王子様が求めた気がする。それでも両親は出来るだけの事をやった。
リシャールさんと結婚して、お姉ちゃんは幸せそうだった。
映像を見て両親はずっと泣いていたけど、私はメチャクチャ羨ましかった。
いつしかお姉ちゃんから連絡は途絶えた。
もう私を忘れてしまったのかな。淋しいな。
こっちの生活にも異変があった。国の調査機関から調査員が来てうちの中を調べまくった。
するとあの綺麗な青石があちこちから出てきて、全部回収していった。
お姉ちゃんは生活用品や下着、小物など目立たない物もちょくちょく交換していたようだ。
両親は極秘を条件に、正直にお姉ちゃんの状況を話した。
異世界の不思議な世界に行ってしまったのだと。
そして地球には存在しない物もお姉ちゃんはたくさんもたらしたのだ。
その最たるものが────スライムコア。
地球人は科学の力でスライムを再現したのだった。
どうやって?・・・さぁ私が知るはずない。
優秀な科学者達の手によってスライムは地球に誕生した。
魔樹木は無いのでスライムは魔法は使えないが生きてはいけるようだ。
そしてゴミで悩む人類の救世主になろうとしている。
強力な消化液でどんどんゴミを消化して、汚れた水さえもスライムは消化していく。
どんなゴミでも消化して取り込み成長し、分裂して増えていく優れもの。増えすぎると200度以上の高熱で数は減りコアが残って再利用できる。
スライムはプラスッチックの代用にもなる。
地球の科学力でまだまだ利用価値は広がっていくみたい。いつか燃料にだってなるかもしれない。
世界の期待は大きい。
外来種は在来種に大きな影響を及ぼす。
扱い方によってはスライムに地球が乗っ取られる恐れがあると、警告もされている。
実験段階が終わり、実施されるのはもう少し先。
日本では制約を決めて注意しながらスライムを利用するようだけど、他国はどうかな。
日本はいろんな点で救われるかもしれない。
あくまで私の考えだけどね。
〈どうして私がこの世界に呼ばれたのか分からない〉
お姉ちゃん、それはきっと地球の為だったんだよ。
呼ばれたんじゃなくて汚染していく地球によって、お姉ちゃんは異世界に送り込まれたんだよ。
お姉ちゃんが犠牲になって呼び寄せたスライムを正しく扱ってほしい。
新聞やテレビで大きく報道されたスライム誕生の記事を、私は記念にスマホに残した。
お姉ちゃんが消えた日の夜、空には三日月が昇っていた。
同じ日の今日、私は2階の窓から月に向かってスマホをかざした、するとスマホの画面にお姉ちゃんの姿が映った。
「お姉ちゃん!」
「ユキ!」
確かに声が聞こえた。
大好きだったお姉ちゃんの声だ。
お姉ちゃんが忘れても私は覚えているよ。いつまでも忘れない。
「お父さん、お母さん、お姉ちゃんのスマホが届いたよーー!」
リシャールさんそっくりな、可愛い甥の姿も見ることができた。
「素敵な旦那様でいいな・・・お姉ちゃん幸せそう」
「ユキにはまだまだお嫁に行って欲しくないわ」
「お母さん、当分は結婚の予定無いから安心して」
ああ、でも私の幸せな姿もお姉ちゃんに見てほしいな。
異世界では5年に一度奇跡が起こるんだって。
また5年後に会おうね。お姉ちゃん。
──────終わり。
最後まで読んで下さって、本当に有難うございました。
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