上 下
10 / 12
Version.圭

4.大切な事

しおりを挟む
お店を出て、ただひたすらに歩いた。

(やっぱり僕じゃ圭君の隣は無理なんだ…)

人気者の圭君と、陰キャな僕。回りから見ても幼馴染っぽくなくて不思議な感じなんだろうな…。
歩き疲れた所で公園を見つけた。休憩しようとベンチに座ったところでカバンを置いてきてしまった事に気が付いた。

「取りに戻るなんて無理だし…圭君に連絡するしかないかな…」

ポケットからスマホを取りだし圭君の連絡先を開いた。けど、連絡する勇気は出せずそのまま画面を見ていた。


「見つけた」

後ろからギュっと抱きしめられ、耳元で…愛しい人の声がした。

「圭君…どうして?」
「俺の歩センサーを舐めるな」
「あ、歩センサーって…」

突拍子もない返答にクスッと笑ってしまった。

「やっと笑った」
「あっ…」

そう言えば、さっきから笑ってなかった事に気が付いた。

圭君は、僕の肩に手を置いたままベンチの前に移動して僕の横に座った。そして、ひょいっと僕を抱え上げ膝の上へと座らせた。

「ちょ、圭君?!」
「こうしないとまた歩どっか行っちゃうだろ?」
「ど、どこにも行かないよ…」
「ダメ。俺がこうしていたいからクレームは聞きません。…で、何で俺に黙って店出たの?」
「そ、それは…」

マネージャーさんにヤキモチ妬いたからとか、やっぱり僕じゃ圭君の隣には…とか言ったら圭君はどう思うのだろか?言ったら、呆れた圭君から僕は…。

「歩。歩の口から俺はちゃんと聞きたい。嬉しい事も嫌な事も、口にしてくれないと共有も解決も出来ないだろ?」

口にしないと…。そっか…。

「あ、あのね…」
「うん」
「圭君の隣にマネージャーさんがいるのが…嫌だった。綺麗な人で、お似合いだなとも思って、モヤモヤして…」
「うん」
「それと…圭君の事、名前を呼び捨てで呼ぶのが嫌だった。それと…なんか親密な感じ…っ!?」

言い終わらないうちに、圭君は僕の事を力強く抱きしめた。

「け、圭くん?」
「ごめん。歩の事不安にさせて…。けど、歩がヤキモチやいてくれて俺、すっげー嬉しくて」
「ヤキモチ…」
「なんだ無自覚かよ。歩らしいな」
「…圭君は嫌じゃないの?ヤキモチやかれるの…」
「ヤキモチやくのは、俺の事好きだからだろ?だったら嬉しいじゃん。歩が俺の事好きって思ってくれてるんだから」

圭君は僕のおでこに、コツンと自分のおでこを当てた。うっ…顔が近いです…。

「歩が好き。大好き」
「うん…」
「不安にさせてごめん。でも信じて。俺は歩と以外恋愛なんてしたくない。ずっと、歩と一緒に生きていきたい」
「僕も、圭君とずっと一緒にいたい…」
「歩…」

真っすぐに見つめられた瞳に、僕の顔が映る。そして、ゆっくりと僕の唇は圭君の唇で塞がれた―――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

天涯孤独になった結果、魔法学園(全寮制男子校)に放り込まれた。

猫宮乾
BL
 育ててくれた祖父が没し、榛名彩月は天涯孤独になった。するとそこへ、カルミネート魔法学園日本校の理事長を名乗る眞田が現れ、「君は魔術師の血を引いている」と告げられる。そして入学を勧められた。魔術などあるのかと半信半疑だったが、成績を維持すれば学費無料で家もついてくるので、合格した榛名は入学を決めた。そして初めて学園を散策してみたら、急に首元に噛みつかれ、思わず膝蹴りをして撃退すると、その相手は学園で絶大な権力を誇るサロン・レクスの会長、政宗幸親だった。学内には、政宗に恋い焦がれる生徒が多数おり、人気者やその信者には規則を守って行動するように促す調律委員会がある。政宗に対抗できるとして、調律委員会に勧誘されて委員長になった榛名の日常。※現代の魔法学園のお話です。榛名受けで、総受け風描写がありますが、政宗×榛名で固定です。性描写は無いですが、設定により肌に噛みつく描写があっさりあります。

悪役令息に憑依したけど別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?

あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。 ……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。 学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。 ……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!? 由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!? ・・・・・ 乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。 始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。

処理中です...