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3.言っちゃったけど…

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「安里さん。いつも言ってるけど、俺の事名前で呼ばないでくれる?」
「え~?同い年なんだからいいでしょ?友達だし~!」
「…俺、安里さんと友達になった覚えないよ?」
「ま、またまた~!あ!もしかして弟さん?初めまして~!」

急に僕の方に話を振られて、一瞬ビクッとしてしまった。けど、はたから見たら僕って弟と思われてるんだ…。

「は、初め…まして…」

つられて挨拶をしたら、安里さんは僕の顔をまじまじと見始めた。

「ふ~ん、あんまり似てないんだね~」
「当たり前だ。弟じゃないからね」
「違うの?まどっちでも良いんだけど、男二人だと退屈じゃない?こっちも女二人だし一緒に回らない?」

名案と言わんばかりに、類君の方に笑顔で話しかける安里さん。

――邪魔しないで!――


「…初デートの邪魔、しないでもえるかな?」
「は?」

る、類君!デート何て言っちゃって良いの?確かに僕と類君は恋人同士になったけど、やっぱり世間には…。

「やだな~類ったら~。男同士でデートなんて冗談ばっかり~!」

そう…だよね。類君と僕なんて恋人同士に見えないよね。

「耳おかしいの?デートの邪魔しないでくれるって言ったんだけど?それと、名前呼びいい加減辞めてもらえる?」

きっぱりと言い切った類君に、安里さんの顔は真っ赤になっていく。

「な、何よ!男同士でデートなんておかしいんじゃないの?そっか~類ってなんだ!みんなに教えてあげないと!」

そう言って、カッと踵を返し足早に安里さんは僕たちの前から去って行った。
…あ、言いふらすって…。

「る、類君!安里さんみんなにって…!」
「歩、あんな女のせいで嫌な思いさせてごめんね。大丈夫、心配しなくて良いよ。あ、マカロン食べる?はい、あ~ん」
「で、でも…」
「あ~ん」
「あ、あ~ん…」

何事も無かったかのように、類君は僕の口にマカロンを差し出してきた。サクッと一口かじると、残りを自分の口へと入れた。

「る、類君?!」
「美味しいね」
「…もう!」

ペロッと指を舐める仕草が色っぽくて、僕は目を逸らして顔を真っ赤にした。

「歩、プリン食べないなら俺食べちゃうよ?」
「え?プリンはダメ…ん!」

慌てて顔を上げると、今度はプリンが口に運ばれてきた。

「俺よりもプリンなんて。俺、プリンに嫉妬しちゃうよ?」
「な、何言って…!プ、プリンより…!」
「ん?」

あ、嵌められた…。

「プリンより、類君が…スキ…」
「俺も歩が好き。だからデートの続き、楽しもう?」
「…うん!」

そうだよね。せっかくのデートを他人に邪魔されて気まずくなるなんてダメだよね!





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