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32.優しさと不満

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「ん・・・んん??」

目が覚めると、眠った時とは反対に快斗の腕の中だった。

「おはよう、樹」
「おはよう快斗」

目が合うと、快斗は何か言いたそうに目が泳いで口がわずかに動いていた。

「快斗、何か話したいことでもあるの?」

俺が聞くと、快斗は少しビクッとなったが、目を閉じて深呼吸をすると話し出した。

「あ、その・・・今更こんなこと聞くのもあれなんだけど、腰、大丈夫かなって・・・」

そう問われて、俺の顔は真っ赤になった。昨日の、あんな事やこんな事やあーーーーんな事を一気に思い出し、頭から湯気が出そうなほど恥ずかしくなった。

「う、うん!だ、大丈夫だから!・・・っ!!」

慌てて起きようとしたら、下半身の痛みに固まってしまった。昨日の夜はこんなに痛くなかったのに・・・。

「あっ!樹無理しないで!!今日はゆっくり休んで」
「・・・うん」

なんか快斗に申し訳なくて、ちょっと悲しくなった。

「樹、SEXするだけが恋人じゃないよ。相手を大事にすることも、一緒の時間を共有することも大切だと思う」
「でも、快斗はやっと・・・」

言いかけた言葉は、快斗のキスで止められた。

「樹が隣にいてくれるだけで幸せなんだ。昨日は、その・・・嬉しくて暴走しちゃったけど、本当に大事にしたいんだ。だから、こうしてキスをして抱きしめれるだけで十分だよ」
「・・・は・・・・のに」
「樹?」
「俺は、快斗とエッチしたいのに!」

俺は、恥ずかしくも快斗に爆弾発言をした。快斗の目が大きく見開き、驚愕の表情になっている。

「そんなこと分かってるよ!どれだけBL読んできたと思ってるの?何快斗だけ達観したようなこと話してるの?今までさんざん妄想してきたんでしょ!やっと両思いになったのに本当にそれでいいの?カッコつけないでよ!本当に初めてかってくらい俺にあんな事しといて!俺をこんな体にしたんだから、ちゃんと責任取ってよね!!」

一気にしゃっべて、俺の呼吸は荒くなる。ふーっふーっと興奮した猫みたいだ。

「えっ、あ、いや、そんなことはなくて、樹が辛いかと思ったからで・・・エッチしたくないとかじゃなくて・・・」
「・・・俺とエッチしたいの?したくないの?」
「し、したいです!24時間挿れておきたいくらいしたいです!!」

目をギュっとつむって快斗が叫ぶ。

「・・ぷっ!それはさすがに無理だよ!」
「あ、・・・だよ・・ね」

快斗の本音が聞けて思わず笑ってしまった。そんな快斗は少し気まずそうだった。

「快斗、ちゃんと本音で話して。俺の事気遣ってくれてるのはわかるけど、快斗がどうしたいか俺は知りたいんだ。今迄みたいに気付かなかったじゃ、ダメなんだ。もう俺は快斗の恋人だから」
「樹・・・うん、ちゃんと話す。ちゃんと伝える」

快斗は、俺をギュっと抱きしめた。

「あ、先に一つだけ言っていい?」
「何?」
「俺、本当に初めてだったからね?」


にっこりとした笑みで快斗は俺に告げた・・・。







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