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28.モヤモヤ

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「じゃあ、悠希また学校でな!」
「陸も部活頑張れよ!じゃあな!」

無事(?)に花火も見終わり陸と別れた俺たちは、ゆっくりと帰ることにした。

「千尋さー、さっき何ではぐれたの?」
「あ…ちょっと見失っただけだよ」
「何ではぐれたの?」

明らかに嘘だと分かる言い訳。俺は少し強い口調でもう一度訪ねた。
困惑したような表情で千尋は俺を見るが、観念した様に口を開いた。

「…勝手についてきてた女たちが、急に俺の前に出てきて足止めされたんだ。浴衣は引っ張るわ、気持ち悪い胸は腕に押し付けてくるわ…。挙句の果てに俺に向かって、エッチしようとか言ってくる始末だし。そしたら、悠希を見失ってたんだ…」
「そ、そうだったんだ…」

思っていたよりも、女の子達の積極的な行動に驚いてしまった。凄い行動力だと呆気に取られてしまう。千尋にしてみれば迷惑でしかないだろうけど。

「そ、その…他には何もされなかった?」
「あ、うん。あ…」
「な、何?何かされたの?」
「何でもないよ」

また千尋に隠された。別に俺には関係ないんだろうけど、なんかモヤモヤする。なんだろうこのモヤモヤ。視線を千尋の腕へと落とす。この腕に女の子が…。あ、そうか…。

「俺、千尋が他の人に触れられるのが嫌なんだ…」
「え?」
「え?」

思わず出た言葉に、自分で驚いている。

「悠希、今何て?」
「な、何でもない!千尋も何もなくて良かったな!さ、早く帰ろ…」
「ハル君!」

言葉を遮るように千尋は俺の名を呼び、腕を掴んで抱きしめてきた。

「千尋、何するんだよ!こんな事しないって約束しただろ!」
「ハル君、今のもう一回言って!」
「…」
「言って?」
「わかんない…。何であんなこと言ったのかわかんない!」

なんか、感情がぐちゃぐちゃで泣きそうな声になった。

「落ち着いたら教えてくれる?」
「…(フルフル)」
「ハル君の家行っていい?」
「…(フルフル)」
「帰ろっか?」
「…(コクン)

この間とは逆で、千尋に手を引かれて歩く。俯いたままの俺に合わせて、千尋はゆっくりと歩いてくれた。
繋いだ手があったかくて、俺は自分の気持ちの整理をしながら家までの道のりを歩いた。

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