19 / 43
18.ほっとけない
しおりを挟む
「あれは、諒さんに腕を掴まれて近づいたしまっただけで、キスなんてしてないぞ」
「一緒に出掛けたのは?」
「千尋を雇ってもらったお礼しようとしたら、ご飯付き合えって言われたから行っただけだよ」
「そう…なんだ…」
安心したのか、さっきよりも涙を流しだした。
「ひっ…うう…よかっ…ヒック…よかった~…」
子供のように、しゃくり上げながらボロボロと涙を流す千尋。普段の千尋からは、想像もつかない姿だ。
「ねぇ…ぐすっ…なんで店長の事、名前で呼んでるの?」
そこ、引っかかるんだ…。
「年も近いし、外で”店長”って呼ばれるのが嫌みたいでそう呼べって言われたから…。多分、みんなもそうだと思うけど?」
「…ハル君はぁ、ぐすっ、店長の事どう思ってるの?」
「はぁ?雇ってもらってるし、店長だし…。感謝と尊敬…かな?後、兄さんいたらこんなかなぁってぐらい?」
「ん…わかった」
少し落ち着いてきたのか、やっと泣き止んできた千尋に少し笑みが戻ってきた。
「あ~…俺も一つ聞きたいんだけど…」
「何?」
「あの時一緒にいた女の子って誰?」
「知らない。勝手についてきて、腕にまとわりついて、気持ち悪くて吐きそうだったことしか覚えてない」
「そ、そうなんだ」
気持ち悪いって、かなり綺麗な子たちだったぞ?誰だか知らないが、ちょっとかわいそうだな…。
「あ…は、ハル君!」
「ん?」
千尋の方を見ると、ソファーの上で正座をしてこっちを向いていた。
「な、何だよ正座なんかして」
「あ、あのね、俺、やっぱりハル君が好き。ハル君からしたら気持ち悪いと思うけど、ハル君に迷惑はかけないようにするから、俺を嫌いにならないで。幼馴染で友達の一人で良いから、ハル君の側にいさせて下さい!お願いします!」
そう言って、ガバッと頭を下げる千尋。
「ちょ、ちょっと待てよ!そんなの、土下座してお願いする事じゃないだろ!」
「でも、ハル君俺の事…」
「き、嫌いじゃない。けど、恋愛感情は無いから、千尋の想いには答えられない…それはごめん」
「うん…」
「だけど、俺たち友達だろ?だから、側にいたいとかお願いするのおかしいよ」
「いいの?俺こんなだけど、側にいていいの?」
「幼馴染で友達だろ?」
「ハル君…ありがと…ぐすっ…ありがとう~」
「また泣く~…ほら、今日だけだぞ」
また泣き出した千尋をほっとけなくて、千尋へ向けて両手を広げた。一瞬千尋は驚き、すぐにクシャッと顔を歪ませゆっくりと俺の方へ近寄ってきた。壊れ物でも触るかのように優しく俺の背中に手を回し、肩に顔を埋めて泣きながら俺を抱きしめてきた。俺も千尋の背中に手を回し、小さな子供をあやすようにトントンと背中を叩いたり、撫でたりした。そうやって、俺たちはしばらく抱き合っていた。
「一緒に出掛けたのは?」
「千尋を雇ってもらったお礼しようとしたら、ご飯付き合えって言われたから行っただけだよ」
「そう…なんだ…」
安心したのか、さっきよりも涙を流しだした。
「ひっ…うう…よかっ…ヒック…よかった~…」
子供のように、しゃくり上げながらボロボロと涙を流す千尋。普段の千尋からは、想像もつかない姿だ。
「ねぇ…ぐすっ…なんで店長の事、名前で呼んでるの?」
そこ、引っかかるんだ…。
「年も近いし、外で”店長”って呼ばれるのが嫌みたいでそう呼べって言われたから…。多分、みんなもそうだと思うけど?」
「…ハル君はぁ、ぐすっ、店長の事どう思ってるの?」
「はぁ?雇ってもらってるし、店長だし…。感謝と尊敬…かな?後、兄さんいたらこんなかなぁってぐらい?」
「ん…わかった」
少し落ち着いてきたのか、やっと泣き止んできた千尋に少し笑みが戻ってきた。
「あ~…俺も一つ聞きたいんだけど…」
「何?」
「あの時一緒にいた女の子って誰?」
「知らない。勝手についてきて、腕にまとわりついて、気持ち悪くて吐きそうだったことしか覚えてない」
「そ、そうなんだ」
気持ち悪いって、かなり綺麗な子たちだったぞ?誰だか知らないが、ちょっとかわいそうだな…。
「あ…は、ハル君!」
「ん?」
千尋の方を見ると、ソファーの上で正座をしてこっちを向いていた。
「な、何だよ正座なんかして」
「あ、あのね、俺、やっぱりハル君が好き。ハル君からしたら気持ち悪いと思うけど、ハル君に迷惑はかけないようにするから、俺を嫌いにならないで。幼馴染で友達の一人で良いから、ハル君の側にいさせて下さい!お願いします!」
そう言って、ガバッと頭を下げる千尋。
「ちょ、ちょっと待てよ!そんなの、土下座してお願いする事じゃないだろ!」
「でも、ハル君俺の事…」
「き、嫌いじゃない。けど、恋愛感情は無いから、千尋の想いには答えられない…それはごめん」
「うん…」
「だけど、俺たち友達だろ?だから、側にいたいとかお願いするのおかしいよ」
「いいの?俺こんなだけど、側にいていいの?」
「幼馴染で友達だろ?」
「ハル君…ありがと…ぐすっ…ありがとう~」
「また泣く~…ほら、今日だけだぞ」
また泣き出した千尋をほっとけなくて、千尋へ向けて両手を広げた。一瞬千尋は驚き、すぐにクシャッと顔を歪ませゆっくりと俺の方へ近寄ってきた。壊れ物でも触るかのように優しく俺の背中に手を回し、肩に顔を埋めて泣きながら俺を抱きしめてきた。俺も千尋の背中に手を回し、小さな子供をあやすようにトントンと背中を叩いたり、撫でたりした。そうやって、俺たちはしばらく抱き合っていた。
3
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ウワサの重来者 どうか、心振るえる一生を。(中辛)
おいなり新九郎
ファンタジー
最新情報:幼いサヤを背負い少女は炎と化け物の中を潜り抜ける。一途にこの娘を地獄から逃がすために。
ーあらすじー
侍の家に生まれたユウジは16歳の少年。
家族がいろいろあって、家を継ぐことに。
ある日、特別な力を与えてくれるという「宝」を引ける催しに参加する。
そこで、彼が引いてしまったハズレとしか思えない「宝」とは?
宝のせいなのか、問答無用にふりかかる災難。
個性豊かな、お宝美少女達に振り回され、ユウジは冒険を続ける。
そこには思わぬこの世界の因縁と謎があった。
作者より
タイトルにある「重来者」はリターナーと読みます。
途中、主人公交代を検討しております。
お一人でも多くの方が楽しんでくだされば幸いです。
理不尽な世の中で、どうか心振るえるひと時を・・・。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
老舗カフェ「R」〜モノクロの料理が色づくまで〜
yolu
ファンタジー
café Rの『if』ストーリー───
現代は、エルフが治める『フィールヴ』という異世界と繋がって40年になる。
今はエルフと人が、少なからず行き来をし、お互いの世界で会社を立ち上げ、共存共栄している。
莉子が一人で切り盛りする、老舗カフェ「R」にも、エルフの来店が増えてきたこの頃。
なんと、 エルフの製薬会社・ラハ製薬によって立退き勧告!
4週間後には店を畳んで出ていかなくてはならない状況に……!
そこで立ち上がったのは、常連になると決めたイリオ製薬に勤めるエルフ4人。
イリオ製薬社長のトゥーマ、通訳である人間とエルフのハーフ・アキラ、彼の上司に当たるトップ営業マンのケレヴ、そしてケレヴの同僚の調剤師・イウォールだ。
カフェの料理によって、古典的エルフと言われるほどのイウォールが、莉子に一目惚れ!
イウォールの猛烈アタックに振り回されながらも、『異文化コミュニケーション』を重ねながら、美味しい料理はもちろん、恋愛も挟みつつ、この危機を乗り越えていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる