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18.ほっとけない
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「あれは、諒さんに腕を掴まれて近づいたしまっただけで、キスなんてしてないぞ」
「一緒に出掛けたのは?」
「千尋を雇ってもらったお礼しようとしたら、ご飯付き合えって言われたから行っただけだよ」
「そう…なんだ…」
安心したのか、さっきよりも涙を流しだした。
「ひっ…うう…よかっ…ヒック…よかった~…」
子供のように、しゃくり上げながらボロボロと涙を流す千尋。普段の千尋からは、想像もつかない姿だ。
「ねぇ…ぐすっ…なんで店長の事、名前で呼んでるの?」
そこ、引っかかるんだ…。
「年も近いし、外で”店長”って呼ばれるのが嫌みたいでそう呼べって言われたから…。多分、みんなもそうだと思うけど?」
「…ハル君はぁ、ぐすっ、店長の事どう思ってるの?」
「はぁ?雇ってもらってるし、店長だし…。感謝と尊敬…かな?後、兄さんいたらこんなかなぁってぐらい?」
「ん…わかった」
少し落ち着いてきたのか、やっと泣き止んできた千尋に少し笑みが戻ってきた。
「あ~…俺も一つ聞きたいんだけど…」
「何?」
「あの時一緒にいた女の子って誰?」
「知らない。勝手についてきて、腕にまとわりついて、気持ち悪くて吐きそうだったことしか覚えてない」
「そ、そうなんだ」
気持ち悪いって、かなり綺麗な子たちだったぞ?誰だか知らないが、ちょっとかわいそうだな…。
「あ…は、ハル君!」
「ん?」
千尋の方を見ると、ソファーの上で正座をしてこっちを向いていた。
「な、何だよ正座なんかして」
「あ、あのね、俺、やっぱりハル君が好き。ハル君からしたら気持ち悪いと思うけど、ハル君に迷惑はかけないようにするから、俺を嫌いにならないで。幼馴染で友達の一人で良いから、ハル君の側にいさせて下さい!お願いします!」
そう言って、ガバッと頭を下げる千尋。
「ちょ、ちょっと待てよ!そんなの、土下座してお願いする事じゃないだろ!」
「でも、ハル君俺の事…」
「き、嫌いじゃない。けど、恋愛感情は無いから、千尋の想いには答えられない…それはごめん」
「うん…」
「だけど、俺たち友達だろ?だから、側にいたいとかお願いするのおかしいよ」
「いいの?俺こんなだけど、側にいていいの?」
「幼馴染で友達だろ?」
「ハル君…ありがと…ぐすっ…ありがとう~」
「また泣く~…ほら、今日だけだぞ」
また泣き出した千尋をほっとけなくて、千尋へ向けて両手を広げた。一瞬千尋は驚き、すぐにクシャッと顔を歪ませゆっくりと俺の方へ近寄ってきた。壊れ物でも触るかのように優しく俺の背中に手を回し、肩に顔を埋めて泣きながら俺を抱きしめてきた。俺も千尋の背中に手を回し、小さな子供をあやすようにトントンと背中を叩いたり、撫でたりした。そうやって、俺たちはしばらく抱き合っていた。
「一緒に出掛けたのは?」
「千尋を雇ってもらったお礼しようとしたら、ご飯付き合えって言われたから行っただけだよ」
「そう…なんだ…」
安心したのか、さっきよりも涙を流しだした。
「ひっ…うう…よかっ…ヒック…よかった~…」
子供のように、しゃくり上げながらボロボロと涙を流す千尋。普段の千尋からは、想像もつかない姿だ。
「ねぇ…ぐすっ…なんで店長の事、名前で呼んでるの?」
そこ、引っかかるんだ…。
「年も近いし、外で”店長”って呼ばれるのが嫌みたいでそう呼べって言われたから…。多分、みんなもそうだと思うけど?」
「…ハル君はぁ、ぐすっ、店長の事どう思ってるの?」
「はぁ?雇ってもらってるし、店長だし…。感謝と尊敬…かな?後、兄さんいたらこんなかなぁってぐらい?」
「ん…わかった」
少し落ち着いてきたのか、やっと泣き止んできた千尋に少し笑みが戻ってきた。
「あ~…俺も一つ聞きたいんだけど…」
「何?」
「あの時一緒にいた女の子って誰?」
「知らない。勝手についてきて、腕にまとわりついて、気持ち悪くて吐きそうだったことしか覚えてない」
「そ、そうなんだ」
気持ち悪いって、かなり綺麗な子たちだったぞ?誰だか知らないが、ちょっとかわいそうだな…。
「あ…は、ハル君!」
「ん?」
千尋の方を見ると、ソファーの上で正座をしてこっちを向いていた。
「な、何だよ正座なんかして」
「あ、あのね、俺、やっぱりハル君が好き。ハル君からしたら気持ち悪いと思うけど、ハル君に迷惑はかけないようにするから、俺を嫌いにならないで。幼馴染で友達の一人で良いから、ハル君の側にいさせて下さい!お願いします!」
そう言って、ガバッと頭を下げる千尋。
「ちょ、ちょっと待てよ!そんなの、土下座してお願いする事じゃないだろ!」
「でも、ハル君俺の事…」
「き、嫌いじゃない。けど、恋愛感情は無いから、千尋の想いには答えられない…それはごめん」
「うん…」
「だけど、俺たち友達だろ?だから、側にいたいとかお願いするのおかしいよ」
「いいの?俺こんなだけど、側にいていいの?」
「幼馴染で友達だろ?」
「ハル君…ありがと…ぐすっ…ありがとう~」
「また泣く~…ほら、今日だけだぞ」
また泣き出した千尋をほっとけなくて、千尋へ向けて両手を広げた。一瞬千尋は驚き、すぐにクシャッと顔を歪ませゆっくりと俺の方へ近寄ってきた。壊れ物でも触るかのように優しく俺の背中に手を回し、肩に顔を埋めて泣きながら俺を抱きしめてきた。俺も千尋の背中に手を回し、小さな子供をあやすようにトントンと背中を叩いたり、撫でたりした。そうやって、俺たちはしばらく抱き合っていた。
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