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17.千尋の想い
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「もしもし、ごめん、千尋とカラオケして帰るからご飯いらない。うん、千尋のお母さんにも伝えといて。じゃ」
何とかカラオケボックスにたどり着き、部屋に入って一息ついた。受付でちょっと不審がられたけど…
千尋は、ソファの上で膝を抱え、大きな体を小さくして俯いて座っている。あんなに俺にグイグイ来てたときと別人の様だ。飲み物を取りに行こうと立つと、千尋は顔を上げて俺を見た。
「…い、行かないで…」
「飲み物取ってくるだけですぐ戻るよ」
俺は部屋を出て、二人分の飲み物を持って部屋に戻った。千尋は顔を上げたまま俺が戻るのを待っていたようで、少し安堵の表情を浮かべた。
「…千尋、俺に何か言いたいことあるんだろ?ゆっくりでいい。話せそうなら話してくれ」
「あ…ハル、君…」
「ん?」
不安気に俺を見てからまた俯いて、ゆっくりと話しだした。
「昨日、ハル君が、”俺が女だったら”って言って俺帰ったでしょ。俺、ちゃんとわかってるんだ。自分はおかしいって。恋愛の対象が男なのかとも思った。けど、同級生を見ても、一緒に過ごしてもそんな感情は湧かないんだ。ハル君だけなんだ。考えるだけで胸が苦しくなった、頭の中が全部ハル君になる。何度も何度も諦めようと思った。けど、諦められなくて、再会したら抑えが効かなくて、暴走して、…嫌な思いさせてごめんね」
ぐすぐすと鼻をすする音がする。泣いてるんだろう。でも、今、千尋は頑張って俺に伝えてくれてるんだから最後まで聞こうと思った。手を貸すのは話の後だと。
「せめて、普通の幼馴染になろうと思って、この想いに蓋をしようって決めたんだ。でも、顔を合わすのはまだ辛くて歩いてたら、ハル君が店長の車に乗るのを見たんだ。そしたら、何かが俺の中で壊れて、何も考えられなくて。…気が付いたらお店でハル君待ってて、そしたら店長と車でキスしてるのが見えて、俺じゃなくて店長なら良いのって思って。嫌だ。やめて。ハル君に触らないで。俺からハル君を取らないで。…俺を置いて行かないでって感情がぐちゃぐちゃになって、気が付いたら店から出てくるハル君を待ってて…」
「で、今に至るって感じだな」
コクンと千尋は俯いたまま頷いた。
「千尋、一つ訂正だが、俺、店長とキスなんてしてないぞ?」
「えっ?!だって…」
目と鼻を真っ赤にした千尋が顔を上げた。イケメンが台無しだな。
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「で、今に至るって感じだな」
コクンと千尋は俯いたまま頷いた。
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