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13.なぜ?

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「林さん、お疲れ様~。代わりま~す」
「片桐君おはよう。じゃ、後よろしくね~」
「お疲れ様でした~」

林さんは手をひらひらさせて上がっていった。

「なぁなぁ、今日の昼間すごかったんだって?」
「あ~まぁ…」
「裏にいてるイケメン君?」
「うん。千尋目当てに女の子が並んじゃって…」
「あいつって、悠希の友達?」
「友達っていうか幼馴染かなぁ。昔こっちに住んでたんだけど昨日帰って来たんだ」
「へ~。あんなイケメンこの辺にはいないから見たがるわな」
「ハハ…」

千尋がバックヤードにいるおかげで、店も俺もとりあえず平穏な時間を過ごせた。時々、何か聞きたげな女の子達がいたけどあえて気付かないフリをした。千尋目当てなのが明確だからだ。なぜなら、みんなバッチリメイクでお洒落してたから!あからさますぎて笑う気にもなれなかった。

「お疲れ~。悠希交代~」
「もうそんな時間?じゃ、後お願いします。お疲れ様でした」
「じゃーなー」

夕方勤務の大学生の先輩と交代してバックヤードへ行くと、千尋が立っていた。

「お疲れ。千尋も上がりだろ?」
「うん。悠希待ってた」
「あ、そう…。じゃ、着替えて帰るか」
「うん!」

声を掛けただけなのに、なんか千尋に耳としっぽが見えた気がした…。

「で、結局今後どーすんの?」
「基本裏方で、忙しい時は表に出るけどマスク着用って言われた…」
「まぁ、仕方ない?」
「悠希との時間が減る」
「いや、俺に言われても!」

ちょっとかわいそうな気もするが、ここで優しくすると俺の身に危険がおよびそうなのでスルーした。

店を出てから、マンションまでは何事もなく帰り着いた。

「じゃ、千尋またな」
「うん、ハル君また

千尋の家の前で別れたが、今、”後で”って言った?明日じゃないのか?不思議に思いながらも、俺は自分の家に入っった。
夕ご飯を食べ終え、リビングでくつろぎ風呂に入る。冷蔵庫から炭酸水を取り出し部屋に戻る。が、扉を開けた瞬間俺は固まった。

「ハル君!」

そこには、いるはずもない千尋がいた。

「ダメだよハル君。5階だからってちゃんと鍵はかけないと」
「えっ?は?なんでここに?」
「あ、ベランダからお邪魔しちゃった。鍵かかってると思ってたの開いてるからびっくりしたよ」

いやいや、俺の方がびっくりしたよ!さらっと言ってるけど、これ不法侵入ですけど?!




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