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END③一哉

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「…僕、一君が好き…」
「あ、歩…?」

振り向いた一君は、眼鏡を外していてサラサラの前髪が少し幼さを醸し出していた。

(カワイイ…)

目が合うと、片手で顔を覆い、また正面を向いてしまった。

「一君?」
「そ、その…ほんとに俺の事…」
「うん…。一君が好き」

背中越しに一君の心臓が速くなるのが伝わってくる。お腹に回していた手に、そっと一君の手が重なる。

「嬉しい…。やっと歩に触れる事が出来た」
「一君…」

一君は、この一年間ずっと僕の側にいてくれた。けど、不必要に僕に触れることは一度も無かった。時々、切なそうに僕を見ては伸ばしかけた手を引っ込めたりしていた。そんな一君の誠実な気持ちに僕はいつの間にか魅かれていた。

「歩、抱きしめていい?」
「うん…」

僕の手をゆっくりと解き、体の向きを変え真っすぐに僕の顔を見るとふんわりと微笑み、優しく僕の体を包み込むように抱きしめてくれた。

「歩、好きだよ」
「僕も、好き」

一君の背中に回した手にきゅっと力を込めると、一君もさっきよりも力を込めて抱きしめてくれた。お互いの心臓の鼓動が体に伝わってくる。

(一君もすごくドキドキしてる…)

「あ、歩…寒くない?中、入ろうか…」
「そ、そうだね」

一君は僕の肩を抱いて、リビングへとエスコートしてくれた。

「歩、もう少し一緒にいたい」
「う、うん…」

ソファーに並んで座ると、一君が僕の腰に手を回しグッと抱き寄せた。少し大胆な行動に、心臓はさっきよりもバクバクしている。

「細いな、歩は…」
「そ、そんな事…」
「腰何て、少し力を入れたら折れちゃいそうだ」

そう言いながら、もう片方の手も腰に回し両手で抱き寄せられ、至近距離に顔が近づいた。

「あ…」

息がかかりそうな距離に、僕の心臓は更にドキドキして一君の真剣な眼差しから目を逸らすことが出来なかった。
ゆっくりと一君の顔が近づいて来る。

(キ、キスだよね?)

期待してるみたいで恥ずかしいけど、ギュっと目を瞑って待っていると、

パーン!パーン!

と、大きな音が鳴り響いた。

「え?!な、何?!」
「…は~…」

パッと灯がついて、クラッカーを手にした類君達が僕たちの方に歩いて来る。
抱き合っていた僕たちは、パッと離れて類君達に向かい合う。

「おめでとう一哉!」
「…思ってもないくせに…」
「いや~どのタイミングでお祝いしようか悩んだんだけどな」
「…邪魔するタイミングの間違いだろ…」
「「歩君、ホントに一君で良いの?」」
「…相変わらず直球だな…」

みんなの言葉に対する一君の返答が相変わらずで、思わず笑ってしまった。

「…で、いつから見てたんだ?」
「え?あ~…最初…から?」

え?!最初からって…僕が一君に告白してるとこからって事??
類君のカミングアウトに僕の顔が見る見る赤くなる。

「ご、ごめんね歩!見るつもりは無かったんだけど、歩がリビングに行くのが見えてついて行ったら、その…」

類君が必死に弁明してるけど、僕は恥ずかしさから一君の背中で顔を隠してしまった。

「で、それをみんなに伝えたと」
「だって、失恋の痛みは分けないと」

あ!そうだった!僕が一君を好きになったって事は、みんなの事を…。

「ご、ごめんなさい!僕…」

一君の背中から顔を出して皆を見ると、怒ってるでも悲しんでるでもなく、笑顔のみんながいた。

「謝らないで歩。歩が一哉を選んでも、俺達が幼馴染なのは変わらない」
「そうそう。それに、一哉が歩を泣かせたら俺達が叱ってやる」
「歩君の幸せが俺達の幸せ」
「だから、笑って?ね」
「みんな…」

自分の事しか見えてなくて、みんなの事を傷つけたのに、みんなは僕の幸せを願ってくれている。そんな気持ちが嬉しくて、僕の胸は熱くなって、思わず涙を零してしまった。

「「「「「あ、歩(君)?!」」」」」
「あは…みんなの気持ちが嬉しくて…。僕、みんなの幼馴染でいてもいいの?」
「「「「もちろん!!」」」」
「ありがとう…」
「その…俺はずっと歩の恋人だからな!」
「か、一君…?!」

一君が皆の前でそんな宣言をするとは思わず、驚きと嬉しさで僕の顔は更に熱を帯びた。ちなみに一君の顔も真っ赤だ。

「へ~一哉も言うようになったな~」
「一君ヘタレだったのに」
「急に漢だね」
「一哉、歩の事任せたぞ」
「ああ、絶対に泣かすような事はしない」
「一君…」

一君の男らしい宣言に惚れ直していると、類君がパンパンと手を叩いた。

「はいはい、続きは二人きりの時にしてね。さ、一哉部屋に戻るよ」
「え?ちょ、な、何で?」
「歩、お休み」

一君は、なっ君とふう君に両腕を掴まれ圭君に背中を押されながらリビングから連れ出されてしまった。

「お、お休み…?」

暫く呆然としていると、勢いよく一君が戻ってきた。

「か、一君?」
「あ、歩!これから一生、俺の側にいてくれ!」

一君のプロポーズみたいに言葉に、僕の胸さらに熱くなる。

「うん、僕の方こそよろしくね…一哉」
「…!!」

初めて一君の事を名前で呼んでみた。びっくりした一哉は、真っ赤になった顔を必死で隠そうとそっぽを向いている。学校ではこんな一哉は見た事無くて、僕だけに見せる顔なんだと嬉しくなった。これからもっといろんな一哉の顔が見れるのかな?そう思うと嬉しくて、僕は一哉に抱きついた。

大好きだよ一哉!




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