乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます

syouki

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END②圭

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「…僕、圭君が好き…」
「歩…!」

くるっと振り向き、ギュっと僕を抱きしめる圭君。

「夢じゃないよな?」
「うん。夢じゃないよ」
「…嬉しい」

圭君は更にぎゅ~っと僕を抱きしめて僕の肩に顔を埋めた。僕も、圭君の背中に回した手にきゅっと力を込めた。
圭君の心臓の音が僕の体に伝わった来る。きっと、僕の心臓の音も圭君に伝わっているだろう。
少し冷たい風が頬にあたる。

「まだ風が冷たい。中に入ろっか」

圭君は、僕の肩を抱いて部屋の中へと促した。
扉を閉めてそのままソファーへと移動すると、圭君は僕を自分の横に座らせてそっと僕の手に手を重ねて、スルッと指を絡ませた。

(こ、これって恋人繋ぎ!!)

繋がれた手を見たいけど恥ずかしくて目を逸らすと、繋がれたてにキュッと力がこもった。

「歩…こっち向いて?」
「…っ」

小さく深呼吸をしてゆっくりと圭君の方に顔を向けると、圭君はふにゃりと顔を綻ばせた。

「ねえ、歩」
「何?圭君」

再び繋いだ手に力がこもり、圭君の顔が僕に近づいてきた。

(えっ?!も、もしかしてキ…キス!?)

圭君から目が離せなくて、ドキドキしながら見つめてるとおでこがコツンとぶつかった。

「もう二度と俺の前からいなくならないで…」
「あ…」
「俺も子供だったし、歩を守れる力は無かった…。でも、今は歩を全力で守れる。だから、何があっても勝手に俺の前からいなくならないで…」
「圭君…」

真剣な眼差し。けど、繋いだ圭君の手は震えている。

「うん。もう二度と圭君の前からいなくなったりしない」
「歩…」
「ずっと圭君と一緒にいる」
「歩…!!」

繋いでいないもう片方の手でぐっと抱き寄せれられた。ふわりと、圭君の香りが鼻をくすぐる。コテンと肩に頭を乗せると、圭君の心臓のドキドキが伝わってきた。

「あ、歩…」

頭の上から甘い声が僕の名を呼ぶ。

「圭君…」

ゆっくりと顔を上げると、圭君と視線が絡む。金縛りにでもあったように僕はその視線から逃げることが出来ず、ゆっくりと近づく圭君の顔を見ていた。

(あっ…)

と思ったその時、部屋の灯かりが一斉に点いた。

「はい、そこまで―」

「え?!」
「は~…。見てたのかよ…」

リビングの入り口に四人の姿が見えた。

(い、いつから居たの??もしかしてずっと見てたの??え?待って!めっちゃ恥ずかしいんですけど?!!!)

頭の中がパニックなった僕は顔を真っ赤にして口をパクパクしながら呆然としていた。

「あ~…ごめんね歩。見るつもりも邪魔するつもりも無かったんだけど…その…」
「「歩君の邪魔はしたくないけど、圭君の邪魔はしたかっただけ」」
「…あのなぁ…」

四人を睨みながら、圭君は僕の顔を隠す様に僕を自身の腕の中に閉じ込めた。

「俺の邪魔をするって事は、歩の邪魔でもあるんだぞ?」
「わかってるけど、目の前で何て癪じゃない?」
「うっ…」
「そうそう。そうゆうことは二人っきりの時にしてくれ」
「「俺達の事も考えてよね」」
「…悪い」

僕はトントンと圭君の腕をつついて、腕を解いてもらいみんなの顔を見た。

「あ…あのね…」
「歩、圭の恋人になっても俺達は幼馴染だからね」
「嫌なことがあれば、俺達に相談するんだぞ」
「俺達は歩君の味方だからね~」
「ね~」
「みんな…」
「あのなぁ…まるで俺が歩を泣かす前提で話を進めるなよ!泣かすわけ無いだろ!やっと宝物が手に入ったんだ。幸せ一択だろ!」

そう言って、みんなの前なのにまた僕をギュっと抱き寄せた。

「歩も、言いたいことはちゃんと俺に言えよ。ま、不満なんて持たせないけどな」

自信たっぷりの笑顔に、僕も自然に笑っていた。

「はいはい、取り合えずその辺にしてもらっていい?てか、いつまで歩を抱きしめてるの?」
「いいだろ。晴れて恋人になったんだから」
「だから、そういう事は二人きりの時にしてくれ」

一君がそう言うと、すっとなっ君とふう君が圭君を僕から引き剥がした。

「なっ?!お前等…!」
「とりあえず、圭君はこっちね」
「歩君、また後でね。おやすみ~」
「お、おやすみ…」

圭君は、抵抗しているがずるずるとリビングから退出させられた。皆の前で抱きしめられていた僕は少し(かなり)恥ずかしかったのでちょっとホッとしつつ寝室へと戻って、火照った身体を落ち着かせながら眠りについた。



翌朝。リビングに行くとすでにみんな起きていて、テーブルには朝食が用意されていた。

「「「「「おはよう歩」」」」」
「おはよう、みんな」
「歩、ここに座って」

類君に促され席に着くと、横に圭君が座った。

「悔しいけど、歩の幸せに為だからな」

コトっと目の前に置かれたお皿にはフワフワのパンケーキに、チョコレートで”congratulations”と、書かれていた。

「ありがとう、みんな…」
「圭の恋人になっても、歩が大切な幼馴染なのは変わらないからね」

類君のその言葉に皆が大きく頷く。ポンと、頭に圭君の手が乗せられた。

「歩、幸せになろうな」
「圭君…」

みんなが僕達を見ている。恥ずかしかったけど、コクンと頷くと、みんなが優しい顔で笑ってくれた。
大切な幼馴染と大切な人…。みんなと出会えて僕は幸せ者だよ。
圭君、幸せになろうね!





※※※※※
長らく時間があいて申し訳ありません。プライベートが忙しくなかなか執筆が出来ませんでした。
こんな拙作にもかかわらず、いいねをおしてくださった方!大変うれしく、励みになりました。
後、2話更新予定です。よろしければ最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

                               syouki
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