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36.失っていた記憶
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「…ん…」
目を開けると、皆が僕の顔を心配そうな顔で覗き込んでいた。
「良かった…気が付いて…」
いつの間にか僕は気を失っていたようで、生徒会室のソファーに寝かされていた。
「心配かけてごめんね、類君」
「え?」
「圭君もかず君もなっ君もふう君も、ごめんね」
「歩…もしかして…」
「うん…思い出したよ、皆の事」
少し照れくさいのと、忘れてたことが申し訳なくて掛けられていた毛布を目元まで上げて顔を隠した。
「俺達の事…思い出してくれたんだ…」
類君が僕の手をそっと握って自分の頬に当てる。そんな類君の頬を、僕はそっと撫でた。
「みんな、僕が思い出すのずっと待っててくれてたんだね」
「当たり前だろ。…歩との思い出は大切だから、俺達だけが覚えてても意味が無いんだよ」
みんな、うんうんと頷いて笑っている。
そう。僕は5歳の時に父さんを亡くしたショックで一部の記憶を失っていた。正確には、父さんとみんなに関する記憶。母さんが忙しい人だから、幼稚園の送り迎えは父さんだった。そして、その幼稚園には父さんの友達の子供たちー類君、圭君、一哉君、那都君、風悠君がいた。教室は違っても、僕たちは仲良しでいつも一緒に過ごしていた。そういえば、那都君と風悠君はお昼寝の時間、いつの間にか僕の布団に入っていて先生たちがびっくりしてたっけ。
そして、いつものように幼稚園で遊んでいると、母さんがひどく慌てて僕を迎えに来た。そして、ベッドの上で冷たくなったお父さんと対面した。よくわかってなかった僕は、起きない父さんにずっと遊んでと話しかけていた。そして、火葬される時に気を失って、気が付いた時には父さんと皆の事を記憶から消していた。僕なりに自分の心を守った結果だったんだと思う。そして、皆の前から僕は姿を消した―――。
「その…急にみんなの前からいなくなってごめんね…」
「当時は、急に歩がいなくなってみんなで大泣きしてたよ」
「え?!ご、ごめん!!」
「那都と風悠なんて幼稚園脱走して大変だったな」
「だって、歩君いない幼稚園なんて意味無かったし」
「二人で探しに行こうとしてただけだし」
類君を押しのけて、僕の手を握るなっ君とふう君。こういうところ、昔と同じだ。
「…暫くしてから、歩の事情は親から教えてもらった。そして、俺達は歩を守るために力をつけて、歩のお母さんに会いに行った」
「え?母さんに?」
「うん。一緒の高校にして欲しい事。そして、俺達の事思い出して欲しい事。もちろん、思い出して歩が悲しんでも全力で守ることも約束してな」
ちょ、ちょっと待って?母さんがこの高校進めたのって、こういう理由だったの?て、ことはもしかして…
「あ、どれだけ俺達が歩の事を好きなのかは説明ずみだ。まぁ、交際までは節度のある行動をって釘刺されてるけど…」
言われて、僕の顔は真っ赤になった。母さん、全部知ってるんだ!!
「歩は、思い出した今、悲しい?辛い?」
「…ううん。父さんとの思い出を取り戻せて嬉しい。それに、皆の事も思い出せて良かった。ありがとう。それと…ただいま」
「「「「「おかえり」」」」」
目を開けると、皆が僕の顔を心配そうな顔で覗き込んでいた。
「良かった…気が付いて…」
いつの間にか僕は気を失っていたようで、生徒会室のソファーに寝かされていた。
「心配かけてごめんね、類君」
「え?」
「圭君もかず君もなっ君もふう君も、ごめんね」
「歩…もしかして…」
「うん…思い出したよ、皆の事」
少し照れくさいのと、忘れてたことが申し訳なくて掛けられていた毛布を目元まで上げて顔を隠した。
「俺達の事…思い出してくれたんだ…」
類君が僕の手をそっと握って自分の頬に当てる。そんな類君の頬を、僕はそっと撫でた。
「みんな、僕が思い出すのずっと待っててくれてたんだね」
「当たり前だろ。…歩との思い出は大切だから、俺達だけが覚えてても意味が無いんだよ」
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そう。僕は5歳の時に父さんを亡くしたショックで一部の記憶を失っていた。正確には、父さんとみんなに関する記憶。母さんが忙しい人だから、幼稚園の送り迎えは父さんだった。そして、その幼稚園には父さんの友達の子供たちー類君、圭君、一哉君、那都君、風悠君がいた。教室は違っても、僕たちは仲良しでいつも一緒に過ごしていた。そういえば、那都君と風悠君はお昼寝の時間、いつの間にか僕の布団に入っていて先生たちがびっくりしてたっけ。
そして、いつものように幼稚園で遊んでいると、母さんがひどく慌てて僕を迎えに来た。そして、ベッドの上で冷たくなったお父さんと対面した。よくわかってなかった僕は、起きない父さんにずっと遊んでと話しかけていた。そして、火葬される時に気を失って、気が付いた時には父さんと皆の事を記憶から消していた。僕なりに自分の心を守った結果だったんだと思う。そして、皆の前から僕は姿を消した―――。
「その…急にみんなの前からいなくなってごめんね…」
「当時は、急に歩がいなくなってみんなで大泣きしてたよ」
「え?!ご、ごめん!!」
「那都と風悠なんて幼稚園脱走して大変だったな」
「だって、歩君いない幼稚園なんて意味無かったし」
「二人で探しに行こうとしてただけだし」
類君を押しのけて、僕の手を握るなっ君とふう君。こういうところ、昔と同じだ。
「…暫くしてから、歩の事情は親から教えてもらった。そして、俺達は歩を守るために力をつけて、歩のお母さんに会いに行った」
「え?母さんに?」
「うん。一緒の高校にして欲しい事。そして、俺達の事思い出して欲しい事。もちろん、思い出して歩が悲しんでも全力で守ることも約束してな」
ちょ、ちょっと待って?母さんがこの高校進めたのって、こういう理由だったの?て、ことはもしかして…
「あ、どれだけ俺達が歩の事を好きなのかは説明ずみだ。まぁ、交際までは節度のある行動をって釘刺されてるけど…」
言われて、僕の顔は真っ赤になった。母さん、全部知ってるんだ!!
「歩は、思い出した今、悲しい?辛い?」
「…ううん。父さんとの思い出を取り戻せて嬉しい。それに、皆の事も思い出せて良かった。ありがとう。それと…ただいま」
「「「「「おかえり」」」」」
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