上 下
2 / 27

2.勇者誕生

しおりを挟む
――魔王が復活した同刻、村で畑仕事をしている青年の体が光り輝いた。――

「な、なんだー?!」

地面が揺れる中、俺の体はふわりと空中に浮きあがった。

「え?!ちょ、浮いてる~?!」

ジタバタと手足を動かして地面に降りようとするも、逆に体は上へと昇っていく。

「も~何なんだよ~…」

諦めてプカプカと浮いていると、山の向こうが不自然に黒い事に気が付いた。

「雨…でもなさそうだな」

その時、頭の中に凛とした声が響き渡った。

《ジル…私の声が聞こえますか?》

「え?どこから喋ってんだ?てか、何で俺の名前を??」

《ジル、今から私が言うことをよく聞いて。今、この世界に魔王が復活しました》

「ま、魔王だって?!あんなのおとぎ話じゃ無かったのか?」

《そして、あなたはの体にはかつて勇者だった者の血が流れています。ジル、あなたには勇者として魔王を倒してもらいたいのです》

「は~?!俺が勇者の血を引く者で、今から勇者になれって?!いや、無茶ぶりすごいな!」

《ん…んっ…。あなたに勇者としての能力と装備を授けます。時間はありません。必ずや魔王をこの世から葬って下さい。検討を祈ります…》

「え?!ちょっと!!俺承諾してないんですけどー?!」

叫び声が空に響き渡るも返答はなく、代わりに数個の光の珠がこちらに向かってきた。その珠は一つは俺の体内に。その他は、俺の体に触れると防具や剣へと形を変えた。そして、ゆっくりと俺は地面に降ろされた。

「は~…マジか…」

まじまじと体に装着された防具と剣を見る。そして、体の中にさっきまでなかった熱量を感じた。

「何だ…この感じ…?」

自分の手を見ると、ポウっと淡く光り掌から炎が現れた。

「え~~~~?!これって魔法?!俺、魔法が使えるの?!」

その後も色々試してみると、火の他に水と雷も出せた。後、以前怪我した傷も綺麗に治せた。いや、魔法万能だな!なんてウキウキしていると、家の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。

「ジルー!何か光ってたけど大丈夫かー?」

親父だ。う~ん、この状況をどう説明するか…。


「そうか…。我が家って勇者の末裔なのか。で、ジルが勇者?」
「そうらしい」
「じゃ、頑張って行ってこい」

おい、軽いな親父。死ぬかもしれないの心配じゃないのかよ。ま、俺も退屈してたし行ってみてもいいかな。

「みんなが聞いたら驚くぞ!さ、今日は早く寝て明日に備えろ」
「そうするよ。あ、母さん弁当作ってくれるかな?」

こうして俺は、翌朝家族に見送られ、魔王退治の旅に出掛けた。

「「「兄ちゃ~ん!お土産買って来てね~!!」」」

弟たちよ、これは旅行じゃないんだぞ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔性の男は純愛がしたい

ふじの
BL
子爵家の私生児であるマクシミリアンは、その美貌と言動から魔性の男と呼ばれていた。しかし本人自体は至って真面目なつもりであり、純愛主義の男である。そんなある日、第三王子殿下のアレクセイから突然呼び出され、とある令嬢からの執拗なアプローチを避けるため、自分と偽装の恋人になって欲しいと言われ​─────。 アルファポリス先行公開(のちに改訂版をムーンライトノベルズにも掲載予定)

屈強な男が借金のカタに後宮に入れられたら

信号六
BL
後宮のどの美女にも美少年にも手を出さなかった美青年王アズと、その対策にダメ元で連れてこられた屈強男性妃イルドルの短いお話です。屈強男性受け!以前Twitterで載せた作品の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

メゴ ~追いやられた神子様と下男の俺~

てんつぶ
BL
ニホンから呼び寄せられた神子様は、おかしな言葉しか喋られない。 そのせいであばら家に追いやられて俺みたいな下男1人しかつけて貰えない。 だけどいつも楽しそうな神子様に俺はどんどん惹かれていくけれど、ある日同僚に襲われてーー 日本人神子(方言)×異世界平凡下男 旧題「メゴ」 水嶋タツキ名義で主催アンソロに掲載していたものです 方言監修してもらいましたがおかしい部分はお目こぼしください。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

宰相閣下の絢爛たる日常

猫宮乾
BL
 クロックストーン王国の若き宰相フェルは、眉目秀麗で卓越した頭脳を持っている――と評判だったが、それは全て努力の結果だった! 完璧主義である僕は、魔術の腕も超一流。ということでそれなりに平穏だったはずが、王道勇者が召喚されたことで、大変な事態に……というファンタジーで、宰相総受け方向です。

次は絶対死なせない

真魚
BL
【皇太子x氷の宰相】  宰相のサディアスは、密かにずっと想っていたカイル皇子を流行病で失い、絶望のどん底に突き落とされた。しかし、目覚めると数ヶ月前にタイムリープしており、皇子はまだ生きていた。  次こそは絶対に皇子を死なせないようにと、サディアスは皇子と聖女との仲を取り持とうとするが、カイルは聖女にまったく目もくれない。それどころかカイルは、サディアスと聖女の関係にイラつき出して…… ※ムーンライトノベルズにも掲載しています

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

処理中です...