上 下
10 / 16

10.湊という男①

しおりを挟む
「…ん…」

目が覚めると、俺はベッドに上だった。いつの間に?と思ったが、ご飯を食べ終わってからの記憶がない。

「…家で良かった…」

慣れないワインに酔って寝てしまったんだろう。そして、湊が俺をベッドまで運んだのだと推測する。

「起きたら謝んないとな…」

ベッドの下で眠る湊を起こさない様に、喉が渇いていた俺はそっと部屋を出た。

キッチンに行き、冷蔵庫からペットボトルの水を取りゴクゴクと半分ほど飲み干した。

「はぁ~」

冷たい水が喉を通り過ぎ渇きを潤す。そして、キッチンの隅にワインボトルを見つけた。

「何となくは覚えてたけど、全部飲んでるな…」

空っぽのワインボトルを手に取り、自己嫌悪に陥る。ほんと、年下に何迷惑かけてんだか…。
ボトルを戻し、俺は風呂場に向かった。朝でも良かったが、今寝ると朝起きてシャワーを浴びる時間が取れる自信がなかったからだ。


浴室に入ると、バスタブには温かいお湯が張られていた。

「湊…」

俺が途中で起きるの見越していたかのような周到さ。ありがたいが、完璧すぎるぞ湊。

湯船に浸かり、俺は昔の湊を思い返す。

俺と湊が初めて会ったのは、俺が6歳の時にお隣に引っ越して来たのが始まりだ。当時2歳の湊は、人見知りが激しくおばさんの後ろからこちらを見ていた。ちょこっとのぞかせた顔は、子供の俺でも”カワイイ”と思えるほどで、男の子と聞いて少なからずショックを受けた。おどおどしながらも、ニコッと笑った顔は、まさに天使だった!!その晩は家族で湊の話で盛り上がったっけ…。

次の日から、何故か湊は俺を見かけると後ろをちょこちょことついて来るようになった。さながらひよこの様だった。しかし、4歳差は大きく一緒に外で遊ぶのには無理があった。なので、時々湊の家の庭で遊びに付き合った。またその時の顔が天使なんだよな~…。「ひろにい、だいしゅき~!」ってぎゅ~って抱きついてくるし。いや、マジ可愛かったわ。

小学校に上がると、俺は同級生と遊ぶようになり湊と遊ぶ回数は減って行った。それでも日曜日になると「ひろにい、あしょべる?」と、我が家を訪ねて来る。ほんとは湊の相手をするよりも友達と遊びたかったが、泣きそうな湊をほっておくことも出来ず、日曜日は予定を空けていた。

そんな湊も小学生になった。しかし、湊を取り巻く環境はあまりいい物ではなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

誕生日会終了5分で義兄にハメられました。

天災
BL
 誕生日会の後のえっちなお話。

何をされても起きない僕は弟の友達の美形くんに食われちゃいました

霧乃ふー  短編
BL
ベッドで寝るのが大好きな僕。 いつものようにぐうぐう寝ていると、だんだんと身体にいやらしい感覚がやって来て、、、 弟の友達の美形くん×寝るのが大好きな主人公

犯されないよう逃げるけど結局はヤラれる可哀想な受けの話

ダルるる
BL
ある日目が覚めると前世の記憶が戻っていた。 これは所謂異世界転生!?(ちょっと違うね) いやっほーい、となるはずだったのに…… 周りに男しかいないししかも色んなイケメンに狙われる!! なんで俺なんだぁぁぁ…… ーーーーーーー うまくにげても結局はヤられてしまう可哀想な受けの話 題名についた※ はR18です ストーリーが上手くまとまらず、ずっと続きが書けてません。すみません。 【注】アホエロ 考えたら負けです。 設定?ストーリー?ナニソレオイシイノ?状態です。 ただただ作者の欲望を描いてるだけ。 文才ないので読みにくかったらすみません┏○┓ 作者は単純なので感想くれたらめちゃくちゃやる気でます。(感想くださいお願いしやす“〇| ̄|_)

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

【BL・R18】可愛い弟に拘束されているのは何ででしょうか…?

梅花
BL
伯爵家長男の俺は、弟が大好き。プラチナブロンドの髪や青色の瞳。見た目もさることながら、性格も良くて俺を『にーに』なんて呼んだりしてさ。 ても、そんな弟が成人を迎えたある日…俺は… 基本、R18のため、描写ありと思ってください。 特に告知はしません。 短編になる予定です。地雷にはお気をつけください!

【報告】こちらサイコパスで狂った天使に犯され続けているので休暇申請を提出する!

しろみ
BL
西暦8031年、天使と人間が共存する世界。飛行指導官として働く男がいた。彼の見た目は普通だ。どちらかといえばブサ...いや、なんでもない。彼は不器用ながらも優しい男だ。そんな男は大輪の花が咲くような麗しい天使にえらく気に入られている。今日も今日とて、其の美しい天使に攫われた。なにやらお熱くやってるらしい。私は眉間に手を当てながら報告書を読んで[承認]の印を押した。 ※天使×人間。嫉妬深い天使に病まれたり求愛されたり、イチャイチャする話。

処理中です...