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5.まずは胃袋から!~湊視点~

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――大好きなひろ兄が、地元を出て一人暮らしをする事になった――


小さい頃から俺のヒーローだったひろ兄。
初めは憧れだった。いじめっ子達から俺を守ってくれていた。自分が傷だらけになっても「大丈夫か?」と、俺を心配してくれた。「ありがとう」と言うと、ニカッと太陽みたいな笑顔で笑ってくれた。

いつからか、俺の憧れは恋心に変わっていた。
自覚した切っ掛けは、ひろ兄に好きな女の子が出来た事。少し頬を赤くしてその女の子と話をしてる所に遭遇した。俺の中にどす黒い感情が産まれた。「ひろ兄~!」と、無邪気に声を掛け腕にしがみ付いた。その頃の俺は、まだ体も小さく華奢でよく女の子に間違えられていた。チラッと女の子の顔を見るが、年上の余裕か平然とした顔をしていた。

「妹さん?」
「え?あ、いや、幼馴染」
「そう。初めまして」

そう言いながらも、どこか勝ち誇った笑顔。なので――

「ねぇひろ兄…昨日怖い夢見ちゃって一人で寝るの怖い…。、一緒に寝てくれる?」

ピクッと、女の子の顔が引きつった。

「お願い…」

上目遣いにひろ兄を見る。

「ったく、仕方ねぇな~…。っと、ごめん。今日はこいつ連れて帰るわ…」
「そう。じゃあね…」

そうしてひろ兄は俺と一緒に帰って、約束通り一緒に寝てくれた。…そしてその晩、俺は精通を迎えた。

この日をきっかけに、ひろ兄に近づく女はことごとく排除した。
ひろ兄は、”彼女が出来ない”と嘆いていたが、実際はメチャクチャモテていた。
少し幼さの残った甘いマスク。人懐っこい笑顔。そして、困った人を放っておけない優しさ。もう、歩く人たらしだったね。
声変りをするまでは、女の子のフリをして排除。…たまにひろ兄の回りの男が食いついて来るのがうざかった。
声変り後は、俺も背が伸びて誤魔化しがきかなくなったので、女の方を誘惑することにした。ま、俺から誘惑するまでも無く勝手に女の方から食いついてきたけどね。そんな女はひろ兄に相応しくないので即座に排除。あ、もちろんそんな女に俺は一切手は出してない。てか、触りたくも無い。キスやセックス何て論外。俺の童貞はひろ兄に捧げるんだ!!

そんな俺の気持ちも知らずに、ひろ兄が就職して地元を離れると真理子さん(ひろ兄のお母さん)が教えてくれた。

「ちゃんと一人暮らし出来るのか心配だわ。あの子、家事ダメダメだから」
「真理子さん、ひろ兄どこに行くの?」
「○○よ」
「え?偶然!俺、大学そっちに行こうと思ってるんだ!(今決めたけど)だから自炊も出来るように料理教えてもらってるんだ~」
「そうなの?比呂樹なんて”何とかなる~”って何もしないのよ」
「え~!じゃあ、俺がひろ兄のご飯つくろっか~?なんてね!」
「あら!湊ちゃんが一緒なら安心だわ!そうと決まったら、真美ちゃんに相談しなくっちゃ!」

ふふ。成功!

その後はひろ兄に内緒で話が進み、見事ひろ兄とのルームシェア(俺的には同棲!!)の権利をゲットした。しかも部屋は1LDK。寝る時も一緒とかヤバい!両想いになるまでは我慢我慢!!

さ、ひろ兄の為に家事スキルもっと上げないと!!
男を落とすには胃袋からって言うしね!

待っててねひろ兄!毎日、美味しいご飯作るからね!!


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