クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫

文字の大きさ
上 下
90 / 147
奔走編

逃亡者、エルフの女王に会う

しおりを挟む
「女王様、驚かずに聞いてください」
長老が伏せた女性に話しかける

やっぱりこの人が女王様だよね

「カムハルか…なんだ?今は話す元気はないぞ」
かなり消沈しているようだ。顔をまくらに埋めたまま答える

「エミルフル様が生きていました」

「……何を言っているんですか?死んだものは生き返らないのですよ」
女王様は諦めて見ようとしない

「女王様、本当にエミルフル様が生きていたのです。ここにいますので見てください」

僕はこのやりとりの間ずっとエミルを起こそうとしてるけど、全然起きない。
赤ん坊だし、叩いて起こすのはどうかと思って揺すったりしてるんだけど、逆に眠りが深くなっている気がする

僕がエミルを揺らしていると、女王様がゆっくりとこっちを見た。

「……エミル!」
ガバッと布団を捲って、女王様が近づいてきた

本当は挨拶を先にしたほうがいいのかもしれないけど、僕はまずエミルを渡す

「エミル!間違いなくエミルフルだわ」
女王様はエミルを見つめて、ギュッと抱きしめた

「……ん、んー。くりゅしい」
エミルが起きる

「あ、ああ。ごめんね、エミル」

「ママ、会いたかった。…うぅ」
僕は親子をしばらく見守る

「……あなた達は誰かしら?人族よね?」
落ち着いた女王様に聞かれる。
今まで、僕とミアの姿は目に入っていなかったようだ。

やっと挨拶が出来る

「はじめまして。冒険者のハイトです。こっちはミア。盗賊に拐われていたエルフの子供が保護されましたので、送り届けに来ました」
僕は挨拶して、ここにいる理由を話す

「エメラムル・ルリァ・ルージュベリュです。エミルを連れてきて頂きありがとうございます。盗賊の件を詳しく教えて頂けますか?」

一度で聞き取れる訳がないので、僕は鑑定を使う
里に同族以外が入るのを嫌がるって聞いてたけど、そんな感じはしないな。

「どうやって誘拐したのかはわかりませんが、帝国領にて盗賊を討伐した所、エルフの子供がいたので保護したと聞いています。盗賊は王国に売り飛ばしに行く途中だったそうです。……こちら帝国の皇帝から預かった書状です」
僕は聞いた話を伝えて、皇帝の手紙を渡す

「読ませてもらいます」
女王様は手紙を読む

「やはり、人族の我々エルフに対する認識はこうなのね。あなたは書状の内容は知っていますか?」

「誘拐に関して帝国には非がないって事が書かれていると聞いてますが、詳しくは知りません」

「簡単に言うとそうね。女王として帝国に攻め入るように指示することはないから安心していいわ。私としては死んだと思っていたエミルが帰ってくることになったのだから感謝しかないわ」
想像していたイメージとかなり違う。

「それは良かったです。失礼かもしれませんが、だいぶ聞いていた話とエルフの印象が違うんですけど、本来はこうなんですか?」

「どのように聞かされていましたか?」

「ナワバリ意識が強くて、同族以外が里に入るのを嫌うと聞いてます。後は……今回の件で人間全てに戦争を仕掛けるかもしれないみたいな事ですね」
隠してもいい事はなさそうなので正直に話す

「そうですか…」

「でも、実際はそうではないみたいですね」

「いえ、その認識で合っています」

「え?」
女王様の言葉に僕は驚く

「エルフの大半はそうです。先代の女王の影響でしょうか……。私は人族や獣人族、魔族など他の種族の者とも交流をしていくべきだと思っておりますが、なかなか受け入れられないようです」
女王様がエルフの中では変わり者のようだ

「そうですか。それだと今回の誘拐の件は大丈夫なんですか?」

「私が言うべき事ではないですが、エルフは女王が絶対なのです。私が人族を許すといえば、許されます」
エルフは独裁主義なのか

「……そうなんですか。安心しました」

「ひとつお尋ねしたいのですが、誘拐した盗賊は人族でしたか?」

「ええ。…………あ、そうですね。盗賊は人間です」
人間だと思っていたけど、そういえば聞いてなかったのでミハイル様に念話で聞いたら、やっぱり人間だった

「人間がどうやってエミルを誘拐したのかしら?まだ1人では結界の外になんて行けないし……。そういえばあなた達はどうやって結界の中に入ったの?」

「僕達はスキルを使って結界の中に入りました。すいませんが、スキルについては話せません」
女王様は長老を見る

「私の鑑定では、この者達のスキルは観れませんでした」

「それはどういうことですか?」

「鑑定が妨害されるほど、ステータスがかけ離れているようです。もしくは鑑定を妨害するスキルを保持しているかです」

「そうですか、わかりました。詳しくは聞きませんが、そのスキルで入れるのはあなた達だけですか?」
僕のスキルを探るのは諦めるようだ。

「僕が入れようと思えば誰でも入れますね。もちろん今は入れません」

「そうですか……」

「今回僕達が入る為にスキルを使っただけで、他の人を中に入れるつもりはありませんので安心してください」

「ありがとうございます。お願いします」

「それで、なんでエミルフル様が死んだことになってるんですか?結界があるのに人間の盗賊に誘拐された事も不思議ではありますが、死んだことになっているほうが僕には不思議です」

「私が長老たちと会議をしている時に、エミルが死んだと連絡が来ました。エミルの事は使用人に任せていたのですが、目を離した隙に階段から落ちてしまったと……」
赤ん坊が階段から転げ落ちたと考えれば死んでもおかしくはないか。

「なんで目を離したんですか?普通、赤ん坊を1人にはしませんよね?」
僕はそれが気になった。赤ん坊から目を離すとは思えない。

「人族の感覚ではそうなのでしょうか…。エミルはもう4歳で、なにかあれば呼ぶことも出来ますので付きっきりというわけではなかったのです」
そっか、感覚が狂うけど4歳児と考えれば少しの間なら離れる事はあるか。家の中に1人にするわけではないし。

「そうなんですね。事故で亡くなったのであれば、ご遺体はあったんですよね?ご遺体は今どこにありますか?」

「火葬しました。残った遺骨は埋めました」

「そうですか……。これからどうするつもりですか?気にはなりますが、僕は部外者ですので長老から話が聞ければもうここに用はありませんが」

「可能であればエミルを死んだことにした相手を調べるのを手伝ってもらえませんか?それと話というのはなんですか?差し支えがなければ教えてください」

「時間が許す限りはお手伝いするのは構いません。話というのは魔王城への行き方を教えてもらう約束をしているのです。訳あって行き方を探しているのですが、長老が知っているとのことでしたので」

「そうでしたか。お手数をお掛けします」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...