イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫

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俺の予想とは裏腹に、カムイはアイスドラゴンの首を持って帰って来た。

「やり方を褒めることは出来ないが試験は合格だ。自分の実力を把握出来ているという意味では悪くなかった」
カムイは罠を仕掛けてアイスドラゴンから先手を取った後は、隠れながら徹底して遠距離から火魔法を当て続けた。薬で魔物の気を昂らせて逃げないようにしており、倒すことだけを考えれば悪くない手ではあるが、自分の目標である相手との戦いをこんな味気ないものにしたことは褒められない。
良くも悪くも冒険者の戦い方だ。

「次は真正面からぶつかって倒します」
カムイ自身も内容に納得はしていないようなので、まあ良しとしておく。

「内容はどうあれアイスドラゴンをお前は倒した。目標は達したわけだが、今後は何のために力を求めるんだ?」
カムイにカムイ自身が考える未来を聞く。

「…………すぐにはわかりません」
カムイはしばらく考えるが答えは出なかった。

「そうか。なら、お前にどこまで教えるかはその答えを聞いてからにする。よく考えろ」

「わかりました」

「それとは別に試験を合格した褒美だ。なんでもいいから欲しい物を一つだけやる。生き物と抽象的なもの以外なら、金でも宝石でもスキルでもなんでもいい」

「あの、以前から聞きたかったのですが、師匠は何故力を求めるのですか?」
カムイが踏み込んだ質問をする。

「その質問の答えが褒美でいいのか?」

「……はい。聞かせてください」
カムイは少し迷った後、答える。

「俺は神に恨みがある。その恨みを晴らすために力を求めている。神を殺すことになればこの世界は崩壊するかもしれないが止めるつもりはない」
カムイにここまで話すつもりはなかったが、さらに強くなれる可能性を棒に振ってまで聞いたのだから答えることにする。

「…………だからルイナを弟子にしたんですか?」

「そうだな。あいつは神を殺したいわけではないが、目指す方向は俺と同じだ。だから弟子にした。質問に答えるのはここまでだ。さっきの答えを出すまでは今までと同じ修行内容だ。今の話で嫌になったなら弟子を辞めても構わない。俺のことを言いふらしたりしなければ口封じにお前を殺すこともない」

「答えていただきありがとうございます。魔物を捕まえて来ます」
カムイがお礼を言ってから日課である魔物の捕獲に向かう。


「さて、ラプラス。ドレインの魔術がうまく発動しない原因はなんだと思う?」
ルフからドレインの魔術のことを聞いてからずっと試しているが、まともに発動したことがないので、訓練用の部屋に移動してラプラスに助けを求める。

「対象とした魔物から生命力は失われていますが、それを取り込めていないようです」
ラプラスは答えるが、そんなことは俺でもわかる。発動により魔物は干物のように干からびるが、体から失われたものが俺に流れて来ていないのが失敗の原因だ。

「それは分かっている。なぜ取り込めない?」

「その魔術は初代悪魔王様が使用されていたものですので、わ、我には高度過ぎて理解出来ません」
ラプラスがビクビクしながら答える。反抗心が残っていたこいつに力の一端を見せたのは良くなかったかもしれない。

「この魔術はルフも使えないと言っていたからな。お前のおかげで少し進んだが使えるようにするのは無理か……。その悪魔王というのを呼ぶことは出来ないのか?」

「既に天使によって滅せられてます。今の悪魔王様はルフ様よりも格下の悪魔です」

「そうか。何か他に…………お前ら悪魔は人の魂を食うよな?あれは何の為に食うんだ?魂以外でも美味そうに食ってるよな?」
ルフが暴食と呼ばれており、元悪魔王よりも格上だということを聞き、可能性を感じたのでラプラスに確認する。

「魂は甘味です。食べなくても死にはしませんが、喉から手が出るほどに悪魔は欲します」

「魂を食べたら力が増したりはしないのか?」

「確かに増しますが、微々たるものです」

「それは吸収効率が悪いからという話か?」

「そうです」

「そうか。ドレインの魔術は上手くいく未来が見えない。次はこっちの路線で考えるか。協力しろ」

「は、はい」


「完成だ!こいつの力をそのまま俺の力として行使出来る」
月日は流れ、遂に俺専用の魔術が完成した。この魔術には『魂の牢獄』という名を付ける。
セレイユに用意させた囚人は魔術の発動を受け動かなくなり、囚人から感じた分だけ俺の力が増したのが感じられる。

「おめでとうございます」
ラプラスが完成を祝福する。

「ルフの働きもあって計画は順調だ。最後のピースの情報も手に入っている。何の因果かわからないが、パッぱと終わらせて天界に乗り込む。準備をしておけ」

「はい」

魂の牢獄を解除してから訓練用の部屋から出る。

「カムイ、魔物の捕獲はもうしなくていい。俺はここを離れることにした。お前を鍛えるのも終わりだ。これからはお前が守りたいと言った家族の為に力を使え」
カムイの力を求める理由の回答は、力がないことで後悔したくないという単純で明解なものだった。そして、後悔とは何か聞くと、大切なのは家族と友人だと言った。
結局、カムイも親父と同じだったということだ。
そんなカムイに俺はまともな方法での訓練を積ませた。

「……お世話になりました」
カムイが複雑そうな顔で頭を下げる。

「そう心配するな。今のお前が相手に出来ない相手はそうそういない」

「それはわかっていますが、力を得たからこそ理想ではなんとも出来ないこともあると知りました。以前王国で起きたようなスタンピードが帝国でも起きればなす術なく蹂躙されます」

「その時は判断を誤らずに逃げればいい。大切なものを守る為の力が、お前の出した答えだ。あの時の魔物から家族と友人を連れて逃げるくらいには、お前は強くなっている。俺やルイナとは求める力が違った。それだけの話だ」

「……そうですね」

「最後に弟子のお前に仕事を与える」

「はい」

「訓練室で寝ている囚人をセレイユに届け、そのままお前が住みやすい国になるようにセレイユの手助けをしろ。これは命令じゃない。受けるかどうかは好きにしろ」

「皇帝陛下の下に付けということですか?」

「セレイユの命に従ってもいいし、セレイユに命令して影で帝国を操ってもいい。協力するのがいいだろうが、お前の好きにしろ」
これで王国はダイス、帝国はカムイと、俺を知っている存在が国を操れる立場になる。

「わかりました」

「ルイナ、行くぞ。目的地は精霊の泉だ」

「はい、お師匠様。カムイさんありがとうございました。ご飯美味しかったです」


『ルフ、聞こえるか?』
俺はルフに念話を飛ばす。

『はい。聞こえています』

『カムイは俺の手駒として不合格だからセレイユのところに行かせることにした。元々お前が拾って来たんだから、後のことはお前がなんとかしろ』

「濃密な魂をしていましたのでお役に立つかと思いましたが、失礼致しました」

『素質は悪くなかったが、悪に染まらなければ俺の手駒にはなれない。これからそっちにルイナと向かうから、お前はそのまま監視を続けろ』

『承知しました』
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