イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫

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あの日の真実

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スクロムが退室し、魔王と2人になる。ルフの分身体は影に潜ませたままだ。

「やましいことをしている自覚はないとよく言ったな。握っている秘密について、説明は必要か?」

「言われなければわからぬな」

「そうか。そういえばお互い自己紹介をしていなかったな。俺はリュートだ。お前のことはなんと呼べばいい?」

「我の名はグリッド。敬称を付ける気もないのだろう。お前でも、貴様でも好きに呼べ。ここには我と貴様しかおらぬ」

「そうか。ならバルグレイと呼ばせてもらう。愛称で呼ぶのは好きではないからな」

「……それは先代の名だ。好きに呼べと言ったが、ふざけて言っていい名ではない。先代を愚弄する気か?」

「お前の本名を言ったらだめなのか?なあ、バルグレイ。自身が死んだ事にして、人間を大量虐殺した気分を教えてくれないか?」

『何の話をしているのかわからないんだけど』
リュートがおどおどしながら聞いてくる。

『お前がやらかした日の真実を教えてやる。黙って聞いてろ』
俺は心の中でリュートに返事をする。

「何を言っているのかわからぬな」

「わからないなら、わかるまで話してやる。勇者がこの地に降り立ってから、勇者は自分の生まれた地に帰る方法を探していた。そこで魔王の存在を知る。勇者は魔王を討伐するためにこの地に呼ばれたのだと勘違いし、ここ魔王城を目指した」

「何を言い出すと思えば、その勇者というのはお前のことだろう。それとも、他に勇者がいるのか?」

「とぼけるつもりなら黙って聞いてろ。一方で、魔族領は干ばつにより食糧難に陥っており、他国から食料を買うにも財政的に困難だった。魔族は争いを嫌うが、人族はそうではなかった。個々の実力に数では埋められない差があるから侵攻してこないが、人族とは友好的な関係ではなかった。よって、他国からの援助は期待できない。そもそも、干ばつは魔族領だけではなく、王国、帝国を含むこの辺り一帯で起きていた。金があったとしても他国から買うのは難しかっただろう」
俺の推測でしかないが、リュートは干ばつによる世界的な危機をなんとかする為に、この地に呼ばれたのではないかと思う。
リュートにはあらゆる事柄を自由に動かす力が与えられていた。
そして、リュートが奇跡を起こすと、それはスキルという形で自身に定着した。

死なない体にする不死のスキルも、他者にスキルを譲る移植のスキルも、全てリュートが自身で獲得したものだ。
移植して失われたスキルを再度獲得する事が出来ないという点はあるが、創造のスキルと近い力を持っている。

各地で天候を操り雨を降らせ、さらに植物の成長を早めることで、食糧難という大きな問題を解決するのは容易だっただろうな。
実際にはリュートは世界を救いはしなかったわけだが。

バルグレイの表情がどんどん厳しくなっていくのを確認しながら話を続ける。

「食糧難という未曾有の危機に対して頭を抱えていた魔王バルグレイ。魔族から犠牲を出さない為には他国から食糧を奪うしか道は残されていない。魔族を束ねる王として、魔族の為なら人族には犠牲になってもらわなければならない。しかし、魔族は争いを嫌う。どうやって人族の領土から食糧を得るか考えていたそんな時に、勇者が現れる。勇者は困惑するバルグレイの話に聞く耳を持たず斬りかかった。この地に来て間もない勇者と魔王として君臨し続けていたバルグレイには大きな力の差があった。返り討ちにしようとしたその時、バルグレイは妙案を思いつく。これを理由に賠償として人族から食糧をもらおうではないかと。そしてバルグレイは、魔王という立場を捨てることを覚悟して、勇者に殺されたフリをして身を隠した。何か言いたいことはあるか?」
リュートの魂から困惑と動揺が感じられる。
当然だ。自分が殺してしまったと後悔しながら何千年も暗い部屋で過ごしていたのに、実際には死んでいなかったと聞かされたのだから。
過去視のスキルでみてきたのだから、これは間違いない。

「……。」
バルグレイは何も言わない。
俺の話を否定するだけの言い訳が思いつかないのだろう。
しかしあれだけのことを起こしたのだ。
簡単に肯定することも出来ない。

「バルグレイにとって想定外だったのは、当時の副官であるシュミットの行動だ。バルグレイは聡明なシュミットであれば、自身の死を理由に人族に対して賠償金と不足している食糧を要求すると考えていた。しかし、主を殺され怒り狂ったシュミットは、単身で人族を滅ぼしに向かった。そして、シュミットに賛同する者が1人、また1人と増えていき、人族との関係は最悪のものとなった。これが過去最大の死者を出した人魔戦争の始まりだ。何か間違いがあれば言ってくれ」

『そんな……』
リュートがつぶやく声が頭の中で聞こえる。
姿があれば、膝をつき項垂れていただろう。

「……ああそうだ。全てお前の言った通り、俺が先代の魔王バルグレイだ。バルグレイに隠し子などいない。人族との争いを終わらせる為に、隠し子だということで君臨するしかなかった。我を殺しに来たのだろう。殺せ」
魔王には俺が自身よりも弱く見えているはずだ。
口を封じる為に襲いかかってくる可能性もあったが、予想通りの結果になったな。

『お前が決めろ』
俺はリュートに決めさせる。

『殺さなくていいよ……。実際には死ななかっただけで、僕が魔王を殺そうとしたことに変わりはないから。それに、魔王もずっと苦しんでいたと思う。だからこそ、犠牲の上に繁栄した魔族領を人族と魔族が手を取り合って生活出来るようにしたのだと思うし……』
実際にはリュートが負ければ戦にはならなかったかもしれないが、それはリュートもわかった上で言っているだろう。
リュートの答えも予想通りだ。

『お前がそれでいいならそうするか』

「お前を殺しに来たわけではない。真実を確認しに来ただけだ。それからその指輪は返してもらう。それは勇者の指輪だ。お前の物ではない。そろそろお前も死んでいいだろう」
勇者の指輪には各種悪い効果を無効化する力が秘められている。
毒や病気だけでなく、その中には老化までもが含まれる。
魔王程の強さがあれば、そうそう死ぬことはないだろう。

「持ち主が返せというならば返そう。それで、本当は何をしに来たのだ?全て確信をもって知っていただろう。我を殺したいわけでもなく、脅して何をやらせたいのだ」

「お前にやらせたいことはない。スキル屋の話と指輪を回収しに来ただけだ。お前のやったことを漏らす気はない。お前も俺のことは忘れると約束しろ。勇者が誰か知っている者は限られている。さっきの話を広めないでやるから、指輪を俺に渡せ」

「ああ」
バルグレイから指輪を受け取る。

『ルフ。これで契約出来たのか?』

『はい。問題なく契約の魔術は発動しました。魔王と魂のパイプが繋がったのが感じられます』
契約の呪法は思ったより融通がきくな。
指輪を対価として、こちらは秘密を話さないことを約束する。
これが契約だと言う必要もなく成立するなんてな。

『そうか。王国と帝国はもういい。次は魔族領だ。スキルを渡す必要はない。なんでもいいから対価を受け取り、適当な理由を付けて契約を進めろ。鑑定された場合に契約が切れるようにするのを忘れるなよ』

『かしこまりました。魔王に気付かれた場合はどうしましょうか?』

『自身が契約されても気付かないのだからバレないだろうが、バレても問題ない。魔王が俺の邪魔をする可能性は低い。もし動きがあっても俺が対処する。好きにやれ』

『かしこまりました』
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