179 / 201
行動開始
しおりを挟む
エルクが帝都を出発して数日後、学院長から秘術の準備が整ったと連絡が入る。
「すぐに発動出来るのか?」
ルフの分身体を介して学院長に確認する。
「肉体の準備は不要とのことでよろしかったのですよね?準備は進めていましたが……」
「ああ、問題ない」
「それでしたら、後は肉体だけあればすぐにでも発動可能です」
「ご苦労だった。あの時お前を殺さなくて正解だったな。準備が終わり次第知らせる。俺が自由に動けるようになれば、お前の悲願が叶う日も近いだろう」
「よろしくお願いします」
学院長が深く頭を下げる。
『ここまでやっても邪魔をしにこないということは、俺の計画にあのクソ野郎は気付いていないということでいいのか?』
準備を進める為に今度は城に行かせて、目当ての人物が来るのを待っている間にルフに問いかける。
『遠い過去の話ですが、我々悪魔がやり過ぎれば天界から天使が兵として現れて排除されました。天使兵の力は強大ですが、その余波による被害も甚大です。簡単に送ることの出来る存在ではありません。それほどに我々が暴れていたわけですが、あの時よりも混乱をもたらすであろうあなた様の計画を知っているのであれば、傍観しているとは考えにくいと思われます。気付いていないか、それとも気付いてはいるが動けない理由があるのか。もしくは、相手の動きにこちらが気付けていないだけで、既に手をうたれている可能性も考えられます』
『筒抜けとなっていると思って動いた方がいいかもな。さっきの学院長との会話も、隠蔽はしているが聞かれているかもしれない。しかし、あと少しでアイツをぶち殺せるだけの力になるはずだ。あの時、あそこに神は2柱いた。アイツは鑑定できなかったが、もう1柱のハマトとかいうやつは鑑定出来た。今の俺はあいつに少し劣るくらいだ。どれだけ差があるのか知らないが、近い所までは来ている。俺を閉じ込めていた忌々しい封印も解けたことだ。今更止まる気はない』
スタンピードが起きて外に出たあの日、俺は戻る前に封印に手を加えていた。
閉じ込められて外部に干渉出来ない状態では破ることは出来なかったが、俺が表に出て自由に動ける状態であれば、拘束力のないただの空間へと変化させることは容易だった。
ガチャ。
「……!何者だ!?」
ルフと今後の話をしながら待っていると、ダイスが入ってきた。
「警戒するな。俺もあの方の使いだ。無意味な会議に随分と時間を使っていたな。帝国の方は既に第二皇女を女帝とすることで話がついている。お前はいつまで時間を掛けるつもりだ?」
分身体が前もって決めていた話を始めたのをルフを通して見る。
「親父が帝国を攻める道は残っていない。国王としての最後の仕事を尊重して、自身で幕を引く時間を与えているだけだ」
「それなら構わない」
「それを聞くためにわざわざ城に侵入したのか?」
「今のはただの世間話だ。帝国の情報を流してやっただけだな。女の身柄を引き取りにきた。渡せ」
「お前があの男の使いだという証拠がない。確認出来なければひき渡すことは出来ない」
冷静だな。確かに俺の名を騙った者に間違えて渡して殺されでもしたら、俺は許さないだろう。
しかし、面倒だ。
「今は俺が言ったことをこいつがお前に伝えているだけだ。こいつは、学院長とお前との3人で密談したことも知っている。スタンピードの時に実際に何があったのかもだ。学院長が死者を生き返らせようとしていると言えば信用するか?」
分身体に話させる。
「疑ってすまなかった」
「俺の言ったことを守ろうとした結果だ。怒りはしない。引き渡してくれればそれでいい」
「俺の部屋の隠し扉の先にある地下室に閉じ込めている。案内は必要か?」
「不要だ。急に消えれば仕事が増えるだろうから、言いにきただけだ」
「表向きは処刑したことにするがいいか?」
「好きにしろ。ただし、簡単に死なせるつもりはない。ないとは思うが、這い出して人目につく可能性もあることは覚えておけ」
「何をするのか聞いてもいいか?」
「お前が知る必要はない。それからもうひとつ、これは忠告だ。ロックに与えた領地にあるスマスラ遺跡。あそこの奥にダンジョンが隠されている。ルインダンジョンよりも危険なダンジョンだ。お前の代が終わった後も誰も入れないことだな」
「覚えておく」
地下牢から罪人となった元王妃の女を眠らせて連れ出させて、次はスマスラ遺跡へと向かわせる。
分身体はそのままダンジョンへ進み、リュートがいる部屋へと入る。
「久しぶりだな。姿は違うが俺だ」
人の姿に戻っているリュートに声を掛ける。
リュートはあのけったいな姿を好んでいるのではなく、人の姿に回復させても、スリープ状態でいる間に体が腐っていき、目を覚ますとあのような姿になっているので、起きるたびに回復させないというだけだ。
自身への戒めとしての意味もあるらしい。
ここ最近はずっと魔力を使い続ける為、仕方なく人間の姿に戻したということだろう。
あのままの姿では俺も困ることになる。
「ルフさんだね。今日はあの子はいないのかな?」
「体はあの時の悪魔の分身体だが、話をするのは前回と同じで俺とだ」
「……それは悪かったね。気付かなかったよ。あれから魔力を垂れ流しているけど、これでよかったのかな?」
「ああ、十分だ。それで、その女の人は誰か聞いてもいいかな」
「こいつは、先日王都どころか世界を破滅させようとした極悪人だ。今日はお前に良い話を持ってきた。お前を解放してやる」
「すぐに発動出来るのか?」
ルフの分身体を介して学院長に確認する。
「肉体の準備は不要とのことでよろしかったのですよね?準備は進めていましたが……」
「ああ、問題ない」
「それでしたら、後は肉体だけあればすぐにでも発動可能です」
「ご苦労だった。あの時お前を殺さなくて正解だったな。準備が終わり次第知らせる。俺が自由に動けるようになれば、お前の悲願が叶う日も近いだろう」
「よろしくお願いします」
学院長が深く頭を下げる。
『ここまでやっても邪魔をしにこないということは、俺の計画にあのクソ野郎は気付いていないということでいいのか?』
準備を進める為に今度は城に行かせて、目当ての人物が来るのを待っている間にルフに問いかける。
『遠い過去の話ですが、我々悪魔がやり過ぎれば天界から天使が兵として現れて排除されました。天使兵の力は強大ですが、その余波による被害も甚大です。簡単に送ることの出来る存在ではありません。それほどに我々が暴れていたわけですが、あの時よりも混乱をもたらすであろうあなた様の計画を知っているのであれば、傍観しているとは考えにくいと思われます。気付いていないか、それとも気付いてはいるが動けない理由があるのか。もしくは、相手の動きにこちらが気付けていないだけで、既に手をうたれている可能性も考えられます』
『筒抜けとなっていると思って動いた方がいいかもな。さっきの学院長との会話も、隠蔽はしているが聞かれているかもしれない。しかし、あと少しでアイツをぶち殺せるだけの力になるはずだ。あの時、あそこに神は2柱いた。アイツは鑑定できなかったが、もう1柱のハマトとかいうやつは鑑定出来た。今の俺はあいつに少し劣るくらいだ。どれだけ差があるのか知らないが、近い所までは来ている。俺を閉じ込めていた忌々しい封印も解けたことだ。今更止まる気はない』
スタンピードが起きて外に出たあの日、俺は戻る前に封印に手を加えていた。
閉じ込められて外部に干渉出来ない状態では破ることは出来なかったが、俺が表に出て自由に動ける状態であれば、拘束力のないただの空間へと変化させることは容易だった。
ガチャ。
「……!何者だ!?」
ルフと今後の話をしながら待っていると、ダイスが入ってきた。
「警戒するな。俺もあの方の使いだ。無意味な会議に随分と時間を使っていたな。帝国の方は既に第二皇女を女帝とすることで話がついている。お前はいつまで時間を掛けるつもりだ?」
分身体が前もって決めていた話を始めたのをルフを通して見る。
「親父が帝国を攻める道は残っていない。国王としての最後の仕事を尊重して、自身で幕を引く時間を与えているだけだ」
「それなら構わない」
「それを聞くためにわざわざ城に侵入したのか?」
「今のはただの世間話だ。帝国の情報を流してやっただけだな。女の身柄を引き取りにきた。渡せ」
「お前があの男の使いだという証拠がない。確認出来なければひき渡すことは出来ない」
冷静だな。確かに俺の名を騙った者に間違えて渡して殺されでもしたら、俺は許さないだろう。
しかし、面倒だ。
「今は俺が言ったことをこいつがお前に伝えているだけだ。こいつは、学院長とお前との3人で密談したことも知っている。スタンピードの時に実際に何があったのかもだ。学院長が死者を生き返らせようとしていると言えば信用するか?」
分身体に話させる。
「疑ってすまなかった」
「俺の言ったことを守ろうとした結果だ。怒りはしない。引き渡してくれればそれでいい」
「俺の部屋の隠し扉の先にある地下室に閉じ込めている。案内は必要か?」
「不要だ。急に消えれば仕事が増えるだろうから、言いにきただけだ」
「表向きは処刑したことにするがいいか?」
「好きにしろ。ただし、簡単に死なせるつもりはない。ないとは思うが、這い出して人目につく可能性もあることは覚えておけ」
「何をするのか聞いてもいいか?」
「お前が知る必要はない。それからもうひとつ、これは忠告だ。ロックに与えた領地にあるスマスラ遺跡。あそこの奥にダンジョンが隠されている。ルインダンジョンよりも危険なダンジョンだ。お前の代が終わった後も誰も入れないことだな」
「覚えておく」
地下牢から罪人となった元王妃の女を眠らせて連れ出させて、次はスマスラ遺跡へと向かわせる。
分身体はそのままダンジョンへ進み、リュートがいる部屋へと入る。
「久しぶりだな。姿は違うが俺だ」
人の姿に戻っているリュートに声を掛ける。
リュートはあのけったいな姿を好んでいるのではなく、人の姿に回復させても、スリープ状態でいる間に体が腐っていき、目を覚ますとあのような姿になっているので、起きるたびに回復させないというだけだ。
自身への戒めとしての意味もあるらしい。
ここ最近はずっと魔力を使い続ける為、仕方なく人間の姿に戻したということだろう。
あのままの姿では俺も困ることになる。
「ルフさんだね。今日はあの子はいないのかな?」
「体はあの時の悪魔の分身体だが、話をするのは前回と同じで俺とだ」
「……それは悪かったね。気付かなかったよ。あれから魔力を垂れ流しているけど、これでよかったのかな?」
「ああ、十分だ。それで、その女の人は誰か聞いてもいいかな」
「こいつは、先日王都どころか世界を破滅させようとした極悪人だ。今日はお前に良い話を持ってきた。お前を解放してやる」
34
お気に入りに追加
658
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜
赤井水
ファンタジー
クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。
神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。
洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。
彼は喜んだ。
この世界で魔法を扱える事に。
同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。
理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。
その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。
ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。
ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。
「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」
今日も魔法を使います。
※作者嬉し泣きの情報
3/21 11:00
ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング)
有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。
3/21
HOT男性向けランキングで2位に入れました。
TOP10入り!!
4/7
お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。
応援ありがとうございます。
皆様のおかげです。
これからも上がる様に頑張ります。
※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz
〜第15回ファンタジー大賞〜
67位でした!!
皆様のおかげですこう言った結果になりました。
5万Ptも貰えたことに感謝します!
改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる