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帝都へ

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学院長室で悪巧みをした3日後、予定通り帝都に向かって出発した。

あの場にいたメンバーの他にお父さんとお母さん、それからアンジェとルフも同行している。

ロック君は話していた通り王都に残った。

「止まれ!」
国境にある関所にて止められる。

「中を確認させてもらう。乗っている者はこちらに」
僕達は言われた通り馬車から降りる。

「このような時に何用だ?」

「私は王立学院の学院長をしていますルーカスです。こちらは生徒と保護者です。先の魔物襲撃にて教育をするのが難しくなりましたので、帝都の学院で共に学ばせてもらう予定です」

「……これか。残念だが入国は認められない」
お役人が書類を探し、入国を拒否される。

「何故でしょうか?このように帝都の学院長からも留学の了承を頂いております」
学院長がお役人に紙を見せる。

「現在、特例を除き他国との出入りを制限している。その旨を書いた手紙も送っているようだが、行き違いになったようだな」
王都を出発する前と状況が変わってしまっているようだ。

「そうでしたか……それは、どうしたものか」
学院長が顎に手を置き、考えている。

「積み荷に怪しい物がありました。お戻りになる前にこちらは置いていって頂きます」
馬車の中を調べていた別のお役人が、勝手に荷物を下ろしている。

「それは、移動中の食料と訓練用の装備。それから、着替え等で怪しい物は何もありませんよ。装備も刃を潰してあるでしょう?」

「上から言われている物に該当します」
こういったところからも、王国にダメージを与えようとしているのかもしれない。

「……なるほど。やっていることは盗賊と変わりませんね」

「不満があるのか?拒否するなら捕まえてもいいんだぞ?」

「先程、特例は除いて出入りを制限していると言いましたね?」

「ああ。特例を除いて全ての者の出入りを制限している。わかったら、荷物を置いて帰れ。俺達も暇ではないんだ」

「それはこちらの身分なら問題なく入れるということでしょうか?」
学院長がお役人に何かを見せている。

「し、しし失礼しました。どうぞお通り下さい」

「荷物は置いていかなければならないのですか?」

「滅相もございません。おい!早く馬車に戻せ!」
急にお役人の態度が変わり、関所を通らせてもらえる。

「何を見せたんですか?」
関所を通過した後、僕は学院長に気になったことを聞く。

「これですよ。最近は使っていませんが、なくなるものではありません」
さっきお役人に見せていた物を見せてもらう。

「学院長はSランクの冒険者だったんですか?」
それは冒険者証で、ランクは最上位のSだった。

「学院で教鞭をとる時に登録しただけです。ダンジョンを使用した訓練があるでしょう?ギルドで保管している資料を見せてもらうのに、登録しておいた方が都合がいいのです。なので、私は冒険者かと聞かれたら違いますが、こういった時にこの肩書きは便利です」
学院長はなんでもないことのように言った。


「さて、帝都に着きましたね。あそこに見えるのがこれから通ってもらう学院です。暴動に巻き込まれないように寄り道せずに行きましょう」
遠くに城が見えるが、ここからでも抗議の声が聞こえて来る。

学院に入り、帝都の学院長に挨拶をしに行く。

「お待ちしておりました。他国からの出入りが厳しくなっていましたが、ルーカス先生であれば問題ないと思っておりました」
帝都の学院長は結構若めで、学院長とは以前から知り合いのようだ。

「急な申し出をお受けいただきありがとうございます。しばらくの間お世話になります」

「はじめまして。私はマルクス。今はここ、帝都の学院で学院長をしているが、私も王国出身で、君達が通っている学院を卒院した。君達の先輩に当たるな。大変な時ではあるが、一緒に学んでいこう」

「エレナです。お世話になります」
お姉ちゃんに続き、皆んな順番に挨拶する。

「マルクスは当時、優秀な成績というだけでなく、人に教えるのがうまかった。帝都の学院で教師が不足しているという話も聞いていたから、教鞭を取らないか勧めたんだ。この短期間で学院長にまで上り詰めるとは予想していませんでしたがね」

「恥ずかしいのでやめてください。それよりもクラスはどうしますか?」

「全員中等部1年の同じクラスで頼む」

「こちらの男の子と女の子もですか?」

「その子達は飛び級しています。あなたと同じです。エレナちゃんは高等部まで飛び級していますが、今はあまり離れるべきではありませんので、中等部に通ってもらうことで了承を得ています」

「それは驚きです。では中等部の1年Aクラスに入るように手続きしておきます」

「よろしくお願いします」

「どこに泊まられますか?必要であればご用意出来ますが、どうされますか?」

「こちらに滞在する予定でいます。それでは明日からよろしくお願いします」
学院長が地図を渡してから、部屋を出る。

馬車は、一軒の屋敷の前で止まる。

「ここで今日から共同生活を送ってもらいます。部屋割りをしたら掃除をしますよ」

「ここは誰の屋敷なんですか?貴族の屋敷ですよね?」

「ここは私が所有する家です。以前、王都と帝都を定期的に往復することがあり、その時に建てたのです。ですから遠慮は不要です」
別宅にこの大きさの屋敷を建てるなんて、学院長はスケールが大きいなぁ。

「けほっ!けほっ!」
玄関のドアを開けると埃が舞った。

「しばらく使っていませんでしたから、だいぶ埃が積もっていますね」

「エルク、お願い」

「うん」
僕はお姉ちゃんに頼まれて屋敷全体に浄化魔法を使う。

「掃除をする必要がなくなりましたね。部屋割りですが、私の部屋はあそこの角になります。2階は全て客間になってますので、好きに使ってください」
部屋は4部屋ある。

お父さんとお母さんで一部屋、僕とお姉ちゃんで一部屋、ロック君とアンジェが一部屋ずつ使い、ルフは使用人用の部屋があるとのことで、ルフの希望でそちらを使うことになった。

「部屋は決まりましたね。では私は所用がありますので出掛けてきます。移動の疲れもあると思いますので、皆さんはゆっくりしていて下さい。危ないので外には出てはいけませんよ」
学院長は屋敷から出ていった。

移動の疲れといっても、回復魔法があるので全く疲れていない。
外に出るなと言われると、暇である。

暇だし、土魔法の熟練度を上げる訓練でもしようかな。
最近バタバタしていて、疎かになってたし。

僕は部屋でミニチュアの家……ドールハウスを作る。

小さいので魔力の使用量は少ないけど、細かい作業になるので、土魔法を使いこなす為の練習としてはちょうどいいと思う。

「かわいい物を作ってるわね。住まわせる人形はないの?」

「遊びじゃなくて、熟練度を上げる訓練中だよ」

「あ、このドア開く。中に家具まで……。芸が細かいわね」
お姉ちゃんが作ったまま壊してなかった一つを手に取り、ジロジロと観察している。

「まだ完璧じゃないからあんまり見ないで欲しいんだけど……」
じっくりと見られるのは恥ずかしい。

「これでまだ未完成なの?」

「それはドアの開閉に引っ掛かりがあるでしょ?それから、もう少し軽くしたいんだ」

「確かに少し引っ掛かるわね。でもこのくらいならそこまで気にならないわよ」

「僕は人が本当に住める城を作るのを目標にしてるんだ。その引っ掛かりも実際に住むと考えたら気になるでしょ?」

「エルクは城を作りたいの?」

「違うよ。土魔法を一度発動させるだけで城が作れるようになるのを、熟練度をあげる目標にしているって話。部屋の中では作れないから、今はミニチュアだよ」

「……これ貰ってもいい?」

「いいよ」
お姉ちゃんはドールハウスに色を塗っていく。
お姉ちゃんも暇だったのかな……
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