イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫

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徴兵

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「ただいま」

「おかえりなさい。大事な話があるわ」

「……うん」
学院から戻るとお父さんとお母さんが深刻な顔をしていた。
珍しくお姉ちゃんも僕より早く帰ってきている。
表情からすると、お姉ちゃんもお母さん達が深刻そうな顔をしている理由を知らなそうだ。

「私は席を外します」
ただならぬ空気に、アンジェが部屋を出て行こうとする。

「アンジェちゃんも聞いてほしいわ」

「はい」
テーブルを囲んで座る。

「帝国との戦が始まろうとしているのは知っていると思うが、エルクとエレナに戦に参加するように通達が届いた」

お父さんが重い口を開き、紙を僕とお姉ちゃんの前に1枚ずつ置く。

紙には僕の名前が書いてあり、兵士として隊列に加わるように書かれている。

「エルクもエレナも徴兵されるような年じゃない。抗議をしに行ったが、話も聞いてもらえなかった」

「戦に行かないといけないってこと?」

「このままだとそうなってしまう。王命だからな」

「……ちょっと待って。それは?」
机の下にもう一枚紙があるのが見えてしまった。

「これはお父さんのだよ。お父さんも戦に行かなければならない。それよりも今は2人のことだ。2人が行く必要はないはずなんだ」

「……僕も行くよ」

「エルクが行く必要はない。明日も城に抗議しに行く」

「王命なんだったら抗議しても変わらないよ」

「私も行く。気持ちはエルクと同じよ」

「エレナまで。2人が戦に行く必要なんてないんだよ。無理しなくていい」

「無理してないよ。それに僕は戦いに行くつもりはないよ。お父さんを守る為に行くんだ」

「私も」

「ありがとう。だが、抗議は続ける。それでもダメなら一緒に行こうか」

「うん」

ガンガン!
ノッカーが鳴る。

「こんな時間に誰かしら?」

「エルク様、ご友人のダイス様がお見えになられました」
ルフが出迎える。

「中に入ってもらって」
ダイス君が何の用だろうか?
タイミング的には徴兵の件かな……

「紹介するね。学院でチームを組んでるダイス君。この国の王子様だよ」
お母さん達にダイス君を紹介する。

「エ、エルクがお世話になっています。ほほ、本日はどのようなご用件でしょうか……」
お母さんが緊急しながら確認する。

「エルクには俺の方が世話になりっぱなしです。本日は謝罪と説明をしにきました」

「謝罪ですか……?」

「エルクとエレナさんも戦に行かせることになってしまった。これは俺の力不足だ。親父の暴挙を止められなかった」
ダイス君がお母さん達に頭を下げる。

「あ、頭を上げてください」
お母さんが慌ててダイス君に言う。

「何があったのか聞いてもいい?」

「昨日の昼に城で会議をしていたんだが、そこでエルクとエレナさんも戦に行かせるという話になった。戦で勝つ為には子供でも戦力になるなら使うべきだということだ」

ドンっ!!
「そんなふざけた話があるか!」
お父さんが机を叩き激怒する。

「ダイス君が言ったわけじゃないんだから落ち着いて」
僕はお父さんに落ち着くように言う。

「本当にすまない。言い訳と捉えられても仕方ないのだが、俺はもちろん反対し、会議自体は2人を徴兵しないことになったはずだったんだ。しかし、俺の知らないところで徴兵することに変わっていた。そもそも、お父上の徴兵もなかったはずなんだ。エルクに与えられた恩賞には、両親の税が免除されるだけでなく、こういった時の徴兵もかからないものだった。2人を行かせるための足枷にしたようだ」
あの恩賞にそんな意味があったのは知らなかった。

「教えてくれてありがとう。ダイス君はそれを言いに来てくれたってこと?」
拳を握ったまま震えているお父さんの代わりに聞く。

「今回の対応は全てにおいて義理を欠いている。当然、エルク達が戦に行かなくてもいいように働きかけるが、その前に説明はするべきだと思った」
ダイス君は誠意を見せに来たということだ。
お父さんにもそれが伝わったのか、ずっと握っていた拳を開いた。

「さっき家族で話してたんだけど、僕もお姉ちゃんもお父さんを守る為に戦場に行くことにしたよ。もちろん、ダイス君が行かなくてもいいようにしてくれたら助かるけど……」

「すまない」

「お父さんを守ることに全力を尽くすから、王国の戦力にはならないって先に言っておくね。そもそも、お父さんがいなかったとしても、僕には敵国だろうと人を殺すことは出来ないよ」
その時に、僕は確実に躊躇するだろう。
ルフが生きているのがその証拠だ。

「もちろんそれで構わない。戦が終わった後、何か言ってくる奴がいれば、俺が責任を持って黙らせる」

「それなら安心だね」

「また動きがあれば伝える。本当に申し訳ない事をした」
ダイス君はもう一度頭を下げてから帰っていった。

「良い友達をもったな」

「うん」


数日後、戦のことを頭の片隅に置いたまま引き続き寮の修復を手伝っていると、学院長に呼ばれる。

中等部に戻り、学院長室に行くと、ダイスくんとお姉ちゃん、それからロック君もいた。

「呼びつけて悪かったね。帝国の方で動きがあったのだけれど、それに伴って悪い方向に事が進んでいる」
学院長が話を始める。

「王国でも少し前から話題になっていたスキル屋が、王国と帝国の戦を回避するべく暗躍してくれていたようだ。スキル屋は帝国に住む者に対して、戦が始まった場合に与えたスキルを回収すると言ったそうだね。既に帝都の商業ギルドなどでスキルが使えなくなった者が多数おり、その話を聞いた民衆が、皇帝に対して戦を止めるように抗議を始めたそうだけれど、今ではそれが暴動にまで発展しているみたいだ」
確かに、自分の欲したスキルが皇帝の判断によって使えなくなるとなれば、暴動も起きるだろう。

「それの何が問題なの?暴動は良くないかもしれないけど、戦が無くなるかもしれないってことだよね?」

「これだけで済めば良かったんだが、あろうことか親父が欲を出した。帝国の士気はだだ下がりだから、勝てると踏んだようだ」
ダイス君が話を続ける。

「せっかく帝国が戦を取りやめる目が出て来たのに、今度は王国が攻めようとしてるってこと?」

「そうだ。今回は帝国が宣戦布告しているから、何もしなくても王国に利はあったはずだ。身勝手な理由で宣戦布告し、身勝手に取り止めるなんてことは許されない。取りやめるなら賠償金を支払う必要があるだろう。戦の準備をするだけでも金が掛かるからな。それだけで満足すればいいものを……」

「お前の親父は本当に頭が悪いな」
ロック君が毒を吐く。

「否定はしない」

「それで、なんで僕達を呼んだの?」

「帝国の士気が下がったとしても、王国が勝てる確証はない。なんで親父が勝てる気でいるのか、それはここにいるメンバーの異質さによるものだ」
異質なことに否定はしないけど、もう少し他の言い方はなかったのだろうか……。

「ロック君も徴兵されたの?学院長も?」

「ああ」「そうですね」

「前にダイス君には言ったけど、僕とお姉ちゃんは、行ったとしても戦うつもりはないよ。ダイス君の前で言ったらダメかもしれないけど、国のために自分の命を賭ける気も、誰かの命を奪う気もないから」

「権力で無理矢理にでも動かそうとしているんだと思う。従わなければ国外追放にするとか、一族皆処刑にするとかな」

「最低だな」

「国王には国王の考えがあるのですよ。全ての国民の上に立つのですから、憎まれ役を買って出ないといけないこともあるのでしょう。賛同をすることは出来ませんが……」

「俺も親父の考えに従うつもりはない。そこでだ、戦が始まる前にこの国を出てほしい。帝国はこのままいけば、宣戦布告を取り消すはずだ。戦に勝ったとしても、国民の信頼を損ねすぎるからな。後は親父が応じれば、今回の件は全て丸く収まる」
国王が僕達の力を勝手に当てにして暴走しているから、その力を無くそうってことだね。

「やるのは構わないが、それをすると俺達は徴兵されているのに、戦から逃げたことにならないか?その罪は重かったはずだ。俺は捕まる前に逃げるだけだが、エルク達には家族揃っての逃亡生活は辛いだろう」

「この事実は俺が揉み消すから心配不要だ。今回の件で決意が固まった。親父には早々に王座から退いてもらう」

「無理してない?大丈夫?」
ダイス君が色々と焦っているようにも見えるので、心配だ。

「大丈夫だ。色々と立て込んでいて疲れているだけだ」

「出来ることなら手伝うから、遠慮せず言ってね」

「すまない。ありがとう」

「ここからは私が話をします。皆さんには帝都の学院に留学してもらいます。知っての通り、王都の学院ではまともな教育が現在難しいですからね。エルク君もロック君もエレナちゃんも成績は優秀です。切磋琢磨するためにも帝都で学ぶことは今後、身になるはずです。引率は私が務めます。徴兵されていますので、戦が始まる前には王国に戻る予定でいますが、それは表向きです。トラブルに巻き込まれたことにして、停戦状態に戻るまで王都には戻りません。怪しまれるかもしれませんが、国王には貸しがいくつもあります。何か言われても黙らせることは容易です」
学院長は何者なのだろうか……。

「どうする?」
僕はお姉ちゃんに聞く。

「いいと思うわ。出発はいつなの?」

「問題なければ明日にでも出発する予定です」

「神父様に話をしないといけないし、お母さん達にもちゃんと説明したいから、もう少し時間が欲しいです」

「そうですね。では3日後にしましょうか。帝国に行くのはご両親と一緒でも構いませんので、よく話をしてください」
お母さん達と一緒でもいいのか。それは朗報だ。
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