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事後

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お母さん達と合流してからしばらくして、騎士から王都に戻ってもいいとの案内が掛かる。

王都内の建物はかなりの数が全壊しており、道には魔物だけでなく、逃げ遅れたであろう人の死体も転がっている。

僕は目を背けながら家に帰ってくる。

「うちは壊れてないね」
建てたばかりのマイホームは何事もなかったかのようにキレイなまま残っていた。

「微力ながら、離れる前にこの敷地に対して闇の結界を施しておきました。私の力を上回る魔物は運良く来なかったようですね」
ルフは頼んだこと以上のことをやってくれていた。

「ありがとう。お母さん達も逃してくれたし、ルフを討伐せずに契約して良かったよ」

「ありがたきお言葉感謝致します。これからも日々精進して参ります」

「うん。よろしくね」
ルフは悪魔だと忘れそうになるくらいに真摯な働きをしてくれる。

「私、教会に行ってくるね。怪我をした人が集まってると思うから」
お姉ちゃんは息つく間もなく人助けに行くと言う。

「気を付けて行ってくるのよ」
お母さんがお姉ちゃんを送り出す。

「僕も冒険者ギルドに行ってくるよ。もしかしたらまだ魔物が残ってるかもしれないし、ルフはお母さん達のことよろしくね」

「かしこまりました」

「気を付けてね」
僕は冒険者ギルドに行く。
殿として残ったカッシュさんのことが気がかりだったからだ。

冒険者ギルドの建物は、損壊はあるが原型は残っていた。

「エルクも無事だったか」
ギルドに入った所でカッシュさんに声を掛けられる。
無事だったようだ。

「カッシュさんも無事だったんですね。良かったです」

「聞きたいことがあるんだ。少しいいか?」

「はい」
カッシュさんに連れられてギルマスの部屋に入る。

「ご無事で何よりです」
ギルマスも無事だったようで安心する。

「エルクも無事だったか。何が起きたか覚えているか?」

「白いドラゴンにブレスを吐かれた所までは覚えてます」

「エルクも同じか。確認するが、エルクが倒したわけではないのか?」

「違うと思います」

「確認出来ている限りではあるが、魔物を相手に戦った者は皆助かっている」

「本当ですか?……良かったです」
あれだけの戦いで犠牲が出なかったのは奇跡かもしれない。

「ああ。俺の目の前で魔物に食われて死んだ者までもが怪我一つなく生きていた。何か知らないか?」

「死んだ人が生き返ったってことですか?」

「ああ、そうだ。何人もな。心当たりはないか?」

「わかりません。僕は目を覚ましたら北門の先の街道にいました。お姉ちゃんの所に落ちてきたらしいです」
ローザの両親は生き返ったし、僕がやった可能性は0ではないけど、1人2人ならまだしも、ギルマスの言う感じだとたくさんいそうだ。
ローザの両親を助けた時は僕が制御しきれないほどの魔力を使って、なんとか生き返らせれたのだ。
現実的ではない。

「落ちてきたか……。ブレスを打たれてから落ちてくるまで、何をしていたのかわからないのか?」

「覚えてないです」

「そうか。あの場にいて事情がわかりそうだったのはエルクくらいだったが、エルクもわからないとなるとお手上げだな。それとは別に今回の件でエルクには言っておかなければならないことがある」
カッシュさんが真剣な目をしてこちらを見る。
何を言われるかは想像がつく。

「はい」

「最後何が起きたかは別として、エルクのお陰で多くの人が助かった。それは紛れもない事実だ。しかし、エルクがどれだけ強かろうとあそこは子供の来るべきところではない。逃げろと言ったら、ちゃんと逃げろ」

「はい……」

「納得がいってなさそうだな」

「気持ちは嬉しいですけど、僕に出来ることがあるならやった方がいいと思うんです」

「命の危険があったことは理解しているか?それとも、自分は死なないとでも思っているのか?」

「死にそうになったのは分かってます。もしかしたら僕も一度死んで生き返ったのかもしれないですし……」

「わかっているなら、一つだけ言わせてくれ。エルクが大丈夫だと自信をもって言える時や、自分の命よりも大切なものを守る時はいい。しかし、今回みたいに他人を助ける為に死ぬかもしれない案件に関わりたいなら、子供であることをやめろ。家族にいつ死んでもいいように別れの挨拶をしてこい。あの場にいた者は皆その覚悟が出来ていた」

「カッシュさん達は死んでもいいと思っていたんですか?」

「死んでもいいなんて思っていない。だが、以前から覚悟は出来ていた。冒険者でもその覚悟が出来ていない者はあの場にいなかったし、家族や友人など自分の大切な者を守る為に動いていた者もいる」

「わかりました。よく考えます」

「そうしてくれ。そういえば、ギルドに来た理由を聞いてなかった。私でよければ用件を聞くし、クラリスの方がよければ呼んでくるがどうする?」

「特に用はないです。あの場に残ったカッシュさん達が気掛かりだっただけです」

「そうか。嬉しいことを言ってくれる」

「それじゃあ僕は帰ります。何か分かったことがあったら教えてください」

「ああ。気を付けて帰るんだよ」

今日は寮には戻らず、お母さん達と家で寝て、翌日一応学院に向かう。
学院は襲われなかったのか壊れていなかった。

「ルフさんが私の家まで守ってくれてたみたいだから、お礼を言っておいてもらってもいいかな?周りの家はほとんど全壊してたから、ルフさんがいなかったら私の家も無くなってたと思う」
教室でラクネに言われる。

「うん。伝えておくね」

「やっぱり、あんまり来てないね」
アンジェが教室に入ってくる。

「アンジェちゃんも無事だったんだね」

「ラクネちゃんもエルク君も無事でよかったわ。ロック君はまだ来てない?」

「来てないよ。アンジェちゃんはロック君と仲が良かったっけ?」
ラクネの言う通り、アンジェがロック君と仲がいいイメージはない。
話しているのを見た記憶もない。

「昨日、瓦礫が落ちてきて死にそうになっている時に、ロック君が助けてくれたのよ。お礼を言う前に行っちゃったから、ちゃんとお礼を言いたかったの」

「ロック君とは逃げるって言われて別れたけど、人助けをしてたんだね」

「ロック君って少し近付きづらかったけど、優しかったのね。意外な一面を見た気分よ。身体中の怪我もロック君が治してくれたわ」

「そういえば、ロック君なら私の所にも来たよ。魔力が無くなって休んでるところにきて、逃げるように言われたよ」
ロック君は僕の頼みを聞いてくれていたようだ。

「ロック君にラクネが救助の為に残ってるから、見つけたら無理矢理にでも逃げるように言ってって頼んだんだよ。ロック君は僕のお願いを聞いてくれたみたいだね」

「そうだったんだ。心配してくれてありがとう。ロック君は今日は休みかな……。いつもはもう来てるよね?」

「ロック君だけじゃなくて、ほとんど来てないよね」

「僕も行こうか迷ったし、それどころじゃない人ばかりなんじゃない?お姉ちゃんも今日は学院には行かずに教会に行くって言ってたよ。アンジェは今どこで寝泊まりしてるの?男子寮よりはマシだけど、女子寮も半壊してたよね?」
登校する前に寮を見たら、男子寮の半分は瓦礫に埋もれており、女子寮も所々壊れていた。

僕の部屋が無事なのか確認したかったけど、立ち入り禁止となっており、確認は出来なかった。
僕の部屋が壊れているかどうか微妙な所まで建物は壊れていた。

「男女分けられて訓練室で雑魚寝だったわ。寮以外に行く所が無い人はみんなそこね。だから、こんな状態でも授業を受けに来たのよ」
学院が避難所みたいになっているみたいだ。

「早く住めるところが出来るといいね」

「これでも村にいる時よりは居心地がいいから、そんなに苦ではないけどね」

「確かに村よりは環境が良さそうだけど、何か困ったことがあったら言ってね」
生前ではあるけど、アンジェとは同郷だ。
あの神の被害にあった被害者仲間でもある。

こう言う時だからこそ手を貸したい。

「困ったことがあったらお願いね」
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