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姉の決意
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教会を出た後、家具などの必要な物を買い、家に戻ってくる。
「ルフ、出てきて」
僕はルフを呼ぶ。
「お呼びでしょうか」
「ルフは僕の執事ってことにしてたけど、これからはこの家のことを任せてもいいかな?」
「かしこまりました」
執事にしたはいいけど、特に頼むこともなかったので、家のことをお願いすることにする。
「掃除とか畑仕事とか、やり方は少しずつ覚えてね」
「ご期待に添えられますよう、最善を尽くします。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします」
ルフが両親にお辞儀をする。
「私達は大丈夫よ?」
お母さんが遠慮するけど、ルフが家にいてほしいのには他に理由がある。
「学院に貴族の友達がいるんだけど、その友達が命を狙われたのを助けたことがあって、王位継承権を争っての権力争いに巻き込まれたみたいなんだ。助けたことには何も後悔はしてないし、悪いことをしたとも思ってないけど、邪魔された相手からすると僕のことを恨んでるかもしれないんだ。僕とお姉ちゃんはある程度自衛出来るけど、お母さんとお父さんは心配だから、ルフには2人の護衛も期待して、家のことをお願いしたんだよ」
「承知しております」
「……そういうことなら、お願いするわね」
「お任せ下さい」
「今度友達を連れてくるね」
「楽しみにして待ってるわ」
「今日はもう遅くなっちゃったから、僕が持ってるご飯を並べるね」
僕はアイテムボックスから調理済みのご飯をテーブルの上に並べる。
「ありがとう。美味しそうだわ」
ご飯を食べながら色々と話をする。
お姉ちゃんも話をしているけど、学院の話とかリーナさんの話とか他愛のない話ばかりだ。
「ごちそうさま。美味しかったわ」
「後で地下の貯蔵部屋に食材を入れておくから好きに使ってね」
「ありがとう。いつもは寮で寝泊まりするのよね?」
「うん。家が近くでも寮で生活するように言われているよ。何か用があれば学院に来てもらってもいいし、ルフに言ってくれれば、僕には話は伝わるよ」
ルフとは契約で繋がっているので、離れていても意識すれば会話をすることが出来る。
「そうするわね。それじゃあエレナの話を聞こうかしら」
ご飯も全員食べ終わり、落ち着いたところでお母さんがお姉ちゃんに、教会で言っていた話をするように促す。
「うん。学院を卒業したらやりたいことがあるの……。私が神父様に助けてもらったように、村を回って怪我や病気を治したり、食料を届けたりして、困ってる人を助けたい」
お姉ちゃんは言いにくそうにしつつも、力強く言った。
「エレナがやりたいというなら、お母さんは反対はしないわ。でも、そうなるとあまり一緒にはいられないのね」
「うん……。全く帰ってこないなんてことにはしないつもりだけど、王国に限らず、帝国領や魔族領にも行きたいと思っているから、あまり帰れないと思う」
「計画はもう立ててるのか?」
「神父様に相談して、少しずつ準備は進めてるよ」
「教会の仕事として行くのか?神父様も同行してくれるのか?」
「ううん。神父様には相談に乗ってもらっているだけで、教会は関係ないよ。1人でも行くつもりだけど、神父様からは1人だと何かあった時に困るから、志を共にする人を見つけた方がいいだろうって言われてる。でも、私のやろうとしていることにはすごくお金が掛かるみたいなの。商人と違って持っていった食料を売るわけではないから……。神父様は個人ではなくて教会の資金を使っているから、定期的に王都近くの村を回ることが出来るって言ってたけど、私は他でお金を稼がないといけない。だから、一緒にやってくれる人を見つけるのは難しいだろうって」
お姉ちゃんのやろうとしていることは、教会とか、領主とか、資金力のある組織がやることだ。
一個人がやることではない。
「賛成してやりたいが、それだと賛成するわけにはいかない。エレナのやろうとしていることは立派だし、親として誇らしい。それでも、かわいい娘が険しい道に向かっていくのを手放しで応援は出来ない」
お父さんは反対のようだ。
お父さんの気持ちも分かる。お姉ちゃんは他人の為にわざわざ辛い道のりを歩もうとしているのだから。
「……1人じゃなかったら、賛成してくれるの?」
お姉ちゃんがお父さんに聞く。
「1人だったとしても、エレナが幸せなら賛成はする。逆に、誰かと一緒だとしても辛い生き方になるなら賛成は出来ない」
お父さんはお姉ちゃんに幸せに生きて欲しいだけのようだ。
「お父さんを心配させないように、ちゃんと計画を立ててくるから、また話を聞いてくれる?」
「もちろんだよ。勘違いしないで欲しいが、お父さんも反対したいわけではないんだ」
「大丈夫。お父さんが私のことを思って言ってくれてるってことはわかってるから」
「本当にいい子に育ってくれた。……エルクは何かやりたいことは見つかったかい?」
お父さんに聞かれる。
「……まだ何も考えてないよ。今は学院のことで精一杯」
「何かやりたいことが見つかったらちゃんと言うんだよ」
「うん」
「そういえば、エルクに聞きたいことがあったの」
お姉ちゃんが思い出したように言う。
「なに?」
「エルクが模擬戦で負けたって噂を聞いたんだけど、本当に負けたの?」
「……うん。特待生として少し前に転入してきたロック君に何も出来ずに負けたよ」
「……エルクの仇は私が討つわ」
「勝手に殺さないで。それに、ロック君は対抗戦に出るから、そこで自分で勝つよ」
「そう……。エルクより先に当たったら倒しておくわね」
「僕はお姉ちゃんと戦うのを楽しみにしているからね。ロック君にもだけど、お姉ちゃんに勝てるように訓練を頑張っているんだから」
「それは楽しみね。でも訓練をしているのはエルクだけじゃないからね。私も前より強くなってるから。負けないわよ」
尚更ロック君には負けられなくなった。
やりたいことを見つけたお姉ちゃんは、来年も学院に通うかはわからない。
学院長からはいつでも卒業資格はもらえると前に聞いているのだから。
全身全霊、僕の全てをぶつけないと。
負けて後悔しないように。
「ルフ、出てきて」
僕はルフを呼ぶ。
「お呼びでしょうか」
「ルフは僕の執事ってことにしてたけど、これからはこの家のことを任せてもいいかな?」
「かしこまりました」
執事にしたはいいけど、特に頼むこともなかったので、家のことをお願いすることにする。
「掃除とか畑仕事とか、やり方は少しずつ覚えてね」
「ご期待に添えられますよう、最善を尽くします。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします」
ルフが両親にお辞儀をする。
「私達は大丈夫よ?」
お母さんが遠慮するけど、ルフが家にいてほしいのには他に理由がある。
「学院に貴族の友達がいるんだけど、その友達が命を狙われたのを助けたことがあって、王位継承権を争っての権力争いに巻き込まれたみたいなんだ。助けたことには何も後悔はしてないし、悪いことをしたとも思ってないけど、邪魔された相手からすると僕のことを恨んでるかもしれないんだ。僕とお姉ちゃんはある程度自衛出来るけど、お母さんとお父さんは心配だから、ルフには2人の護衛も期待して、家のことをお願いしたんだよ」
「承知しております」
「……そういうことなら、お願いするわね」
「お任せ下さい」
「今度友達を連れてくるね」
「楽しみにして待ってるわ」
「今日はもう遅くなっちゃったから、僕が持ってるご飯を並べるね」
僕はアイテムボックスから調理済みのご飯をテーブルの上に並べる。
「ありがとう。美味しそうだわ」
ご飯を食べながら色々と話をする。
お姉ちゃんも話をしているけど、学院の話とかリーナさんの話とか他愛のない話ばかりだ。
「ごちそうさま。美味しかったわ」
「後で地下の貯蔵部屋に食材を入れておくから好きに使ってね」
「ありがとう。いつもは寮で寝泊まりするのよね?」
「うん。家が近くでも寮で生活するように言われているよ。何か用があれば学院に来てもらってもいいし、ルフに言ってくれれば、僕には話は伝わるよ」
ルフとは契約で繋がっているので、離れていても意識すれば会話をすることが出来る。
「そうするわね。それじゃあエレナの話を聞こうかしら」
ご飯も全員食べ終わり、落ち着いたところでお母さんがお姉ちゃんに、教会で言っていた話をするように促す。
「うん。学院を卒業したらやりたいことがあるの……。私が神父様に助けてもらったように、村を回って怪我や病気を治したり、食料を届けたりして、困ってる人を助けたい」
お姉ちゃんは言いにくそうにしつつも、力強く言った。
「エレナがやりたいというなら、お母さんは反対はしないわ。でも、そうなるとあまり一緒にはいられないのね」
「うん……。全く帰ってこないなんてことにはしないつもりだけど、王国に限らず、帝国領や魔族領にも行きたいと思っているから、あまり帰れないと思う」
「計画はもう立ててるのか?」
「神父様に相談して、少しずつ準備は進めてるよ」
「教会の仕事として行くのか?神父様も同行してくれるのか?」
「ううん。神父様には相談に乗ってもらっているだけで、教会は関係ないよ。1人でも行くつもりだけど、神父様からは1人だと何かあった時に困るから、志を共にする人を見つけた方がいいだろうって言われてる。でも、私のやろうとしていることにはすごくお金が掛かるみたいなの。商人と違って持っていった食料を売るわけではないから……。神父様は個人ではなくて教会の資金を使っているから、定期的に王都近くの村を回ることが出来るって言ってたけど、私は他でお金を稼がないといけない。だから、一緒にやってくれる人を見つけるのは難しいだろうって」
お姉ちゃんのやろうとしていることは、教会とか、領主とか、資金力のある組織がやることだ。
一個人がやることではない。
「賛成してやりたいが、それだと賛成するわけにはいかない。エレナのやろうとしていることは立派だし、親として誇らしい。それでも、かわいい娘が険しい道に向かっていくのを手放しで応援は出来ない」
お父さんは反対のようだ。
お父さんの気持ちも分かる。お姉ちゃんは他人の為にわざわざ辛い道のりを歩もうとしているのだから。
「……1人じゃなかったら、賛成してくれるの?」
お姉ちゃんがお父さんに聞く。
「1人だったとしても、エレナが幸せなら賛成はする。逆に、誰かと一緒だとしても辛い生き方になるなら賛成は出来ない」
お父さんはお姉ちゃんに幸せに生きて欲しいだけのようだ。
「お父さんを心配させないように、ちゃんと計画を立ててくるから、また話を聞いてくれる?」
「もちろんだよ。勘違いしないで欲しいが、お父さんも反対したいわけではないんだ」
「大丈夫。お父さんが私のことを思って言ってくれてるってことはわかってるから」
「本当にいい子に育ってくれた。……エルクは何かやりたいことは見つかったかい?」
お父さんに聞かれる。
「……まだ何も考えてないよ。今は学院のことで精一杯」
「何かやりたいことが見つかったらちゃんと言うんだよ」
「うん」
「そういえば、エルクに聞きたいことがあったの」
お姉ちゃんが思い出したように言う。
「なに?」
「エルクが模擬戦で負けたって噂を聞いたんだけど、本当に負けたの?」
「……うん。特待生として少し前に転入してきたロック君に何も出来ずに負けたよ」
「……エルクの仇は私が討つわ」
「勝手に殺さないで。それに、ロック君は対抗戦に出るから、そこで自分で勝つよ」
「そう……。エルクより先に当たったら倒しておくわね」
「僕はお姉ちゃんと戦うのを楽しみにしているからね。ロック君にもだけど、お姉ちゃんに勝てるように訓練を頑張っているんだから」
「それは楽しみね。でも訓練をしているのはエルクだけじゃないからね。私も前より強くなってるから。負けないわよ」
尚更ロック君には負けられなくなった。
やりたいことを見つけたお姉ちゃんは、来年も学院に通うかはわからない。
学院長からはいつでも卒業資格はもらえると前に聞いているのだから。
全身全霊、僕の全てをぶつけないと。
負けて後悔しないように。
応援ありがとうございます!
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