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フランベルグ領へ

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リリスちゃんを狙う賊を捕まえた翌日の夜、ダイス君から無事に会議は終わったと聞いた。

賊を捕まえたわけだけど、リリスちゃんを人質に取られなかったというだけで、第二王子派が関与していると言及するには証拠を集める時間が足りなかったとのことで、当初の予定通りに話は進んだらしい。

聞きはしたけど、会議の内容をそもそも知らないので、悪い結果ではなかったのだろうとしか感想はない。

僕としてはリリスちゃんや、無関係な人が無事だったというだけで満足である。

これでリリスちゃんの危機は去ったわけだけど、最終日もちゃんと護衛を続ける。
護衛とは関係なく、お姉ちゃん達の劇をもう一度一緒に見る約束をしているので、一緒に行動することに変わりはない。

お姉ちゃん達の劇をみんなで見て、2度目でもやっぱり感動した所で学院祭は幕を閉じた。

学院祭が終わり、そろそろ冬になる。

とういことは、そろそろお母さんに会えるということだ。
久しぶりなので、楽しみだ。
話したいことがいっぱいある。

その前にローザの所の領地にも行く。
お礼をしたいとのことだったけど、堅苦しいものではなく旅行だと言っていたので、こっちも楽しみだ。

日程的にはカツカツだけど、楽しいことが続くので長期休暇が待ち遠しい。

休みの日、僕はお姉ちゃんと買い物に来ている。
両親へのお土産を選ぶ為だ。

「何がいいかな?」
僕はお姉ちゃんに聞く。

「そうね……。エルクがもらった家は完成しそうなの?」

「完成したよ。家の中は空っぽだけどね」

「お母さん達が王都に来てくれるかで必要なものが変わってくるわね。とりあえず保存の効く食べ物は必要として、暖の取れる物もあった方がいいかな。村でも、王都でも、どちらでも使えるやつがいいと思う」

「それじゃあ、その辺りを買いながら、雑貨屋とかも見てみるのがいいよね」

「それがよさそうね。そういえば手紙は出しておいてくれたのよね?」

「冬になる前に帰るって手紙なら出したよ。お姉ちゃんが書いた手紙もちゃんと入れてあるよ。返事はいらないって書いたから返ってきてはないけど、王都に住むかどうかも考えてくれてはいるんじゃないかな?」
村から手紙を出そうと思うと、手紙を届けられた時に渡すか、近くの街まで持っていかないといけない。
近くの街まで持っていくのは大変なので、緊急のこと以外で返事はいらないと書いておいた。

お姉ちゃんとお店を回り、王都でしか手に入らなそうな食べ物を中心に買い込む。
それから干し肉とお酒も多めに買った。

暖を取るには何がいいかなって考えた結果、暖かそうな布団を2セット購入した。

「当日私はどうしたらいい?」
お姉ちゃんに聞かれる。

「中等部の女子寮はわかるよね?女子寮の前に集合だよ。手土産とかは僕が用意しておくから、お姉ちゃんは自分の着替えとかだけ持ってきてくれれば大丈夫だよ」

「わかったわ」

そして当日、フランベルグ領に向かって出発する。

フレイの所の別荘に行った時と少しだけメンバーが変わる。
エミリーは別の用事があって参加することが出来ず、お姉ちゃんとアンジェが追加で参加している。

ラクネがアンジェを誘ったということになっているけど、実際にはクラスに馴染めていないアンジェを気にして、ローザがラクネに声を掛けるように頼んだのを僕は知っている。

朝から出発して2日後の夕方くらいにフランベルグ家の屋敷に到着する予定だ。

出発した夜、アンジェに話したいことがあると言われた。
なんだろうか?

他の人に聞かれたく無い話らしいので、執事兼護衛として今回も参加しているルドガーさんに一声掛けてから、みんなから離れる。

「話ってなに?」
僕はずっと俯いているアンジェに聞く。

「謝りたいことがあるの。ずっと謝らないとって思ってたんだけど、勇気が出なくて黙ってた」
何かアンジェにされただろうか?
謝られるどころか、アンジェが転入して少ししてからちょっと話しただけで、あまり関わりがない。
なので当然思い当たることもない。

「……特に謝られるようなことをされた記憶はないんだけど?」

「前に珍しいスキルを持っていたからあの学院に転入したって話をしたでしょ?」

「うん、覚えてるよ」

「私ね、今アイテムボックスっていうスキルが使えるの。心当たりはない?こうやって何も無い所から物を出し入れするスキル」
アンジェは空中から服を取り出して、また戻すように消した。
アンジェは本当にアイテムボックスのスキルが使えるらしい。

自分も使えるからこそ、僕も同じスキルが使える事にも気づいたってことだろうけど、それでなんで謝る事になるのだろうか?
もしかして、僕がアイテムボックスを使える事をみんなに話しちゃったとかかな?

「アンジェも使えるんだね。気づいているみたいだから正直に答えるけど、僕も使えるよ。それで、なんでそれが謝る事に繋がるの?」

「えっ!?」
アンジェは僕の言った事に驚く。
あれ?僕が使えることをもしかして気づいてなかった?

「どうしたの?」

「アイテムボックスのスキルが今も使えるの?」

「……使えるよ。使っているところを見られちゃったってことだと思ったんだけど……。もしかして、気づいてなかった?」
気づいていなかったのであれば、僕が使えるということを誤って教えてしまったということになる。
まあ、騒ぎにして面倒事にして欲しくないというだけなので、アンジェが他の人に黙っててくれればそれでいいんだけど……。

「いや……、あの……、えーっとね、アイテムボックスのスキルをエルク君が持ってたのは知ってたんだけど、今も持ってるとは思ってなかったから……」
アンジェが困惑しながら話す。
僕は意味がわからない。

「えーと、結局何が言いたかったの?よく話がわからないんだけど……?」

「私の元々持ってたスキルって実はアイテムボックスじゃないの。このスキルは……エルク君から前に奪ってしまったの。だからエルク君が今でもアイテムボックスのスキルを使える事に驚いたのよ。ごめんなさい……」
アンジェは申し訳なさそうに言った後に頭を下げた。

スキルを奪ったと聞いて僕は強奪のスキルがすぐに頭に浮かぶ。

そして、アイテムボックスのスキルが一度なくなっていたことを思い出した。
アンジェが学院に転入してきた頃だったので、タイミングとしてもぴったりだ。

「スキルを奪ったってどういうこと?」
僕は知らないフリをして聞く事にする。

「元々は強奪ってスキルを使えたんだけど、そのスキルは相手のスキルを奪うことが出来るスキルなのよ。私は強奪のスキルをエルク君に使ってしまったの。奪うスキルだから、エルク君がアイテムボックスのスキルを使えなくなったと思ってたんだけど……」
やっぱり強奪だった。

確かにアンジェの言うとおり、アイテムボックスのスキルは1度奪われている。
今使っているアイテムボックスは創りなおしただけなのだから。

「奪うスキルじゃなかったってことじゃないかな?実際には奪われてないから、僕は何も気にしてないよ。だから奪おうとしたこと自体も許すよ」
奪われたと認めると、なんで今使えるのかを説明しないといけなくなるので、そもそも奪われていないということで通すしかない。

「……ごめんね。ありがとう」

ペンが無かったり、空腹になったりと実害がなかったわけではないが、忘れていたくらいなので怒ったりはしない。

ただ、アンジェには聞かなければならないことがある。
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