125 / 201
妹
しおりを挟む
翌日、ラクネの家を出た僕とリリスちゃんは中等部の女子寮の前へと向かう。
今日はラクネとは別行動だ。
ラクネはリーナさんと学院祭を回るらしい。
僕はローザ達と回る約束をしているので、女子寮の前で待ち合わせをしている。
女子寮の前に着くと、既にローザ達が外で待っていた。
ルドガーさんも一緒だ。
「お待たせ。ルドガーさんお久しぶりです。今日はフレイの護衛ですか?」
「エルク様、その節はお世話になりました。本日は私が代表して皆様の護衛をさせて頂きます。お嬢様方全員に専属の護衛を付けられますと大人数になりすぎてしまいますので」
「そうですよね。またお願いします」
「お任せください」
「エルク、少しいいかな?」
到着してすぐフレイに呼ばれて、みんなと少し距離をとる
「どうしたの?」
僕はフレイに聞く
「私と話をした後から元気がなかったわよね?大丈夫?」
「大丈夫だよ。フレイの話を聞いて思うところがあって悩んじゃってたけど、そんなことはなさそうだってわかったからね」
「そう。よかったわ」
「心配させてゴメンね。ありがとう」
僕とフレイはみんなのところに戻る。
「焼きそばを代わりに売ってくれてありがとうね」
僕はちゃんとお礼を言えてなかった気がしたので、改めてお礼をする。
「気にしなくていいわよ。置いてあるのを売るだけだし、一緒に私達が作った料理も売れたからね。元気になったみたいで良かったわ」
ローザに言われる
「うん、心配してくれてありがとう」
「エルクに1つ聞きたいのだけれど、なんでリリス様と一緒にエルクがいるの?」
ローザに聞かれる。リリス…様?
ローザよりも上位の貴族なのだろうか。
「リリスちゃんとは前に1人で依頼を受けた時にたまたま知り合ったんだよ。元々付いていた護衛の人があんまりな人達だったから代わりに僕が護衛することにしたんだ。気持ち的には護衛というより遊びに誘ったって感じだけど」
僕はローザ達に先日の護衛と揉めた件を説明する。
「そんな護衛聞いたことないわね。貴族の護衛をさせるのだから、依頼を受ける側もある程度選別されるはずだけど、相当なハズレを引いてしまったのかしら。エルクが護衛してくれる状況だったのだし、すぐにでも解任して正解だったわね。そんな護衛だと、本当に危険な状況になった時に見捨てて逃げそうね。それに守るどころか危険を作りそうで怖いわ」
ローザに言われてやっぱりあの人達はおかしかったんだなと再認識する。
「そういうわけだからリリスちゃんも一緒に学院祭を回ってもいいかな?」
「私はいいわよ。敵対派閥ってわけでもないし。フレイとアメリもいいかしら?」
やっぱり貴族は派閥とか気にしてるんだね。
それからやっぱりリリスちゃんは貴族のようだ。
「いいわよ」「構わない」
「ありがとう」
ローザ達がリリスちゃんに自己紹介する。
面識自体はあるようだけど、家名も名乗るガチガチのやつをしている。
「あの……そんなにかしこまらないで下さい。皆さんのところに私がお邪魔しているのです」
「リリスちゃんもこう言ってるし、そんなに気を張らなくてもいいんじゃないの?そもそも学院では貴族だとか平民だとかは表向きかもしれないけど関係ないんでしょ?」
堅苦しい空気では楽しみが半減すると思ったのでローザ達に言う。
「そうね。そうさせてもらうわ。それからエルク、ちょっといいかしら?」
今度はローザとみんなから距離をとる
「一応確認だけど、リリス様が誰かはちゃんとわかって護衛しているんでしょうね?」
ローザに聞かれる。
「誰ってどういうこと?貴族だってことはわかってるよ。ローザよりも格が上ってことはかなり偉い貴族みたいだね」
「わかってなかったようね。貴族の護衛をする時はちゃんとどこの家の者かを確認するようにした方がいいわよ。派閥とかは今のところエルクには関係ないからそこまで気にする必要はないけど、護衛する方法なんかも変わるだろうから。それからリリス様は王族よ。第一王女になるわ」
「え?……とういうことは、リリスちゃんはダイスくんの妹なの?」
ローザの言ったことに驚く。
ダイスくんに妹がいる話は知ってたけど、リリスちゃんがそうだとは知らなかった。
「そうよ。ちなみに私達3人の家は第一王子側の派閥に属しているわ。リリス様を女王にさせようとしている派閥もあるけど、実質的には第一王子側の派閥みたいなものだし、敵対する必要もないから良かったけど、私達が第二王子側だったら断るしかなかったわよ」
「そうなんだね。教えてくれてありがとう」
リリスちゃんに友達がいない理由がわかった。
ダイスくんが前に教えてくれた。
ダイスくんのお母さんの事で、妹も孤立してしまっていると。
「ローザ達もリリスちゃんと友達になってあげてね。無理にとは言わないけど、リリスちゃんはいい子だよ」
「立場的に私から友達になってとは言いにくいわ。だけど、リリス様が友達だと思って下さるなら、私個人としては断る理由はないわ」
「貴族って面倒だね」
「それが上に立つものの責務なのよ」
貴族は貴族で大変なんだなぁと思う。
僕達はリリスちゃん達のところへと戻る。
「エルク達は昨日までどこを回っていたんだ?」
アメリに聞かれたので、昨日はお姉ちゃん達の劇を見て、一昨日は中等部で騎士と学生の模擬戦を観戦していたと答える。
「あの劇、スゴい話題になってるのよね。見たかったわ」
ローザが呟く。
「最終日もやるって言ってたよ」
「昨日もスゴい人で混雑してたんでしょ?さらに人は増えるだろうから見にいけないわよ。昨日行かなかったことを後悔してるわ」
ローザは劇を見なかったことを残念がっている。
「お姉ちゃんに特別席を貸してもらえないか頼んでみようか?」
「特別席って?」
「観客席の一段高い所に天幕の張られた所があるでしょ?あそこだよ」
「あそこって使っていいものなのかしら?」
「いいみたいだよ。僕達は昨日そこから観たよ。スゴかったから人混みが嫌だって理由で見ないのはもったいないよ。リリスちゃんはもう一回観たい?」
「観たい!」
「それなら最終日にみんなで観れるようにお姉ちゃんにお願いしておくよ。少し狭いかもしれないけど、それは許してね」
「いいのかしら?」
「一応、お姉ちゃんに聞いてみないと断言は出来ないけど、ラクネがリーナさんに特別席を用意してあるって元々言われてたみたいだから大丈夫なはずだよ。今日の夜にお姉ちゃんに会うから聞いておくね」
「ありがとう。お願いするわね」
最終日はローザ達とお姉ちゃん達の劇をもう一度観ることになった。
「ローザ達はどこを回ったの?」
「昨日までは自分達の出し物をやってたから、順番に中等部の出し物を少し見たくらいよ」
「そうなんだ。今日の予定とかって何か考えてる?」
「実を言うと最近エルクの元気がなかったから、エルクを楽しませようと3人で考えてたんだけど、もう元気になってたから予定が狂っちゃったわ」
「気を使わせてたみたいだね。ありがとう」
「そういうわけだから特に予定は決めてないわ。高等部の方は最終日に行くことになるわけだし、初等部の方に行ってみようかしら?」
「僕はそれでいいよ。リリスちゃんもいいかな?」
「はい」
僕達は初等部に行き、目的は決めず目に入った出し物を覗いていく。
「エルク、少し離れましょう」
楽しく見ていた時、ローザから言われる。
離れるって何から?って思ったけど、ローザが見ている方を見て何から離れるのかはわかった。
理由はわからないけど……
そこには僕よりは年上だろう多分初等部の男の子がいた。
護衛を連れており、同級生と思われる男の子が2人一緒にいる。
僕達だけでなく、他の人も少し距離を空けているようだ。
一緒にいる男の子2人は友達なのかなって思ったけど、なんだか違う気がする。
僕の主観でしかないけど、友達っていうより従者って感じだ。
中心の男の子は一見楽しそうに見えるけど、なんだか寂しげに見えなくもない。
向こうも僕達の方を見た後、意図的に離れるようお互いに距離をとった。
「さっきの男の子は誰なの?」
僕はローザに聞く。
「あの方は第二王子のクウザ様よ」
「そうなんだ。なんだかピリピリしてたね。それに周りの空気もおかしかった」
「それは仕方ないわよ。少し前までは第二王子が王座に就きそうだったのに、今は第一王子派が優勢になってきている。今が第二王子派にとって生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ。周りもどちらに就くべきか様子を伺っているの」
「みんな仲良く出来ればいいのにね」
僕は思ったことをポロッと口に出してしまう。
「無理よ。王座に就けなかった方の末路は悲惨だもの。それを知っていて手を取り合うなんて出来ない。それに私も無関係ではないわ。クウザ様が王座に就かれたら、フランベルグ家の権力は落ちてしまうわ。その影響はフランベルグ領の民にまで及ぶもの」
「軽々しく言ってごめんね」
「エルクが謝ることではないわよ。それに私も内心はそう思うわ」
「王座に就けなかった方の末路は悲惨だって言ったでしょ?どうなるの?」
少し聞くのが怖かったけど、知らなかったとはいえダイスくんに肩入れしてしまっている僕は聞かないといけないと思った。
後悔しているわけではないけど、僕がいなければあの装備は手に入ってない可能性が高い。
そうなればダイスくんの派閥が優勢になることもなかった。
「王座に就いた方がどうするかだけど、今までの通例だと軟禁のような状態になるわね。ある程度の自由はあるけど、反逆されないとも限らないから、牙を剥くことが出来ないようにはするのよ。罪を犯しているわけではないから殺されることはないと思いたいけど、何かしら理由を付けて処刑させるかもしれないわね」
「ダイスくんが王座に就いたら、さっきの男の子がそうなるのかな?」
「私にはわからないわ。エルクが何を思っているのかは大体分かるけど、知りたいなら本人に聞くしかないわ。ただ、甘い選択をすれば爆弾を背負った状態で王政を敷くことになるし、厳しい選択をすれば周りから反発を買うわ。どちらにしても茨の道になるでしょうけど、それを覚悟して決めているはずだからあまり引っ掻き回すべきではないわよ」
「うん、わかったよ」
ローザにはこう返事をしたけど、既に僕が引っ掻き回してしまっている以上、ダイスくんに話を聞かないといけない。
クウザって子のことはよく知らないけど、結果として僕のせいで処刑されたりするのは嫌だからだ。
今日はラクネとは別行動だ。
ラクネはリーナさんと学院祭を回るらしい。
僕はローザ達と回る約束をしているので、女子寮の前で待ち合わせをしている。
女子寮の前に着くと、既にローザ達が外で待っていた。
ルドガーさんも一緒だ。
「お待たせ。ルドガーさんお久しぶりです。今日はフレイの護衛ですか?」
「エルク様、その節はお世話になりました。本日は私が代表して皆様の護衛をさせて頂きます。お嬢様方全員に専属の護衛を付けられますと大人数になりすぎてしまいますので」
「そうですよね。またお願いします」
「お任せください」
「エルク、少しいいかな?」
到着してすぐフレイに呼ばれて、みんなと少し距離をとる
「どうしたの?」
僕はフレイに聞く
「私と話をした後から元気がなかったわよね?大丈夫?」
「大丈夫だよ。フレイの話を聞いて思うところがあって悩んじゃってたけど、そんなことはなさそうだってわかったからね」
「そう。よかったわ」
「心配させてゴメンね。ありがとう」
僕とフレイはみんなのところに戻る。
「焼きそばを代わりに売ってくれてありがとうね」
僕はちゃんとお礼を言えてなかった気がしたので、改めてお礼をする。
「気にしなくていいわよ。置いてあるのを売るだけだし、一緒に私達が作った料理も売れたからね。元気になったみたいで良かったわ」
ローザに言われる
「うん、心配してくれてありがとう」
「エルクに1つ聞きたいのだけれど、なんでリリス様と一緒にエルクがいるの?」
ローザに聞かれる。リリス…様?
ローザよりも上位の貴族なのだろうか。
「リリスちゃんとは前に1人で依頼を受けた時にたまたま知り合ったんだよ。元々付いていた護衛の人があんまりな人達だったから代わりに僕が護衛することにしたんだ。気持ち的には護衛というより遊びに誘ったって感じだけど」
僕はローザ達に先日の護衛と揉めた件を説明する。
「そんな護衛聞いたことないわね。貴族の護衛をさせるのだから、依頼を受ける側もある程度選別されるはずだけど、相当なハズレを引いてしまったのかしら。エルクが護衛してくれる状況だったのだし、すぐにでも解任して正解だったわね。そんな護衛だと、本当に危険な状況になった時に見捨てて逃げそうね。それに守るどころか危険を作りそうで怖いわ」
ローザに言われてやっぱりあの人達はおかしかったんだなと再認識する。
「そういうわけだからリリスちゃんも一緒に学院祭を回ってもいいかな?」
「私はいいわよ。敵対派閥ってわけでもないし。フレイとアメリもいいかしら?」
やっぱり貴族は派閥とか気にしてるんだね。
それからやっぱりリリスちゃんは貴族のようだ。
「いいわよ」「構わない」
「ありがとう」
ローザ達がリリスちゃんに自己紹介する。
面識自体はあるようだけど、家名も名乗るガチガチのやつをしている。
「あの……そんなにかしこまらないで下さい。皆さんのところに私がお邪魔しているのです」
「リリスちゃんもこう言ってるし、そんなに気を張らなくてもいいんじゃないの?そもそも学院では貴族だとか平民だとかは表向きかもしれないけど関係ないんでしょ?」
堅苦しい空気では楽しみが半減すると思ったのでローザ達に言う。
「そうね。そうさせてもらうわ。それからエルク、ちょっといいかしら?」
今度はローザとみんなから距離をとる
「一応確認だけど、リリス様が誰かはちゃんとわかって護衛しているんでしょうね?」
ローザに聞かれる。
「誰ってどういうこと?貴族だってことはわかってるよ。ローザよりも格が上ってことはかなり偉い貴族みたいだね」
「わかってなかったようね。貴族の護衛をする時はちゃんとどこの家の者かを確認するようにした方がいいわよ。派閥とかは今のところエルクには関係ないからそこまで気にする必要はないけど、護衛する方法なんかも変わるだろうから。それからリリス様は王族よ。第一王女になるわ」
「え?……とういうことは、リリスちゃんはダイスくんの妹なの?」
ローザの言ったことに驚く。
ダイスくんに妹がいる話は知ってたけど、リリスちゃんがそうだとは知らなかった。
「そうよ。ちなみに私達3人の家は第一王子側の派閥に属しているわ。リリス様を女王にさせようとしている派閥もあるけど、実質的には第一王子側の派閥みたいなものだし、敵対する必要もないから良かったけど、私達が第二王子側だったら断るしかなかったわよ」
「そうなんだね。教えてくれてありがとう」
リリスちゃんに友達がいない理由がわかった。
ダイスくんが前に教えてくれた。
ダイスくんのお母さんの事で、妹も孤立してしまっていると。
「ローザ達もリリスちゃんと友達になってあげてね。無理にとは言わないけど、リリスちゃんはいい子だよ」
「立場的に私から友達になってとは言いにくいわ。だけど、リリス様が友達だと思って下さるなら、私個人としては断る理由はないわ」
「貴族って面倒だね」
「それが上に立つものの責務なのよ」
貴族は貴族で大変なんだなぁと思う。
僕達はリリスちゃん達のところへと戻る。
「エルク達は昨日までどこを回っていたんだ?」
アメリに聞かれたので、昨日はお姉ちゃん達の劇を見て、一昨日は中等部で騎士と学生の模擬戦を観戦していたと答える。
「あの劇、スゴい話題になってるのよね。見たかったわ」
ローザが呟く。
「最終日もやるって言ってたよ」
「昨日もスゴい人で混雑してたんでしょ?さらに人は増えるだろうから見にいけないわよ。昨日行かなかったことを後悔してるわ」
ローザは劇を見なかったことを残念がっている。
「お姉ちゃんに特別席を貸してもらえないか頼んでみようか?」
「特別席って?」
「観客席の一段高い所に天幕の張られた所があるでしょ?あそこだよ」
「あそこって使っていいものなのかしら?」
「いいみたいだよ。僕達は昨日そこから観たよ。スゴかったから人混みが嫌だって理由で見ないのはもったいないよ。リリスちゃんはもう一回観たい?」
「観たい!」
「それなら最終日にみんなで観れるようにお姉ちゃんにお願いしておくよ。少し狭いかもしれないけど、それは許してね」
「いいのかしら?」
「一応、お姉ちゃんに聞いてみないと断言は出来ないけど、ラクネがリーナさんに特別席を用意してあるって元々言われてたみたいだから大丈夫なはずだよ。今日の夜にお姉ちゃんに会うから聞いておくね」
「ありがとう。お願いするわね」
最終日はローザ達とお姉ちゃん達の劇をもう一度観ることになった。
「ローザ達はどこを回ったの?」
「昨日までは自分達の出し物をやってたから、順番に中等部の出し物を少し見たくらいよ」
「そうなんだ。今日の予定とかって何か考えてる?」
「実を言うと最近エルクの元気がなかったから、エルクを楽しませようと3人で考えてたんだけど、もう元気になってたから予定が狂っちゃったわ」
「気を使わせてたみたいだね。ありがとう」
「そういうわけだから特に予定は決めてないわ。高等部の方は最終日に行くことになるわけだし、初等部の方に行ってみようかしら?」
「僕はそれでいいよ。リリスちゃんもいいかな?」
「はい」
僕達は初等部に行き、目的は決めず目に入った出し物を覗いていく。
「エルク、少し離れましょう」
楽しく見ていた時、ローザから言われる。
離れるって何から?って思ったけど、ローザが見ている方を見て何から離れるのかはわかった。
理由はわからないけど……
そこには僕よりは年上だろう多分初等部の男の子がいた。
護衛を連れており、同級生と思われる男の子が2人一緒にいる。
僕達だけでなく、他の人も少し距離を空けているようだ。
一緒にいる男の子2人は友達なのかなって思ったけど、なんだか違う気がする。
僕の主観でしかないけど、友達っていうより従者って感じだ。
中心の男の子は一見楽しそうに見えるけど、なんだか寂しげに見えなくもない。
向こうも僕達の方を見た後、意図的に離れるようお互いに距離をとった。
「さっきの男の子は誰なの?」
僕はローザに聞く。
「あの方は第二王子のクウザ様よ」
「そうなんだ。なんだかピリピリしてたね。それに周りの空気もおかしかった」
「それは仕方ないわよ。少し前までは第二王子が王座に就きそうだったのに、今は第一王子派が優勢になってきている。今が第二王子派にとって生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ。周りもどちらに就くべきか様子を伺っているの」
「みんな仲良く出来ればいいのにね」
僕は思ったことをポロッと口に出してしまう。
「無理よ。王座に就けなかった方の末路は悲惨だもの。それを知っていて手を取り合うなんて出来ない。それに私も無関係ではないわ。クウザ様が王座に就かれたら、フランベルグ家の権力は落ちてしまうわ。その影響はフランベルグ領の民にまで及ぶもの」
「軽々しく言ってごめんね」
「エルクが謝ることではないわよ。それに私も内心はそう思うわ」
「王座に就けなかった方の末路は悲惨だって言ったでしょ?どうなるの?」
少し聞くのが怖かったけど、知らなかったとはいえダイスくんに肩入れしてしまっている僕は聞かないといけないと思った。
後悔しているわけではないけど、僕がいなければあの装備は手に入ってない可能性が高い。
そうなればダイスくんの派閥が優勢になることもなかった。
「王座に就いた方がどうするかだけど、今までの通例だと軟禁のような状態になるわね。ある程度の自由はあるけど、反逆されないとも限らないから、牙を剥くことが出来ないようにはするのよ。罪を犯しているわけではないから殺されることはないと思いたいけど、何かしら理由を付けて処刑させるかもしれないわね」
「ダイスくんが王座に就いたら、さっきの男の子がそうなるのかな?」
「私にはわからないわ。エルクが何を思っているのかは大体分かるけど、知りたいなら本人に聞くしかないわ。ただ、甘い選択をすれば爆弾を背負った状態で王政を敷くことになるし、厳しい選択をすれば周りから反発を買うわ。どちらにしても茨の道になるでしょうけど、それを覚悟して決めているはずだからあまり引っ掻き回すべきではないわよ」
「うん、わかったよ」
ローザにはこう返事をしたけど、既に僕が引っ掻き回してしまっている以上、ダイスくんに話を聞かないといけない。
クウザって子のことはよく知らないけど、結果として僕のせいで処刑されたりするのは嫌だからだ。
2
お気に入りに追加
567
あなたにおすすめの小説
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる