上 下
123 / 201

護衛

しおりを挟む
リリスちゃんと一緒に学院祭を回る事にした僕達は食べ歩きをしていた。

「私、こうやって誰かと出歩くのは初めてです」
リリスちゃんが言った

リリスちゃんは良い子だと思うのになんで友達がいないのかな?
あの護衛は臨時だって言ってたし、ローガンさん達はさっきの護衛と違って良い人だったけど。

「いつも護衛が側にいるの?」

「いつもではないです。学院の外に行く時は護衛を付けるように言われてるんです。学院祭の最中は外からも人が自由に行き来出来るので護衛を付けることになったんです」

「そうなんだ。護衛の人って皆あんな感じなの?」

「そんなことはないです。いきなり剣を抜くからびっくりしました」
やっぱりあの護衛の人達がおかしいようだ。

「護衛ってどうやって選ぶの?」
気になったので聞いてみる

「私の場合は専属がいますので、まずは連絡をします」

「ローガンさん達だね」

「はい。それでローガンさん達がお願いした時に護衛してくれるのですけど、今回みたいな時は冒険者ギルドに依頼を出します。その依頼を受けてくれた人が護衛をしてくれます」

「今回は運が悪かったんだね」

「……そうですね」

「僕が聞き始めた事だけど、あの人達のことは忘れて楽しもうか」

「はい」

「リリスちゃんはどこか行きたいところはある?元々はどこに行く予定だったの?」

「今日は高等部に行こうと思ってました。聖女様が魔法を使った劇をやるらしいです」
お姉ちゃんが?

「ラクネは何か知ってる?」

「うん。お姉ちゃんが劇をやるって言ってたよ。今日と最終日の2回やるって言ってたから、私は最終日に観にいくつもりだったよ」

「そうなんだ。今日でもいい?」

「うん。エルクくんも観たいんじゃないの?」

「みたい」

「それじゃあ行こっか」

僕達は冒険者ギルドに寄って、リリスちゃんの護衛依頼を僕が代わりにやっていることを伝えてから高等部へと移動する。
本来はいけないことのようだけど、あの護衛の人の対応の話をして、依頼主の許可が出ていることもあり許してくれた。
僕が勝手にやったことなので、依頼料はもらわない。
あの護衛の2人は失敗扱いにはならないらしいが、もらえる報酬は前金だけになるらしい。
処理的には雇っていた護衛は解雇して、新しく護衛を雇ったということになるようだ。

劇は夕方からだというので、まだ間に合う。

劇は何故か屋外でやるらしい。前に高等部のチーム戦を観戦したコロシアムだ。

まだ昼過ぎなのに、コロシアムの前の方は既に埋まっていた。どれだけ人気なのだろうか……

「どうしようか?思ったよりも人がいるから今のうちに場所を取って待つ?それとも他の出し物を見てから戻ってくる?」
僕は2人に聞く

「あ、お姉ちゃんが特別席を用意してるから観に来る時は教えてって言ってたよ」

「そうなの?それならリーナさんに会いに行こっか。どこにいるか知ってる?」

「時間が近くなったら闘技場の控室にいるはずだよ。まだ早い気がするけど行ってみる?」

「行ってみようか」
控室に行ったけど、誰もいなかった。

「他の出し物を見て時間を潰そうか。何見る?」

「この飛行体験をやってみたい」
リリスちゃんは空を飛びたいらしい。

僕のスキルで飛ばすことは出来るけど、これは誰にも教えてないスキルだし危ないので秘密だ。

「どうやって飛ぶんだろうね?行ってみようか」
僕達は飛行体験をやりにいく。

「ここの訓練場でやってるみたいだね」
訓練場に入ると、少し列が出来ていた。

「すごいね。本当に飛んでるみたい」
リリスちゃんが感動している。

確かにスゴい。安全の為にか天井から吊るされたロープに括られてはいるけれど、ロープ自体は弛んでいるので確かに浮いている。
そして、ゆっくりではあるけど空中を動いている。
どうやっているんだろう?

「これってどうやって飛んでるんですか?」
僕は列の整理をしていた人に聞く。

「重力魔法で体を浮かせて、風魔法で動かしているんだよ」

「そうなんですね。ありがとうございます」
なるほど、制御力がスゴいなと僕は思う。

どこまでも上り続けているわけではないので、重力を0にしているわけではないと思う。
ちょうどいいバランスを維持しているんだな。

僕の場合はなんでも力押しなので、こういった繊細なスキルの使い方は勉強になる。

「あれ、エルク何してるの?」
飛んでいる人を眺めながら順番待ちをしていると、お姉ちゃんに話しかけられた。

「飛行体験をしにきたんだよ。お姉ちゃんは?」

「私はここのお手伝いよ。魔力の消費が激しいから回復を頼まれたの」

「そうなんだ。頑張ってね」

「その子は?」

「リリスちゃん。前に依頼で遠くに行った時に馬車で一緒になって仲良くなったんだよ。1人で学院祭を回っているって言ったから誘ったんだ」

「友達なんだね」

「うん」

「私と友達になってくれるの?」
リリスちゃんが不安そうに聞く

「もう友達だよ」
「私も友達だと思ってるよ」

「初めてお友達が出来た。それも一度に2人も」
リリスちゃんは嬉しそうだ。

「エルクはこの後どうするの?」
お姉ちゃんに聞かれる

「あ、そうだ。お姉ちゃん達の劇を観に行くつもりだったんだけど、リーナさんが特別席を用意してくれるみたいな話をラクネから聞いたんだ」

「ああ、それならここのお手伝いが終わったら一緒に行きましょ。案内するわね」

「ありがとう」
お姉ちゃんが案内してくれるそうだ。

「あの、聖女様ですよね?エルクくんは聖女様の弟なの?」
リリスちゃんが聞く

「聖女だって名乗ったことはないんだけどね。エルクは私の弟よ。仲良くしてあげてね」

「あ、はい!握手してもらってもいいですか?」

「もちろんよ」
お姉ちゃんはアイドルのような存在のようだ。

「エルクの友達なら私の友達のようなものよ。何かあったら頼ってくれていいからね」

「ありがとうございます」

「エレナちゃん、お願いしてもいいかな?」
お姉ちゃんが呼ばれる。魔力がなくなってきたようだ。

「行ってくるわね。それじゃあ、飛行体験が終わってもここで待っててね」

「うん、わかったよ」

少しして僕達の番になった。
僕は自分で飛ぶことも出来るので遠慮して、体験するのはラクネとリリスちゃんだけだ。

まずはリリスちゃんが体験する。
万が一のことがあってもロープで括られているし、シールドも掛けてあるので怪我をする心配はない。
護衛を代わりにすると言ったのだから、ちゃんと約束は守り安全を確保する。

リリスちゃんが浮かんでいく。
自由自在に飛べるというわけではないけれど、リリスちゃんは楽しそうだ。

「エルクくんは良かったの?」
ラクネに聞かれる

「うん、僕は見てるだけで十分満足だよ」
だいぶ魔力の消費が激しいようだから、実際には自分で飛べて、気になった程度の僕は遠慮するべきだ。
その分、もう1人体験できるだろう。

「楽しかった」
少ししてリリスちゃんが降りてくる。

「どんな感じだったの?」

「なんだか自分が雲になったみたいだった」

「そっか、楽しめて良かったね」

「うん!」

その後、ラクネが飛行体験した後は、お姉ちゃんのお手伝いが終わるまでお菓子を摘みつつ他の人が飛んでいるのを眺めながらお喋りして待った。

「お待たせ。それじゃあ行こっか」

僕達はコロシアムへと向かう。

待っている時に近くにいた人が、お姉ちゃん達の劇の練習をしていたのを見て迫力が凄かったと言っていたのが聞こえたのですごく楽しみだ
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん
ファンタジー
捨て子のアコルは、元Aランク冒険者の両親にスパルタ式で育てられ、少しばかり常識外れに育ってしまった。9歳で父を亡くし商団で働くことになり、早く商売を覚えて一人前になろうと頑張る。母親の言い付けで、自分の本当の力を隠し、別人格のキャラで地味に生きていく。が、しかし、何故かぽろぽろと地が出てしまい苦労する。天才的頭脳と魔法の力で、こっそりのはずが大胆に、アコルは成り上がっていく。そして王立高学院で、運命の出会いをしてしまう。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

処理中です...