上 下
86 / 201

再会

しおりを挟む
護衛訓練の日になった。
中等部の前に用意された馬車に行くと、男性が立っていた。

「お前らが俺達を護衛してくれる生徒だな。俺はライオネットだ。本当に危ない時以外は何も口出ししないからそのつもりでな。出発の前に荷物を確認する。全員カバンを前に出せ」

僕はマズイと思う。
ダイスくんとラクネには荷物を渡してあるけど、僕のバッグには何も入っていない。重いのでアイテムボックスにしまっているからだ。
少しでも時間があればバッグに出す事が出来るけど……

「何してる?早く置け!」
バッグに出す時間はもらえなかった。僕は仕方なくバッグを自分の前に置く

ライオネットさんはダイスくん、ラクネと順番にバッグの中身を確認していく。

もう駄目かと思ったけど、ライオネットさんがバッグの中を漁るのではなく、自分で申告しながらバッグの中身を出していき最後にバッグが空なのをライオネットさんが確認していたので助かった。これならバッグの中から荷物を出しているフリをしてアイテムボックスから出せば隠し通せる。

僕は食料や着替えと言いながらバッグから取り出しているように見せかけて実際にはアイテムボックスから取り出していく。

「よし、持ってる物は確認した。これで足りる、足りないは実際に使ってみて判断しろ。それとそこの、……エルクだったな。話があるからこっちに来い」
名指しで呼ばれてしまった。仕方がないので付いていく

「言いたくないなら見なかった事にするが、さっき何かしただろ?元々あのバッグにあの量の荷物は入っていなかったはずだ」
なんでバレたんだろう?

「…………。」

「言いたくないなら聞きはしないけど、もしかしてアイテムボックスのスキル持ちか?」
僕が迷って答えずにいたらスキルまで当てられた。
創造で創ったスキルだったけど、他に使える人がいたようだ

「……はい」
ここまでバレているなら白状するしかない

「やはりそうか。あの2人は知ってるのか?他に知ってる人はいるか?」

「ダイスくんとラクネは知ってます。他の人には言ってません」

「昔、知り合いに同じスキルを持ってるやつがいたが、面倒ごとに巻き込まれて命を落としたよ。国の補給部隊とか商人が喉から手が出るほど欲しがるスキルだからもっとちゃんと隠せ!気づいたのが俺で良かったが、他の奴が気づいていたらどうなってたかわからんぞ」
あまり知られるのは良くないと思っていたけど、危機管理が足りていなかったようだ。

「心配してくれてありがとうございます。気をつけます」

「ああ、そうしてくれ。あと荷物の中身を確認した意味がなくなるから訓練中は使うなよ」

「わかりました」

僕は馬車の前に戻る

「なんだったんだ?」
ダイスくんに聞かれる

「実はアイテムボックスの事がバレてて、危ないからもっと気をつけろって注意されたんだよ」

「さっきアイテムボックスから出してたのか。使えるのを知ってても全然気づかなかったのに、あの人よく気づいたな」
バレないように気をつけてはいたけど、どこか違和感を感じさせるところがあったのだろう

「昔アイテムボックスのスキルを使える知り合いがいたみたいだよ」

「そうか。それでも、注意力というか観察力がスゴイな」

「この訓練中はアイテムボックスは使わないように言われたよ」

「元からそのつもりだっただろ?」

「うん」
本当はコソッと使おうと思ってたことは秘密だ

「出発の前にもう1人の護衛対象を紹介する。まだ子供だが、回復魔法が使えるので付いてきてもらった。俺は戦う事は出来るが、なにかあった時に治療は出来ないからな」
ライオネットさんがそう言った後、馬車から女の子が降りてきた。

すごく見覚えのある顔だ。

「エレナです。教会から回復要員として同行させてもらうことになりました。よろしくね。……エルク、久しぶり」

お姉ちゃんだった。お姉ちゃんは小さく手を振っている

「お姉ちゃん、学院にいなかったけど教会で働いてたの?」

「理由があって初等部には通えなくなったの。教会はお手伝い程度よ」

「お前ら話は馬車に乗ってからにしてくれ」
ライオネットさんに呼ばれる

「ごめんなさい。すぐ乗ります」
僕は馬車に乗り込む

馬車はダイスくんが御者を務め進んでいく

「お姉ちゃん、あんまり驚いてなかったけど僕がいる事知ってたの?」
僕はお姉ちゃんに聞く

「驚いたわよ。だから落ち着くまで馬車の中で待ってたのよ」
それでライオネットさんが1人で外で説明していたんだね

「そうなんだ。教会の手伝いだけで生活できてるの?」

「回復魔法は貴重だから、よくしてくれるのよ」
そうなんだ。僕も将来教会で働くのもアリかな。でもお姉ちゃんがお手伝いなら、お姉ちゃんより回復魔法が上手く使えない僕はあまり役に立たないのかな……

「エルクはあれから何が出来るようになったの?」
創造で創った物について聞かれていると思うけど、馬車の中にはラクネもライオネットさんもいるからちゃんと答えることは出来ない。
創造は秘密ってこと忘れてるんじゃないかと心配になる

「色々出来るようになったよ。お姉ちゃんは今回みたいに冒険者の人とお仕事することがあるの?」
僕はぼかして答えて話題を変えることにした

「一応登録もしてあるし、たまに冒険者の仕事もするよ」
運が良かったらもっと前にギルドで会うことも出来たかもしれなかったみたいだ。

「エルク、そっちの子は友達?」

「ラクネだよ。御者をしてくれているのがダイスくん。友達だよ。チームも組んでるんだ」

「学院は楽しい?」

「楽しいよ。冒険者活動を一緒にやってる友達もいるし、この前はフレイって子の別荘にみんなで行って遊んだんだよ」

「楽しそうでよかったわ」
うーん。本当はお姉ちゃん、もっと学院に通いたかったのかな?

御者がダイスくんしか出来ず、代わることが出来ないことに申し訳ないなと思いながらも、ラクネも交えてなんでもないような事を話しながら馬車は進んでいく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自分から売り込みに行ってやる〜娼館エンドなんてまっぴらゴメン〜

かぜかおる
ファンタジー
殴られ、倒れた拍子に頭を打って自分が悪役令嬢に転生したことに気付いたロザリー ヒロインを虐め倒すはずが、乙女ゲームの設定とは違い虐められている!? このままいくとロザリーは娼館エンドまっしぐらだが・・・ 娼館に売られるくらいなら、自分から売り込みに行ってやる! プロローグ的なロザリーのモノローグ R15は保険です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...