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間違いは繰り返す

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フレイの別荘から戻ってきた僕はまた馬車に揺られている。

どこに向かっているかというと、サボン村である。

恥ずかしい失敗を精算するためにスマスラ遺跡の調査依頼を再受注したのである。

今度はちゃんとサボン村に向かっている。
馬車乗り場でクラリスさんのメモを見せながらここに行きたいけどどの馬車に乗ればいいか確認したので間違いない。

そう思っていたのに、馬車は見慣れた村で止まった。

実際には前に来た時よりも賑わいを見せているけど、ここはサボン村ではなく、前に間違えて来たエボン村である。

「あの、ここってエボン村ですよね?馬車乗り場の案内所でここに行くにはこの馬車に乗るように言われたんですけど……」
僕はメモを見せながら御者に確認する

「ここはエボン村だよ。サボン村に行きたいならこの馬車じゃないね。案内所の従業員が間違えたのか……。すまない」

やっぱりここはエボン村のようだ。この人が間違えたわけじゃないので、文句をぶつける相手もいない。どうしよう?

「どうする?引き返すならここで降りるかい?」

「次の街まで乗せてください」
僕は迷ったけど、ここで降りてもやる事はないので街まで乗る事にした

「わかった。こちらのミスのようだし、行きの代金の返却と帰りはお金がかからないように手配するから降りる時に少し待ってて欲しい」

「わかりました。お願いします」
お金は帰ってくるようだ。
街に行けば冒険者ギルドがあるはずだし、説明して依頼をキャンセルしてもらおう。
今から向かってたら、終わる頃には学院が始まっちゃうし……。
また依頼失敗になるのかな……はぁ。

僕は降りずにそのまま馬車に揺られ続けて街に着く。
この街がスレーラ領の主要部らしい

御者の人にいつ帰るか聞かれる。どうせなら観光してから帰ることにして、学院が始まる2日前に王都に戻るように手配してもらう。

僕はこの街の冒険者ギルドの空いていた受付に行く

「坊や、今日はどうしたのかな?」
受付の男性に聞かれる。子供扱いなのは仕方ないので目を瞑ることにする。

「依頼のキャンセルをお願いしに来ました」

「依頼の控えを見せてもらえるかな?」
控え?

「控えってなんですか?多分持ってません」

「依頼を発注した時に、控えをもらってると思うけどなくしちゃったかな?」
依頼を発注した側と間違えられていたようだ。

「僕、冒険者です。受けた依頼が出来なくなったのでキャンセルしたいんです」

「ごめんね坊や。お兄さんは仕事で忙しいんだ。冒険者ごっこなら友達とやってね」
ごっこ遊びだと思われてしまった。
それと、この人はお兄さんではなく、おじさんだと思う。
実は若いのかな?

「違います。ごっこじゃありません」
僕はごっこ遊びではないと否定する

「ごめんね坊や。次の人が待ってるからね」
僕はおじさんに席をどかされてしまった。
誠に遺憾である

仕方ないので、別の受付を見て話を聞いてくれそうなお姉さんの列に並ぶ事にした。

「ぼく、おつかいかな?」
子供扱いは誰でも変わらないらしい

「僕、冒険者です。依頼のキャンセルに来ました。これギルド証です」
僕は先手を打ってギルド証を見せる事にした

「え……あ、はい。えーと、はい。受けた依頼のキャンセルですね。少し待っててね」
お姉さんは困惑したまま席を離れていった。

少しして戻ってくる
「遺跡調査の依頼はキャンセル処理をしたわ。王都に専属の受付がいるのね?」

「うん」

「王都に戻ったら専属の人に報告してね」

「わかりました。依頼は失敗になりますか?」

「キャンセルの理由によるかな。判断は専属の人がすると思うけど、なんでキャンセルしたの?」

「乗り合い馬車の案内所でサボン村行きの馬車を聞いて乗ったんですけど、間違えられていた様で、今ここにいます。学院が始まっちゃうのでこれから戻る時間が無いんです」

「それは災難だったわね。失敗にはならないと思うわ。多分ね」

「そうですか、ありがとうございます」
僕はお礼を言って席を離れようとするけど、呼び止められた

「ちょっと待って。1人で遺跡調査をする為に間違えてここに来たって事は、遺跡調査に必要な技術と時間はあるかな?」

「う、うん。少しなら……」

「依頼を受けていかない?臨時でパーティに参加してもらうことになるけど…」

うーん、知らない人とパーティを組むのは正直に言って面倒だなぁ。
僕は断ろうと思う

「パーティで怪我人が出ちゃって困ってるのよ。お願い出来ないかな?」

「……なんの依頼ですか?」
困ってるようだし、依頼の内容だけは聞くことにする

「遺跡での魔物討伐よ。前からあった遺跡なんだけど、魔物が棲みついてしまったから討伐する必要があるの。でもトラップがあって、受けているパーティにいたトラップの対処が出来る人が怪我をしてしまったのよ」

「魔物討伐なんて出来ませんよ」
倒せる魔物なんて低ランクの魔物だけだ。
スライムとかゴブリン程度なら大丈夫だけど、オークは不意をついて倒してただけだし、オーガは支援しただけで倒したのはラクネとダイスくんだし……

「魔物討伐は他のメンバーに任せればいいわよ。トラップの対応だけしてくれればいいわ」

「他に冒険者はいないんですか?」

「トラップの対処が出来る冒険者はちょうどいないのよ」

「……一度そのパーティの人と話をしてから決めさせて下さい。あと、なんで怪我人が出たんですか?」
怪我をした理由を聞いておかないと受けることは出来ない。

「ありがとう、先に話が出来るようにするわね。怪我をしたのは、魔物に襲われて逃げてる最中にトラップに引っかかったからよ。でも安心して、今度はベテランの冒険者が同行することになってるから」

「……わかりました。話をして僕で大丈夫そうなら受けることにします。どうすればいいですか?」
とりあえず、詳しく話を聞いてから決めることにしよう。
そもそも、他の人が僕みたいな子供は嫌だって言うかもしれないし……

「明日の朝にまたギルドまで来てちょうだい。それまでに私の方で、専属のクラリスさんって人に話をしておくわ」

「離れた人と話が出来るんですか?」

「冒険者ギルドには離れた所に文字を送る魔道具があるのよ。送られる側にも同じ魔道具が必要だけどね」
メールみたいなものかな?

「そんな魔道具があるんですね」

「ええ、結構魔力を使うから簡単には使えないんだけどね」

「それを今回使ってもいいんですか?」

「ええ、専属の受付担当が付いているのに、無視して依頼をさせるわけにはいかないわ。今回はこちらの都合だからね」

「そうなんですね。それじゃあクラリスさんによろしく伝えてください」
遅くても明日には僕がまた行き先を間違えたとクラリスさんにバレるわけか……

僕はギルドを出て宿屋を探してから、街中を散策する

屋台で美味しそうなものは食べて、美味しかったら多めに買ってアイテムボックスに入れる。

ここでしか買えなそうな食材があったら買える範囲で買っていく。

結構散財しちゃってる気がするけど、腐らないから無駄ではないはずだ

買い物を終えた僕は宿屋に戻り、浄化魔法でキレイになってから就寝する
残念ながらこの宿には風呂はなかったのである。安い所を探したからしょうがないな

翌朝ギルドに行くとクラリスさんからの許可は出たと聞かされた。
断固拒否してくれれば断ることが出来たのに……
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