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選択を迫られる

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禍々しい扉を開けるとそこにはオーガがいた。

赤色のオーガだ。体長は3mくらいある

クラリスさんに忠告を受けて、今まで逃げ続けていた宿敵である。

正直、今日も逃げたい。
でも今日は逃げない。
試験だから倒さないといけないのもあるけど、今日はダイスくんとラクネもいるから倒せるはずだ。

「エルク、支援魔法を頼む」

僕はダイスくんに身体強化魔法を掛けて、ラクネには魔法威力強化魔法を掛ける。

まずラクネがオーガの目の前に土魔法で壁を作る。
これは相手の視界を塞ぐためだ。

ダイスくんは壁の右側に火魔法で火球を飛ばしてオーガに攻撃を仕掛ける。

オーガに当たるが、ダメージはほとんどない。
でも、それでいい。狙いは視界を塞いだオーガを壁の右側に誘き寄せることだから。

ダイスくんは火球を放った後、壁の左側に回り込んでオーガの背後をとっていた。

僕はダイスくんの前に土魔法で踏み台を作る。
体格差のせいで、ダイスくんの攻撃がオーガの急所に届かないからだ。

ダイスくんは踏み台を踏み込んで大きくジャンプし、オーガの後頭部に剣を叩きつけた。

剣は半ばくらいで止まったが、オーガはそのまま動かずにゆっくりと倒れた。

やった!倒した!

僕達3人はハイタッチする

「よっしゃ!完璧だったな。ここまで上手く倒せるとは思ってなかったぜ」

「ダイスくん、カッコ良かったよ!ラクネの壁のタイミングも良かったし、圧倒してたね」

「エルクくんの支援魔法のおかげだよ。強化してくれなかったら、あのタイミングで発動するには魔力不足で壁の強度が足りなかったよ」

僕達は互いを褒め合う。いいチームだとほんとに思う。

「よし、後は戻るだけだ。道も分かっているし急いで戻るぞ」

「「うん」」

僕達は急ぐと言っても魔物もいる為、走らずに早歩きくらいで地上を目指す

4層に入った時に異変が起きた。

「うわぁぁぁーーー!」

後ろから叫び声が聞こえて振り返ったら試験官のボルドさんの姿が無くなっていた……

「え、え?」
「え、なにが起きたの?」
僕とラクネは急な出来事に動揺してパニック気味になる

「落ち着け!何が起きたかはわからないが、まずは冷静になるべきだ!」
ダイスくんが僕達に強く声を掛ける

「で、でも……」
僕は動揺が収まらない

「いいから、一度落ち着け!冷静にならないと何も出来ねぇ」

「う、うん」
僕はダイスくんの語気に押されたおかげで、少し落ち着く。横を見るとラクネも少し落ち着いてきたようだ

「とりあえず、状況の確認だ。エルク、近くに魔物はいるか?」

「僕のサーチには引っかかってないよ。もしかしたら僕のサーチに引っかからない特殊な魔物とかがいるかもしれないけど……」

「今はいないと判断しよう。今までもエルクのスキルに間違いはなかった。トラップはどうだ?近くにあるか?」

「トラップもないよ。そもそもボルドさんは僕達の後ろを付いてきてたんだよ。トラップがあって気づかなかったなら、僕達が引っかかってるよ」

「だよなぁ。俺もそう思う。ならなんだ?ボルドさんに何が起きた?」

「わからないよ」
本当にわからない。ボルドさんは学校に任されるくらいの冒険者なんだから、通常はこんなに浅い階層で危険に晒されるなんて考えにくい。
相当なイレギュラーが発生してしまったのだろうか……

「決を取ろうと。ここに残ってボルドさんを探すか、急いで地上に戻って助けを呼ぶかだ。消えた理由がわからない以上、どっちも危険はあるが残る方が危険だとは思う。何もせずにここにいるのが一番良くないと思うからどちらにしても動いた方がいい。俺は助けを呼びに行ったほうがいいと思う。ボルドさんには悪いが、まずは自分達の命を大事にするべきだ」
ダイスくんの言う通り、このままここに留まっているのは良くないだろう……。
どうするべきか……

「私はボルドさんを探したいかな。もしかしたらもう危険はなくて、怪我して気絶しているだけかもしれないし……」

「僕は……、僕は外に助けを呼びに行くべきだと思うよ。魔物なのかトラップなのか他の何かわからないけど、ボルドさんが対応しきれない事を僕達が対応できる可能性は低いと思うよ。これで僕達までやられちゃったら誰もボルドさんを助けることが出来なくなるよ」

「ラクネもそれでいいか?」

「……うん、わかった」
ラクネは複雑そうな顔をしつつも、折れてくれた。

「よし、それなら急ぐぞ。エルク、悪いが前を行ってくれ!エルクが前で案内してくれるのが一番早い」

「うん」

僕は出来るだけ早く着けるように、身体強化魔法を使った上で魔物と出来るだけ戦わずに最短で行けるように考えて、地上に向かう。

そして地上に出た後すぐに、冒険者ギルドに駆け込んでボルドさんがダンジョンで行方不明になった事を伝えた。

すぐに救助隊が結成されて、10人の冒険者がダンジョンに向かう。
僕達もボルドさんが心配なので、道案内をするという名目で一緒に付いて行く。

ダンジョンの入り口に到着するとそこにはボルドさんがいた。

良かった。なんとか自力で脱出することが出来たようだ。

ボルドさんは駆けつけた冒険者の方に謝っている。
最初は心配掛けたことを謝っていると思ったけど、なんだか様子がおかしい。
駆けつけた冒険者の人が怒っている。
助けに来たんだから、無駄足だったとしても喜びはしても怒ることはないだろう。
なにを怒っているのだろうか?
冒険者の方々は怒ったままギルドに戻って行ってしまった。

ボルドさんが頭を掻きながらこっちにやってきて信じられない事を言った。

冒険者の方達が怒っていた理由がわかった。

僕も内心怒っている。流石にやりすぎだ。

ボルドさんは演技で叫んで、いなくなっていたのだ。

本当に心配したのに……ヒドイ!
人間不信になっちゃうよ。

ボルドさんは僕達のチームの評価は高いと言っていた。
嬉しいことのはずだけど、そんなことはどうでもいい気分だ。
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