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私の元にリュートから通信がきた

「リュート様、どうされましたか?」

「僕なんかに様なんて言わないでよ……。クリスさんに何か変化があったか聞こうと思っただけだけど、何か進捗はあった?」

「今はクリスではありません。ルーカスです」

「そうだったね。それで何か進捗はあったかな?」

「私の事ではありませんが、面白い子供を2人見つけました。もしかしたらリュート様の悲願を達成する鍵になるかも知れません」

「本当!?」

「今は様子を見ている所ですのでなんとも言えませんが、可能性はあります」

「そっか。引き続き頼むね。ルーカスさんの方はなにか進捗はあった?」

「残念ながら手掛かりもありません。しかし、先程の子供達が私の願いを叶えるきっかけを作ってくれるのではないかと少し期待しています」

「そっか…。僕の力は必要かな?」

「いえ、今は大丈夫です。また必要になったら私の方から行きます」

「うん、わかったよ。全部任せちゃってごめんね」

「リュート様のおかげでこうして諦めずに縋り付くことが出来ているのですのでお気になさらないで下さい」

「あまり無理はしないでね」

「心配ありがとうございます。それでは失礼しますね」

「本当にごめん。よろしくね」

リュートとの通信が切れる

リュートと出会ったのは私がダンジョンで死にそうになっている時だった。

その日、私はダンジョンに潜っていた。

騎士団と魔導士団の合同任務で、私は魔導士団の一員として参加していた。

任務の目的は、ダンジョンの調査である。

このダンジョンは他のダンジョンに比べて魔物の数が異様に多い。その原因を調べるのも今回の調査に含まれていた

私達は魔物を倒しながら、下の階層を目指す。
前回の調査にて30階層までは調査が済んでいる為、30階層までは最短距離で進んでいく

過去の文献からこのダンジョンの最下層は70階層と分かっているが、現在の戦力で70階層まで進むことは出来ないので50階層で調査は一旦切り上げる予定になっている。

順調に30階層のボスを倒して、31階層からはすぐには階段には向かわず、調査をしながらゆっくりと進む。

ダンジョンの中で寝泊まりをしながら進み45階層にて調査をしている時に事件は起こった。

ドラゴンが出たのだ。
それも見たことがない、真っ黒の身体をしたドラゴンだった。

すぐに撤退命令が出される。
私達はドラゴンから逃げる。しかし、1人、また1人と焼かれ、薙ぎ払われ殺されていく。

私は必死に逃げたが、遂に追いつかれてドラゴンの尻尾で吹き飛ばされた。
なんとか生きてはいたが、全身の骨が折れたのか全く動くことが出来ない。
ドラゴンは私の方に向かってくる。
そして私にとって最悪の悲劇が起きた

私を助けるけるために駆け寄って来た女性が、私に治癒魔法を掛けている最中に爪で切り裂かれて殺されてしまった。

女性の名前はアリエラ。彼女は同じ魔導士団の仲間というだけでなく、もうすぐ結婚するはずの私の婚約者だった

ドラゴンは暴れて満足したのか、それとも逃げていった他の仲間達を襲いにいったのかはわからないが、私から離れていく。

私の目の前には動かなくなったアリエラだけが残された

アリエラに治癒魔法を掛けてもらったおかげで身体は少し動けるようになっていた。

私はアリエラの遺体を背負ってフラフラと出口へと向かう。
この時の事はあまり覚えていないので、もしかしたら彷徨っていただけかもしれない。

生きる気力を無くしていた私は注意も散漫になっていたようでトラップを踏んだ。

足元に白い魔法陣が浮かび上がり私は転移させられた。

転移された場所にいた魔物は見たことがなかったので、46階層よりも下の階層に転移させられたようだ。

ここから1人で生きて戻ることは出来ないだろうけど、そんなことはどうでもいい気分だった。
転移トラップを踏まなかったとしても、助からなかっただろうし、もし助かったとしても最愛の人はもうこの世にいないのだから…

私はアリエラを横たわらせて座り込む。
私もここで一緒に死のうと思った。ここで座っていれば魔物が勝手に殺してくれるだろう

そう思い座りこんでいたら、誰かが私を呼んだ気がした。
こんな所に他に人がいるわけがないと思ったが、なぜだか無視することが出来ずに、アリエラを背負い直してまたフラフラと進む。
何故だかどこに向かえばいいのかがわかった

そこは行き止まりだった

やっぱり気のせいだったようだ。私は壁に寄りかかろうとするが、壁をすり抜けてしまい転倒した。

「いたた」

私は起き上がり、前を見る。
そこは小さな部屋だった。部屋の真ん中には人の形をした何かがあった。なんて表現すればいいのかわからないが、腐敗していないゾンビだろうか……

『その怪我……、その人の事も多分僕が原因だよね。ごめんなさい』

さっき呼ばれた時と同じ感覚だ、直接脳に言われているような感じがする。
そして、なぜだか謝られる。
状況に頭が追いつかない

「……あなたは誰ですか?あなたが原因ってのはどういう事ですか?」
私は混乱しながらも答えを求める

『僕はリュート。ただの大罪人だよ。自分の罪から逃げ出した後も、ずっと罪を重ね続けている大罪人。その人はこのダンジョンで亡くなったんでしょ?』
リュートと名乗るこの物体が言っていることがよくわからない。大罪人?

「ああ、見たことない黒いドラゴンに殺された」
私は答える

「僕の身体からは瘴気が出ているんだよ。瘴気ってわかる?」

「いや、聞いたことがない」

「悪い空気みないなもののことなんだけど、魔物の素なんだよ。瘴気が溜まると魔物が生まれる。どこにでも瘴気はあるんだけど、僕の身体からはとびきり濃い瘴気が漏れ続けているんだ。このダンジョンは魔物が多かったんじゃないかな?その黒いドラゴンも多分僕の瘴気から生まれたんだよ。だから僕のせいなんだ……」

いまいちよくわからないが、アリエラが死ぬことになった大元はこいつのようだ。
なぜだか怒りは湧いてこなかった。

元々魔物がいるとわかっていてダンジョンに潜ったからだろうか……いや、こいつがやりたくてやっているわけではないのが話していて伝わってくるからだろう。

ただ、アリエラが死んでいる以上許す事も出来ない

「アリエラの事はまだ気持ちの整理が出来ていないので許すとは言えない。リュートだったな、何で私を呼んだんだ?謝るために呼んだのか?」

「もちろんそれもあるけど、お願いがあるんだ」

「なんだ?」

「僕を殺して欲しい。死なせて欲しいんだ。その手助けをしてくれないかな?」

これが私とリュートとの出会いだった
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