上 下
30 / 201

side リーナ

しおりを挟む
学校で魔法の訓練中、私は大火傷を負った。
火魔法の訓練で、ファイアボールに込める魔力を圧縮している際にコントロールが効かなくなり魔法が暴走して自分の魔法によって身体を燃やされたからだ。

私は気を失っていたようで、その後の事は記憶に無いが、診療所で目を覚ますと母さんが泣いていた。

死んでもおかしく無い程の状態からだったらしいが、診療所の先生のお陰で命はなんとか取り留めた。
先生には感謝しかない。
でも、私の身体は前身がただれてしまっており、治っても元には戻らないと説明を受ける。

しばらく入院した後、療養の為に実家に戻った。
大分痛みも無くなったけど、説明を受けていた通り前身に火傷の痕が残ってしまい見れたものではなかった。

診療所では痕を消す事は出来ず、神官様でも多少薄くするのが限界だろうと言われた。どちらにしても、神官様に頼むお金はうちには無い。

誰かに今の私を見られるのが怖くて、私は部屋に閉じこもってしまった。
学校の友達も見舞いに来てくれたけど、見られるのが怖くて拒絶していた。

部屋に閉じこもってから半年程経った時、学校から登校出来ないのであれば退学にすると通達が届いた。

今までも何度か届いていたが、これが最後の確認らしい。
本当は行きたいけど、人前に出る勇気が湧かない私は、学校を退学した。

いつまでもこのままではいけないのはわかっている。
学校にも行かず、働きもしない私に、両親は部屋から出るようには言わない。
その優しさがツライ。

何もしない日々が過ぎていたある日、妹が同級生を家に連れてきた。
その同級生が回復魔法を使えるから部屋から出てきて欲しいと言われる。
気持ちは嬉しいけど、人前に出る気にはなれない。
それに、神官様でも治せないのに、妹の同級生が治せるとは思えない。

私が断って、ラクネの呼びかけを無視していると、なんと部屋の外から掛けると言う。
そして、少しでも効果があったら部屋から出てきて直接掛けさせて欲しいと。

私が何も答えずにいると、廊下の方から眩い程の白い光が入ってきた。

あまりの眩しさに私は目を閉じる。
妹の呼びかけを聞いて、私は目を開ける。そして驚く。腕の火傷痕が綺麗になくなっているのだ。
私は押し入れに投げ込んでいた鏡を取り出す。自分の顔を見るのはいつぶりだろうか……。
恐る恐る鏡を覗くと、顔にあった痕も綺麗になくなっていて、懐かしい顔があった。
いや、火傷を負う前よりも綺麗になったように思える。

私の頬に涙が伝う。

私はいてもたってもおれず、勢いよく廊下に出る。そして、目の前にいた妹に抱きついた。

心の整理が付いていない私は、妹になだめられてしばらくして落ち着く。
近くに居たはずの男の子はいつの間にか居なくなっていた。

まだお礼もしてないのに……

私は妹に男の子の事を教えてもらう。

妹と話した結果、エルクくんは神様の生まれ変わりではないかとの結論に至った。
それか、神様本人かもしれない

両親が治った私を見て、もう一度学校に通えるように頼んでくれると言う。
出来る事ならもう一度学校生活をやり直したい。
迷惑を掛けてしまった分、ちゃんと卒業して、お金を稼いで、両親に楽をさせてあげたい。
ダメだと思うけど、微かな希望に掛けてお願いすることにした。

ラクネに次の休みの日に、エルクくんを家に連れてきてくれないかお願いする。

休みの初日は、依頼をクラスメイトと受けるとの事なので2日目に呼んできてくれるとのこと。
優しい妹を持って、私は幸せだ。

当日、妹がエルクくんを連れてきてくれた。
朝早く迎えに行くって言ったのに、全然来ないから心配してたけど無事会えたようで良かった。

妹が私の部屋に来て、びっくりする事を言った。
何故か、エルクくんは自分がどれだけスゴイのか自覚が無いみたいだ。
それで、エルクくんを王都に連れてきた人が、エルクくんが自分で気づくまでは周りが騒ぎ立てるのはやめて欲しいと言っていると。

あと、エルクくんの部屋には何故か妹の像があったって。
獣人が珍しくて買ったって言われたって聞いた。

部屋を出ると母さんがエルクくんと思う子供と話していた。母さんが言うには妹はエルクくんに気があるみたいだ。
かわいい妹の為に、私に出来る事があったら応援しよう。

妹の部屋でエルクくんに改めてお礼をする。

妹から聞いてた通り、エルクくんは誰でも出来るような事をやった程度にしか思っていないようだ。

私は妹からの忠告を忘れて、エルクくんを神のように言ってしまう。
そしたら妹に廊下に出されて説教された

その後は他愛もない話をした。
エルクくんには2つ上に姉がいるらしい。姉の方が回復魔法を上手く使えるらしいけど……流石に信じられない。
エルクくんの思い出補正でも掛かっているのだろう

エルクくんが帰る時にケーキとジュースをくれた。
ケーキなんて食べた事ない。快復祝いだって言ってたけど、もらってばかりでは流石に悪いと思う。

何か返せるものが無いか考えていると、妹から聞いた話を思い出した。
私は自分の部屋の引き出しから、以前作ってもらった自分の像を持ってきて、エルクくんにあげることにした。

お返しに自分の像を渡すって冷静になってから考えるとかなり恥ずかしい。
まぁ、喜んでくれたように見えたからいいか。

翌日、学校から呼び出しを受けた。
何故か高等部では無く、中等部の学院長からだった。

「お久しぶりです。学院長」

「リーナくん、元気になったようで本当に良かったよ。」

「ありがとうございます。これも妹の友達のお陰です」

「今日、呼び出した理由は君の編入の件なんだけど、条件次第では許可しても良いと思っている。君は退学前は優秀な成績だったからね」
耳を疑う事を言われた。一度正式に退学しているのだ。お願いしといてなんだけど、無理だと思っていた。

「……条件というのはなんですか?」

「いくつかあるが、一つは高等部の1年からやり直してもらう。1年の後半は出席していないからね、留年した形になる。二つ目は痕が消えた件については他言しないで欲しい。」

「なぜ、言ってはいけないんですか?」

「君がエルク君に火傷痕を治してもらったのは、私の知人から聞いたよ。その彼からの頼みだ」

「もしかして、エルクくんを王都に連れてきた人ですか?」

「そうだが、知っているのかね?」

「いえ、妹から似たような話をされたので……。元からエルクくんの為ならば話す気はありません」

「話が早くて助かるよ。最後の条件だけど、編入する予定のクラスにはエルクくんの姉がいるんだよ。去年飛び級した子を知ってるよね?」

「噂だけは聞いてます。聖女様だとか…」
エルクくんが姉の方が回復魔法をうまく使えると言っていた事に真実味を帯びてきた。

「そう、その子。エレナちゃんね。彼女にもエルク君の事は秘密にしておいて欲しい。その上で彼女をサポートしてあげて欲しい。エレナちゃんは実力はすでに十分だけど、まだ子供だからね。周りは遠慮して近付きにくいみたいだから、手助けしてあげて欲しいんだよ」

「サポートするのは構いません。エルクくんの姉を手助けする事はエルク君への恩返しにも繋がる気がしますのでこちらからお願いしたいくらいです。でも、2人を会わせてあげない理由がわかりません。エルクくんは姉を探していましたよ」

「エルク君は自分の異常性に気づいていないだろう?多分、村での比較対象がエレナちゃんしかいなかったからだと思うんだ。だからエレナちゃんに会ってしまったら、さらにこじらせてしまうのではと危惧しているんだよ。それに……どうせなら劇的に会わせたほうが感動的だろ?」
本音は後者だと思う。
この人はそうゆう人だったよ。

「わかりました。その条件を飲みます」

「うむ。では手続きを進めておくから、もうしばらく待っててくれ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

私はまた学校に通うことが出来る事になった。
巡り巡って、これもエルク君のおかげだと思う。

何が出来るかわからないけど、私に出来る形で少しづつでも恩を返していこう
私は改めて心に誓った
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自分から売り込みに行ってやる〜娼館エンドなんてまっぴらゴメン〜

かぜかおる
ファンタジー
殴られ、倒れた拍子に頭を打って自分が悪役令嬢に転生したことに気付いたロザリー ヒロインを虐め倒すはずが、乙女ゲームの設定とは違い虐められている!? このままいくとロザリーは娼館エンドまっしぐらだが・・・ 娼館に売られるくらいなら、自分から売り込みに行ってやる! プロローグ的なロザリーのモノローグ R15は保険です。

錆びた剣(鈴木さん)と少年

へたまろ
ファンタジー
鈴木は気が付いたら剣だった。 誰にも気づかれず何十年……いや、何百年土の中に。 そこに、偶然通りかかった不運な少年ニコに拾われて、異世界で諸国漫遊の旅に。 剣になった鈴木が、気弱なニコに憑依してあれこれする話です。 そして、鈴木はなんと! 斬った相手の血からスキルを習得する魔剣だった。 チートキタコレ! いや、錆びた鉄のような剣ですが ちょっとアレな性格で、愉快な鈴木。 不幸な生い立ちで、対人恐怖症発症中のニコ。 凸凹コンビの珍道中。 お楽しみください。

虐待して監禁してくるクソ親がいるので、仮想現実に逃げちゃいます!

学生作家志望
ファンタジー
かつて、主人公の父親は国王だったが、謎の失踪を遂げ、現在は主人公の母親が女王となってこの国の政治を任されている 表向きは優しく美しい女王、カンナ・サンダーランド。 裏では兄を贔屓、弟の主人公を城に監禁して虐待しまくるクソ親。 子供のころから当たり前になっていた生活に、14歳にもなって飽き飽きしてきた、主人公、グラハム・サンダーランドは、いつもの通り城の掃除を任されて父親の書斎にやってくる。 そこで、録音機が勝手に鳴る、物が勝手に落ちる、などの謎の現象が起こる そんな謎の現象を無視して部屋を出て行こうとすると、突然、いかにも壊れてそうな機械が音を出しながら動き始める 瞬間、周りが青に染まり、そこを白い閃光が駆け抜けていく────── 目が覚めると...そこは俺の知っているクルパドックではなく、まさかのゲーム世界!? 現実世界で生きる意味を無くしたグラハムは仮想現実にいるという父親と、愛を求めて、仲間と共に戦う物語。 重複投稿をしています! この物語に登場する特殊な言葉 オーガニゼーション 組織、ギルドのこと 鳥の羽 魔法の杖のこと

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

転生済み最上級魔導士はギルドの事務職にジョブチェンジして平穏な日々を送りたい!

紫波すい
ファンタジー
「生き残るつもりがないのに『行ってきます』なんて、俺は言わない」  16歳の少年、クロニア・アルテドットは前世の記憶を持つ『転生者』。特異な素質を持つ、歴史の主役候補生だ。  しかしクロニアは自分も含め、親しい人はみんな揃って穏やかに長生きしたい!  そこで事務員としての採用希望でギルドへの入会試験を受けたのだが、いくつかの手違い&落ちたくないあまり全力で挑んでしまったことで、炎を操る魔導士の中で最上級の称号『紅炎』を授かることに。  当然のごとく戦闘員として配置されることになったけれど、生存最優先でどうにかして事務員になりたい……!  勝気なパーフェクト美少女の幼馴染や、弱気ながら夢のために奮闘する兎の獣人娘、謎に包まれた女好きの狙撃手らと、ギルドでの毎日を送りながら、生きることにこだわっていく物語。  試行錯誤しながらの執筆。  健康第一マイペース。  第3章「明日を願う『白氷』の絶唱」  2023/1/21……完結  第4章「悠久を渡る『黒虚』の暇つぶし」  2023/1/31……第一話公開 ※2022/12/24(土)HOT男性向けランキングにおいて、最高15位をいただきました。お読みいただいた皆様、ありがとうございます! ※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも掲載しています。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...