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3巻
3-3
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「………レイナ。第二部の最後の条項と、第三部の最後の条項は言えるか」
「もちろん言えるわよ」
私のアタマの中では、未だヤンネにケンカを売られている状態だった。
暗誦を中断して答える私は、多分かなりのドヤ顔だったはずだ。
「……十八年前にキヴェカス領で起きた、産地偽装事件の裁判記録の写本は読んだのか」
「公爵邸の書庫にあったもの。そりゃ読むでしょ」
「出されていた課題の最後のページ、全部違う国の言語で、わざわざ何を書いているんだ」
テーブルの上に散らばっていた課題書類をチラリと見たエドヴァルドは、その数枚に書かれた、異なる国の文字に気が付いたようだった。
「あれぇ? 今ごろ気付いたの? だってアタマっから、私に出来るはずがないって決めつけてて、一生懸命に考えて出した答えを見てもくれないから、ちょっと意趣返ししてみただけだけどぉ?」
もはやほとんど氷点下のエドヴァルドの声と、テンションの高い状態で答える私の声との乖離が半端ない。……と、思っていたのは、その場にいた、私とエドヴァルド以外の皆さま方だったようだけど。
あれ、ヤンネさん、瞬きしてますか――?
「まだまだ続き喋るから、ちゃんと聞いてねー?」
「だから、もういいと言っているだろう、レイナ! ディルク、すまないが話は明日の朝にしてくれるか。彼女がコレでは、今日は話し合いにもならん」
あ、そうか。木綿製品の見本が出来たから来るって、ディルクから手紙が来てたんだっけ。
「そ……うですね。私も出来れば、彼女に最初に見てもらいたいですしね」
うーん、見本が見たいか、ヤンネをギャフンと言わせたいかと聞かれれば……今は後者かなぁ……?
うん、明日でお願いします。
「残りは皆、私に事情を説明してもらうぞ。レイナから、黙っていろだの何だのと頼まれたのかもしれんが、屋敷の主を謀るとは、全員いい度胸だ」
「あ、それは私が全部喋った後で――」
「もう、そこまでだ! イザク! イザクはいるか!?」
私の背後で叫ぶエドヴァルドの声に、斜め前方辺りの空気が反応した。……気がした。
「……お呼びですか、お館様」
「命令だ、おまえの持っている薬で、レイナを眠らせるんだ」
うん? 薬?
「……宜しいのですか?」
答えるイザクにも、半瞬の間があった。
「構わん。三日も寝ていないなどと有り得ないことを言って話し続けているんだ。強制的に寝かせておく以外に、何がある」
「…………なるほど」
基本的にイザクは、余計なことは話さないし、やらない。
この時も、スッと私の前に立つと、静かに右の掌を開いた。
ミモザみたいな、優しく甘い香りが鼻腔をくすぐったな――と、思ったところで、私の意識はプッツリと途切れてしまった。
なんてこと。
まだヤンネに条項の全部を聞かせていなかったのに。
❀ ❀ ❀
ふと目を醒ましたら、頭の後ろに誰かの手があった。誰かの寝間着越しの肩口に、頭が押し付けられるようにして、抱き寄せられているようだ。
もう一方の手は、反対側の首元から背中にかけて、そっと回されている。
まだ夜が明けていないのだろう。
視界が暗闇に馴染まない状態のまま、すぐ近くで軽い寝息だけが聞こえている。
――捕獲、と言う言葉が妙に当てはまる気がした。
「!?」
その単語が浮かんだところで、一気に眠気が飛んだ。慌てて身体をのけぞらせて、腕の中から逃れようとしたものの、今度はやや気怠げな声が頭上から降ってきた。
「……起きたのか」
「エ……っ」
抱きしめられていた腕に、そこでかえって力が入ってしまい、私はエドヴァルドの名前さえも、息と一緒に呑み込んでしまった。
「……まだ夜も明けてない。このまま、もう少し眠っておけ」
「こ……のまま……って……」
すぐ近くで響く、ちょっとアンニュイな感じのバリトンボイスとか、もはや精神的拷問だ。羞恥心との戦い以外のナニモノでもない。眠れる訳がないと、声を大にして言いたかったけど、エドヴァルドの方にも言い分はあるらしかった。
「こうでもしておかないと、書庫か部屋かで、法書の掘り下げだのなんだのと、勉強を続けるつもりだろう。今日は私の部屋で寝かせると言っておいた。朝まで大人しくしていろ」
「エ……っ、エドヴァルド様の部屋なんですか、ここ!? いやいや、尚更ダメですっ! ご令嬢避けならともかく、今、あのキヴェカス卿にだけは、勉強がご令嬢の道楽の片手間だとか、そんな風に思われるワケには……っ」
「……ヤンネか……」
わぁっ、頭上からため息を降らすのやめてくださいっ!
目の毒ならぬ、耳の毒です――!!
「すまなかった。受けた仕打ちに口を閉ざして、邸宅中に箝口令を敷いていたらしいな。いつの間に当主である私よりも公爵邸を掌握していたんだと、呆れて言葉にもならなかった」
「……すみません……」
「ああ違う、自分に呆れたんだ。貴女には何一つ、非などありはしない。いや……さすがに三日も寝ていなかったというのは貴女に非があるか。人というのは、そこまで睡眠を取らずにいられるものかと、ある意味感心したくらいだ」
「私の教わっていた教師によると私の居た国で一週間ほど実験した人はいるそうです。もっとも四日目からは小人が見えるからやめておけと言われたので、私も三日でやめておいたんですけど……」
「……小人?」
「まぁ、幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり? 起きていたところで、意味がないっていうギリギリのラインだってことです」
「……いったい何を教えていたんだ、その学園は」
「どうせ言ってもやめないなら、限界寸前までやらせた方がマシだろうっていう、とても達観した先生でした」
どうせ言ってもやめない、と言ったあたりで、気のせいかエドヴァルドの周りの空気がキンと冷えた気がした。
「ならますます、この腕を解く訳にはいかないな」
緩みかけていた腕に再び力が入り、私は「ぴゃっ!?」……などと、裏返った声を上げてしまった。
「いやでも……っ、だからキヴェカス卿に馬鹿にされたままなのが、腹が立つので、続きを――」
寝不足ハイテンションが落ち着いてきたにせよ、暗誦が途中だったと言う消化不良は、私の中でまだくすぶっている。何しろ、ヤンネの「ギャフン」をまだ聞いていない。
いや、リアルに言ってほしい訳じゃないんだけど。うん、モノの例えとして。
けれどエドヴァルドは、腕の中でもがく私のそんな言葉を「必要ない」と、バッサリと切り捨てた。
「あれだけ話して、法書の途中を聞いても最後を聞いても答えてのけた。よほどの馬鹿でなければ、全てを暗記したことくらいは理解が出来る」
「……よほどの馬鹿かもしれませんよ?」
不信感も露わな私の言葉に、エドヴァルドも一瞬言葉に詰まっていた。
「……今、ヤンネに貴女が作ったオルセン領の計画書と、バーレント領の計画書を渡して、とりあえず目を通させている。誰が計画したのかを含め、あの後、ディルクに少し語らせておいたから、それなりに説得力はあるはずだ」
「……今、ですか?」
「貴女が三日も寝ていなかったんだ。ヤンネも一日くらい、睡眠時間を返上したって問題はあるまい。計画書を外に持ち出されてもまずいから、一階の応接室に閉じこもらせておいた」
「えっ!? しれっと、何やってるんですか!?」
「構わん。アイツは昨日、この邸宅の使用人全員を敵に回したと思い知ったようだからな」
使用人全員、食事の支度も寝床の支度も拒否したらしく、しぶしぶ〝鷹の眼〟が持つ保存食を提供させて、応接室に放り込んだんだとも、エドヴァルドは言った。
それだと「晩餐に招いた」という扱いにならないから、それはそれで良かったのか。
「ええー……いいんですか、伯爵家のご子息をそんな扱いで……」
「……どこかの誰かは、法書を顔面に投げつけたと聞いたが」
ゴホゴホと、わざとらしい咳払いで、そこは私も誤魔化しておく。
「……訴えられたりします? いや、それならそれで、受けて立つんですけど」
「やれば経緯を語らねばならなくなるから、藪蛇だ。後で和解案でも提示してくるだろう」
「和解案」
「イヤそうだな」
「だってアレ、偏見でガチガチに凝り固まってますよ? 初対面の頃のエドヴァルド様よりヒドイですよ。そもそも謝罪の押し売りなら要りませんし。エドヴァルド様に言われただけで、本当は不本意極まりないです! って顔に貼り付けたまま謝罪されるくらいなら、されない方がマシですし」
「……っ」
ピクリと、エドヴァルドの身体が痙攣った気がした。
しまった。比較対象がヤンネでは、ちょっとあんまりだっただろうか。
「……私はヤンネよりはマシか?」
「エドヴァルド様は、ちゃんと謝ってくださいましたから、大丈夫です。キヴェカス卿とは比較になりません」
何より私の話をキチンと聞いてくださいますし。
そう言ったら、微かに息をついたようだった。
「この手にある権力で貴女を守るつもりが、まさか逆効果になる日が来るとは思わなかった」
「エドヴァルド様……」
「貴女の本質を見ようともせず、ただ私の寵を受けるだけの姫と捉える者もいるのだと。少しでも貴女と話せば、すぐに分かるだろうと思っていたんだがな」
「思い込みって、結構怖いですからね。ひょっとしたら今頃キヴェカス卿の中では、反省どころか、私がエドヴァルド様を誑かした魔女にでも昇格しちゃってるかもしれませんよ」
私は結構真面目に答えたつもりだったが、何故かエドヴァルドは低く笑い始めた。
「魔女か」
「笑いごとじゃないですよ。私を蔑むのは勝手ですけど、それが現状、陛下直々の命で私を庇護してくださっている、エドヴァルド様をも貶しているんだってことくらいは思い至ってほしいですよ」
「私からすれば、私が貴女に溺れているだの何だのと言われている分には、好きにしろとしか思わん。よくも国の賓客である貴女を貶められるな、くらいは言いたいところだがな」
投げたボールを、これ以上ないくらいにキレイに打ち返された。離してくれるどころか、むしろ力が入った気がする。
うう……これじゃ本当に朝までここから出られない。
「レイナ、体調は大丈夫そうか? 一応、イザクなりの気遣いで、睡眠誘発薬にしたと言っていたが……睡眠薬よりも短い昏倒時間で眠くなる以外に副作用はない、軽い薬らしい」
そもそも、公爵邸に常備されている薬の種類を聞くのが怖い。とはいえ、いきなり眠らせろと命じられた中で、後に影響が残らないようにイザクがとっさに考えてくれたんだろう。
「大丈夫です、三日分の徹夜ハイが、ただの一晩の寝不足レベルにはなりました。えっと、なので、そういうことで――」
言葉を濁しつつ、寝台から出ようと足掻いてみたものの、ある意味予想通りにビクともしなかった。
「レイナ」
「……はい」
「このまま大人しく寝るか、眠らずに今すぐ私に抱かれるか、どちらがいい」
「――はいっ!?」
それしか選択肢がないのか! と、声をあげるよりも先に、エドヴァルドの左手の人差し指が、すうっと私の背中を滑った。
「ぴゃっ!?」
くすぐったさに、思わず身体をのけぞらせた拍子に、エドヴァルドの声が頭上から耳元へと下りてきた。
「――どちらがいい」
「ね……っ、寝ます寝ますっ、このまま大人しく寝ます……っ!!」
「そうか――残念だな」
部屋が暗くて、顔がハッキリと見えなくて良かった!
眠い眠くない以前に、恥ずかし過ぎて気が遠くなりそうなんですけど――!?
❀ ❀ ❀
「朝、王宮には少し遅れて行くと既に連絡してある。ディルクに出直して来てもらうからな。木綿関連の見本なら、一緒に見ておいた方がいいだろう」
あれから、眠ったと言うよりは、眠ったフリで夜明けを迎えてしまった。多分、エドヴァルドもだ。
けれど二人共素知らぬふりで、朝食の席についていた。
「ディ……バーレント卿、わざわざ昨日来てもらったのに予定変更させちゃったんですよね。来られたら謝らないと」
少し前に彼の婚約者を騙って『マーナ』として出かけていた時とは違うのだから、うっかり彼の名を呼ばないよう、今日は気を付けないと――と、私は慌てて言い直した。
「エドヴァルド様も、すみません。本当は昨日まとめて予定をこなすはずだったんですよね」
「まあ、それはそうだが。世の中、予定調和にならない方が多い。気にするな」
エドヴァルドはそう言って、私の謝罪をそこで遮った。
むしろ紅茶を淹れ替えてくれる、セルヴァンの方が苦い表情を浮かべていた。
「旦那様。レイナ様は『家令が私に意見をするな!』と仰ったヤンネ様に憤ってくださったんです。同じ法書の暗誦でも、本当はもう少し穏やかに、頃合いを見てなさるはずだったところ、私がむしろ引き金を引いてしまったようなもので――」
「待って、待って! セルヴァンだって、私への罵倒に怒ってくれた訳だから、そこはもう、お互いさまで」
私とセルヴァンが、お互いにあわあわと言い合っているところに、エドヴァルドのため息がそこで落ちた。
「――いずれにしても、どうして昨夜ヤンネが使用人全員を敵に回したのかはよく分かった」
どうやら本当にお茶の一つも応接室には運ばれていないらしい。公爵邸の皆さまの結束は凄い――というか、皆に味方をしてもらえて、心の中がじんわりと温かくなる。
「あの……もし伯爵家子息に対して不敬だ! って騒ぎになっても、出来れば皆さんはお咎めナシでお願いします。法書ぶん投げた私は、もう、仕方がないと思ってますから」
それだけは言っておかないと、と思ったんだけど、何故だかエドヴァルドには呆れた表情をされた。
「少なくとも今回は、この邸宅の誰も糾弾されることはない」
「そう、なんですか……?」
「アンディション侯爵にも、ついうっかり事の次第を漏らしておいたからな。侯爵と、既に酪農経営を息子に任せて引退しているキヴェカス先代伯爵は茶飲み友達らしいから、まぁどこかで話が伝わるだろう」
「え……」
「ああ、あと、オルセン侯爵領宛にも、フルーツ入りワインの特許権の話のついでに、ブレンダ夫人に連絡を入れておいた。さて『女が高尚な話を語れるはずがない』なんてことを聞いた夫人は、どう出るだろうな? エドベリ王子の歓迎式典と夜会に、もしかしたら息子を領地に置いて、乗り込んでくるかもしれないな……?」
以前に私とかかわりがあり、なおかつ敵意を向けられることのなかった名前が複数出てくる。どうやらエドヴァルドは、私の味方になってくれそうな人に、ヤンネの今回の非礼がそこはかとなく伝わるよう、手を回していたらしかった。
ひえっ、黒い! エドヴァルドの背後にどす黒いオーラが見える!
私が無理矢理眠らされてた間に、何やってたんですか!
「ディルクはディルクで、ヤンネが貴女とロクに話をしていなかったことを昨晩チクチクと責めていたようだがな。そこにブレンダ夫人までが加わったなら、さすがにヤンネとて特許権の話を優先せざるを得なくなるだろう。ヤンネは、オルセン侯爵領の真の経営者が誰なのか、完全には理解していなかったはずだからな」
領地経営のメインはヨアキムで、夫人を保護者程度にしか思っていない人達も、実はそこそこにいるらしい。多分ヤンネも、その中の一人だと、エドヴァルドは微かに口元を歪めた。
実際は、アンジェス一の女傑と言っても過言ではないほどの才気煥発さをお持ちらしい。
「そういう訳だから、貴女がこれ以上何かをせずとも、そのうち勝手に留飲が下がるだろうが、どうしても特等席でそれが見たくなったら、その時に言ってくれ。なるべく善処する」
「……すみません。なんだかんだ言って、ちゃんとお灸を用意してくださってたんですね」
察した私がペコリと頭を下げれば「一日程度の徹夜で済ますはずがないだろう」と、間髪入れずに返されてしまった。ダイニングにいる使用人達の視線にも尊敬の念がこもっている。
うん。こういうところは、流石だなと私も思う。
「ヤンネはディルクが来てから、応接室から引っ張りだせ。気まずい時間は短い方がいいだろうし、ディルクが来ればいい緩衝材になるだろう。話は団欒の間でする。色々モノを広げさせるなら、そちらの方が場所もあるからな」
かしこまりました、とセルヴァンが頭を下げたところで、ちょうど家令補佐がディルクの来訪を告げに現れた。
「レイナ。私とヤンネは離れたソファに座るから、まずはディルクと二人で話すといい。出来上がった品物をどう判断して、どう展開していきたいのかは、今はまだ貴女の頭の中にしかない訳だから、私は実務面の具体的なところで、時々口を出させてもらう程度と思ってくれていて構わない」
「分かりました、ありがとうございます!」
とは言うものの、エドヴァルドは立ち上がって私の所まで歩いて来ると、スッと片手を差し出した。
ダイニングから団欒の間まででしかないのに、がっつり腕組みまではしなくとも、エスコートはしてくれるらしい。
ディルク・バーレント伯爵令息は既に団欒の間にいた。私がエドヴァルドにエスコートされながら歩いて来たのを目に留めると、そこでやんわりと微笑んだ。
「体調はいかがですか、レイナ嬢。昨日はご挨拶も出来ないままで、大変失礼を致しました」
スタンドカラーの膝丈まであるタイプのジャケットは、ディルク自身の髪や瞳の色と同じ、アメジストだ。胸元の刺繍も黒に金のラメが散っている程度で、ウェストコートやスラックスも黒い。
私と一、二歳しか変わらないと聞いているのに、神経質そうなヤンネに比べると遥かに落ち着いた印象を周りに与えている。
私も慌ててエドヴァルドのエスコートから離れてカーテシーの礼をとった。
「いえいえ、とんでもない! こちらこそ昨日は醜態を晒してしまい、あまつさえバーレント卿に再度ご足労いただく形となった点につきましては、本当に申し開きのしようもございません」
私が「バーレント卿」とこの場で口にしたことに、ディルクは少し残念そうな表情を浮かべたものの、すぐに口元に笑みを浮かべる。
「どうか、お気になさらず。昨日は色々な方の思わぬ一面を垣間見られた上に、思いがけず仕事も優位に傾きそうで、来た甲斐は充分にあったと思っておりますので」
……どうやらエドヴァルドが言っていた、ディルクがチクチクと何かヤンネに言っていたらしいとの話は間違いなかったみたいだ。
詳しく聞こうとすると自分の醜態をも掘り返すことになるので、私もそこは微笑ってやり過ごすしかない。
「まずは早速、職人達の成果をお見せしても?」
「もちろんです。どうぞ、お話はこちらで」
ふふふ、あはは、とでもト書きが付けられそうな空気の中、とりあえずは応接用のソファとテーブルの所にディルクを案内する。するといつの間にか私の背後に近付いていたらしいディルクが、私の耳元に顔を寄せながら、エドヴァルドには聞こえないだろう小声で不意に囁いた。
「気になっていらっしゃるようなので、補足を。私は貴女が書いてくださった報告書をキヴェカス卿にお見せして、私の思いの丈を伝えたにすぎませんよ」
「!?」
「まあ、公爵閣下を煽ってしまった側面があるのも否定はしませんけどね」
「煽る……?」
「チョコレートカフェ、楽しみですね――マーナ」
私がディルクをあしらうのは難しいだろうと、セルヴァンが言っていたのはコレかと、この時私も確信した。
コノヒト、話の主導権を奪うのが上手すぎる――!!
第三章 キヴェカスの醜聞
「仰っていたように、紙の薄さを変えて何種類か試作しています。ああそれと、個人的なメモ、ノート用に多めに紙が欲しいとのことでしたので、それはこちらに。一頁一箇所ずつ花びらが入っているのは、今回の機会を与えてくださったことに対する、職人達からの感謝の気持ちだそうですよ」
「うわぁ……素敵……」
私は、正直言って舞菜ほどの「可愛いモノ好き」じゃない。
ただ、だからと言って興味ゼロというワケでもないのだ。
目の前に置かれたメモ帳とノートは、一頁ごとに色々な花びらが一枚ずつ押し花のように挟み込まれていて、間違いなく私好みの一品だった。
「有難うございます。逆に使うのがもったいないくらいですけど、でも、大事に使わせていただきますね。皆さまにも、私がすごく喜んでいたと伝えてください」
人差し指で花びらの部分をそっと撫でる私に、ディルクもそれがお世辞ではないと察したようで、満足げに頷いていた。
「使い切る都度、いつでも連絡をくださって構いませんよ。マダム・カルロッテのドレスは受け取ってくださらないのに、職人達の技術を喜ばれるのは、個人的に複雑な気分ではありますけどね」
そう言いながら、エドヴァルドと、後から無言で現れたヤンネ・キヴェカスをチラリと見やっているのは、明らかなヤンネへの牽制だ。
私がドレスを喜ぶような女ではない、ということを言外に伝えている。
私は――うん、見なかったことにして木綿生地の方に話題を移そう。
紙の上に一つ置かれたコサージュはクリーム色の大輪カップ咲きスタイルで、花弁も多い……イングリッシュローズの一種に見えた。
「本職の方々が本気になると凄まじいですね……この前お渡しした私の見本とか、もう、闇に葬っておいてほしいくらいです」
「いえいえ! レイナ嬢が徹夜されてまで、我が領のためにお作りいただいた見本ですよ? あれがなければ、職人達はイメージも掴めませんでした。これ、元になっている花は春の一番花とされていて、少し花弁に切り込みが入っているのが特徴なんです。香りも比較的強く、花屋でも人気の高い花なんだそうで……」
奥のソファでエドヴァルドが僅かに目を見開いているのも、この前の私の『なんちゃって』な見本を思い出したからだろう。
――ソレは今すぐ忘れてください、エドヴァルド様。
「一応、そのコサージュの元となっている生地もお持ちしました。バーレント領はその領地の水質の高さを活かすため、害虫駆除の薬を使うことなく元の綿を育てているのですよ。ですからどうしても、他の領よりも少し割高な価格設定にならざるを得ないのですが……それでもこれならば、ヘルマンオーナーにも自信を持って見てもらえると、満場一致だった品物なんです」
そんな誇らしげなディルクの言葉に、私はハッと顔を上げた。
「え、無農薬製品ですか、これ!?」
「え、ええ……」
なんてこと! それって立派なオーガニックコットンだ!
害虫駆除の薬の原材料が何かは分からないけれど、もしも硫黄やタバコの粉だったりすれば、安全性をアピールする余地は充分にあるはずだ。
「いいですよ、それ! 環境や身体への負担が少ないと、他の地域よりも優位性を充分に主張出来るはずです! 心優しき聖女サマをブランド化するにも、うってつけ! うんうん、これで『セカンドブランド』のコンセプトが立てられる!」
「レ、レイナ嬢?」
「セルヴァン、誰かヘルマンさんのお店に走らせてもらえないかな? 予告済みの、商品の売り込みに行かせてくださいって!」
突然名前を呼ばれたセルヴァンが驚きつつもほとんど条件反射で頷くのを横目に、私は意識を目の前の商品達に戻した。
「あ、そうそう、バーレント卿! 実は数日前に定例報告で公爵邸に来ていたベルセリウス侯爵閣下とウルリック副長にも、この木綿紙の話を通したんです。売り込みに行っていいって許可は貰ったので、生産量と人手と予算の折り合いがついたら、ぜひ行ってください!」
「な……っ!?」
「すみません、手紙をお出ししようとしたところに、お越しになるとの先触れをいただいたので、もう、今日話をした方が早いなと思って」
唖然となったディルクの視線が、ゆっくりと私からエドヴァルドの方へと向けられる。だけどエドヴァルドは僅かに片手を上げただけだった。
「事実だ。私が知らぬ間に、勝手に話が進んでいた。採用のゴリ押しではなく、売り込みの許可をとっただけだからな。問題はないと判断した。採用されるされないは、売り込みに行く代表者の腕次第だ。フェリクス・ヘルマンの店に行くのと同様に、せいぜい励むといい」
「まずはヘルマンさん攻略ですよ、バーレント卿! 一緒に頑張りましょう!」
一緒に、のところで、エドヴァルドとディルク双方がなんとも言えない表情を見せていたけれど、木綿製品プレゼンへの不安だろう。私はそのまま意気込んで言う。
「あ、製品の品質含めた諸々の売り込みは、頑張ってバーレント卿がしてくださいね? やっぱり、職人さん達の働きを間近で見ている方の方が説得力も増しますし。私はその代わりに、製品の流通販売の部分で、頑張ってヘルマンさんを説き伏せますから」
それから、もう一つ思い立ってバーレント領の地図を持ってきてもらう。
「バーレント卿、水質の良さが自慢と先ほど伺いましたけど、具体的にはどの辺りで紙を漉いていらっしゃるんでしょうか?」
既に色々なモノが置かれたテーブルの上のかろうじて空いていた場所に、無理やり地図を広げる。
ディルクはわずかに戸惑った様子で、川沿いの一角を指さした。
「大体、この一帯でしょうか。綺麗な水辺に沿って小規模な村がいくつかありまして。木綿紙自体が工程の途中で多くの水を必要としますし、汚れが少ないことも重要な要因ですから」
「なるほど……じゃあ早急に、この辺り一帯の土地の権利者を確認して、欲に目が眩んで土地や水場を勝手に転売することがないよう、領主様と一緒に動いていただけますか?」
これにはさすがにエドヴァルドも、口を挟まずにはいられなかったようだった。
「レイナ、何故わざわざ『早急に』と念押しをする必要がある。生産農家や職人の保護だけではなく、周辺の土地も押さえさせる理由は」
私は地図からエドヴァルドへと視線を移す。
ヤンネ・キヴェカスの表情は――うん、意図的に見ません!
「もし木綿紙がヘルマンさんのお店と軍本部の両方で採用されれば、この土地の周辺を良からぬ目的で買い漁ろうとする人は絶対に現れます。あと、下手に欲を出して無茶な増産をしたり、水場を増やそうとして水源を枯渇させたり、効率重視で無農薬をやめて他の水場にまで悪影響を及ぼす人とかが出て来たりしても困ります」
「もちろん言えるわよ」
私のアタマの中では、未だヤンネにケンカを売られている状態だった。
暗誦を中断して答える私は、多分かなりのドヤ顔だったはずだ。
「……十八年前にキヴェカス領で起きた、産地偽装事件の裁判記録の写本は読んだのか」
「公爵邸の書庫にあったもの。そりゃ読むでしょ」
「出されていた課題の最後のページ、全部違う国の言語で、わざわざ何を書いているんだ」
テーブルの上に散らばっていた課題書類をチラリと見たエドヴァルドは、その数枚に書かれた、異なる国の文字に気が付いたようだった。
「あれぇ? 今ごろ気付いたの? だってアタマっから、私に出来るはずがないって決めつけてて、一生懸命に考えて出した答えを見てもくれないから、ちょっと意趣返ししてみただけだけどぉ?」
もはやほとんど氷点下のエドヴァルドの声と、テンションの高い状態で答える私の声との乖離が半端ない。……と、思っていたのは、その場にいた、私とエドヴァルド以外の皆さま方だったようだけど。
あれ、ヤンネさん、瞬きしてますか――?
「まだまだ続き喋るから、ちゃんと聞いてねー?」
「だから、もういいと言っているだろう、レイナ! ディルク、すまないが話は明日の朝にしてくれるか。彼女がコレでは、今日は話し合いにもならん」
あ、そうか。木綿製品の見本が出来たから来るって、ディルクから手紙が来てたんだっけ。
「そ……うですね。私も出来れば、彼女に最初に見てもらいたいですしね」
うーん、見本が見たいか、ヤンネをギャフンと言わせたいかと聞かれれば……今は後者かなぁ……?
うん、明日でお願いします。
「残りは皆、私に事情を説明してもらうぞ。レイナから、黙っていろだの何だのと頼まれたのかもしれんが、屋敷の主を謀るとは、全員いい度胸だ」
「あ、それは私が全部喋った後で――」
「もう、そこまでだ! イザク! イザクはいるか!?」
私の背後で叫ぶエドヴァルドの声に、斜め前方辺りの空気が反応した。……気がした。
「……お呼びですか、お館様」
「命令だ、おまえの持っている薬で、レイナを眠らせるんだ」
うん? 薬?
「……宜しいのですか?」
答えるイザクにも、半瞬の間があった。
「構わん。三日も寝ていないなどと有り得ないことを言って話し続けているんだ。強制的に寝かせておく以外に、何がある」
「…………なるほど」
基本的にイザクは、余計なことは話さないし、やらない。
この時も、スッと私の前に立つと、静かに右の掌を開いた。
ミモザみたいな、優しく甘い香りが鼻腔をくすぐったな――と、思ったところで、私の意識はプッツリと途切れてしまった。
なんてこと。
まだヤンネに条項の全部を聞かせていなかったのに。
❀ ❀ ❀
ふと目を醒ましたら、頭の後ろに誰かの手があった。誰かの寝間着越しの肩口に、頭が押し付けられるようにして、抱き寄せられているようだ。
もう一方の手は、反対側の首元から背中にかけて、そっと回されている。
まだ夜が明けていないのだろう。
視界が暗闇に馴染まない状態のまま、すぐ近くで軽い寝息だけが聞こえている。
――捕獲、と言う言葉が妙に当てはまる気がした。
「!?」
その単語が浮かんだところで、一気に眠気が飛んだ。慌てて身体をのけぞらせて、腕の中から逃れようとしたものの、今度はやや気怠げな声が頭上から降ってきた。
「……起きたのか」
「エ……っ」
抱きしめられていた腕に、そこでかえって力が入ってしまい、私はエドヴァルドの名前さえも、息と一緒に呑み込んでしまった。
「……まだ夜も明けてない。このまま、もう少し眠っておけ」
「こ……のまま……って……」
すぐ近くで響く、ちょっとアンニュイな感じのバリトンボイスとか、もはや精神的拷問だ。羞恥心との戦い以外のナニモノでもない。眠れる訳がないと、声を大にして言いたかったけど、エドヴァルドの方にも言い分はあるらしかった。
「こうでもしておかないと、書庫か部屋かで、法書の掘り下げだのなんだのと、勉強を続けるつもりだろう。今日は私の部屋で寝かせると言っておいた。朝まで大人しくしていろ」
「エ……っ、エドヴァルド様の部屋なんですか、ここ!? いやいや、尚更ダメですっ! ご令嬢避けならともかく、今、あのキヴェカス卿にだけは、勉強がご令嬢の道楽の片手間だとか、そんな風に思われるワケには……っ」
「……ヤンネか……」
わぁっ、頭上からため息を降らすのやめてくださいっ!
目の毒ならぬ、耳の毒です――!!
「すまなかった。受けた仕打ちに口を閉ざして、邸宅中に箝口令を敷いていたらしいな。いつの間に当主である私よりも公爵邸を掌握していたんだと、呆れて言葉にもならなかった」
「……すみません……」
「ああ違う、自分に呆れたんだ。貴女には何一つ、非などありはしない。いや……さすがに三日も寝ていなかったというのは貴女に非があるか。人というのは、そこまで睡眠を取らずにいられるものかと、ある意味感心したくらいだ」
「私の教わっていた教師によると私の居た国で一週間ほど実験した人はいるそうです。もっとも四日目からは小人が見えるからやめておけと言われたので、私も三日でやめておいたんですけど……」
「……小人?」
「まぁ、幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり? 起きていたところで、意味がないっていうギリギリのラインだってことです」
「……いったい何を教えていたんだ、その学園は」
「どうせ言ってもやめないなら、限界寸前までやらせた方がマシだろうっていう、とても達観した先生でした」
どうせ言ってもやめない、と言ったあたりで、気のせいかエドヴァルドの周りの空気がキンと冷えた気がした。
「ならますます、この腕を解く訳にはいかないな」
緩みかけていた腕に再び力が入り、私は「ぴゃっ!?」……などと、裏返った声を上げてしまった。
「いやでも……っ、だからキヴェカス卿に馬鹿にされたままなのが、腹が立つので、続きを――」
寝不足ハイテンションが落ち着いてきたにせよ、暗誦が途中だったと言う消化不良は、私の中でまだくすぶっている。何しろ、ヤンネの「ギャフン」をまだ聞いていない。
いや、リアルに言ってほしい訳じゃないんだけど。うん、モノの例えとして。
けれどエドヴァルドは、腕の中でもがく私のそんな言葉を「必要ない」と、バッサリと切り捨てた。
「あれだけ話して、法書の途中を聞いても最後を聞いても答えてのけた。よほどの馬鹿でなければ、全てを暗記したことくらいは理解が出来る」
「……よほどの馬鹿かもしれませんよ?」
不信感も露わな私の言葉に、エドヴァルドも一瞬言葉に詰まっていた。
「……今、ヤンネに貴女が作ったオルセン領の計画書と、バーレント領の計画書を渡して、とりあえず目を通させている。誰が計画したのかを含め、あの後、ディルクに少し語らせておいたから、それなりに説得力はあるはずだ」
「……今、ですか?」
「貴女が三日も寝ていなかったんだ。ヤンネも一日くらい、睡眠時間を返上したって問題はあるまい。計画書を外に持ち出されてもまずいから、一階の応接室に閉じこもらせておいた」
「えっ!? しれっと、何やってるんですか!?」
「構わん。アイツは昨日、この邸宅の使用人全員を敵に回したと思い知ったようだからな」
使用人全員、食事の支度も寝床の支度も拒否したらしく、しぶしぶ〝鷹の眼〟が持つ保存食を提供させて、応接室に放り込んだんだとも、エドヴァルドは言った。
それだと「晩餐に招いた」という扱いにならないから、それはそれで良かったのか。
「ええー……いいんですか、伯爵家のご子息をそんな扱いで……」
「……どこかの誰かは、法書を顔面に投げつけたと聞いたが」
ゴホゴホと、わざとらしい咳払いで、そこは私も誤魔化しておく。
「……訴えられたりします? いや、それならそれで、受けて立つんですけど」
「やれば経緯を語らねばならなくなるから、藪蛇だ。後で和解案でも提示してくるだろう」
「和解案」
「イヤそうだな」
「だってアレ、偏見でガチガチに凝り固まってますよ? 初対面の頃のエドヴァルド様よりヒドイですよ。そもそも謝罪の押し売りなら要りませんし。エドヴァルド様に言われただけで、本当は不本意極まりないです! って顔に貼り付けたまま謝罪されるくらいなら、されない方がマシですし」
「……っ」
ピクリと、エドヴァルドの身体が痙攣った気がした。
しまった。比較対象がヤンネでは、ちょっとあんまりだっただろうか。
「……私はヤンネよりはマシか?」
「エドヴァルド様は、ちゃんと謝ってくださいましたから、大丈夫です。キヴェカス卿とは比較になりません」
何より私の話をキチンと聞いてくださいますし。
そう言ったら、微かに息をついたようだった。
「この手にある権力で貴女を守るつもりが、まさか逆効果になる日が来るとは思わなかった」
「エドヴァルド様……」
「貴女の本質を見ようともせず、ただ私の寵を受けるだけの姫と捉える者もいるのだと。少しでも貴女と話せば、すぐに分かるだろうと思っていたんだがな」
「思い込みって、結構怖いですからね。ひょっとしたら今頃キヴェカス卿の中では、反省どころか、私がエドヴァルド様を誑かした魔女にでも昇格しちゃってるかもしれませんよ」
私は結構真面目に答えたつもりだったが、何故かエドヴァルドは低く笑い始めた。
「魔女か」
「笑いごとじゃないですよ。私を蔑むのは勝手ですけど、それが現状、陛下直々の命で私を庇護してくださっている、エドヴァルド様をも貶しているんだってことくらいは思い至ってほしいですよ」
「私からすれば、私が貴女に溺れているだの何だのと言われている分には、好きにしろとしか思わん。よくも国の賓客である貴女を貶められるな、くらいは言いたいところだがな」
投げたボールを、これ以上ないくらいにキレイに打ち返された。離してくれるどころか、むしろ力が入った気がする。
うう……これじゃ本当に朝までここから出られない。
「レイナ、体調は大丈夫そうか? 一応、イザクなりの気遣いで、睡眠誘発薬にしたと言っていたが……睡眠薬よりも短い昏倒時間で眠くなる以外に副作用はない、軽い薬らしい」
そもそも、公爵邸に常備されている薬の種類を聞くのが怖い。とはいえ、いきなり眠らせろと命じられた中で、後に影響が残らないようにイザクがとっさに考えてくれたんだろう。
「大丈夫です、三日分の徹夜ハイが、ただの一晩の寝不足レベルにはなりました。えっと、なので、そういうことで――」
言葉を濁しつつ、寝台から出ようと足掻いてみたものの、ある意味予想通りにビクともしなかった。
「レイナ」
「……はい」
「このまま大人しく寝るか、眠らずに今すぐ私に抱かれるか、どちらがいい」
「――はいっ!?」
それしか選択肢がないのか! と、声をあげるよりも先に、エドヴァルドの左手の人差し指が、すうっと私の背中を滑った。
「ぴゃっ!?」
くすぐったさに、思わず身体をのけぞらせた拍子に、エドヴァルドの声が頭上から耳元へと下りてきた。
「――どちらがいい」
「ね……っ、寝ます寝ますっ、このまま大人しく寝ます……っ!!」
「そうか――残念だな」
部屋が暗くて、顔がハッキリと見えなくて良かった!
眠い眠くない以前に、恥ずかし過ぎて気が遠くなりそうなんですけど――!?
❀ ❀ ❀
「朝、王宮には少し遅れて行くと既に連絡してある。ディルクに出直して来てもらうからな。木綿関連の見本なら、一緒に見ておいた方がいいだろう」
あれから、眠ったと言うよりは、眠ったフリで夜明けを迎えてしまった。多分、エドヴァルドもだ。
けれど二人共素知らぬふりで、朝食の席についていた。
「ディ……バーレント卿、わざわざ昨日来てもらったのに予定変更させちゃったんですよね。来られたら謝らないと」
少し前に彼の婚約者を騙って『マーナ』として出かけていた時とは違うのだから、うっかり彼の名を呼ばないよう、今日は気を付けないと――と、私は慌てて言い直した。
「エドヴァルド様も、すみません。本当は昨日まとめて予定をこなすはずだったんですよね」
「まあ、それはそうだが。世の中、予定調和にならない方が多い。気にするな」
エドヴァルドはそう言って、私の謝罪をそこで遮った。
むしろ紅茶を淹れ替えてくれる、セルヴァンの方が苦い表情を浮かべていた。
「旦那様。レイナ様は『家令が私に意見をするな!』と仰ったヤンネ様に憤ってくださったんです。同じ法書の暗誦でも、本当はもう少し穏やかに、頃合いを見てなさるはずだったところ、私がむしろ引き金を引いてしまったようなもので――」
「待って、待って! セルヴァンだって、私への罵倒に怒ってくれた訳だから、そこはもう、お互いさまで」
私とセルヴァンが、お互いにあわあわと言い合っているところに、エドヴァルドのため息がそこで落ちた。
「――いずれにしても、どうして昨夜ヤンネが使用人全員を敵に回したのかはよく分かった」
どうやら本当にお茶の一つも応接室には運ばれていないらしい。公爵邸の皆さまの結束は凄い――というか、皆に味方をしてもらえて、心の中がじんわりと温かくなる。
「あの……もし伯爵家子息に対して不敬だ! って騒ぎになっても、出来れば皆さんはお咎めナシでお願いします。法書ぶん投げた私は、もう、仕方がないと思ってますから」
それだけは言っておかないと、と思ったんだけど、何故だかエドヴァルドには呆れた表情をされた。
「少なくとも今回は、この邸宅の誰も糾弾されることはない」
「そう、なんですか……?」
「アンディション侯爵にも、ついうっかり事の次第を漏らしておいたからな。侯爵と、既に酪農経営を息子に任せて引退しているキヴェカス先代伯爵は茶飲み友達らしいから、まぁどこかで話が伝わるだろう」
「え……」
「ああ、あと、オルセン侯爵領宛にも、フルーツ入りワインの特許権の話のついでに、ブレンダ夫人に連絡を入れておいた。さて『女が高尚な話を語れるはずがない』なんてことを聞いた夫人は、どう出るだろうな? エドベリ王子の歓迎式典と夜会に、もしかしたら息子を領地に置いて、乗り込んでくるかもしれないな……?」
以前に私とかかわりがあり、なおかつ敵意を向けられることのなかった名前が複数出てくる。どうやらエドヴァルドは、私の味方になってくれそうな人に、ヤンネの今回の非礼がそこはかとなく伝わるよう、手を回していたらしかった。
ひえっ、黒い! エドヴァルドの背後にどす黒いオーラが見える!
私が無理矢理眠らされてた間に、何やってたんですか!
「ディルクはディルクで、ヤンネが貴女とロクに話をしていなかったことを昨晩チクチクと責めていたようだがな。そこにブレンダ夫人までが加わったなら、さすがにヤンネとて特許権の話を優先せざるを得なくなるだろう。ヤンネは、オルセン侯爵領の真の経営者が誰なのか、完全には理解していなかったはずだからな」
領地経営のメインはヨアキムで、夫人を保護者程度にしか思っていない人達も、実はそこそこにいるらしい。多分ヤンネも、その中の一人だと、エドヴァルドは微かに口元を歪めた。
実際は、アンジェス一の女傑と言っても過言ではないほどの才気煥発さをお持ちらしい。
「そういう訳だから、貴女がこれ以上何かをせずとも、そのうち勝手に留飲が下がるだろうが、どうしても特等席でそれが見たくなったら、その時に言ってくれ。なるべく善処する」
「……すみません。なんだかんだ言って、ちゃんとお灸を用意してくださってたんですね」
察した私がペコリと頭を下げれば「一日程度の徹夜で済ますはずがないだろう」と、間髪入れずに返されてしまった。ダイニングにいる使用人達の視線にも尊敬の念がこもっている。
うん。こういうところは、流石だなと私も思う。
「ヤンネはディルクが来てから、応接室から引っ張りだせ。気まずい時間は短い方がいいだろうし、ディルクが来ればいい緩衝材になるだろう。話は団欒の間でする。色々モノを広げさせるなら、そちらの方が場所もあるからな」
かしこまりました、とセルヴァンが頭を下げたところで、ちょうど家令補佐がディルクの来訪を告げに現れた。
「レイナ。私とヤンネは離れたソファに座るから、まずはディルクと二人で話すといい。出来上がった品物をどう判断して、どう展開していきたいのかは、今はまだ貴女の頭の中にしかない訳だから、私は実務面の具体的なところで、時々口を出させてもらう程度と思ってくれていて構わない」
「分かりました、ありがとうございます!」
とは言うものの、エドヴァルドは立ち上がって私の所まで歩いて来ると、スッと片手を差し出した。
ダイニングから団欒の間まででしかないのに、がっつり腕組みまではしなくとも、エスコートはしてくれるらしい。
ディルク・バーレント伯爵令息は既に団欒の間にいた。私がエドヴァルドにエスコートされながら歩いて来たのを目に留めると、そこでやんわりと微笑んだ。
「体調はいかがですか、レイナ嬢。昨日はご挨拶も出来ないままで、大変失礼を致しました」
スタンドカラーの膝丈まであるタイプのジャケットは、ディルク自身の髪や瞳の色と同じ、アメジストだ。胸元の刺繍も黒に金のラメが散っている程度で、ウェストコートやスラックスも黒い。
私と一、二歳しか変わらないと聞いているのに、神経質そうなヤンネに比べると遥かに落ち着いた印象を周りに与えている。
私も慌ててエドヴァルドのエスコートから離れてカーテシーの礼をとった。
「いえいえ、とんでもない! こちらこそ昨日は醜態を晒してしまい、あまつさえバーレント卿に再度ご足労いただく形となった点につきましては、本当に申し開きのしようもございません」
私が「バーレント卿」とこの場で口にしたことに、ディルクは少し残念そうな表情を浮かべたものの、すぐに口元に笑みを浮かべる。
「どうか、お気になさらず。昨日は色々な方の思わぬ一面を垣間見られた上に、思いがけず仕事も優位に傾きそうで、来た甲斐は充分にあったと思っておりますので」
……どうやらエドヴァルドが言っていた、ディルクがチクチクと何かヤンネに言っていたらしいとの話は間違いなかったみたいだ。
詳しく聞こうとすると自分の醜態をも掘り返すことになるので、私もそこは微笑ってやり過ごすしかない。
「まずは早速、職人達の成果をお見せしても?」
「もちろんです。どうぞ、お話はこちらで」
ふふふ、あはは、とでもト書きが付けられそうな空気の中、とりあえずは応接用のソファとテーブルの所にディルクを案内する。するといつの間にか私の背後に近付いていたらしいディルクが、私の耳元に顔を寄せながら、エドヴァルドには聞こえないだろう小声で不意に囁いた。
「気になっていらっしゃるようなので、補足を。私は貴女が書いてくださった報告書をキヴェカス卿にお見せして、私の思いの丈を伝えたにすぎませんよ」
「!?」
「まあ、公爵閣下を煽ってしまった側面があるのも否定はしませんけどね」
「煽る……?」
「チョコレートカフェ、楽しみですね――マーナ」
私がディルクをあしらうのは難しいだろうと、セルヴァンが言っていたのはコレかと、この時私も確信した。
コノヒト、話の主導権を奪うのが上手すぎる――!!
第三章 キヴェカスの醜聞
「仰っていたように、紙の薄さを変えて何種類か試作しています。ああそれと、個人的なメモ、ノート用に多めに紙が欲しいとのことでしたので、それはこちらに。一頁一箇所ずつ花びらが入っているのは、今回の機会を与えてくださったことに対する、職人達からの感謝の気持ちだそうですよ」
「うわぁ……素敵……」
私は、正直言って舞菜ほどの「可愛いモノ好き」じゃない。
ただ、だからと言って興味ゼロというワケでもないのだ。
目の前に置かれたメモ帳とノートは、一頁ごとに色々な花びらが一枚ずつ押し花のように挟み込まれていて、間違いなく私好みの一品だった。
「有難うございます。逆に使うのがもったいないくらいですけど、でも、大事に使わせていただきますね。皆さまにも、私がすごく喜んでいたと伝えてください」
人差し指で花びらの部分をそっと撫でる私に、ディルクもそれがお世辞ではないと察したようで、満足げに頷いていた。
「使い切る都度、いつでも連絡をくださって構いませんよ。マダム・カルロッテのドレスは受け取ってくださらないのに、職人達の技術を喜ばれるのは、個人的に複雑な気分ではありますけどね」
そう言いながら、エドヴァルドと、後から無言で現れたヤンネ・キヴェカスをチラリと見やっているのは、明らかなヤンネへの牽制だ。
私がドレスを喜ぶような女ではない、ということを言外に伝えている。
私は――うん、見なかったことにして木綿生地の方に話題を移そう。
紙の上に一つ置かれたコサージュはクリーム色の大輪カップ咲きスタイルで、花弁も多い……イングリッシュローズの一種に見えた。
「本職の方々が本気になると凄まじいですね……この前お渡しした私の見本とか、もう、闇に葬っておいてほしいくらいです」
「いえいえ! レイナ嬢が徹夜されてまで、我が領のためにお作りいただいた見本ですよ? あれがなければ、職人達はイメージも掴めませんでした。これ、元になっている花は春の一番花とされていて、少し花弁に切り込みが入っているのが特徴なんです。香りも比較的強く、花屋でも人気の高い花なんだそうで……」
奥のソファでエドヴァルドが僅かに目を見開いているのも、この前の私の『なんちゃって』な見本を思い出したからだろう。
――ソレは今すぐ忘れてください、エドヴァルド様。
「一応、そのコサージュの元となっている生地もお持ちしました。バーレント領はその領地の水質の高さを活かすため、害虫駆除の薬を使うことなく元の綿を育てているのですよ。ですからどうしても、他の領よりも少し割高な価格設定にならざるを得ないのですが……それでもこれならば、ヘルマンオーナーにも自信を持って見てもらえると、満場一致だった品物なんです」
そんな誇らしげなディルクの言葉に、私はハッと顔を上げた。
「え、無農薬製品ですか、これ!?」
「え、ええ……」
なんてこと! それって立派なオーガニックコットンだ!
害虫駆除の薬の原材料が何かは分からないけれど、もしも硫黄やタバコの粉だったりすれば、安全性をアピールする余地は充分にあるはずだ。
「いいですよ、それ! 環境や身体への負担が少ないと、他の地域よりも優位性を充分に主張出来るはずです! 心優しき聖女サマをブランド化するにも、うってつけ! うんうん、これで『セカンドブランド』のコンセプトが立てられる!」
「レ、レイナ嬢?」
「セルヴァン、誰かヘルマンさんのお店に走らせてもらえないかな? 予告済みの、商品の売り込みに行かせてくださいって!」
突然名前を呼ばれたセルヴァンが驚きつつもほとんど条件反射で頷くのを横目に、私は意識を目の前の商品達に戻した。
「あ、そうそう、バーレント卿! 実は数日前に定例報告で公爵邸に来ていたベルセリウス侯爵閣下とウルリック副長にも、この木綿紙の話を通したんです。売り込みに行っていいって許可は貰ったので、生産量と人手と予算の折り合いがついたら、ぜひ行ってください!」
「な……っ!?」
「すみません、手紙をお出ししようとしたところに、お越しになるとの先触れをいただいたので、もう、今日話をした方が早いなと思って」
唖然となったディルクの視線が、ゆっくりと私からエドヴァルドの方へと向けられる。だけどエドヴァルドは僅かに片手を上げただけだった。
「事実だ。私が知らぬ間に、勝手に話が進んでいた。採用のゴリ押しではなく、売り込みの許可をとっただけだからな。問題はないと判断した。採用されるされないは、売り込みに行く代表者の腕次第だ。フェリクス・ヘルマンの店に行くのと同様に、せいぜい励むといい」
「まずはヘルマンさん攻略ですよ、バーレント卿! 一緒に頑張りましょう!」
一緒に、のところで、エドヴァルドとディルク双方がなんとも言えない表情を見せていたけれど、木綿製品プレゼンへの不安だろう。私はそのまま意気込んで言う。
「あ、製品の品質含めた諸々の売り込みは、頑張ってバーレント卿がしてくださいね? やっぱり、職人さん達の働きを間近で見ている方の方が説得力も増しますし。私はその代わりに、製品の流通販売の部分で、頑張ってヘルマンさんを説き伏せますから」
それから、もう一つ思い立ってバーレント領の地図を持ってきてもらう。
「バーレント卿、水質の良さが自慢と先ほど伺いましたけど、具体的にはどの辺りで紙を漉いていらっしゃるんでしょうか?」
既に色々なモノが置かれたテーブルの上のかろうじて空いていた場所に、無理やり地図を広げる。
ディルクはわずかに戸惑った様子で、川沿いの一角を指さした。
「大体、この一帯でしょうか。綺麗な水辺に沿って小規模な村がいくつかありまして。木綿紙自体が工程の途中で多くの水を必要としますし、汚れが少ないことも重要な要因ですから」
「なるほど……じゃあ早急に、この辺り一帯の土地の権利者を確認して、欲に目が眩んで土地や水場を勝手に転売することがないよう、領主様と一緒に動いていただけますか?」
これにはさすがにエドヴァルドも、口を挟まずにはいられなかったようだった。
「レイナ、何故わざわざ『早急に』と念押しをする必要がある。生産農家や職人の保護だけではなく、周辺の土地も押さえさせる理由は」
私は地図からエドヴァルドへと視線を移す。
ヤンネ・キヴェカスの表情は――うん、意図的に見ません!
「もし木綿紙がヘルマンさんのお店と軍本部の両方で採用されれば、この土地の周辺を良からぬ目的で買い漁ろうとする人は絶対に現れます。あと、下手に欲を出して無茶な増産をしたり、水場を増やそうとして水源を枯渇させたり、効率重視で無農薬をやめて他の水場にまで悪影響を及ぼす人とかが出て来たりしても困ります」
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685 忘れじの膝枕 とも連動!
書籍刊行記念 書き下ろし番外編小説「森のピクニック」は下記ページ バックナンバー2022年6月欄に掲載中!
2巻刊行記念「オムレツ狂騒曲」は2023年4月のバックナンバーに、3巻刊行記念「星の影響-コクリュシュ-」は2024年3月のバックナンバーに掲載中です!
そして4巻刊行記念「月と白い鳥」はコミックス第1巻と連動!
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今回から見方が変わりました。何か一話、アルファポリス作品をレンタル頂くことで全てご覧いただけますので宜しくお願いしますm(_ _)m
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