176 / 817
第一部 宰相家の居候
234 帰国前(2)
しおりを挟む
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「――これはこれは、ユングベリ嬢」
ベクレル伯爵邸を後にして、チェルハ出版を訪れたところ、ちょうど外出先から戻って来たところだったと言うヒディンクさんに、運良く会う事が出来た。
「こんにちは。あの、キスト室長やソルディーニ園長の許可を貰って、植物園の紹介記事の初稿をお持ちしたので、調整とデザインをお願いしたいな…と」
「なるほど、そうでしたか。ではとりあえず、応接室へ」
トーカレヴァやゲルトナーには外で待っていて貰う形で、私とイザクとシーグが、出版社の中へと足を踏み入れた。
「そうそう、皆さんに植字作業を手伝って頂いたあの情報紙ですが、街の内外でもの凄い反響を巻き起こしているようですね。ついこの前も、全文書籍化はいつだとか、それもチェルハ出版でやるのかとか、貴族のご婦人方からの問い合わせまでいただいてしまいましたよ」
若手編集者の一人にお茶を頼みながら、ヒディンクさんが会話のきっかけとばかりに、そんな話を振ってくれた。
「正直、恋愛小説の威力を舐めてましたね。文章力次第でここまでになるのかと」
「あ、じゃあ完全版もそうですけど、第二弾ももし書き上がれば、手掛けたりとかはして頂けます?」
「もちろん!ウチとしても、慈善事業をやっている訳ではありませんから、収益が見込めるのなら…と、社内でも忌避する人間がいなくなりましたからね」
まあその筆頭が私ですが、とヒディンクさんは苦笑している。
確かに「ウチは専門書中心の出版社だ」と、当初難色を示していたところからすれば、有難い変化だと思う。
「ではとりあえず、第一弾の完全版原稿を近いうちにこちらにお持ちします。とりあえず今日は、植物園の紹介記事の原稿だけ、お預かり頂いて良いですか」
拝見しましょう、と言ったヒディンクさんは、私が「初回分」として、キスト室長から預かってきた記事を複数枚受け取った。
「レイアウトや紙面の大きさなんかは、お任せしたいと思っているんです。枚数と言いますか、仕上がりの型だけ前回の様になれば良いかなと。記事と照らし合わせて、それに合うようにして頂けたら、もうそれで」
「そうですね…広告や挿絵、全体的な記事の量なんかを考えれば、もう一回りくらいは小さくても良いかも知れませんが、あまり小さいと今度は読みにくくなるでしょうし……では、一度同じサイズの紙面と一回り小さい紙面を刷りますから、出来上がりで判断してみて下さい」
「え、宜しいんですか?」
「こちらはむしろ本業に近い記事内容ですしね。そのくらいの事はさせて貰いますよ」
「有難うございます。見本を刷って頂いて、広告スペースを空けて頂いたところで、何軒かお店を当たって、出資者を募ります。それがまとまり次第、修正原稿をお渡しする形で良いですか?見積もりは、初回の見本を刷って頂いたところで出して頂いて構いませんので」
「もちろん、それで構いませんよ。ユングベリ商会との付き合いはまだ浅いですが、王立植物園と言う後ろ楯がありますからね」
「あ、最初にお話ししていた研究資料の印刷に関しては、もう少しかかると思います。まだデータ件数が充分に揃っていないんですよ」
今までのレシピの数では、到底一冊の本にする事は難しい。
これはこれで、後日レシピが溜まったところで、キスト室長経由ででも依頼して貰うより他なさそうだった。
「それと、ちょっと商会長が体調を崩しまして、この後一度地元に帰る必要も生じましたので…その間の代理として、このイザクを紹介させて下さい。彼は商会従業員であると同時に植物園での薬草研究も行っていますので、何かあれば彼に連絡頂ければ、私までもすぐに話は届きますので」
「なるほど、承知しました。では次に貴女自身がお見えになるまでは、まず彼に連絡を取るようにしましょう」
ここでのイザクは軽く頭を下げただけだったけど、ヒディンクさんは、特に気にした風もなく頷いていた。
「商会長、深刻な病状でないと良いですね」
「ええ。お気遣い有難うございます」
それ以上深くツッコまれても困るので、私たちはそこで話を切り上げて、出版社を後にする事にした。
「さて、王都王宮に向かおっか」
* * *
「うっひゃぁ……」
もうすぐ王都が見える、と馭者席からゲルトナーに声をかけられて、窓の外に視線を向ければ、キスト室長が「行った際に口を開けて建物を見上げないように」と釘を刺していた意味を十二分に理解してしまった。
うっかり、おかしな声が出てしまったくらいだ。
丘の頂に見えるお城は、古城ホテル風だったラハデ公爵邸と違い、ものすっごく横に細長い。
間に聖堂の様な時計台の様な塔を幾つか挟んでいて、お城であり宮殿であり…と言った雰囲気がヒシヒシとしている。
誰に説明されるまでもなく、あれがギーレン国王宮と城下街だと嫌でも理解出来た。
思い返せば〝蘇芳戦記〟でちょっとくらいは風景画的に見たかも知れないけど、いざこの目で見るとなると、まるで比較にならない。
そして間違いなく、アンジェスの王宮よりも大きい。
「あぁ…王都商業ギルドに顔を出した方が良かったのかなぁ……」
近付いて来る王都中心街の景色を見ながら、思わず一人呟いていた。
ここからは一応、エヴェリーナ妃に呼ばれた商人と言う態で王宮に入るのだ。
シーカサーリで、おネェ様ことレノーイ・リーフェフット商業ギルド長に行商登録をして貰ったとは言え、そもそも最初にフリーペーパーを持ち込んだ時に、王都商業ギルド長シルデル・ファンバステンとも顔を合わせているのだから、素通りするのもどうなのかと、一瞬頭をよぎった。
「どうしようか…いや、在席しているとは限らないし、フリーペーパーに関しては黙認して貰ってるところもあるから、表敬訪問したら藪蛇か……」
少しの間悩んだ末、結局藪蛇は突かない方向で最終的には決断した。
橋を渡って川を越えて、中心街の馬車道を走っていると、アンジェスともシーカサーリとも違う店並びが続いていて、立ち寄ってみたくなる誘惑を抑えるのに苦労してしまった。
(ぶらぶらしたい…いやいや、今日帰る訳だし!)
悶々としているうちに王宮正門に着いてしまったのは、ある意味諦めがついて良かったのかも知れない。
「王のご正妃エヴェリーナ様にお引き立て頂いております、ユングベリ商会の者です。本日光栄にも当商会の商品を見たいと仰って下さいましたので、参上しました次第です」
馬車の扉を少しだけ開けて、衛兵に商業ギルド発行カードを提示しつつ、後ろの馬車に商品がある事を指し示す。
「後宮訪問の許可を取ってあると言う事だな。確認するので、しばし待て」
訪問目的を端折ってはいるけれど、嘘はない。
なので、さほど挙動不審にならずに、衛兵と話をする事が出来た。
「――うむ。後宮のお傍付き侍女とも確認が取れた。ここは通って良い。後宮に近付いたところで馬留めと、再度警備担当者の確認が入るから、そちらの指示に従うように」
「かしこまりました。ありがとうございます」
そうして馬車は、王宮の更に奥深くへと進んで行った。
「――これはこれは、ユングベリ嬢」
ベクレル伯爵邸を後にして、チェルハ出版を訪れたところ、ちょうど外出先から戻って来たところだったと言うヒディンクさんに、運良く会う事が出来た。
「こんにちは。あの、キスト室長やソルディーニ園長の許可を貰って、植物園の紹介記事の初稿をお持ちしたので、調整とデザインをお願いしたいな…と」
「なるほど、そうでしたか。ではとりあえず、応接室へ」
トーカレヴァやゲルトナーには外で待っていて貰う形で、私とイザクとシーグが、出版社の中へと足を踏み入れた。
「そうそう、皆さんに植字作業を手伝って頂いたあの情報紙ですが、街の内外でもの凄い反響を巻き起こしているようですね。ついこの前も、全文書籍化はいつだとか、それもチェルハ出版でやるのかとか、貴族のご婦人方からの問い合わせまでいただいてしまいましたよ」
若手編集者の一人にお茶を頼みながら、ヒディンクさんが会話のきっかけとばかりに、そんな話を振ってくれた。
「正直、恋愛小説の威力を舐めてましたね。文章力次第でここまでになるのかと」
「あ、じゃあ完全版もそうですけど、第二弾ももし書き上がれば、手掛けたりとかはして頂けます?」
「もちろん!ウチとしても、慈善事業をやっている訳ではありませんから、収益が見込めるのなら…と、社内でも忌避する人間がいなくなりましたからね」
まあその筆頭が私ですが、とヒディンクさんは苦笑している。
確かに「ウチは専門書中心の出版社だ」と、当初難色を示していたところからすれば、有難い変化だと思う。
「ではとりあえず、第一弾の完全版原稿を近いうちにこちらにお持ちします。とりあえず今日は、植物園の紹介記事の原稿だけ、お預かり頂いて良いですか」
拝見しましょう、と言ったヒディンクさんは、私が「初回分」として、キスト室長から預かってきた記事を複数枚受け取った。
「レイアウトや紙面の大きさなんかは、お任せしたいと思っているんです。枚数と言いますか、仕上がりの型だけ前回の様になれば良いかなと。記事と照らし合わせて、それに合うようにして頂けたら、もうそれで」
「そうですね…広告や挿絵、全体的な記事の量なんかを考えれば、もう一回りくらいは小さくても良いかも知れませんが、あまり小さいと今度は読みにくくなるでしょうし……では、一度同じサイズの紙面と一回り小さい紙面を刷りますから、出来上がりで判断してみて下さい」
「え、宜しいんですか?」
「こちらはむしろ本業に近い記事内容ですしね。そのくらいの事はさせて貰いますよ」
「有難うございます。見本を刷って頂いて、広告スペースを空けて頂いたところで、何軒かお店を当たって、出資者を募ります。それがまとまり次第、修正原稿をお渡しする形で良いですか?見積もりは、初回の見本を刷って頂いたところで出して頂いて構いませんので」
「もちろん、それで構いませんよ。ユングベリ商会との付き合いはまだ浅いですが、王立植物園と言う後ろ楯がありますからね」
「あ、最初にお話ししていた研究資料の印刷に関しては、もう少しかかると思います。まだデータ件数が充分に揃っていないんですよ」
今までのレシピの数では、到底一冊の本にする事は難しい。
これはこれで、後日レシピが溜まったところで、キスト室長経由ででも依頼して貰うより他なさそうだった。
「それと、ちょっと商会長が体調を崩しまして、この後一度地元に帰る必要も生じましたので…その間の代理として、このイザクを紹介させて下さい。彼は商会従業員であると同時に植物園での薬草研究も行っていますので、何かあれば彼に連絡頂ければ、私までもすぐに話は届きますので」
「なるほど、承知しました。では次に貴女自身がお見えになるまでは、まず彼に連絡を取るようにしましょう」
ここでのイザクは軽く頭を下げただけだったけど、ヒディンクさんは、特に気にした風もなく頷いていた。
「商会長、深刻な病状でないと良いですね」
「ええ。お気遣い有難うございます」
それ以上深くツッコまれても困るので、私たちはそこで話を切り上げて、出版社を後にする事にした。
「さて、王都王宮に向かおっか」
* * *
「うっひゃぁ……」
もうすぐ王都が見える、と馭者席からゲルトナーに声をかけられて、窓の外に視線を向ければ、キスト室長が「行った際に口を開けて建物を見上げないように」と釘を刺していた意味を十二分に理解してしまった。
うっかり、おかしな声が出てしまったくらいだ。
丘の頂に見えるお城は、古城ホテル風だったラハデ公爵邸と違い、ものすっごく横に細長い。
間に聖堂の様な時計台の様な塔を幾つか挟んでいて、お城であり宮殿であり…と言った雰囲気がヒシヒシとしている。
誰に説明されるまでもなく、あれがギーレン国王宮と城下街だと嫌でも理解出来た。
思い返せば〝蘇芳戦記〟でちょっとくらいは風景画的に見たかも知れないけど、いざこの目で見るとなると、まるで比較にならない。
そして間違いなく、アンジェスの王宮よりも大きい。
「あぁ…王都商業ギルドに顔を出した方が良かったのかなぁ……」
近付いて来る王都中心街の景色を見ながら、思わず一人呟いていた。
ここからは一応、エヴェリーナ妃に呼ばれた商人と言う態で王宮に入るのだ。
シーカサーリで、おネェ様ことレノーイ・リーフェフット商業ギルド長に行商登録をして貰ったとは言え、そもそも最初にフリーペーパーを持ち込んだ時に、王都商業ギルド長シルデル・ファンバステンとも顔を合わせているのだから、素通りするのもどうなのかと、一瞬頭をよぎった。
「どうしようか…いや、在席しているとは限らないし、フリーペーパーに関しては黙認して貰ってるところもあるから、表敬訪問したら藪蛇か……」
少しの間悩んだ末、結局藪蛇は突かない方向で最終的には決断した。
橋を渡って川を越えて、中心街の馬車道を走っていると、アンジェスともシーカサーリとも違う店並びが続いていて、立ち寄ってみたくなる誘惑を抑えるのに苦労してしまった。
(ぶらぶらしたい…いやいや、今日帰る訳だし!)
悶々としているうちに王宮正門に着いてしまったのは、ある意味諦めがついて良かったのかも知れない。
「王のご正妃エヴェリーナ様にお引き立て頂いております、ユングベリ商会の者です。本日光栄にも当商会の商品を見たいと仰って下さいましたので、参上しました次第です」
馬車の扉を少しだけ開けて、衛兵に商業ギルド発行カードを提示しつつ、後ろの馬車に商品がある事を指し示す。
「後宮訪問の許可を取ってあると言う事だな。確認するので、しばし待て」
訪問目的を端折ってはいるけれど、嘘はない。
なので、さほど挙動不審にならずに、衛兵と話をする事が出来た。
「――うむ。後宮のお傍付き侍女とも確認が取れた。ここは通って良い。後宮に近付いたところで馬留めと、再度警備担当者の確認が入るから、そちらの指示に従うように」
「かしこまりました。ありがとうございます」
そうして馬車は、王宮の更に奥深くへと進んで行った。
891
お気に入りに追加
12,928
あなたにおすすめの小説
婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【完結】婚約破棄された傷もの令嬢は王太子の側妃になりました
金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のロゼッタは王立学園の卒業パーティーで婚約者から婚約破棄を言い渡された。どうやら真実の愛を見つけたらしい。
しかし、相手の男爵令嬢を虐めたと身に覚えのない罪を着せられた。
婚約者の事は別に好きじゃないから婚約破棄はありがたいけど冤罪は嫌だわ。
結婚もなくなり、退屈していたところに王家から王太子の側妃にと打診が来た。
側妃なら気楽かも? と思い了承したが、気楽どころか、大変な毎日が待っていた。
*ご都合主義のファンタジーです。見守ってくださいませ*
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。