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第一部 宰相家の居候
204 ひとつ、よろしいですか?
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※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
セルヴァンが、少なくとも一度は公爵邸に手紙を…と言っていたけれど、他国から堂々と「イデオン公爵家」に宛てて出して大丈夫なのかと、最初はちょっと頷けなかった。
『大丈夫ですよ、レイナ様。各公爵家共、危急の際や政治の絡む話のやりとりをする際など、家名を表沙汰に出来ない時の為に、家名の文字を入れ替えた〝飾り名〟を持っているのですよ。ギルド管轄の配達制度を利用する事はこれまでありませんでしたが、貴族の家に個人的に雇われる配達人が、仕事を掛け持ちする例も珍しくはありませんので、キチンと〝飾り名〟の存在は周知されている筈です。どうかそちらをお使い下さいませ』
飾り名――要は「アナグラム」で、王宮や各公爵家同士なんかで公にも認められている偽名を作ってあると言う事らしかった。
ドーイェンの庭。
そう宛てて書けば、ちゃんとイデオン公爵邸に手紙は届くらしい。
よく考えられているものだと思う。
「……あ」
セルヴァンへの手紙、シャルリーヌへの手紙、アンジェスのリーリャ王都商業ギルド長宛の手紙に、ベクレル伯爵夫妻から預かったボードリエ家への手紙と、案外盛り沢山になった手紙の束を持って、朝からシーカサーリの商業ギルドを訪れれば、副ギルド長のロナート・ヤークルと目が合った。
「これは……ユングベリ嬢」
一度しか会った事ないのに、よく覚えているなと思ったら「紹介状をお持ちの様な方を、一度で覚えないとかはあり得ません」と、見透かした様に返された。
「それで今日は如何なさいました」
「あっ、今日は普通に、手紙の転送をお願いしたいだけですから、通常の手続き以上の事はどうぞお構いなく。担当も従来の方で構いませんし」
私が「普通に」を強調したのは、今日はどうしたと聞く傍ら、彼の顔がちょっぴり痙攣っていたからだ。
どうやら相当前回の訪問が衝撃的だったらしい。
「なるほど、そうでしたか。ではこちらへ」
そんな露骨にホッとした顔しなくても…とは思ったものの、時にこちらが「普通に」来たつもりでも、相手にとってはそうではないと言う場合も多々ある訳で。
「副ギルド長」
私がロナートに指し示されたカウンターに移動しようとしたところで、近付いてきた職員が何やらロナートに耳打ちした。
とりあえず座ろうかなと椅子に手をかけようとしたら、ロナートが話を聞いている状態のまま、片手で「待て」とでも言いたげな仕種を見せた。
そうして「はぁ…」と、彼の口からため息が零れ落ちる。
「どうやら馬車がギルド前に着いた際、ギルド長が二階から見ていたようですよ。用件を先に済ませて、二階まで上がるようにと」
「え」
「まぁ…例の紙面、随分と反響が出始めているようですしね。少しその話もしたいんじゃないですか」
「あぁ…なるほど……」
確かに、噂の拡散状況は気になる。
「では、手紙の転送は私が手続きをしましょう。今の状況だと、その方が早い」
そう言われた私は、とりあえずリーリャギルド長とそれ以外とに、袋を分ける形で、ギルド長宛じゃないほうの袋の宛先は「ドーイェンの庭」のセルヴァン宛として、副ギルド長に手続きをお願いした。
リーリャギルド長宛と言われて、ちょっと何か言いたそうだったけど、私が「リーフェフットギルド長に会いました、紹介状が役に立ちましたと書いただけですよ」と微笑うと、不審げにしながらも、とりあえずは引き下がる事にしたようだった。
「来たわね。別に至急の用じゃないのよ?ただね、アナタが従業員駆使して配りまくった例の紙面の話、今の状況を知りたいんじゃないかと思って。ついでよ、つ・い・で」
それから二階のギルド長室に上がると、オネェ様がひらひらと手を振っていた。
「アナタどれだけチェルハ出版に印刷依頼かけたのよ?まさか、宿屋の各宿泊部屋にまで置いてるとは思わなかったわ」
「え、だって、部屋に帰ってあとは寝るだけの人って、意外にヒマでしょう?飲んだくれたり、キレイなお姉さんのいるお店とかに行く人も、そりゃ多少はいるかも知れないですけど、シーカサーリって、割とそう言う歓楽街的な要素って少ないですよね?多分ベクレル伯爵様が、極端な貧民街を生み出さないように、雇用含めて色々努力なさったからだと思いますけど。先々植物園の情報紙面置いて貰うにしても、部屋の中って結構有効だと思ったんですよね」
中身は180度違うし、娯楽要素にするなと神様には叱られそうだけど、イメージは、ホテルの部屋の多くに置いてある「聖書」だった。
旅館なんかだと、周辺地域の観光案内を置いてある所だってある。
街の中だけで広げるならレストランや仕立て屋だけで充分だったろうけど、王都まで持って出る人を狙うには、むしろそっちの方が好都合だと思ったのだ。
「なるほどねぇ。あれから、宿屋と食事関係の店の連中とが、特に紙面への広告宣伝の話に乗り気なのよ。本当にアタシが許可した話なのか確認がてら、もっと詳細に話を詰めたいって、昨日とか何人か連れ立って来ていたくらい。特に宿屋とか、お客が来て忙しい時間に、オススメの店はーとか、聞かれる手間が減るだけでも助かるからって」
「あー…まあ、やっぱりそうですよね」
「みんな根が商売人だから、アナタが二回目以降からの利益を考えて、初回無料配布している点にも納得していたし、小説の編集版の片隅使って、ユングベリ商会が本業で扱ってる銀細工の宣伝と、完全版の小説の宣伝を混ぜた事で、大体の想像も出来たみたいだし、話の中身なんてささいなコトだと笑ってたわよ」
イイ目の付けどころだったんじゃない?と、オネェ様は私よりよっぽどサマになるウインクを投げて寄越す。
もともと、商人と言うのは得てして権力者には反発しがちだ。
上からの強制を何よりも嫌う。
大抵、一度や二度は開業とか経営のところでお役所と揉めている筈で、そうなると記事を読んだ大半の人間が、不敬と叫ぶどころか面白がって紙面を置いてくれる。
王都商業ギルド長が顔色を変えるのは、地位を持って、より上の権力者層と接する機会があるからに過ぎない。
その証拠に、彼もユングベリ商会関係者以外が紙面を持ち込む分には目を瞑ると言っていたのだ。
「まあ、今日明日とは言わないから、植物園側の記事が出来て、紙面のレイアウトを考える段階にきたあたりで、一度説明会を開いてくれないかしら?場所はこのギルドの奥にある会議室を貸すわ」
「そうですね……じゃあ、チェルハ出版のヒディンクさんから、次の紙面の見積をいただいた辺りで、1回に何軒掲載するか、1回にいくら『寄付』として宣伝費用をいただくか、そのあたり相談させて頂きます」
「ああ、あと、完全版の小説、予約はどうすれば良いんだって何人か言ってたわよ?今はほら、ベクレル伯爵邸宅内に臨時の事務所を持ってるような形で動いているでしょう。そこに手紙を出せって言う話にはなってるけど、来るお客の皆が皆、作法に則った手紙を書けるワケでもないでしょうから、そこは各店舗で取りまとめるって言う方法もあるんじゃないかって」
「なるほど……って言うか、もう、予約したいって言ってる人とかいるんですか?」
「連中の奥サマとか娘さんとかが、興味津々らしいわよ?店としても、本を引き取りにくる名目でまた来て貰えるんだから、その方が良いみたいね。アナタだって、各家庭に送る手間賃を考えたら、お店ごとにしておく方がまだ良いんじゃないの」
さすがホンモノの商売人たちは、商機が見える事には積極的にアイデアが出るらしい。
「それは確かにそうですね。その辺を詰める意味でも、やっぱり会合は必要ってコトですよね」
「アタシが言いたかったのは、今日はとりあえずそれだけよ。時間が取れそうになったら教えてちょうだい」
「分かりました、有難うございます」
軽く頭を下げて立ち上がる私に、不意にオネェ様が「ああ、そうそう」と声をかけた。
この前といい今日といい、帰る寸前に一番重要な話を投げかけてくるのは「ああ、あとひとつだけ」とか「最後にひとつ、よろしいですか」なんて声をかけて、事件の核心に迫ろうとする、どこかの刑事ドラマを彷彿とさせた。
「宿屋経由だろうと思うけど、もう、シーカサーリから王都にまで持ち込まれた紙面があるようよ?王都商業ギルド長が、他の用件のついでと言いながら口にしたくらいだから、割と高位のところで目に触れたんじゃなくって?――これでアナタの狙いは、一歩進んだのかしら」
…〇京さんに追い詰められる犯人って、こんな気分だったんだろうか…
いや、別に私は法は犯してませんけど!
答える代わりにとりあえず、黙ってニッコリ微笑んでおいた。
セルヴァンが、少なくとも一度は公爵邸に手紙を…と言っていたけれど、他国から堂々と「イデオン公爵家」に宛てて出して大丈夫なのかと、最初はちょっと頷けなかった。
『大丈夫ですよ、レイナ様。各公爵家共、危急の際や政治の絡む話のやりとりをする際など、家名を表沙汰に出来ない時の為に、家名の文字を入れ替えた〝飾り名〟を持っているのですよ。ギルド管轄の配達制度を利用する事はこれまでありませんでしたが、貴族の家に個人的に雇われる配達人が、仕事を掛け持ちする例も珍しくはありませんので、キチンと〝飾り名〟の存在は周知されている筈です。どうかそちらをお使い下さいませ』
飾り名――要は「アナグラム」で、王宮や各公爵家同士なんかで公にも認められている偽名を作ってあると言う事らしかった。
ドーイェンの庭。
そう宛てて書けば、ちゃんとイデオン公爵邸に手紙は届くらしい。
よく考えられているものだと思う。
「……あ」
セルヴァンへの手紙、シャルリーヌへの手紙、アンジェスのリーリャ王都商業ギルド長宛の手紙に、ベクレル伯爵夫妻から預かったボードリエ家への手紙と、案外盛り沢山になった手紙の束を持って、朝からシーカサーリの商業ギルドを訪れれば、副ギルド長のロナート・ヤークルと目が合った。
「これは……ユングベリ嬢」
一度しか会った事ないのに、よく覚えているなと思ったら「紹介状をお持ちの様な方を、一度で覚えないとかはあり得ません」と、見透かした様に返された。
「それで今日は如何なさいました」
「あっ、今日は普通に、手紙の転送をお願いしたいだけですから、通常の手続き以上の事はどうぞお構いなく。担当も従来の方で構いませんし」
私が「普通に」を強調したのは、今日はどうしたと聞く傍ら、彼の顔がちょっぴり痙攣っていたからだ。
どうやら相当前回の訪問が衝撃的だったらしい。
「なるほど、そうでしたか。ではこちらへ」
そんな露骨にホッとした顔しなくても…とは思ったものの、時にこちらが「普通に」来たつもりでも、相手にとってはそうではないと言う場合も多々ある訳で。
「副ギルド長」
私がロナートに指し示されたカウンターに移動しようとしたところで、近付いてきた職員が何やらロナートに耳打ちした。
とりあえず座ろうかなと椅子に手をかけようとしたら、ロナートが話を聞いている状態のまま、片手で「待て」とでも言いたげな仕種を見せた。
そうして「はぁ…」と、彼の口からため息が零れ落ちる。
「どうやら馬車がギルド前に着いた際、ギルド長が二階から見ていたようですよ。用件を先に済ませて、二階まで上がるようにと」
「え」
「まぁ…例の紙面、随分と反響が出始めているようですしね。少しその話もしたいんじゃないですか」
「あぁ…なるほど……」
確かに、噂の拡散状況は気になる。
「では、手紙の転送は私が手続きをしましょう。今の状況だと、その方が早い」
そう言われた私は、とりあえずリーリャギルド長とそれ以外とに、袋を分ける形で、ギルド長宛じゃないほうの袋の宛先は「ドーイェンの庭」のセルヴァン宛として、副ギルド長に手続きをお願いした。
リーリャギルド長宛と言われて、ちょっと何か言いたそうだったけど、私が「リーフェフットギルド長に会いました、紹介状が役に立ちましたと書いただけですよ」と微笑うと、不審げにしながらも、とりあえずは引き下がる事にしたようだった。
「来たわね。別に至急の用じゃないのよ?ただね、アナタが従業員駆使して配りまくった例の紙面の話、今の状況を知りたいんじゃないかと思って。ついでよ、つ・い・で」
それから二階のギルド長室に上がると、オネェ様がひらひらと手を振っていた。
「アナタどれだけチェルハ出版に印刷依頼かけたのよ?まさか、宿屋の各宿泊部屋にまで置いてるとは思わなかったわ」
「え、だって、部屋に帰ってあとは寝るだけの人って、意外にヒマでしょう?飲んだくれたり、キレイなお姉さんのいるお店とかに行く人も、そりゃ多少はいるかも知れないですけど、シーカサーリって、割とそう言う歓楽街的な要素って少ないですよね?多分ベクレル伯爵様が、極端な貧民街を生み出さないように、雇用含めて色々努力なさったからだと思いますけど。先々植物園の情報紙面置いて貰うにしても、部屋の中って結構有効だと思ったんですよね」
中身は180度違うし、娯楽要素にするなと神様には叱られそうだけど、イメージは、ホテルの部屋の多くに置いてある「聖書」だった。
旅館なんかだと、周辺地域の観光案内を置いてある所だってある。
街の中だけで広げるならレストランや仕立て屋だけで充分だったろうけど、王都まで持って出る人を狙うには、むしろそっちの方が好都合だと思ったのだ。
「なるほどねぇ。あれから、宿屋と食事関係の店の連中とが、特に紙面への広告宣伝の話に乗り気なのよ。本当にアタシが許可した話なのか確認がてら、もっと詳細に話を詰めたいって、昨日とか何人か連れ立って来ていたくらい。特に宿屋とか、お客が来て忙しい時間に、オススメの店はーとか、聞かれる手間が減るだけでも助かるからって」
「あー…まあ、やっぱりそうですよね」
「みんな根が商売人だから、アナタが二回目以降からの利益を考えて、初回無料配布している点にも納得していたし、小説の編集版の片隅使って、ユングベリ商会が本業で扱ってる銀細工の宣伝と、完全版の小説の宣伝を混ぜた事で、大体の想像も出来たみたいだし、話の中身なんてささいなコトだと笑ってたわよ」
イイ目の付けどころだったんじゃない?と、オネェ様は私よりよっぽどサマになるウインクを投げて寄越す。
もともと、商人と言うのは得てして権力者には反発しがちだ。
上からの強制を何よりも嫌う。
大抵、一度や二度は開業とか経営のところでお役所と揉めている筈で、そうなると記事を読んだ大半の人間が、不敬と叫ぶどころか面白がって紙面を置いてくれる。
王都商業ギルド長が顔色を変えるのは、地位を持って、より上の権力者層と接する機会があるからに過ぎない。
その証拠に、彼もユングベリ商会関係者以外が紙面を持ち込む分には目を瞑ると言っていたのだ。
「まあ、今日明日とは言わないから、植物園側の記事が出来て、紙面のレイアウトを考える段階にきたあたりで、一度説明会を開いてくれないかしら?場所はこのギルドの奥にある会議室を貸すわ」
「そうですね……じゃあ、チェルハ出版のヒディンクさんから、次の紙面の見積をいただいた辺りで、1回に何軒掲載するか、1回にいくら『寄付』として宣伝費用をいただくか、そのあたり相談させて頂きます」
「ああ、あと、完全版の小説、予約はどうすれば良いんだって何人か言ってたわよ?今はほら、ベクレル伯爵邸宅内に臨時の事務所を持ってるような形で動いているでしょう。そこに手紙を出せって言う話にはなってるけど、来るお客の皆が皆、作法に則った手紙を書けるワケでもないでしょうから、そこは各店舗で取りまとめるって言う方法もあるんじゃないかって」
「なるほど……って言うか、もう、予約したいって言ってる人とかいるんですか?」
「連中の奥サマとか娘さんとかが、興味津々らしいわよ?店としても、本を引き取りにくる名目でまた来て貰えるんだから、その方が良いみたいね。アナタだって、各家庭に送る手間賃を考えたら、お店ごとにしておく方がまだ良いんじゃないの」
さすがホンモノの商売人たちは、商機が見える事には積極的にアイデアが出るらしい。
「それは確かにそうですね。その辺を詰める意味でも、やっぱり会合は必要ってコトですよね」
「アタシが言いたかったのは、今日はとりあえずそれだけよ。時間が取れそうになったら教えてちょうだい」
「分かりました、有難うございます」
軽く頭を下げて立ち上がる私に、不意にオネェ様が「ああ、そうそう」と声をかけた。
この前といい今日といい、帰る寸前に一番重要な話を投げかけてくるのは「ああ、あとひとつだけ」とか「最後にひとつ、よろしいですか」なんて声をかけて、事件の核心に迫ろうとする、どこかの刑事ドラマを彷彿とさせた。
「宿屋経由だろうと思うけど、もう、シーカサーリから王都にまで持ち込まれた紙面があるようよ?王都商業ギルド長が、他の用件のついでと言いながら口にしたくらいだから、割と高位のところで目に触れたんじゃなくって?――これでアナタの狙いは、一歩進んだのかしら」
…〇京さんに追い詰められる犯人って、こんな気分だったんだろうか…
いや、別に私は法は犯してませんけど!
答える代わりにとりあえず、黙ってニッコリ微笑んでおいた。
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