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第一部 宰相家の居候
148 ロッピア(3)
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※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
「それでは姉殿、明日は一日妹君をお借りしますよ。どうかシャルリーヌ嬢にも宜しく伝えて貰いたい」
私は是とも否とも言わず、上げようとしていた頭を〝カーテシー〟で再び下げた。
もしかすると、眉を顰めるくらいはしているのかも知れないけど、私の目の前で背中を見せて立つ宰相閣下を取り巻く冷ややかな空気に比べたら、何の怖さも感じないのが本当だ。
「……レイナ」
「……はい」
王子が広間から出たのは分かったんだけど、頭を上げるのがとても、とても怖い。
どうしましょうコレ。
「もう良いから、頭を上げるんだ」
「……はい」
恐る恐る体勢を元に戻したけれど、エドヴァルドの不機嫌さは収まらない。
「言いたい事は分かるな」
「……はい。多分」
エドヴァルドはまだ『賭け』の内容を知らない。
知らないにせよ、エドヴァルドがギーレンに留まってオーグレーン家を継ぐ事とシャルリーヌをギーレンに強制送還する事、双方の最大の「障害」は「私」だと――エドベリ王子に突き付けた事には気が付いたのだ。
レイフ殿下に圧力をかけて、王宮内での揉め事から遠ざけた筈の私が、別の側面から再び渦中に戻って来ている事に、多分彼は怒っている。
「私がアンジェスを空ける間に、狙われでもしたらどうするつもりなんだ……!」
まさかそうして貰わないと、私が国王陛下に対して身動きが取れない――なんて事は言える筈がない。
「それは……」
いっそ、陛下が何とかして下さる筈…くらいは言っちゃっても良いかと私が葛藤していたところに、ふと、聞き覚えのあるチャラい――ゴホン、親しみがこもった声が、こちらへとかけられた。
「まぁまぁ。ケンカするほど仲が良いと言う事かな?いや、妻との若い頃を思い出すね」
この状況下で声をかけられる胆力が凄い…と思って私が声の主を探すと、少し先にあった店舗の前で、予想通りの声の主、フォルシアン公爵がヒラヒラと片手を振っていた。
「どうかなレイナ嬢、我が領のチョコレート製品を見て行かないかい?」
「ぜひっ!」
私は渡りに船とばかりに、足早に店舗へと駆け寄った。
「まさか、公爵様ご自身で営業をされていらっしゃるのですか?」
「いやいや、それこそまさかだな。何せ今日の『ロッピア』が突然の話だったから〝ヘンリエッタ〟の菓子職人連中と相談して、開発途中の商品を多めに持ち込ませたんだ。こう言う場でなら、上位貴族から王都の一般市民に至るまでの反応が直に確かめられるだろう?主にその確認だよ。もちろん、定番チョコも持ってきてあるから、ぜひたくさん買って貰いたいね」
そう言ってフォルシアン公爵が軽く片目を閉じるものだから、つられた周りのご婦人方が、チョコレート製品を覗きに店舗に吸い寄せられている。
結果的に、営業をしているとも言えた。
「ああ、そうだ。今あそこでイデオン公爵領下の小さな伯爵令息の、一生懸命な営業に耳を傾けているのが、ウチの娘と婚約者殿だ。茶会の事もあるし、紹介をしておこう」
エドヴァルドにあれこれ言わせないまま、スタスタと歩いて行くのは、さすが五公爵の一人と言うべきか。
いつ、茶会が既定の話に…と不本意げなエドヴァルドに、私は乾いた笑いを洩らすしかない。
確かに、社交辞令として片付けられても不思議じゃなかったし、むしろエドヴァルドはそのつもりだったに違いない。
「良い器はあったかい、ユティラ?」
「お父様!」
金髪ハーフアップのロングヘアの美少女は、確かにどうみてもフォルシアン公爵のお嬢さん、と言う感じだった。
その隣で黙礼をする茶髪の青年が、婚約者だろうか。
「あっ、レイナ様!」
それまで、美少女と青年相手に熱心に話しこんでいたミカ君の顔が、パッと輝いた。
「こんにちは、ハルヴァラ卿。白磁器の宣伝は順調ですか?」
一応初対面の人達を間に挟んでいるので「ミカ君」呼びは控えた。
察したミカ君も、はい!と、背筋を伸ばした。
「こちらのアムレアン侯爵令息様とフォルシアン公爵令嬢様に、色々とお話しをさせて頂いてました!」
「まあ、そんなに畏まらなくてもよろしくてよ」
「そうだね。僕たちは君と同じで、当代を名乗る者ではないからね」
ニコニコと微笑ってミカ君を見ている二人からは、悪役的なオーラは感じない。
「ユティラ、レクセル君。良い機会だから紹介しておくよ。彼女がレイナ・ソガワ嬢。当代聖女の姉君だ。異国の出で、この国での縁が薄いそうだから、ぜひ我が家の茶会にお招きして、交流を深めるのが良いだろうと、そんな話になったのは、この前話したな」
「ええ、お父様。まあ、ではこちらの方がそうですのね?初めてお目にかかりますわ。私、フォルシアン公爵が娘ユティラと申します。我がフォルシアン家自慢のアフタヌーンティー、近々ぜひ味わいにいらして下さいませ」
お嬢様!
何と言うか…トゥーラ・オルセン侯爵令嬢との格の違いを感じます。
ユティラ嬢の、礼儀作法のお手本のような〝カーテシー〟に、私も慌てて礼を返した。
「ご紹介いただきましたレイナ・ソガワです。過分なご挨拶を有難うございます。まだこの国の作法には不慣れな部分もございますので、今しばらくはお目こぼし下さればと存じますが、どうか私の事はレイナとお呼び下さいませ。名乗れる程の家名ではないものですから」
「レイナ様ですわね。では私の事もどうかユティラと」
「もったいないお言葉です、ユティラ様」
とりあえず、お茶会前の第一歩としてはまずますだろうか。
「私はアムレアン侯爵家長子レクセル、ユティラ嬢の婚約者です。フォルシアン公爵邸に行かれる機会がこの先増えるようでしたら、いずれ邸宅でお会いする事もあろうかと」
ユティラ嬢の後ろで、控えるように立っていた青年も、同様に笑顔から裏は読み取れない。
「レイナ・ソガワです。ご婚約中との事、大変おめでとうございます。ユティラ様のところでお会いしました際には、どうぞ宜しくお願い致します」
後でエドヴァルドから聞いたところによれば、アムレアン侯爵家は、フォルシアン公爵領傘下貴族の中で最大のカカオ産出量を誇り、チョコレートと言えばフォルシアンと言われるほどのクオリティを、裏で支える最大の功労者たる一族だと言う事だった。
そこの次期侯爵と言う事で、フォルシアン公爵家にとっては、決して格下に嫁がせると言う意味は含んでいないんだそうだ。
「それでユティラ、店に置けそうな器はあったのか?」
「ええ、お父様!こちらやこちらなんかでしたら〝ヘンリエッタ〟のホットチョコレートに特に合うのではないかと!」
そもそも〝ヘンリエッタ〟は、フォルシアン公爵がチョコレート好きのユティラ嬢のために、食べたい時に食べに行けるようにと考えて出店したそうなのだが、成人して、婚約者も決まったほどの年齢になってからは、カフェのメニューや内装に、ユティラ嬢の意見が取り入れられたりもしているらしい。
私が改めて、ホットミルクに溶かす「スティックチョコ」を称賛すると、殊の外ユティラ嬢には喜ばれ、お茶会は必ず開きますからと、決意も新たに宣言されてしまった。
「……フォルシアン公。今更、茶会そのものを止めはしないが、ひと月は間を置いて貰いたい。エドベリ殿下を送り届けた後、私がしばらく公務を外れる旨、通達はあったかと思うが」
不機嫌さの中に混じる、エドヴァルドの事実を交えた声に、フォルシアン公爵も、その裏にある事情を思い出したようだった。
「ああ……そうだ、そうだった。何、正式な手順に則れば、そのくらい先の予定にはなるだろう」
そのまま公爵は、ミカ君の方へと向き直る。
「ハルヴァラ伯爵家のミカ君…だったかな?私はフォルシアン公爵家当主イェルム。王都にあるチョコレートカフェ〝ヘンリエッタ〟の経営者でもある。娘の言うカップとソーサーを、まずは一客ずつ貰おうか。後日〝ヘンリエッタ〟の菓子職人や従業員たちと協議して、店で使うと言う結論になったら、改めて数を含めて連絡をさせて貰おう」
「ハルヴァラ伯爵家長子ミカです!一客ずつのお求めですね、有難うございます!もしカフェの皆さまにもお認めいただける事となりました際には、ご連絡お待ちしています!」
うんうん、営業は順調なんだね、ミカ君。
多分、この「ロッピア」もそうだけれど、フットワーク軽く、色々とミカ君を案内しているヘンリ・リリアート伯爵令息の手助けによるところも大きいんだと思う。
「レイナ様!」
フォルシアン公爵家の父娘たちが場を離れた後、ミカ君がほっとしたように、こちらに話しかけてきた。
それはまあ、他の公爵家当主と話すのも初めてだろうし、緊張したよね。
「お疲れ様、ミカ君。リリアート卿は?さっきまで一緒じゃなかった?」
「あ、ヘンリさんは今、別のお店に売り込み中!ハルヴァラの器も一緒に持って行ってくれてるよ!」
「そっかぁ…ずいぶんとリリアート卿とは仲良くなれたんだね」
「うん、そうなんだ!」
ニコニコと笑うミカ君。
彼は一人で来たなりに、領の為に成果を上げて帰ろうとしているようだ。
…短期間の成長ぶりに、ちょっと複雑な気分がするくらいに。
「ねぇねぇレイナ様、キヴェカスさん家のカフェ、いつ行けそう?ヘンリさんとブレンダ様からも食事に誘われているから、お返事しないといけなくて!」
ちょっと迷って悩んでいるように小首を傾げるミカ君――可愛すぎる。
「あ、そうなんだ?そうね、じゃあ――」
「――は?」
ただ、そんな微笑ましい気持ちは、エドヴァルドの地の底まで落ちた氷点下ボイスで、吹き飛んでしまった。
「レイナ……チョコレートカフェの話も有耶無耶になっていた筈だが……今度はキヴェカス家のカフェがどうしたって……?」
「……えっと」
「戻ったら、じっくりと説明して貰おうか」
拒否権……なさそうですよね。
「それでは姉殿、明日は一日妹君をお借りしますよ。どうかシャルリーヌ嬢にも宜しく伝えて貰いたい」
私は是とも否とも言わず、上げようとしていた頭を〝カーテシー〟で再び下げた。
もしかすると、眉を顰めるくらいはしているのかも知れないけど、私の目の前で背中を見せて立つ宰相閣下を取り巻く冷ややかな空気に比べたら、何の怖さも感じないのが本当だ。
「……レイナ」
「……はい」
王子が広間から出たのは分かったんだけど、頭を上げるのがとても、とても怖い。
どうしましょうコレ。
「もう良いから、頭を上げるんだ」
「……はい」
恐る恐る体勢を元に戻したけれど、エドヴァルドの不機嫌さは収まらない。
「言いたい事は分かるな」
「……はい。多分」
エドヴァルドはまだ『賭け』の内容を知らない。
知らないにせよ、エドヴァルドがギーレンに留まってオーグレーン家を継ぐ事とシャルリーヌをギーレンに強制送還する事、双方の最大の「障害」は「私」だと――エドベリ王子に突き付けた事には気が付いたのだ。
レイフ殿下に圧力をかけて、王宮内での揉め事から遠ざけた筈の私が、別の側面から再び渦中に戻って来ている事に、多分彼は怒っている。
「私がアンジェスを空ける間に、狙われでもしたらどうするつもりなんだ……!」
まさかそうして貰わないと、私が国王陛下に対して身動きが取れない――なんて事は言える筈がない。
「それは……」
いっそ、陛下が何とかして下さる筈…くらいは言っちゃっても良いかと私が葛藤していたところに、ふと、聞き覚えのあるチャラい――ゴホン、親しみがこもった声が、こちらへとかけられた。
「まぁまぁ。ケンカするほど仲が良いと言う事かな?いや、妻との若い頃を思い出すね」
この状況下で声をかけられる胆力が凄い…と思って私が声の主を探すと、少し先にあった店舗の前で、予想通りの声の主、フォルシアン公爵がヒラヒラと片手を振っていた。
「どうかなレイナ嬢、我が領のチョコレート製品を見て行かないかい?」
「ぜひっ!」
私は渡りに船とばかりに、足早に店舗へと駆け寄った。
「まさか、公爵様ご自身で営業をされていらっしゃるのですか?」
「いやいや、それこそまさかだな。何せ今日の『ロッピア』が突然の話だったから〝ヘンリエッタ〟の菓子職人連中と相談して、開発途中の商品を多めに持ち込ませたんだ。こう言う場でなら、上位貴族から王都の一般市民に至るまでの反応が直に確かめられるだろう?主にその確認だよ。もちろん、定番チョコも持ってきてあるから、ぜひたくさん買って貰いたいね」
そう言ってフォルシアン公爵が軽く片目を閉じるものだから、つられた周りのご婦人方が、チョコレート製品を覗きに店舗に吸い寄せられている。
結果的に、営業をしているとも言えた。
「ああ、そうだ。今あそこでイデオン公爵領下の小さな伯爵令息の、一生懸命な営業に耳を傾けているのが、ウチの娘と婚約者殿だ。茶会の事もあるし、紹介をしておこう」
エドヴァルドにあれこれ言わせないまま、スタスタと歩いて行くのは、さすが五公爵の一人と言うべきか。
いつ、茶会が既定の話に…と不本意げなエドヴァルドに、私は乾いた笑いを洩らすしかない。
確かに、社交辞令として片付けられても不思議じゃなかったし、むしろエドヴァルドはそのつもりだったに違いない。
「良い器はあったかい、ユティラ?」
「お父様!」
金髪ハーフアップのロングヘアの美少女は、確かにどうみてもフォルシアン公爵のお嬢さん、と言う感じだった。
その隣で黙礼をする茶髪の青年が、婚約者だろうか。
「あっ、レイナ様!」
それまで、美少女と青年相手に熱心に話しこんでいたミカ君の顔が、パッと輝いた。
「こんにちは、ハルヴァラ卿。白磁器の宣伝は順調ですか?」
一応初対面の人達を間に挟んでいるので「ミカ君」呼びは控えた。
察したミカ君も、はい!と、背筋を伸ばした。
「こちらのアムレアン侯爵令息様とフォルシアン公爵令嬢様に、色々とお話しをさせて頂いてました!」
「まあ、そんなに畏まらなくてもよろしくてよ」
「そうだね。僕たちは君と同じで、当代を名乗る者ではないからね」
ニコニコと微笑ってミカ君を見ている二人からは、悪役的なオーラは感じない。
「ユティラ、レクセル君。良い機会だから紹介しておくよ。彼女がレイナ・ソガワ嬢。当代聖女の姉君だ。異国の出で、この国での縁が薄いそうだから、ぜひ我が家の茶会にお招きして、交流を深めるのが良いだろうと、そんな話になったのは、この前話したな」
「ええ、お父様。まあ、ではこちらの方がそうですのね?初めてお目にかかりますわ。私、フォルシアン公爵が娘ユティラと申します。我がフォルシアン家自慢のアフタヌーンティー、近々ぜひ味わいにいらして下さいませ」
お嬢様!
何と言うか…トゥーラ・オルセン侯爵令嬢との格の違いを感じます。
ユティラ嬢の、礼儀作法のお手本のような〝カーテシー〟に、私も慌てて礼を返した。
「ご紹介いただきましたレイナ・ソガワです。過分なご挨拶を有難うございます。まだこの国の作法には不慣れな部分もございますので、今しばらくはお目こぼし下さればと存じますが、どうか私の事はレイナとお呼び下さいませ。名乗れる程の家名ではないものですから」
「レイナ様ですわね。では私の事もどうかユティラと」
「もったいないお言葉です、ユティラ様」
とりあえず、お茶会前の第一歩としてはまずますだろうか。
「私はアムレアン侯爵家長子レクセル、ユティラ嬢の婚約者です。フォルシアン公爵邸に行かれる機会がこの先増えるようでしたら、いずれ邸宅でお会いする事もあろうかと」
ユティラ嬢の後ろで、控えるように立っていた青年も、同様に笑顔から裏は読み取れない。
「レイナ・ソガワです。ご婚約中との事、大変おめでとうございます。ユティラ様のところでお会いしました際には、どうぞ宜しくお願い致します」
後でエドヴァルドから聞いたところによれば、アムレアン侯爵家は、フォルシアン公爵領傘下貴族の中で最大のカカオ産出量を誇り、チョコレートと言えばフォルシアンと言われるほどのクオリティを、裏で支える最大の功労者たる一族だと言う事だった。
そこの次期侯爵と言う事で、フォルシアン公爵家にとっては、決して格下に嫁がせると言う意味は含んでいないんだそうだ。
「それでユティラ、店に置けそうな器はあったのか?」
「ええ、お父様!こちらやこちらなんかでしたら〝ヘンリエッタ〟のホットチョコレートに特に合うのではないかと!」
そもそも〝ヘンリエッタ〟は、フォルシアン公爵がチョコレート好きのユティラ嬢のために、食べたい時に食べに行けるようにと考えて出店したそうなのだが、成人して、婚約者も決まったほどの年齢になってからは、カフェのメニューや内装に、ユティラ嬢の意見が取り入れられたりもしているらしい。
私が改めて、ホットミルクに溶かす「スティックチョコ」を称賛すると、殊の外ユティラ嬢には喜ばれ、お茶会は必ず開きますからと、決意も新たに宣言されてしまった。
「……フォルシアン公。今更、茶会そのものを止めはしないが、ひと月は間を置いて貰いたい。エドベリ殿下を送り届けた後、私がしばらく公務を外れる旨、通達はあったかと思うが」
不機嫌さの中に混じる、エドヴァルドの事実を交えた声に、フォルシアン公爵も、その裏にある事情を思い出したようだった。
「ああ……そうだ、そうだった。何、正式な手順に則れば、そのくらい先の予定にはなるだろう」
そのまま公爵は、ミカ君の方へと向き直る。
「ハルヴァラ伯爵家のミカ君…だったかな?私はフォルシアン公爵家当主イェルム。王都にあるチョコレートカフェ〝ヘンリエッタ〟の経営者でもある。娘の言うカップとソーサーを、まずは一客ずつ貰おうか。後日〝ヘンリエッタ〟の菓子職人や従業員たちと協議して、店で使うと言う結論になったら、改めて数を含めて連絡をさせて貰おう」
「ハルヴァラ伯爵家長子ミカです!一客ずつのお求めですね、有難うございます!もしカフェの皆さまにもお認めいただける事となりました際には、ご連絡お待ちしています!」
うんうん、営業は順調なんだね、ミカ君。
多分、この「ロッピア」もそうだけれど、フットワーク軽く、色々とミカ君を案内しているヘンリ・リリアート伯爵令息の手助けによるところも大きいんだと思う。
「レイナ様!」
フォルシアン公爵家の父娘たちが場を離れた後、ミカ君がほっとしたように、こちらに話しかけてきた。
それはまあ、他の公爵家当主と話すのも初めてだろうし、緊張したよね。
「お疲れ様、ミカ君。リリアート卿は?さっきまで一緒じゃなかった?」
「あ、ヘンリさんは今、別のお店に売り込み中!ハルヴァラの器も一緒に持って行ってくれてるよ!」
「そっかぁ…ずいぶんとリリアート卿とは仲良くなれたんだね」
「うん、そうなんだ!」
ニコニコと笑うミカ君。
彼は一人で来たなりに、領の為に成果を上げて帰ろうとしているようだ。
…短期間の成長ぶりに、ちょっと複雑な気分がするくらいに。
「ねぇねぇレイナ様、キヴェカスさん家のカフェ、いつ行けそう?ヘンリさんとブレンダ様からも食事に誘われているから、お返事しないといけなくて!」
ちょっと迷って悩んでいるように小首を傾げるミカ君――可愛すぎる。
「あ、そうなんだ?そうね、じゃあ――」
「――は?」
ただ、そんな微笑ましい気持ちは、エドヴァルドの地の底まで落ちた氷点下ボイスで、吹き飛んでしまった。
「レイナ……チョコレートカフェの話も有耶無耶になっていた筈だが……今度はキヴェカス家のカフェがどうしたって……?」
「……えっと」
「戻ったら、じっくりと説明して貰おうか」
拒否権……なさそうですよね。
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