ザ・グレート・プリン

スーパー・ストロング・マカロン

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「アキト!これで済むと思う?ねぇ?シカトしてないで答えなよ!」

「だから耳元で怒鳴るなって。鼓膜が破れるだろ。」

アキトは型落ちのクラウンでスイスイ進んで行く。

俺がタクシーでメデューサが勤務するSMクラブへ向かった道をそのままなぞるかのように逆走している。

「アイツら追っかけてきて、あたしはすぐ連れ戻されるよ。次逃げたら殺すとまで言われて脅されてんだかんね!」

メデューサは半ベソをかきながら助手席のシートを倒した。

メデューサは目つきをギロッとさせて、後部座席にいる俺を睨みつけてきた。
俺は瞬時に目を逸らして窓から景色を眺めた。

「元はといえば、あんたが、あんたが首を突っ込まなければこうはならなかったんだよ?わかってる?マジ、わかってんのか!?馬鹿野郎!!」

「サヤマさんを責めるのは間違っているよ。俺だって、恵子にいきなり子どもを預けられたらきっと同じ行動をとったと思う。」

「ちょっと待って!あのさ、この先の展開とか考えてるわけ?アイツらは普通じゃないよ?狂ってるんだから。」

メデューサは両腕をクロスさせて顔を覆っている。

「こういう展開になるなんて、朝起きて、歯を磨いて、朝飯食べて、店に着くまで夢にも思わなかったな。だから思いつきだよ。」

「もう終わりだよ。あぁぁ!」

メデューサは呆れたようで、悪態をつくようなため息をした。

「YES!よくわかってんじゃん。もう終わりだよ。」

メデューサは号泣した。

アキトの運転する車は黄色信号で止まった。

「なんで泣くんだよ?俺は危ない道を歩くお前を守っているんだけどな。」

「どこがよ!」

「わかんないかなぁ?あのままトオルさんやナオさん達と一緒に居たら、俺ら幸せにはなれないよ。トラブルに巻き込まれるのは間違いないからね。」

「それはそうだけど、あたしはお金を返さなきゃならないんだかんね!」

「恵子が金を持ち逃げしたのはドン引きしたよ。ありゃ泥棒だからね。
たださ、けっこう前の話だけどトオルさん達と飲んだ時にナオさんが酔った勢いで以前勤めていた店から金を持ち逃げしたって自慢げに話していたんだよ。
あれはマジだと思うよ。トオルさんに後日聞いたらマジだって言っていたから。
あぁ、これは因果応報だなって。」

「…そんなん知ったことじゃないよ。金を返さないと殺される。逃げた時点で殺されてしまうんだろうけどね。あたし。」

「金は働いて返せばいいんじゃん。でも、あのまま"ヘヴンandヘル"に居たら、人生を棒に振る。
」。

寝込んでいるメデューサは再度、ため息をついた。
先ほどと違って声に力がない。

「子供を不幸にしたら恵子にとっても不幸なんだって気持ちを持つべきだと俺は思うよ。」

メデューサは涙を拭きたかったようで、腕でクロスして隠していた顔に素早くタオルを乗せ始めた。
翔馬の母である"山田恵子"の表情を窺う事はできなかった。

「あぁ、そうだ。ところでサヤマさん。ナビをお願いしてもいいですか?イマイチ、Google Mapの使い方がわからなくて。」

「あ、はい。わかりました。」

バックミラー越しからアキトと、また目が合った。
少し笑顔をのぞかせているように俺には思える。

信号機は青に変わった。

























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