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ここで強引に腕を掴んで引き止めてしまえば、メデューサは大声をあげて助けを求めるにちがいない。
しかし店に入られてしまったら、圧倒的に不利な展開だ。連れ戻す事は不可能だと言い切れる。
メデューサが退勤するのを辛抱強く待つしかないのか?
「そこで何をしているんだ?」
「アキトぉぉぉ!コイツをなんとかしてよ!」
「だれ?」
店の出入り口からワイシャツを着た金髪の男が出てきてた。
一瞬、トオルの部下である金髪ツーブロック男かと思いたじろいでしまったが別人だ。
このアキトという名前の男の方が断然若い。25歳くらいだろうか。
「コイツ、あたしの後をベッタリくっついて来んの!もしかしたらストーカーかも!」
「あんた、なんのようだ?」
メデューサはアキトの背に隠れている。
ここだけ見れば俺が悪人だ。
コイツは今までもこういう手口で人を貶めていたのだろう。
メデューサの姑息さには恐怖を感じる。
「山田さんは先週、1人息子である翔馬君を俺に預けて出て行ったのです。そして電話で話したところ帰宅するつもりはないとの事だったので、話をすべくこちらへ直接伺いしました。」
俺は簡潔に、アキトの目を見てストレートに伝えた。
「えっ?どういう事だ?」
アキトの背中に身を隠していたメデューサはアキトの問いかけを無視して建物の中へ入っていった。
「おい?待てよ!」
アキトがメデューサを追い、駆け足で中へ入っていく。
思わぬ展開で困惑してしまった。
俺も後を追って中へ入るべきか?
走ってメデューサを追うくらいだ。
アキトはメデューサにたった今、俺が暴露した事に関する質問をしているのだろう。
待てよ?
もしかしたら、渡辺太郎から教えてもらった情報の男はアキトなのかもしれないな。
じゃあ、アキトがメデューサの彼氏か。
見た感じ、アキトはトオル達ほど暴力性がないように思う。
威圧感がないんだ。
第一印象で得た直感はわりと当たる。
もしもアキトが俺が想像する通りの男であれば、いくら話し合いをしたところでメデューサに言いくるめられてしまうのではないか?
メデューサより歳下であろうアキトの方からメデューサに夢中になったようだし。
やはり俺も中へ入ってメデューサがやった事をもっと具体的に伝えるべきかもしれない。
でなければ、人格の歪んだメデューサの事だ、裏で甘い砂糖を塗すかのような嘘を平然とついてやり過ごすはず。
頭でわかっちゃいても、この如何わしい「SMクラブ ヘブン&ヘル」の中には、トオル達がいるんだ。
今まで、どうにかこうにか大ピンチに苦しみながらも生還してきたのにまた奴らと関わる事になる。
あの日味わった恐怖が俺の足を止める。
本来なら引き返すべきなんだ。
いや、それ以前にこんな他人事に関わってはならない。
ネガティヴな感情に支配されつつあった…が、翔馬を思い出す。
確かに赤の他人の子だ。
しかし複雑な事情が絡み合って縁が生まれた。
昨日は中邑さん宅でママ(メデューサ)を連れ戻すと約束した。
俺とは比べものにならないほど純粋で、母であるメデューサと再会するのを心待ちにしている。
翔馬だけではない。
中邑さんご夫婦を裏切った事にもなる。
輩が怖くて戻ってきたなんて、どの面を下げて言うのだろう。
そしてこのままでは本当の意味で終わりだ。
そう遠くない未来は真っ暗闇。
翔馬はどうなる?
巻き込んでしまった優しい中邑さんご夫婦は?
俺の人生は?
前方から山賊が迫ってくる。後は崖っぷち。
危険な崖から飛び込むか、勝ち目のない山賊どもとドンパチやり合うか。
何もしなければ死ぬだけ。
逃げられないと悟ったら、どちらかを選択してアクションを起こすべきだ。
0パーセントより可能性がある1パーセントの方に賭けよう。
俺は足枷を引き摺りながらモンスター達がいる死の入り口へ向かった。
しかし店に入られてしまったら、圧倒的に不利な展開だ。連れ戻す事は不可能だと言い切れる。
メデューサが退勤するのを辛抱強く待つしかないのか?
「そこで何をしているんだ?」
「アキトぉぉぉ!コイツをなんとかしてよ!」
「だれ?」
店の出入り口からワイシャツを着た金髪の男が出てきてた。
一瞬、トオルの部下である金髪ツーブロック男かと思いたじろいでしまったが別人だ。
このアキトという名前の男の方が断然若い。25歳くらいだろうか。
「コイツ、あたしの後をベッタリくっついて来んの!もしかしたらストーカーかも!」
「あんた、なんのようだ?」
メデューサはアキトの背に隠れている。
ここだけ見れば俺が悪人だ。
コイツは今までもこういう手口で人を貶めていたのだろう。
メデューサの姑息さには恐怖を感じる。
「山田さんは先週、1人息子である翔馬君を俺に預けて出て行ったのです。そして電話で話したところ帰宅するつもりはないとの事だったので、話をすべくこちらへ直接伺いしました。」
俺は簡潔に、アキトの目を見てストレートに伝えた。
「えっ?どういう事だ?」
アキトの背中に身を隠していたメデューサはアキトの問いかけを無視して建物の中へ入っていった。
「おい?待てよ!」
アキトがメデューサを追い、駆け足で中へ入っていく。
思わぬ展開で困惑してしまった。
俺も後を追って中へ入るべきか?
走ってメデューサを追うくらいだ。
アキトはメデューサにたった今、俺が暴露した事に関する質問をしているのだろう。
待てよ?
もしかしたら、渡辺太郎から教えてもらった情報の男はアキトなのかもしれないな。
じゃあ、アキトがメデューサの彼氏か。
見た感じ、アキトはトオル達ほど暴力性がないように思う。
威圧感がないんだ。
第一印象で得た直感はわりと当たる。
もしもアキトが俺が想像する通りの男であれば、いくら話し合いをしたところでメデューサに言いくるめられてしまうのではないか?
メデューサより歳下であろうアキトの方からメデューサに夢中になったようだし。
やはり俺も中へ入ってメデューサがやった事をもっと具体的に伝えるべきかもしれない。
でなければ、人格の歪んだメデューサの事だ、裏で甘い砂糖を塗すかのような嘘を平然とついてやり過ごすはず。
頭でわかっちゃいても、この如何わしい「SMクラブ ヘブン&ヘル」の中には、トオル達がいるんだ。
今まで、どうにかこうにか大ピンチに苦しみながらも生還してきたのにまた奴らと関わる事になる。
あの日味わった恐怖が俺の足を止める。
本来なら引き返すべきなんだ。
いや、それ以前にこんな他人事に関わってはならない。
ネガティヴな感情に支配されつつあった…が、翔馬を思い出す。
確かに赤の他人の子だ。
しかし複雑な事情が絡み合って縁が生まれた。
昨日は中邑さん宅でママ(メデューサ)を連れ戻すと約束した。
俺とは比べものにならないほど純粋で、母であるメデューサと再会するのを心待ちにしている。
翔馬だけではない。
中邑さんご夫婦を裏切った事にもなる。
輩が怖くて戻ってきたなんて、どの面を下げて言うのだろう。
そしてこのままでは本当の意味で終わりだ。
そう遠くない未来は真っ暗闇。
翔馬はどうなる?
巻き込んでしまった優しい中邑さんご夫婦は?
俺の人生は?
前方から山賊が迫ってくる。後は崖っぷち。
危険な崖から飛び込むか、勝ち目のない山賊どもとドンパチやり合うか。
何もしなければ死ぬだけ。
逃げられないと悟ったら、どちらかを選択してアクションを起こすべきだ。
0パーセントより可能性がある1パーセントの方に賭けよう。
俺は足枷を引き摺りながらモンスター達がいる死の入り口へ向かった。
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