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「あれ?随分部屋が明るくなりましたねぇ!」
昨晩、ぶっ壊れた電球を交換しておいて正解だった。
電球代はメデューサから手渡された金で購入した。
「ただでさえ工事中で雨戸は閉めっぱなしじゃないですか。それなのに電球が故障したままでは真っ暗で危ないですからね。」

煌々とした明かりの下、俺達はサーモンピンクの小さなテーブルに向かい合わせになって胡座をかいた。

翔馬は無言で天井からぶら下がった電気を見た後、玩具の「おしゃべりニャン助」を持ったまま寝室へ向かった。
ニャン助はチラッと俺を見て翔馬の後を追う。

「…良かった。翔馬君には聞かせたくない内容でしたからね。」

「山田恵子さんの件ですか?」

「もちろんです。あの後、金銭的な理由で躊躇っていましたが、やはり興信所を使って引き続き調べることにしたのです。」

「なるほど。今あの人はどちらに?」

「以前もお伝えしたSMクラブで働き出したようです。出勤日や働く時間帯も把握できましたよ。」

ハゲのおかげだ!これでメデューサとコンタクトがとれる。

「ただ一つ気になる事がございましてね。」

「と、申しますと?」

「はい。恵子はSMクラブで働くようになってから、男ができたようでして…。」

けっ!そんな事かよ。
尻軽なメデューサの事だ、さもありなんと思うところだ。

「興信所から頂いた情報によるとホストのような若い男に肩を抱かれて歩いていたようです。私は意気消沈しました。」

「はぁ。」
またこの部屋に転がり込んだ時のように、欲望にまみれたおっさんがドス黒い涙を流すのを見る羽目になるのか。
そう思っていた矢先、ハゲは俺に目頭を押さえつつ強い口調で話しかけてきた。

「私は学習しました。人前で前回のように泣いたり喚いたりは致しません。そんな事をしたってなんの意味もありませんからね。
ただ、恵子を諦めたわけではないですよ。必ずその男から恵子を奪還したいと思います!」

メデューサに執着するハゲの決意表明を聞かされて頭がぼーっとしてきた。

ん?ちょっと待てよ…。メデューサに男ができたという点でひとつ気がかりな事が浮上した。

「山田さんが男達と出て行ってから、今日で8日目。あと6日後にはこのアパートへ戻って来て翔馬を引き取る約束になっていますが、彼女は戻ってくると思いますか。」

「…自分の事ばかり考えてその辺の事には気が回りませんでした。確かに男と親密交際をしているのであれば翔馬君を引き取りにこないかもしれないです…ね。」



俺とハゲは同時にため息をついた。
その際、ハゲは俺を見て同情を誘うような目つきだったが、ため息はハゲと同じ憂いからくるものではない。
ハゲは翔馬の事なんて気にもしていないだろう。
きっと駅前のヘンテコなオブジェや公園やスーパーにある、どこかのお偉いさんの銅像と同じ感覚だ。
多くの人に見られる場所に設置されてあっても誰もその存在に関して気にもしない。

こいつなんかとは背負ったものが違うんだ。

俺はトオル達や金ピカのハマーについても聞いたが、これといった有力な情報は得られなかった。

























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