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スプーンを持ったまま泣きじゃくる翔馬に俺は話を聞いた。
何を言ってるのか分からない部分があったが根気よくなだめながら聞くと、プリンをプラスティックの容器から取り出そうとしたものの、やり方がわからなかったようで上下に振っていたら手を滑らせてゴミ箱に入ってしまったとの事。
ゴミ箱の中に鼻をかんだちり紙やテーブルを拭く時に使用したウェットティッシュとともに、"プルプル可愛いプリンちゃん"のキュートなパッケージが見えた。
「あ~、これはもう汚くて食べられないなあ。」
俺の言葉を聞いた翔馬は更に声を張り上げて泣き始めた。
「ふぅふぅ、ぢでもだべれない?」
泣いて引き付けをおこしたような状態から、やっとこさ俺に話したのだろうね。
「うん。残念だけど食べない方がいいね…。」
翔馬は大粒の涙を流しながら、また声をあげた。
ひとまずゴミ箱から哀れな"プルプル可愛いプリンちゃん"を取り出して中身を取り出し、生ゴミとプラゴミに分別した。
泣き止む事はなく涙を流し続けている。
今からスーパーサンカクエツに行っても良いけど、そろそろ閉店時間だから間に合わないだろうな。
コンビニでは販売していないし…。
弱ったな~。
あっ!?
突然、ピンときたんだよね。
交番に貼ってある指名手配のポスターの文言である、お決まりの「この顔にピンときたら」じゃないけれど心当たりがあった。
「プリン食べれるよ!」
「もうきたなくてたべれにゃいんでちょ?」
「プルプル可愛いプリンちゃんはね。それではなくて、俺の手作りプリンは食べれるよ!どうする?」
わんわん泣きながらも少し落ち着きを取り戻したようで、真っ赤になった目で俺を見ている。
「その代わりちょっと時間をちょうだい?今から美味しいプリンを作ってやるから!」
コクリと頷くのを見た後、冷蔵庫を開けてプリンを作る具材はあるか確認した。
良かった!ちゃんとある。これなら大丈夫だ。
冷蔵庫から取り出してキッチンにずらっと卵、牛乳、砂糖を並べた。
さっそくスマホでプリンの作り方を検索。
「誰でもカンタン!おやつのレシピ100」というサイトがヒット。
スマホでレシピをささっと見る。
ふ~ん。これならプリン作りが初心者の俺でも容易に作れそうだ。
えっと牛乳は400cc
砂糖は70~80g
卵は4つか。
肝心なカラメルソースは…砂糖だけでも作れるから良かった!
さっそくレシピ通り忠実に再現してみた。
プリンは高温で一気に焼かないように注意とあれば温度調整にも気を配る。
粗熱の冷まし方もサイトに書かれた文を熟読した。
耐熱容器も必要か。
プリンの材料や作り方に気を取られて容器はスルーしてしまったよ。
耐熱容器なんて洒落たもの、独り者の俺のウチにあるわけ…あったかも!
元カノは料理好きだったからな。
プリン専用とまではいかなくても、それに準じた容器はあるかもしれない。
確か、グラタンやらバナナケーキやら作ってくれたからね。
「あればいいなぁ~。」
独り事を言いながら、心の中でちょいと祈った。
やったね!
ちゃんと戸棚の中にあったよ。
元カノ様様です。あはは!
グラタンの容器ではでか過ぎるから、こっちのバナナケーキ用が良いな。
丸くて小さい耐熱容器だから見た目も良いしピッタリじゃないかな?
後はコイツを冷蔵庫で冷やすだけ…。
しまった!
冷蔵庫でプリンを冷やさなきゃならなかったんだ!
俺は手作りプリンの作り方が掲載されている、あらゆるサイトを閲覧した。
どれもこれもすぐ食べれる時間ではないよ。
あれだけ粗熱の冷まし方について調べたのにな。
子どもにとって、1時間はおろか10分だって待つのは苦痛なはずだ。
最後の最後でこれだ。
やっぱ俺は運がないな…。
期待を裏切ってしまった罪悪感で胸が痛む。
俺はキッチンからテーブルに座っている翔馬を恐る恐る振り返った。
大人用の椅子に座ったまま、ぐっすり眠っている。
きっと泣き疲れたんだろう。
俺はプリン作りに夢中で全然、気づかなかったよ。
翌朝、食後でも食前でもかまわない。
この子が食べたいタイミングで食べさせてあげよう。
4人前も作ったから俺も一緒に食べられるね。
あー疲れた。着ていたエプロンの紐を緩めた。
何を言ってるのか分からない部分があったが根気よくなだめながら聞くと、プリンをプラスティックの容器から取り出そうとしたものの、やり方がわからなかったようで上下に振っていたら手を滑らせてゴミ箱に入ってしまったとの事。
ゴミ箱の中に鼻をかんだちり紙やテーブルを拭く時に使用したウェットティッシュとともに、"プルプル可愛いプリンちゃん"のキュートなパッケージが見えた。
「あ~、これはもう汚くて食べられないなあ。」
俺の言葉を聞いた翔馬は更に声を張り上げて泣き始めた。
「ふぅふぅ、ぢでもだべれない?」
泣いて引き付けをおこしたような状態から、やっとこさ俺に話したのだろうね。
「うん。残念だけど食べない方がいいね…。」
翔馬は大粒の涙を流しながら、また声をあげた。
ひとまずゴミ箱から哀れな"プルプル可愛いプリンちゃん"を取り出して中身を取り出し、生ゴミとプラゴミに分別した。
泣き止む事はなく涙を流し続けている。
今からスーパーサンカクエツに行っても良いけど、そろそろ閉店時間だから間に合わないだろうな。
コンビニでは販売していないし…。
弱ったな~。
あっ!?
突然、ピンときたんだよね。
交番に貼ってある指名手配のポスターの文言である、お決まりの「この顔にピンときたら」じゃないけれど心当たりがあった。
「プリン食べれるよ!」
「もうきたなくてたべれにゃいんでちょ?」
「プルプル可愛いプリンちゃんはね。それではなくて、俺の手作りプリンは食べれるよ!どうする?」
わんわん泣きながらも少し落ち着きを取り戻したようで、真っ赤になった目で俺を見ている。
「その代わりちょっと時間をちょうだい?今から美味しいプリンを作ってやるから!」
コクリと頷くのを見た後、冷蔵庫を開けてプリンを作る具材はあるか確認した。
良かった!ちゃんとある。これなら大丈夫だ。
冷蔵庫から取り出してキッチンにずらっと卵、牛乳、砂糖を並べた。
さっそくスマホでプリンの作り方を検索。
「誰でもカンタン!おやつのレシピ100」というサイトがヒット。
スマホでレシピをささっと見る。
ふ~ん。これならプリン作りが初心者の俺でも容易に作れそうだ。
えっと牛乳は400cc
砂糖は70~80g
卵は4つか。
肝心なカラメルソースは…砂糖だけでも作れるから良かった!
さっそくレシピ通り忠実に再現してみた。
プリンは高温で一気に焼かないように注意とあれば温度調整にも気を配る。
粗熱の冷まし方もサイトに書かれた文を熟読した。
耐熱容器も必要か。
プリンの材料や作り方に気を取られて容器はスルーしてしまったよ。
耐熱容器なんて洒落たもの、独り者の俺のウチにあるわけ…あったかも!
元カノは料理好きだったからな。
プリン専用とまではいかなくても、それに準じた容器はあるかもしれない。
確か、グラタンやらバナナケーキやら作ってくれたからね。
「あればいいなぁ~。」
独り事を言いながら、心の中でちょいと祈った。
やったね!
ちゃんと戸棚の中にあったよ。
元カノ様様です。あはは!
グラタンの容器ではでか過ぎるから、こっちのバナナケーキ用が良いな。
丸くて小さい耐熱容器だから見た目も良いしピッタリじゃないかな?
後はコイツを冷蔵庫で冷やすだけ…。
しまった!
冷蔵庫でプリンを冷やさなきゃならなかったんだ!
俺は手作りプリンの作り方が掲載されている、あらゆるサイトを閲覧した。
どれもこれもすぐ食べれる時間ではないよ。
あれだけ粗熱の冷まし方について調べたのにな。
子どもにとって、1時間はおろか10分だって待つのは苦痛なはずだ。
最後の最後でこれだ。
やっぱ俺は運がないな…。
期待を裏切ってしまった罪悪感で胸が痛む。
俺はキッチンからテーブルに座っている翔馬を恐る恐る振り返った。
大人用の椅子に座ったまま、ぐっすり眠っている。
きっと泣き疲れたんだろう。
俺はプリン作りに夢中で全然、気づかなかったよ。
翌朝、食後でも食前でもかまわない。
この子が食べたいタイミングで食べさせてあげよう。
4人前も作ったから俺も一緒に食べられるね。
あー疲れた。着ていたエプロンの紐を緩めた。
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