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春の日差しが暖かい日曜日の午後。
川が流れる一本道を幼児の歩行に合わせてゆっくり歩く。
いつもは時間に追われて急いでばかりいた。
電車の時刻、目が回ってしまうくらいの仕事量。
そして高橋がいる殺伐とした職場環境…。
そんなストレスフルな生活を長く続けていたせいか休日でもソワソワしてばかりいて心に余裕を持つ生活はないに等しかった。
川の流れに耳を澄ませる。
その音に惹かれて立ち止まり緩やかに流れる川を見つめる。
太陽の光に反射して川面がキラキラと光って美しい。
翔馬も立ち止まり川を見ている。
優雅に泳ぐ大きな鯉に興味を示したようだ。
「このキンギョ、おっきいね!」
柵に顔を少しだけ挟みながら俺に言った。
「これは金魚じゃないよ。鯉って言うんだ。」
「コイ?へぇ~。」
そう言って翔馬は突然、走り出した。
周囲には老夫婦が仲睦まじく散歩していたり、優しい目をしたゴールデンレトリバーに笑顔で語りかけて歩く中年女性もいる。
俺は元気いっぱいな翔馬が走り出すのを見て不思議な気持ちになった。
元カノとこの街に越してきてから長い月日が経過しているものの、自分だけ地中に深く潜っているような感覚がずっとあった。
いつまで経っても街や周囲の人々に馴染めている気がしない。
ビジネスホテルを渡り歩いている根無草のようだ。
少し顎を上げて桜並木を見る。
開花するのは二、三日後だとIT企業の社長と不倫疑惑のあったお天気お姉さんが関東の桜前線について、いつも通り微笑しながら伝えていた。
木漏れ日が眩しい。
スズメが3羽、チュンチュン鳴きながら桜の木で羽根を休ませている。
スマホをポケットから取り出して写真を撮っていると、翔馬がこちらへタッタカ走りながら戻ってきた。
驚いたスズメ達は桜の木から一斉に飛び立ち、青空へと吸い込まれていった。
「ねぇ!はやくかえろうよ!」
川が流れる一本道を幼児の歩行に合わせてゆっくり歩く。
いつもは時間に追われて急いでばかりいた。
電車の時刻、目が回ってしまうくらいの仕事量。
そして高橋がいる殺伐とした職場環境…。
そんなストレスフルな生活を長く続けていたせいか休日でもソワソワしてばかりいて心に余裕を持つ生活はないに等しかった。
川の流れに耳を澄ませる。
その音に惹かれて立ち止まり緩やかに流れる川を見つめる。
太陽の光に反射して川面がキラキラと光って美しい。
翔馬も立ち止まり川を見ている。
優雅に泳ぐ大きな鯉に興味を示したようだ。
「このキンギョ、おっきいね!」
柵に顔を少しだけ挟みながら俺に言った。
「これは金魚じゃないよ。鯉って言うんだ。」
「コイ?へぇ~。」
そう言って翔馬は突然、走り出した。
周囲には老夫婦が仲睦まじく散歩していたり、優しい目をしたゴールデンレトリバーに笑顔で語りかけて歩く中年女性もいる。
俺は元気いっぱいな翔馬が走り出すのを見て不思議な気持ちになった。
元カノとこの街に越してきてから長い月日が経過しているものの、自分だけ地中に深く潜っているような感覚がずっとあった。
いつまで経っても街や周囲の人々に馴染めている気がしない。
ビジネスホテルを渡り歩いている根無草のようだ。
少し顎を上げて桜並木を見る。
開花するのは二、三日後だとIT企業の社長と不倫疑惑のあったお天気お姉さんが関東の桜前線について、いつも通り微笑しながら伝えていた。
木漏れ日が眩しい。
スズメが3羽、チュンチュン鳴きながら桜の木で羽根を休ませている。
スマホをポケットから取り出して写真を撮っていると、翔馬がこちらへタッタカ走りながら戻ってきた。
驚いたスズメ達は桜の木から一斉に飛び立ち、青空へと吸い込まれていった。
「ねぇ!はやくかえろうよ!」
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