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俺は警察署で今までの事件を担当してくれた40代半ばくらいの眼鏡をかけた男性警察官に洗いざらい話している。


翔馬だけでなく俺にとっても幸運だった。

ファミレスで"スイーツニャンコ"キャンペーンが行われておりグッズが当たる福引をする機会に恵まれた。

レジで会計を済ました後、翔馬はドキドキしながら"ガラガラ"の取っ手を握り慎重に回していた。

幸運な事に二等賞の「おしゃべりニャン助」という亡くなった天才科学者を父に持つ息子(主人公)の飼い猫であるニャン助がボタンを押すとランダムで7通りのセリフを話す玩具を手に入れることができた。

一等賞の景品には目もくれずニャン助が大好きな翔馬は大いに喜んだ。

ファミレスを出て警察署に着いても、周囲の人なんて眼中になくボタンを押して夢中になって遊んでいる。

おかげでトオル達やメデューサのおどろおどろしい話を聞かせずに済んだので、俺は胸を撫で下ろした。
近くにいた人々にとっては迷惑だろうが翔馬を注意してやかましい"おしゃべりニャン助"を取り上げる事などする気はない。



事件の内容を話した後、今度は俺が受けた苦痛ーーーートオル達の悪事や、メデューサのネグレクトによって翔馬を預かる立場がどれだけ精神的な苦痛かを話した。


「確かにそれは問題です。しかし我々が力になって差し上げる事はできないですね。」
警察官はそう言うと、ズレた眼鏡を左手の中指でグイッと押し込むようにして位置を整えた。

「えっ、それはなんでですか!?」
俺は驚きのあまり声がデカくなった。
チラッと翔馬を見る。
翔馬はニャン助に夢中でこちらへは全く関心がない。

「はい。まずご本人(メデューサ)から被害届がない事。それからお話を聞く中で本意ではないにしろ、成人されているご自身の意思でそのグループの誘いを承諾して合流したのですから捜査をするという事は今の段階ではできないですね。」

この警察官はメモを取る手を止め、俺の目を見ながら淡々と言った。

「もちろん、いま佐山さんがお話された事案についてはこの場で被害届を申請する事は可能です。」

「被害届を提出すれば捜査をしてくださるんですか?」
俺は身を乗り出して聞いた。

「こちらの被害届を提出されたとしても必ずしもそうとは限りません。寧ろ今回の件に関しては客観的証拠が乏しいですから受理はしても捜査をするとは考えにくいです。」
警察官はテーブルに置いてある被害届を指差しながら答えた。

俺は想定外の事態に遭遇して頭が真っ暗になってしまっている。
何かを話そうにも、言葉が出てこない。

「それから、そちらのお子さんについてですが。」

「…はい。」
俺はショックで声を絞り出してようやく返事をした。

「我々の方で児童相談所を紹介する事が出来ます。
児童相談所でお子さんを一時保護する事が可能ですが如何いたしますか?」

「そうですね…。」
俺は間を置いた。なんて答えれば良いか分からなかったからだ。

警察官は夢中で遊んでいる翔馬に目をやったあと、俺を見た。

「もし、あの子が仮に児童相談所で保護された場合どのような生活を送る事になりますか?」


「一時保護の期間は原則2ヶ月以内とされています。家庭を含む関係期間で、その家庭に子どもが戻っても安全かどうかを判断しなければなりません。
帰宅しても問題なければ一時保護所を出て家庭に帰宅できますが、そうでない場合は主に児童養護施設等に引き取られるでしょう。」

「なるほど…。」
翔馬の場合は母であるメデューサがいない為、安全かどうかの判断はできないのではないか。
おそらく警察官が教えてくれた一時保護をしてくれる期間が過ぎたら即、児童養護施設に行くのかもしれない。

「あ~おもしろかったぁ!」
席を外していた翔馬が俺の隣りにやってきた。

「ねぇ、もうつかれた。おうちかえろうよ。」

「この子の母親が2週間後に帰宅すると言っていたので、もう少し待ちたいと思います。もしかしたら今日か明日にでも連絡がきて、この子を引き取りに来るかもしれませんから。」

俺は翔馬に声をかけられても無視をして警察官にそう言った。

えっ?
ちょっと待て!
いったい俺は何を言っているんだ!


(※この物語はフィクションです。念の為、書かせていただきますが警察官と佐山のやりとりは確かなものではありません。)




























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