ザ・グレート・プリン

スーパー・ストロング・マカロン

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土曜日とはいえ、ランチタイムからズレた事で店内にはそれほど客はいない。

大学生風のカップルから子どもを連れたママ友のグループ、団塊の世代であろう夫婦。
客層はバラバラだ。

翔馬はお子様ランチを嬉しそうに食べている。

「ぼくね、これをね、はじめてたべたよ!すごくおいしいね!」
口の周りにケチャップやソースをベッタリつけながら元気よく話している。

「そうか、気に入ってくれて良かったよ。」
俺はなんとか笑顔で答える事ができた。

翔馬の話によれば山田"メデューサ"恵子は引っ越してきてから何度もこのファミレスに翔馬を連れて来ていたようだが、お子様ランチは食べさせて貰えず、いつも店で1番値段が安いラーメンばかりを食べていたらしい。

メニュー表の値段を見てメデューサの考えている事が分かった気がする。


「ねぇねぇ?」
日本の国旗である日の丸が刺さったケチャップライスを不器用にスプーンで食べながら、俺に聞いてきた。

「ん、どうした?」
正直、この子の母であるメデューサについて質問されるのが怖い。
アパートで居た時のようにメデューサがいつ帰ってくるか聞かれたら返答に困るからだ。
昨晩、頭がイカれた男達に埠頭で暴行された後、その男達に呼び出され今朝、お前を置いて出て行った。
今、どこで何をしているのかさえ分からない…。

事実とはいっても、そんな事を口が裂けても子どもに言えるわけがないだろう。


「そのゴハンはおいしい?」
スイーツニャンコのトレーナーを着た翔馬は笑顔で俺に言った。

「あぁ、これね。これはネ、ネギトロ丼だよ。とっても美味しいよ。あはは…。」
メデューサがいつ帰ってくるか、また聞かれてしまうのかと思ってハラハラした。

「よかったー!」
翔馬は嬉しそうに両手を挙げた後、勢い良くメロンクリームソーダをストローでゴクゴク飲み始めた。

バニラアイスがメロンソーダに溶け始めていく。

溶けていくバニラアイスがまるで砂時計のように見えてくる。

俺は今後について考えた。

やはり警察には通報しよう。
それも電話ではなく、近所にある警察署に翔馬と一緒に行って直接、警察官と話をするべきだ。

昨晩の埠頭の件から今朝の事まで俺が知っているかぎりを丁寧に時系列で事細かく全部話すんだ。

きっと警察は凶悪な組織が背後にあると考えて真剣に捜査を行うはずだ。

うん。

そうしよう。

俺は気弱な一般人であって、仮面ライダーでもなければタイガーマスクでもないんだ。

ただでさえ職場にいる高橋のパワハラで苦しめられているのに、これ以上悩みを抱えては生きていけない。

ましてや、トオル達のような裏社会で生きる輩に関わるなんて危険過ぎる。

翔馬に関しては警察が保護をしてくれるはずだ。
俺は単にメデューサの隣に住んでいるってだけで、この件とは無関係なのだから。


「ねぇねぇ、おねえさんがよんでるよ?」
若いウェイトレスの娘がやってきて、お冷はいかがですか?と俺に聞いたようだが考え事に集中していて耳に入らなかった。













































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