85 / 88
二章 長女、秋奈を守れ!
84
しおりを挟む
病院を出た3人の中で、1番早く駐車場に止めてある車に辿り着いたのは夏子と秋奈だった。
夏子は秋奈と手を繋いでいた。
焦っている夏子は後ろを振り返り春彦に早く車に乗れと催促をしている。
秋奈の騒動で神経をすり減らした夏子は、精神的な部分で疲弊していた為、夕食を作る体力はなかったが、自宅までの帰り道にレストランへ寄る事はあり得なかった。
理由は冬児が1人で留守番をしているからだ。
そこで家族は車で帰宅中、出前をとる事で満了一致したのだった。
いつものように助手席には座らず、秋奈に寄り添って後部座席に座る夏子は「安全運転は当たり前!でも早くして!」と、運転する春彦にはっぱをかけた。
冬児を思う気持ちが強い。
自宅に到着後、夏子は冬児を抱きしめる。
「僕なら大丈夫だよ。お腹は空いたけど、夜遅くなっても全然怖くなんかないから。それより帰宅中の車内からあんなに長く電話をされちゃ、僕だって疲れちゃうよ。」
心配する夏子をよそに冬児は恥ずかしげに苦笑いをして離れていき、寿司の出前をとる為、リビングにある4人掛けテーブルの席に座って電話をかけている春彦の膝にしがみついた。
多少、ギクシャクしてはいるものの秋奈の春彦に対する感情は以前と比べて天と地ほど違う。
多くを語らない春彦は、いかにして秋奈を救出できたか家族は疑問に思っている。
しかしながら春彦からそれを伝えようとはしないし、何やらストレスを抱えていてそれを家族には見せないように、努めているのがわかったからだ。
夏子は秋奈に配慮しており、春彦とじっくり話せるタイミングを伺っていたが、その均衡はあっけなく破ったのは冬児だった。
「お父さん、お姉ちゃんは変な奴らに連れて行かれたんだってね。
犯人は警察に捕まらないの?
どんな奴が犯人だったの?
テレビとかネットでもニュースになる?」
質問を捲し立ててきた。
「僕、そいつら許さないよ!
ねぇ、お母さん!お母さんも許すつもりないよね!?」
「そうだね。お母さんも同じ気持ちよ。」夏子は言葉数が少ない。
渦中にいた秋奈には、なぜあのようなログハウスが存在し、自分より少し歳上の若い女達が生活をしていたのかーーーー
そして一条のようなメディアにも度々登場する、大企業の社長に襲われた事が理解できずにいる。
「お姉ちゃんが戻ってきたから解決したって事でいいの?」
「全てが解決したわけではないな。」
「えっ!?悪い奴らは捕まんないの?」
「通常なら逮捕だが、今回は捕まるかどうかわからない。
今の社会ではわからないって事だ。
その悪い奴らの持つ権力は社会も動かす事ができる、何をどこまで動かせるかもわからない。」
「なにそれ~!?わかんない事ばっかし!」
冬児はガッカリしている。
「だがね、冬児。
今回の件で、権力を悪用した連中は破滅した。
警察が彼らを捕まえる事はしないかもしれないが、悪の中枢達の巣も、そのネットワークも破壊したから機能しない。」
「破滅して良かった!でもなんでさ警察に捕まらないの?」
「警察も関与しているかもしれない…。
他に考えつく事を推測するならば悪の親玉を裏切った関係者が密告すれば動くかな?
いや、それさえも揉み消すかもしれん。
では各メディアはどうだ?
一条はメディアにも接待して手中に収めたとも言われている。
報道規制をかけたり、隠蔽するのか?テレビならあり得るかな?
しっかし政治家なら…いや待てよ?
寧ろ、政治家が一条達とズブズブだと由美子さんのお兄さんが強く言っていたしなぁ。ふーむ…。」
冬児に説明をしていたはずの春彦は、いつの間にか冬児を置き去りにして、一条達のその後をシミュレーションするようになっていった。
これまでに得た経験や社会常識、今回の状況や一条の権力、由美子の兄から聞いた有力な情報ーーーー
それらをトータルで考えた際に思考が袋小路に入り込んでしまい、完全なる解決が難しいという結論に至った。
「俺の娘にこんな事をした一条達、それからあのログハウスで遊んでおきながら雲隠れしている者達、一条達の行動を知っていて黙っている関係者!
俺は絶対に許さんぞ!いったい正義はどこにあるのだ!」と言い今回の悪しき事件について声を荒げた。
夏子は秋奈と手を繋いでいた。
焦っている夏子は後ろを振り返り春彦に早く車に乗れと催促をしている。
秋奈の騒動で神経をすり減らした夏子は、精神的な部分で疲弊していた為、夕食を作る体力はなかったが、自宅までの帰り道にレストランへ寄る事はあり得なかった。
理由は冬児が1人で留守番をしているからだ。
そこで家族は車で帰宅中、出前をとる事で満了一致したのだった。
いつものように助手席には座らず、秋奈に寄り添って後部座席に座る夏子は「安全運転は当たり前!でも早くして!」と、運転する春彦にはっぱをかけた。
冬児を思う気持ちが強い。
自宅に到着後、夏子は冬児を抱きしめる。
「僕なら大丈夫だよ。お腹は空いたけど、夜遅くなっても全然怖くなんかないから。それより帰宅中の車内からあんなに長く電話をされちゃ、僕だって疲れちゃうよ。」
心配する夏子をよそに冬児は恥ずかしげに苦笑いをして離れていき、寿司の出前をとる為、リビングにある4人掛けテーブルの席に座って電話をかけている春彦の膝にしがみついた。
多少、ギクシャクしてはいるものの秋奈の春彦に対する感情は以前と比べて天と地ほど違う。
多くを語らない春彦は、いかにして秋奈を救出できたか家族は疑問に思っている。
しかしながら春彦からそれを伝えようとはしないし、何やらストレスを抱えていてそれを家族には見せないように、努めているのがわかったからだ。
夏子は秋奈に配慮しており、春彦とじっくり話せるタイミングを伺っていたが、その均衡はあっけなく破ったのは冬児だった。
「お父さん、お姉ちゃんは変な奴らに連れて行かれたんだってね。
犯人は警察に捕まらないの?
どんな奴が犯人だったの?
テレビとかネットでもニュースになる?」
質問を捲し立ててきた。
「僕、そいつら許さないよ!
ねぇ、お母さん!お母さんも許すつもりないよね!?」
「そうだね。お母さんも同じ気持ちよ。」夏子は言葉数が少ない。
渦中にいた秋奈には、なぜあのようなログハウスが存在し、自分より少し歳上の若い女達が生活をしていたのかーーーー
そして一条のようなメディアにも度々登場する、大企業の社長に襲われた事が理解できずにいる。
「お姉ちゃんが戻ってきたから解決したって事でいいの?」
「全てが解決したわけではないな。」
「えっ!?悪い奴らは捕まんないの?」
「通常なら逮捕だが、今回は捕まるかどうかわからない。
今の社会ではわからないって事だ。
その悪い奴らの持つ権力は社会も動かす事ができる、何をどこまで動かせるかもわからない。」
「なにそれ~!?わかんない事ばっかし!」
冬児はガッカリしている。
「だがね、冬児。
今回の件で、権力を悪用した連中は破滅した。
警察が彼らを捕まえる事はしないかもしれないが、悪の中枢達の巣も、そのネットワークも破壊したから機能しない。」
「破滅して良かった!でもなんでさ警察に捕まらないの?」
「警察も関与しているかもしれない…。
他に考えつく事を推測するならば悪の親玉を裏切った関係者が密告すれば動くかな?
いや、それさえも揉み消すかもしれん。
では各メディアはどうだ?
一条はメディアにも接待して手中に収めたとも言われている。
報道規制をかけたり、隠蔽するのか?テレビならあり得るかな?
しっかし政治家なら…いや待てよ?
寧ろ、政治家が一条達とズブズブだと由美子さんのお兄さんが強く言っていたしなぁ。ふーむ…。」
冬児に説明をしていたはずの春彦は、いつの間にか冬児を置き去りにして、一条達のその後をシミュレーションするようになっていった。
これまでに得た経験や社会常識、今回の状況や一条の権力、由美子の兄から聞いた有力な情報ーーーー
それらをトータルで考えた際に思考が袋小路に入り込んでしまい、完全なる解決が難しいという結論に至った。
「俺の娘にこんな事をした一条達、それからあのログハウスで遊んでおきながら雲隠れしている者達、一条達の行動を知っていて黙っている関係者!
俺は絶対に許さんぞ!いったい正義はどこにあるのだ!」と言い今回の悪しき事件について声を荒げた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

パーフェクトアンドロイド
ことは
キャラ文芸
アンドロイドが通うレアリティ学園。この学園の生徒たちは、インフィニティブレイン社の実験的試みによって開発されたアンドロイドだ。
だが俺、伏木真人(ふしぎまひと)は、この学園のアンドロイドたちとは決定的に違う。
俺はインフィニティブレイン社との契約で、モニターとしてこの学園に入学した。他の生徒たちを観察し、定期的に校長に報告することになっている。
レアリティ学園の新入生は100名。
そのうちアンドロイドは99名。
つまり俺は、生身の人間だ。
▶︎credit
表紙イラスト おーい
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる