パパの見た目は15歳〜童顔の大黒柱〜

スーパー・ストロング・マカロン

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二章 長女、秋奈を守れ!

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病院を出た3人の中で、1番早く駐車場に止めてある車に辿り着いたのは夏子と秋奈だった。
夏子は秋奈と手を繋いでいた。

焦っている夏子は後ろを振り返り春彦に早く車に乗れと催促をしている。

秋奈の騒動で神経をすり減らした夏子は、精神的な部分で疲弊ひへいしていた為、夕食を作る体力はなかったが、自宅までの帰り道にレストランへ寄る事はあり得なかった。
理由は冬児が1人で留守番をしているからだ。

そこで家族は車で帰宅中、出前をとる事で満了一致したのだった。

いつものように助手席には座らず、秋奈に寄り添って後部座席に座る夏子は「安全運転は当たり前!でも早くして!」と、運転する春彦にはっぱをかけた。
冬児を思う気持ちが強い。



自宅に到着後、夏子は冬児を抱きしめる。
「僕なら大丈夫だよ。お腹は空いたけど、夜遅くなっても全然怖くなんかないから。それより帰宅中の車内からあんなに長く電話をされちゃ、僕だって疲れちゃうよ。」

心配する夏子をよそに冬児は恥ずかしげに苦笑いをして離れていき、寿司の出前をとる為、リビングにある4人掛けテーブルの席に座って電話をかけている春彦の膝にしがみついた。

多少、ギクシャクしてはいるものの秋奈の春彦に対する感情は以前と比べて天と地ほど違う。

多くを語らない春彦は、いかにして秋奈を救出できたか家族は疑問に思っている。

しかしながら春彦からそれを伝えようとはしないし、何やらストレスを抱えていてそれを家族には見せないように、努めているのがわかったからだ。

夏子は秋奈に配慮しており、春彦とじっくり話せるタイミングを伺っていたが、その均衡はあっけなく破ったのは冬児だった。

「お父さん、お姉ちゃんは変な奴らに連れて行かれたんだってね。
犯人は警察に捕まらないの?
どんな奴が犯人だったの?
テレビとかネットでもニュースになる?」

質問を捲し立ててきた。

「僕、そいつら許さないよ!
ねぇ、お母さん!お母さんも許すつもりないよね!?」

「そうだね。お母さんも同じ気持ちよ。」夏子は言葉数が少ない。

渦中にいた秋奈には、なぜあのようなログハウスが存在し、自分より少し歳上の若い女達が生活をしていたのかーーーー
そして一条のようなメディアにも度々登場する、大企業の社長に襲われた事が理解できずにいる。

「お姉ちゃんが戻ってきたから解決したって事でいいの?」

「全てが解決したわけではないな。」

「えっ!?悪い奴らは捕まんないの?」

「通常なら逮捕だが、今回は捕まるかどうかわからない。
今の社会ではわからないって事だ。
その悪い奴らの持つ権力は社会も動かす事ができる、何をどこまで動かせるかもわからない。」

「なにそれ~!?わかんない事ばっかし!」

冬児はガッカリしている。

「だがね、冬児。
今回の件で、権力を悪用した連中は破滅した。
警察が彼らを捕まえる事はしないかもしれないが、悪の中枢達の巣も、そのネットワークも破壊したから機能しない。」

「破滅して良かった!でもなんでさ警察に捕まらないの?」

「警察も関与しているかもしれない…。
他に考えつく事を推測するならば悪の親玉を裏切った関係者が密告すれば動くかな?
いや、それさえも揉み消すかもしれん。
では各メディアはどうだ?
一条はメディアにも
報道規制をかけたり、隠蔽するのか?テレビならあり得るかな?
しっかし政治家なら…いや待てよ?
寧ろ、政治家が一条達とズブズブだと由美子さんのお兄さんが強く言っていたしなぁ。ふーむ…。」

冬児に説明をしていたはずの春彦は、いつの間にか冬児を置き去りにして、一条達のその後をシミュレーションするようになっていった。
これまでに得た経験や社会常識、今回の状況や一条の権力、由美子の兄から聞いた有力な情報ーーーー
それらをトータルで考えた際に思考が袋小路に入り込んでしまい、完全なる解決が難しいという結論に至った。

「俺の娘にこんな事をした一条達、それからあのログハウスで遊んでおきながら雲隠れしている者達、一条達の行動を知っていて黙っている関係者!
俺は絶対に許さんぞ!いったい正義はどこにあるのだ!」と言い今回の悪しき事件について声を荒げた。




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