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二章 長女、秋奈を守れ!
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翌日、春彦は夏子と秋奈を連れて由美子が入院している病院の受付で連絡先を書いていた。
迷惑をかけた側とトバッチリを受けた側、双方にありがちな会話からスタートして、どちらも表情を強張らせているが、由美子側には一切のしこりはなく、単に気まずいだけであった。
店名が入った茶色の紙袋を、春彦はベッドサイドに備え付けられているテーブルに置いた。
お見舞いに持ってきた品である団子屋"春夏秋冬"から、みたらしと餡子とずんだ、それから黒胡麻団子が一本ずつ入っている。
「お団子でしょ?ありがとうね!
さっそく食べちゃおっかな?」
派手な見た目ではあるが、由美子の表情はパァと明るくなり可愛らしく笑った。
「改めて娘の秋奈が大変ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
謝っても謝りきれない事をしでかしてしまい、これは当人だけでなく私達親の責任でもあり猛省しております。
重ね重ねお詫びさせていただきます。
誠に申し訳ございません。」
深々と頭を下げた春彦に、夏子と秋奈も続いて頭を下げた。
「大丈夫ですってば、お義父さん。
検査結果も異常なし、良好ですから。
明日には退院だし。」
「費用は当然、こちらでお支払いさせて頂きます。
退院時も私が責任を持って、こちらまでお迎えにあがらせてください。
それからお店を閉めなければならなくなった事と、心のケアも含めて慰謝料も合わせてお支払いをしたいと思っております。」
本来であれば当たり前の事だが、由美子は猛省している春彦と夏子の姿を見て、いたたまれなくなってしまった。
見た目とは裏腹に根っからの、お人好しだった。
心から謝罪をしている春彦と、謝罪を受け入れた由美子を見て、堪えきれず夏子は涙を流した。
秋奈は自身の軽率な行動で多大な迷惑をかけた事を反省すると同時に悔やみ、夏子とは比べものにならないくらい泣き腫らしている。
「あの、私はほんと大丈夫ですから。
もう痛みはないし。
これ以上の心配はしないで。ねっ?」
ベッドから立ち上がった由美子は季節原夫婦の後ろにいる秋奈の正面に立つ。
声を出して泣く秋奈の両肩を優しく掴んだ由美子は言った。
「アンタがおかしな方向に進もうって時、アンタの為に必死に考えてくれる人がいる。
その人達ってアンタに、いつも甘い言葉ばかり並べたりしないと思う。
でもね、甘い言葉を吐く奴らってどっかで裏があるんだ。
トラップを仕掛けて狙ってんのよ。」
秋奈は何度も首を縦に振っている。
「これを教訓にしてさ、成長していってね?
イイ女の子になって。アンタならなれるから。
わかった?」
肩を掴んでいた由美子は秋奈の青々とした頭を撫でた後、手を離した。
迷惑をかけた側とトバッチリを受けた側、双方にありがちな会話からスタートして、どちらも表情を強張らせているが、由美子側には一切のしこりはなく、単に気まずいだけであった。
店名が入った茶色の紙袋を、春彦はベッドサイドに備え付けられているテーブルに置いた。
お見舞いに持ってきた品である団子屋"春夏秋冬"から、みたらしと餡子とずんだ、それから黒胡麻団子が一本ずつ入っている。
「お団子でしょ?ありがとうね!
さっそく食べちゃおっかな?」
派手な見た目ではあるが、由美子の表情はパァと明るくなり可愛らしく笑った。
「改めて娘の秋奈が大変ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
謝っても謝りきれない事をしでかしてしまい、これは当人だけでなく私達親の責任でもあり猛省しております。
重ね重ねお詫びさせていただきます。
誠に申し訳ございません。」
深々と頭を下げた春彦に、夏子と秋奈も続いて頭を下げた。
「大丈夫ですってば、お義父さん。
検査結果も異常なし、良好ですから。
明日には退院だし。」
「費用は当然、こちらでお支払いさせて頂きます。
退院時も私が責任を持って、こちらまでお迎えにあがらせてください。
それからお店を閉めなければならなくなった事と、心のケアも含めて慰謝料も合わせてお支払いをしたいと思っております。」
本来であれば当たり前の事だが、由美子は猛省している春彦と夏子の姿を見て、いたたまれなくなってしまった。
見た目とは裏腹に根っからの、お人好しだった。
心から謝罪をしている春彦と、謝罪を受け入れた由美子を見て、堪えきれず夏子は涙を流した。
秋奈は自身の軽率な行動で多大な迷惑をかけた事を反省すると同時に悔やみ、夏子とは比べものにならないくらい泣き腫らしている。
「あの、私はほんと大丈夫ですから。
もう痛みはないし。
これ以上の心配はしないで。ねっ?」
ベッドから立ち上がった由美子は季節原夫婦の後ろにいる秋奈の正面に立つ。
声を出して泣く秋奈の両肩を優しく掴んだ由美子は言った。
「アンタがおかしな方向に進もうって時、アンタの為に必死に考えてくれる人がいる。
その人達ってアンタに、いつも甘い言葉ばかり並べたりしないと思う。
でもね、甘い言葉を吐く奴らってどっかで裏があるんだ。
トラップを仕掛けて狙ってんのよ。」
秋奈は何度も首を縦に振っている。
「これを教訓にしてさ、成長していってね?
イイ女の子になって。アンタならなれるから。
わかった?」
肩を掴んでいた由美子は秋奈の青々とした頭を撫でた後、手を離した。
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