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二章 長女、秋奈を守れ!
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春彦は秋奈の気持ちを察して多くは聞かなかった。
聞き出したい事は山ほどあったし、娘がこのような行動をとった事に関して、叱らなきゃならないと強く感じていたが、状況を鑑みれば今はそれどころではない。
もどかしい気持ちをグッと堪えて自身の車内でハンドルに触れた。
「お父さん、どうしてここがわかったの?」
意外にも沈黙する事もなく、秋奈は口を開いた。
「由美子さんのおかげだ。
彼女がおまえを心配してくれてね。
それでーーーー」
「由美子さんはどうしているの?入院したの?」
由美子を心配する気持ちと、自分の愚かさが入り混じった感情が、まだ由美子について説明をしている春彦を遮った。
「彼女は病院のベッドで療養しているよ。
2、3日は入院すると思う。
特に障害はなく至って元気だ。」
秋奈は俯いた。
元気だと聞いて安堵はしたものの、やはり自分の軽率な行動で迷惑をかけた事が非常に負い目になっていた。
「おまえ自身はどうだ?」
ログハウスでの出来事について、今はまだ聞くつもりはなかったものの、春彦はつい口が開いた。
慌てて、「今すぐ無理に言わなくてもいいぞ」と言って秋奈を気遣った。
「…私は、ここに連れて来られてからレイプされそうにはなったけど、未遂っていうのかな?
ギリギリでお父さんと、怖そうな男の人が部屋に入ってきたから助かったの。」
「もう1人は由美子さんのお兄さんだ。」
「えっ?」と驚愕した秋奈は鼻を啜った後、「由美子さんのお兄さんだったんだ。」と消え入りそうな声で呟いた。
「由美子さんのお兄さんが…あの時、一条から身を守ってくれなかったら…。」
「そうだな、一条がいたな。
大手企業で政治家や他国の有力者とも仲が良く、メディアとも密月な関係を構築している。あの一条がな。」
「お父さん、知っていたの?」
助手席に座る秋奈に、この時初めて目を合わせて話した。
「一条なんて、日本で暮らしていれば誰もが知っているだろう。」
「そうじゃなくて、私をレイプしようとしていた人が一条だった事を。」
「ここに到着するまでは半信半疑だったよ。
由美子さんのお兄さんは、ああ見えてフリーで活躍するルポライターでな。
それでその、一条の裏の顔を暴こうと躍起になって追いかけていてだね、このようなログハウスを建てて下っ端を使い、様々な人生の苦難に悩む若い女達を騙しては生活させて、性的な事をしてると暴いていたんだ。」
次々、ログハウスを出て足早に若い女達が由美子の兄の仲間が乗る車に保護されていくのを春彦の視野に入った。
「あの娘らも一先ずは救われたな。
それにしたってなんだあの服装は?これだからーーーー」
娘の秋奈と同様に叱り飛ばしたい存在であったが口をつぐんだ。
ログハウスからニワトリのトサカのような赤い髪を立たせた大男が出てきて、仲間が気付いて手を振るが、仲間がいる自身の車には向かわず春彦の車にやってきた。
「一条やこの国の偉いさんらが顔を晒して女達と遊んだ証拠品は押収した。
後はこの国の司法に委ねるほかないな。
言いなりになった彼女らが野崎達に飼われて乱れに乱れた映像のみ、ぶっ壊しておいたけどな。
あんな物は残しておいちゃいけねえよ。彼女達の為だ。
まぁ、野崎夫婦が住むマンションにコピーがあんだろうからあんまり意味はないかもだがな。
そのうち、そっちも押収しておかなきゃな。」
助けられた秋奈はどうしていいかわからず、血の気の引いた顔をしている。
「秋奈ちゃんだっけか?
君と思われる映像は存在しちゃいなかった。」
「はい…。」
5秒ほど間があってから、赤モヒカンは言った。
「あんまし親に心配かけさちゃいけねえよ。
悩み事はあるのは仕方がないが、危ねえ連中とつるめばこうなる。
言葉巧みに近づいてくる悪漢を見極めるのは難しいかもしれないが、一般常識を越えてくる大人であれば、ソイツは何かしら臭え奴だ。」
由美子の兄は春彦を見た後、再び秋奈の目を見て言った。
「後は立派な親父さんが教えてくれるだろうから、これ以上は俺から説教するのはやめておく。」
春彦は赤モヒカンに言った。
「これからどうする?
一条は…あの3人も、いや2人か。」
「一条は残念ながら生きていた。」
赤モヒカンは笑って答える。
「2人じゃないな、3人で合っている。
野郎2人はあそこでゴソゴソしてるぜ。
野崎の嫁は逃げたが、いますぐとっ捕まえてやるよ。
こんなど田舎だ、山に隠れても軽装だぜ?寒さに耐えきれねえよ。」
そう言った赤モヒカンは野崎と徳山に近づいて、何やら話しかけた後、スマホを奪い取ったかと思えば、静香に電話をかけた。
聞き出したい事は山ほどあったし、娘がこのような行動をとった事に関して、叱らなきゃならないと強く感じていたが、状況を鑑みれば今はそれどころではない。
もどかしい気持ちをグッと堪えて自身の車内でハンドルに触れた。
「お父さん、どうしてここがわかったの?」
意外にも沈黙する事もなく、秋奈は口を開いた。
「由美子さんのおかげだ。
彼女がおまえを心配してくれてね。
それでーーーー」
「由美子さんはどうしているの?入院したの?」
由美子を心配する気持ちと、自分の愚かさが入り混じった感情が、まだ由美子について説明をしている春彦を遮った。
「彼女は病院のベッドで療養しているよ。
2、3日は入院すると思う。
特に障害はなく至って元気だ。」
秋奈は俯いた。
元気だと聞いて安堵はしたものの、やはり自分の軽率な行動で迷惑をかけた事が非常に負い目になっていた。
「おまえ自身はどうだ?」
ログハウスでの出来事について、今はまだ聞くつもりはなかったものの、春彦はつい口が開いた。
慌てて、「今すぐ無理に言わなくてもいいぞ」と言って秋奈を気遣った。
「…私は、ここに連れて来られてからレイプされそうにはなったけど、未遂っていうのかな?
ギリギリでお父さんと、怖そうな男の人が部屋に入ってきたから助かったの。」
「もう1人は由美子さんのお兄さんだ。」
「えっ?」と驚愕した秋奈は鼻を啜った後、「由美子さんのお兄さんだったんだ。」と消え入りそうな声で呟いた。
「由美子さんのお兄さんが…あの時、一条から身を守ってくれなかったら…。」
「そうだな、一条がいたな。
大手企業で政治家や他国の有力者とも仲が良く、メディアとも密月な関係を構築している。あの一条がな。」
「お父さん、知っていたの?」
助手席に座る秋奈に、この時初めて目を合わせて話した。
「一条なんて、日本で暮らしていれば誰もが知っているだろう。」
「そうじゃなくて、私をレイプしようとしていた人が一条だった事を。」
「ここに到着するまでは半信半疑だったよ。
由美子さんのお兄さんは、ああ見えてフリーで活躍するルポライターでな。
それでその、一条の裏の顔を暴こうと躍起になって追いかけていてだね、このようなログハウスを建てて下っ端を使い、様々な人生の苦難に悩む若い女達を騙しては生活させて、性的な事をしてると暴いていたんだ。」
次々、ログハウスを出て足早に若い女達が由美子の兄の仲間が乗る車に保護されていくのを春彦の視野に入った。
「あの娘らも一先ずは救われたな。
それにしたってなんだあの服装は?これだからーーーー」
娘の秋奈と同様に叱り飛ばしたい存在であったが口をつぐんだ。
ログハウスからニワトリのトサカのような赤い髪を立たせた大男が出てきて、仲間が気付いて手を振るが、仲間がいる自身の車には向かわず春彦の車にやってきた。
「一条やこの国の偉いさんらが顔を晒して女達と遊んだ証拠品は押収した。
後はこの国の司法に委ねるほかないな。
言いなりになった彼女らが野崎達に飼われて乱れに乱れた映像のみ、ぶっ壊しておいたけどな。
あんな物は残しておいちゃいけねえよ。彼女達の為だ。
まぁ、野崎夫婦が住むマンションにコピーがあんだろうからあんまり意味はないかもだがな。
そのうち、そっちも押収しておかなきゃな。」
助けられた秋奈はどうしていいかわからず、血の気の引いた顔をしている。
「秋奈ちゃんだっけか?
君と思われる映像は存在しちゃいなかった。」
「はい…。」
5秒ほど間があってから、赤モヒカンは言った。
「あんまし親に心配かけさちゃいけねえよ。
悩み事はあるのは仕方がないが、危ねえ連中とつるめばこうなる。
言葉巧みに近づいてくる悪漢を見極めるのは難しいかもしれないが、一般常識を越えてくる大人であれば、ソイツは何かしら臭え奴だ。」
由美子の兄は春彦を見た後、再び秋奈の目を見て言った。
「後は立派な親父さんが教えてくれるだろうから、これ以上は俺から説教するのはやめておく。」
春彦は赤モヒカンに言った。
「これからどうする?
一条は…あの3人も、いや2人か。」
「一条は残念ながら生きていた。」
赤モヒカンは笑って答える。
「2人じゃないな、3人で合っている。
野郎2人はあそこでゴソゴソしてるぜ。
野崎の嫁は逃げたが、いますぐとっ捕まえてやるよ。
こんなど田舎だ、山に隠れても軽装だぜ?寒さに耐えきれねえよ。」
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