パパの見た目は15歳〜童顔の大黒柱〜

スーパー・ストロング・マカロン

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二章 長女、秋奈を守れ!

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怒りが頂点に達し鬼と化した一条は徳山に近づいていく。

「すいませんでしたぁ!一条社長、本当にすいませんでしたぁ!」

グルグル円をかくように身体を回転させて取り乱している。

「この俺を侮辱しおって。
貴様のようなゴミクズが対等だと思っとったのか!?」

野崎夫婦は止めに入る事もできず、ただただ青ざめた顔を下に向けて木目のフローリングを見ている。

まさかネットやテレビでしか見る事ができない大企業の社長を勤めている一条が、目の前にいる事だけでも驚くべき光景であるのに、なぜかわからないが目覚めたら徳山を大声で怒鳴っている。

火災から逃れようと高層ビルから飛び降りたら、腹を空かせたホオジロザメが待ち伏せしていた。
そのくらい秋奈にとって信じられない出来事が連続している。

睨みを効かせて徳山の元へ一条は向かっていく。

「ひぃぃお許しを!」

殴られてしまうのではないかと恐れた徳山は身体を丸めて、顔面を中心に腕で身を守っている。

皆の予想に反して一条は徳山に暴力を掘るう事はなく素通りをした。

ガラガラガラッ

ぶ厚い窓ガラスを乱暴な手つきで開ける。
カーテンがカーテンレールまで捲れるほど強い風が吹き荒んだ。
部屋には冷気が入り込み、一条以外はあまりの寒さに身震いした。

「おい、小僧。おまえの名前は?」

「と、徳山です。」

「徳山か。俺は心を込めておまえに言うぞ。
ここから飛び降りろ。」

「はい?」

首を突き出し、口をあんぐりさせた徳山は一条の言った意味が飲み込めずにいる。

「徳山、その窓から飛び降りろ。」

ビューと強い風が吹き荒む窓に人差し指をピンと伸ばした一条は言った。

「あの、一条さん?さすがにそれはいかがなものかと…。」

一条は振り返って弱々しいながらも徳山を庇う野崎を睨む。

「あのですね?
落ち着けと申したらお怒りになられるかもしれませんがね、彼が飛び降りて大怪我でもしたら大変です。
最悪、死ぬかもしれない。
そうなった場合、警察も現場検証やら死因についてやらで捜査せざる得ないですよ。」

「警察の介入は厄介だな。
介入したらの話だがね。」

只事ではない展開に秋奈は呼吸が荒くなり、震えが止まらなくなった。

「野崎?おまえは知らんかもしれんがな、ニュースにもなっとらん殺人事件は多数ある。
それらの多くは事件としてではなく自殺や事故して片付けられている。
この意味はわかるよな?
俺は社会的に抹殺した者は多数いるが、あくまで経済的に、または精神的に追い込んだだけだ。
俺は砂城院家や、あらゆる権力者ほど血生臭い行いはしておらんよ。」

「そ、それはご立派です。」

"ご立派"と発言した夫に静香は反吐が出そうだった。

「だかね、俺も今回ばかりは頭に来た。
どこの馬の骨かもわからん者に愚弄されたままでは我慢ならんのだよ。」

「しかしですよ?」

「黙れ!!」

野太い声で一喝した一条の迫力に秋奈は悲鳴をあげた。

「おっと、この娘は?」

先ほどとは打って変わり、一条の声は明るくなった。
秋奈に対して興味津々だ。

「ほっほぉー。野崎、この子はいくつだ?14か?15か?」

野崎が答える前に一条は素早い身のこなしで秋奈がへたり込むベッドの真ん中に座った。
一条から無意識に離れようと秋奈は壁際に身を寄せていく。

「おじさんはね、本当は怖い人ではないのだよー。
知っとるよな?俺の事を?」

身震いしている秋奈は顔を縦に振った。

「おじさんは絶望的に頭が悪い人には厳しいが、身の丈をわきまえたイエスマンな人と。」

「はぅ。」

「そんなに恐れないでくれよ。参ったなぁ。
だいぶ怖がらせちゃったなぁ。」

秋奈の青髪から背中にかけていやらしい手つきで撫で始めた。










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