パパの見た目は15歳〜童顔の大黒柱〜

スーパー・ストロング・マカロン

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二章 長女、秋奈を守れ!

70 野崎夫婦の職場

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ほぼ無言で朝食を食べ終えた直後、野崎のスマホに連絡が入る。
パーマをかけたセンター分けの若い男がマンションに到着したとの連絡だった。

マンションのエントランスを出た時には財布を、玄関を出てエレベーターに乗った時には喉を乾燥から守るマスクを、野崎の妻は2度も忘れ物を取りに戻った。

「ウチのカミさん、ずぼらな性格でね。
忘れ物が多いのさ。
3日に1回、最近は2日に1回かな?
こうやってコイツの車でカミさんを待たなきゃならん。
勘弁してくれよってな。」

はぁぁと野崎はため息をついた。

白い大型車に乗り込んで後部座席に座る野崎と秋奈。
送迎係の若い男は時折り、ルームミラーで2人を見ている。

「そうだ。今のうちに自己紹介しておく?
この娘は秋奈ちゃん…苗字はえっとーーーー」

「季節原です。季節原秋奈。」

「あっ、俺は徳山浩文。」

2人はぎこちなく挨拶をかわした。

「たぶんウチの中では秋奈ちゃんが最年少になるんじゃないか?
そうだよな、トク?(徳山のあだ名)」

「そうっすね。こないだ来たカオリは18で、マリカは大学中退したばかりの19。
ほぼ同時にやってきたアオイとマサコは20歳。
ブラジルハーフのメリッサは21だし。」

「随分若い娘が集まってきたよな。
カミさんは28歳だから、職場では高齢の方だよ。」

野崎はちょっと失礼と秋奈に言い、窓を半開きにして煙草を吸い始めた。
冷たい冷気が秋奈の頬や首筋を冷やす。

以外の女の子も含めれば30人以上もいるから、なかなか名前と顔を覚えられるずにいるよ。
トクの記憶力に比べたら俺はヤバイぞ。
もう歳だな。」

「まだ45歳になったばかりじゃないですか。」

「いやぁ、もう45だよ。
やだね~歳を食うってのは。」

苦笑いを浮かべて煙草を吐いた。

「秋奈ちゃんには昨日のモンスターが何者なのか、話したっけ?」

顔を左右に振って答えた。

「あいつらはホームレスだよ。
普通の人間とは頭の構造が異なっていて、本能のまま生きている。
だから昨晩のようなになってもおかしくない事を引き起こすんだ。
でもね、だからといってアイツらを突き放してしまったら、生きていく能力は皆無の3人だ。
すぐに野垂れ死ぬだろうな。
それだけで済めばまだいい。
おそらく生活に困窮こんきゅうした3人は誰かを襲って凄惨な事件を巻き起こすはずだ。」

煙草を咥えて真顔で話す野崎は秋奈を見た。

昨晩の狂乱を思い出した秋奈は跳ねた青髪をだらんと垂らして俯いてしまった。

「おっと!こいつは悪かった。
余計な話をしてしまったな。
奴らはこのマンションを管理している俺が、ボランティアの一環でマンション内で彼らに食事を与えるルールを作ったんだ。
由美子も参加しているよ。」

「由美子さん…大丈夫かな…由美子さん…。」

秋奈はさらに項垂れていく。

「ますます精気を失っていくなぁ。」

気まずそうに野崎は言った。

「話題を変えよう。
うん、それがいい。」

送迎係を勤める徳山も興味があるようで、ルームミラーで秋奈をチラチラ見ている。

「俺らが働く職場は着いてから説明するとして、今度は君について聞いちゃおう。」












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