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二章 長女、秋奈を守れ!
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着信は秋奈のスマホだった。
父親である春彦だとわかると、着信を切ろうとした。
「切るんじゃないよ!」
由美子は秋奈の手からスマホを奪い取ろうとしたが秋奈は抵抗した。
「この後に及んで歯向かうんだ?」
スマホをガッチリ握って離さない秋奈の手を由美子はつねった。
手加減をするつもりだったが、興奮しているが為に力が入ってしまった。
「痛ぁぁい!」
スマホを掌から滑り落とした秋奈は、つねられた腕を天に上げて呻き声をだした。
スマホを手に入れた由美子はベッドから飛び跳ねるかのように起きて窓辺に立った。
窓の外から大型バイクがけたたましい音をたてて走り去っていく。
「やっぱしアンタの父親だった!」
スマホの画面には"父"とだけシンプルに記載されていた。
「あっ、もしもし!?」
「もしもし?秋奈!?」
由美子はスマホを握る手を左手から利き手である右手に持ち替えた。
「あの秋奈の親父さんですよね?」
「ええ、そうですが。
この番号は私の娘の秋奈のものです。
失礼ですが秋奈とはどのようなご関係でしょうか?」
冷静を装っているが声を聞いただけで燻がる春彦の表情が由美子には手に取るようにわかる。
「友達ではありません。顔見知り程度です。
私も秋奈さんの行動に混乱していてイマイチよくわからないのですが、秋奈さんが家出をして私の自宅兼店舗に強引に転がり込んで来たって事は事実としてあります。」
少し間を置いて春彦は話した。
「…秋奈に変わっていただけますか?」
「わかりました。
その前に私の住所をお伝えましょうか?」
秋奈に変わってしまえば通話を切られてしまう。
春彦との連絡が絶えてしまうのを危惧して住所を予め伝えた方がいいと機転を利かせた。
「やめてー!!」
ベッドから起き上がり、声を荒げる秋奈は由美子からスマホを奪い返そうと突進してきた。
「痛ってぇ!」
スマホをめぐり2人は取っ組み合いをして、もつれあっている。
スマホを肌身はなず、必死で春彦に住所を告げた。
スマホから聞こえる見知らぬ女と我が娘の発狂した声を聞いた春彦は、ただ事ではないと判断した。
「おまえ、離せって!」
「私は家に帰りたくない!」
「いつまでもバカ言うなっ!」
ドスン
「ちょっ危なっーーーー」
秋奈は由美子に覆い被さるようになって、倒れた。
スキンヘッドの由美子は頭を含む全身をフローリングに強く打ち付けた。
「あぁ、痛えなあ…。」
「由美子さん!」
秋奈は起き上がり由美子の部屋の壁に備え付けられているコンセントを探して電気をつけた。
「私、どうしよう?大丈夫ですか!?」
「このままでは死んじゃうかもよ…すっごく頭が、頭が痛いもん…。」
「そんなぁ…私のせいだ!あぁごめんなさい!」
泣き叫ぶ娘の声を聞いた春彦は大声でスマホを通して話しかけているが秋奈は無反応だ。
意識して無視をしているのではない。
由美子の容態に秋奈の頭はパニックを起こしている為、スマホから呼びかける春彦は眼中になかった。
「スゥー、スゥー。」
由美子は唇を少しすぼめて、目は半開きになり浅く呼吸をしている。
「ねぇ?由美子さん大丈夫だよね?
ねぇ?ねぇったら!?」
「アンタさ…今更そうやって私を心配すんならだよ?
バカな事しちゃダメじゃん…。」
寂しげな表情で由美子は言った。
「私、どうすればいいの?もうわかんないよぉ!!」
両手で髪を無造作に掻きむしるように叫んだ。
「ベッドサイドに私のスマホがあるでしょ…。
救急車を呼んでくれる?」
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
秋奈はドタバタ足音を鳴らして玄関に向かう。
父親である春彦だとわかると、着信を切ろうとした。
「切るんじゃないよ!」
由美子は秋奈の手からスマホを奪い取ろうとしたが秋奈は抵抗した。
「この後に及んで歯向かうんだ?」
スマホをガッチリ握って離さない秋奈の手を由美子はつねった。
手加減をするつもりだったが、興奮しているが為に力が入ってしまった。
「痛ぁぁい!」
スマホを掌から滑り落とした秋奈は、つねられた腕を天に上げて呻き声をだした。
スマホを手に入れた由美子はベッドから飛び跳ねるかのように起きて窓辺に立った。
窓の外から大型バイクがけたたましい音をたてて走り去っていく。
「やっぱしアンタの父親だった!」
スマホの画面には"父"とだけシンプルに記載されていた。
「あっ、もしもし!?」
「もしもし?秋奈!?」
由美子はスマホを握る手を左手から利き手である右手に持ち替えた。
「あの秋奈の親父さんですよね?」
「ええ、そうですが。
この番号は私の娘の秋奈のものです。
失礼ですが秋奈とはどのようなご関係でしょうか?」
冷静を装っているが声を聞いただけで燻がる春彦の表情が由美子には手に取るようにわかる。
「友達ではありません。顔見知り程度です。
私も秋奈さんの行動に混乱していてイマイチよくわからないのですが、秋奈さんが家出をして私の自宅兼店舗に強引に転がり込んで来たって事は事実としてあります。」
少し間を置いて春彦は話した。
「…秋奈に変わっていただけますか?」
「わかりました。
その前に私の住所をお伝えましょうか?」
秋奈に変わってしまえば通話を切られてしまう。
春彦との連絡が絶えてしまうのを危惧して住所を予め伝えた方がいいと機転を利かせた。
「やめてー!!」
ベッドから起き上がり、声を荒げる秋奈は由美子からスマホを奪い返そうと突進してきた。
「痛ってぇ!」
スマホをめぐり2人は取っ組み合いをして、もつれあっている。
スマホを肌身はなず、必死で春彦に住所を告げた。
スマホから聞こえる見知らぬ女と我が娘の発狂した声を聞いた春彦は、ただ事ではないと判断した。
「おまえ、離せって!」
「私は家に帰りたくない!」
「いつまでもバカ言うなっ!」
ドスン
「ちょっ危なっーーーー」
秋奈は由美子に覆い被さるようになって、倒れた。
スキンヘッドの由美子は頭を含む全身をフローリングに強く打ち付けた。
「あぁ、痛えなあ…。」
「由美子さん!」
秋奈は起き上がり由美子の部屋の壁に備え付けられているコンセントを探して電気をつけた。
「私、どうしよう?大丈夫ですか!?」
「このままでは死んじゃうかもよ…すっごく頭が、頭が痛いもん…。」
「そんなぁ…私のせいだ!あぁごめんなさい!」
泣き叫ぶ娘の声を聞いた春彦は大声でスマホを通して話しかけているが秋奈は無反応だ。
意識して無視をしているのではない。
由美子の容態に秋奈の頭はパニックを起こしている為、スマホから呼びかける春彦は眼中になかった。
「スゥー、スゥー。」
由美子は唇を少しすぼめて、目は半開きになり浅く呼吸をしている。
「ねぇ?由美子さん大丈夫だよね?
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「アンタさ…今更そうやって私を心配すんならだよ?
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「私、どうすればいいの?もうわかんないよぉ!!」
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「ベッドサイドに私のスマホがあるでしょ…。
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玄関のチャイムが鳴った。
秋奈はドタバタ足音を鳴らして玄関に向かう。
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