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二章 長女、秋奈を守れ!
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深く傷ついた秋奈は登校する気にはなれなかったが、父・春彦に指摘されるのを恐れて仕方なく自宅を出た。
スマホを見ても宗太郎からは一切連絡はない。
秋奈自身も連絡をする気にはなれなかったし、何を話せばいいかもわからない状態であった。
自分のクラスへ向かう際、必ず宗太郎がいる隣の4組を横目で見ながら廊下を歩くの日課だ。
いつもなら机で伏して寝ているか、秋奈に手を振るかしている宗太郎だが、"雑木林に連れ込まれた夜"から数時間後の今、宗太郎は居らず机を見ても登校している形跡はなかった。
秋奈は宗太郎がいない事を不安視しているのと同時に、今日1日、顔を合わす事なく過ごせるのではないかと思うと安堵もしていた。
宗太郎が不在のまま時間は過ぎてゆき、昼休みになった。
友人達と学食で食事をする為に食堂へ向かう。
おしゃべりな友人達が、彼氏はどうしたか
根掘り葉掘り詮索していたが秋奈は適当に話を済ませて、その場をやり過ごした。
下校時はどうしても友人達に彼氏について詮索されるのが嫌だった為、友人達には家の用事があるから早めに帰宅すると嘘をつき、小走りで校舎を後にした。
自宅に着くと母・夏子が優しく迎えてくれた。
「先に食べた冬ちゃんからも、美味しいと大絶賛された紅茶のシフォンケーキを作ったわよ。
秋ちゃんも、さぁ食べて食べて!」
努めて明るく接してくる夏子の優しさに気付いていた秋奈は、母の愛情に涙を流した。
「大丈夫。大丈夫よ。お母さんはどんな時だって大切な秋ちゃんの味方よ。」
「おがぁざぁんん!」
とめどなく溢れ出す涙で顔を赤く腫らした秋奈を、小さな子供をあやすように夏子は抱きしめてあげた。
「秋ちゃん。私にとってかけがえのない家族。
家族が1番なんだからね!」
優しい言葉を聞いた秋奈は夏子の胸元に顔を埋めて、溜まりに溜まっていた学校での長く辛かった1日を氾濫した川のように号泣した。
*****
「ただいま。」
「お帰りなさい。今日は秋ちゃんが大好きなお寿司にしたのよ!」
夏子が編んだ毛糸の手袋を外して、着ているトレンチコートを脱いだ春彦は顔をほころばせて「豪勢だね。」と言った。
「もちろん馴染みの御法度寿司さんのお寿司だわ。
あなたも好きだものね。」
「ああ、そうだな。
御法度寿司は父さんの代から食べている寿司屋だからな。
二代目の大将も先代に負けず劣らずの素晴らしい職人でね。
変わらぬ伝統を守ってくれる粋な寿司屋さ。」
「そういえば、お義父さん元気?
体調が悪いって言っていたわよね。」
「えっ?あぁ、父さんなら現状維持ってとこかな?」
「お父さんお帰り!!」
冬児が嬉しそうに春彦に飛びつく。
「最近、あなたの帰宅が早いから冬ちゃんはご覧の通り!
テンションMAX!」
「僕がいつも寝ている時に帰って来るでしょ?
この時間にお父さんがいるから、すごく嬉しいんだぁ!」
満面の笑みで抱きつく小柄な冬児は、春彦を下からキラキラした目で見つめている。
「頑張って働くあなたには日々、感謝しているけど帰宅が早いと冬ちゃんだけでなく私も嬉しいのよ。」
父・春蔵の団子屋で働く春彦はリストラされてしまった事を家族には告げておらず、動揺を隠せずにいた。
スマホを見ても宗太郎からは一切連絡はない。
秋奈自身も連絡をする気にはなれなかったし、何を話せばいいかもわからない状態であった。
自分のクラスへ向かう際、必ず宗太郎がいる隣の4組を横目で見ながら廊下を歩くの日課だ。
いつもなら机で伏して寝ているか、秋奈に手を振るかしている宗太郎だが、"雑木林に連れ込まれた夜"から数時間後の今、宗太郎は居らず机を見ても登校している形跡はなかった。
秋奈は宗太郎がいない事を不安視しているのと同時に、今日1日、顔を合わす事なく過ごせるのではないかと思うと安堵もしていた。
宗太郎が不在のまま時間は過ぎてゆき、昼休みになった。
友人達と学食で食事をする為に食堂へ向かう。
おしゃべりな友人達が、彼氏はどうしたか
根掘り葉掘り詮索していたが秋奈は適当に話を済ませて、その場をやり過ごした。
下校時はどうしても友人達に彼氏について詮索されるのが嫌だった為、友人達には家の用事があるから早めに帰宅すると嘘をつき、小走りで校舎を後にした。
自宅に着くと母・夏子が優しく迎えてくれた。
「先に食べた冬ちゃんからも、美味しいと大絶賛された紅茶のシフォンケーキを作ったわよ。
秋ちゃんも、さぁ食べて食べて!」
努めて明るく接してくる夏子の優しさに気付いていた秋奈は、母の愛情に涙を流した。
「大丈夫。大丈夫よ。お母さんはどんな時だって大切な秋ちゃんの味方よ。」
「おがぁざぁんん!」
とめどなく溢れ出す涙で顔を赤く腫らした秋奈を、小さな子供をあやすように夏子は抱きしめてあげた。
「秋ちゃん。私にとってかけがえのない家族。
家族が1番なんだからね!」
優しい言葉を聞いた秋奈は夏子の胸元に顔を埋めて、溜まりに溜まっていた学校での長く辛かった1日を氾濫した川のように号泣した。
*****
「ただいま。」
「お帰りなさい。今日は秋ちゃんが大好きなお寿司にしたのよ!」
夏子が編んだ毛糸の手袋を外して、着ているトレンチコートを脱いだ春彦は顔をほころばせて「豪勢だね。」と言った。
「もちろん馴染みの御法度寿司さんのお寿司だわ。
あなたも好きだものね。」
「ああ、そうだな。
御法度寿司は父さんの代から食べている寿司屋だからな。
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